12:45中州先端に到着。
道といっても鋪装されたものではなく、草がぼうぼうの寂しいところ。右には川をはさんで堤防が、左手も川をはさんで堤防が続いている。途中でパンと飲み物を飲みながら歩いていく。だんだんと中州の先端へと近付いてくる。さすがにヘビは現れなかったが、チョウやトンボなど虫には事欠かない。ようやく先端に! 映画では、先端がコンクリートの平らなところとなっていたが、ここは草が生えて、コンクリートが斜めになっていた。どうやら違った場所のようだ。「せっかく来たのに」でも、意外とここまで来るとそういう気持ちよりも、むしろ映画の撮影場所の雰囲気に多少とも触れられたようで、満足出来たのだった。
来た道を引き返し、駒野駅まで歩く。到着13:30頃。近鉄電車(出発14:14)に乗り換え、大垣へ(到着14:55)。大垣から(出発15:05)JRに乗り換え、ほどなく岐阜駅へ到着。
来た道を引き返すこと、40分あまり。駒野駅に着いたとき、万歩計はすでに12,000歩近くに。よ〜く歩いた。すでに電車は出発した後。しばらく待つことに。子供連れの母親もベンチに腰掛けて本を読んでいた。他の高校で部活中に定期を失くしたという女子高生が、駅員さんにいろいろと尋ねていたが、丁寧に応対していた。近鉄のエリアも広い!岐阜、愛知から三重を加えて、さらに大阪までカバーしている。ちなみにここから阿倍野橋までだと2,440円とか。駅の壁には「岐阜県警」の募集のポスターが......『大人になった君の少年時代の勇気を』なかなかいいキャッチコピーだと思う。駒野駅から大垣へは来た経路を近鉄で引き返すことに。大垣到着後、JRに乗り換え、岐阜へ。途中、大きな川をふたつ超えた。ひとつはついさっき見てきた揖斐川、そしてもうひとつはこれから行く長良川。川の流れに何か悠久とも思えるようなものを感じながら、電車はまもなく岐阜駅へ。JR岐阜駅は思った以上に大きかった。新幹線の駅のような感じ。コンコースが2階でホームが3階、新幹線の駅以外でこれほどゆったりとした駅もめずらしいのではと思う。あれだけゆったりしていると、団体旅行ではどんなに使いやすいことだろう。
ホテルへチェックイン。しばらく休憩後、新岐阜駅より市電にて忠節橋へ。
ホテルは駅から近いサンルートを選んだ。『サンルートカード』に加入する程利用することはないだろうけど、ビジネスホテルとして全国均一サービスは安心できるような気がする。少し休憩した後、外に出てみる。JRの駅前よりも新岐阜駅のほうがむしろターミナルなのだろうか、活気もあって、ヒトも多く賑やか。街の感じとしては、鹿児島と高松と岡山を足して3で割ったような感じだろうか。また旅行代理店の数が駅前を中心にちょっと歩いただけでかなりあったのには驚き。停車している真っ赤な2両編成の市電に飛び乗る。市電など馴染みがないので乗るシステムがわからなかったが、しばらくして車掌さんが巡回してきた。斜め前のお姉さんが「忠節」と言っているのが聞こえる。ちょうど良かった。同じく忠節と答えるところだったが、なぜか「忠節橋」と言ってしまった。なるほど映画で出てくる忠節橋への思い込みが強かったのだろうか。170円。中心街を通って何度かカーブしながら電車はやがて長良川にさしかかる。そう、ここ!ここが映画の舞台となった忠節橋。ちょっとした興奮を憶えながら橋を通過していく。少し目をやると山の上には岐阜城が。忠節へ到着。
忠節橋よりタクシーにて岐山高校へ、さらに徒歩にて長良高校へ。
ペットボトルのジュースとキシリトールを駅に隣接したスーパーで買ったが、そこでかかっていた曲はなんと『ドラゴンズの応援歌』だった、そう!ここはまさしく中日ドラゴンズのテリトリーだった。
さてこれから映画のロケ地となった岐山高校と岐阜高校へ向かうことにする。手元の岐阜市内の地図によれば、岐山高校まではかなりの距離なので、タクシーを利用することに。「きざん高校」と言ったところ、「ぎざん高校ですね」と訂正された。長良川の北側のエリアをルネッサンスホテルを右手に見ながらしばらくして到着。
正門に着いたが、隣の家の犬に吠えられてしまった。校舎は塗装(改築?)の真っ際中のよう。校内には入れないので、正門から北側に廻ってさらに東側へ。
映画の冒頭、山を背景にした校舎の風景、また水泳のシーンがここで撮影されたのはほぼ間違いないよう。何枚か写真を撮る。南側に廻ってみると、プールと後ろの体育館らしき建物が見えてくる。なるほど山を背景にした景色は、まさしく映画のシーンを思い出させるものがある。7年の歳月で新しくなった部分も感じられたが、あのプールはどんな感じなのだろうか。直接見ることは出来ないが......しばらくそんなことを思いながら...。落ち着いた感じのいい高校だった。
次は長良高校へ。道をまっすぐ南へと思っていたが、思ったよりも長い道のりだった。しばらくして中学が見えてきた。
東長良中学の壁面の掲示板には先生紹介ということで...「もし先生にならなかったら...」「私の宝物」「好きな芸能人は...」と3つの質問にそれぞれの先生が回答していた。単純な質問だったが、それだけで先生の人柄のようなものがわかるのは、面白い気がする。また「思い出いっぱいの写真」も楽しそうだった。
中学のすぐ南隣りが長良高校。きれいな整った高校という感じがした。また正門にある松の植木は見事だった。ここでも映画が撮られたとのことだが、どのシーンなのかすぐに思い出させるようなものはなかった。写真を何枚か撮影。運動場わきから眺めて見ると、ここも確かに校舎が山の緑とうまく調和していた。
長良川ホテルまで歩いて、タクシーにて忠節橋へ。忠節橋を渡って川べりを散策。
多少歩き疲れてタクシーを拾おうとしたが、見つからずそのまま川べりのホテルまで歩いていくことにする。見上げると山上の岐阜城が、さらにだんだんと視界に入ってくる。
長良川は夏の強い日射しを受け、キラキラ輝いていた。川面には鵜飼の船がたくさん停泊していた。美しくおだやかで、このあたりの散歩はきっと最高だろう。
長良川ホテルからタクシーに乗り、忠節まで。運転手に先日の和歌山を震源とする地震の揺れを尋ねたところ、「ええ、こちらもかなり揺れましたよ」とのこと。何でも以前、濃尾震災の際にはかなりの被害だったということで、岐阜県北部にはその地震でできた断層(根尾谷断層)もあるとのことだった。この地域は決して地震とは無縁ではないようだ。
忠節橋をいよいよ歩いて渡る。この橋はまさに『薄れゆく記憶のなかで』の中で繰り返し出てくる橋。和彦と香織が山へ出かける際に待ち合わせした場所もここだった。香織が和彦を待つときの少し不安そうな横顔から、和彦が現れた瞬間の華やいだ表情に代っていくシーンが思い出された。
橋を渡り、今度は階段を降りて川べりに。この階段もまた映画のシーンに出てきたのだった。香織が友人に恋心を告白した後、川辺へ犬の散歩に連れてきて金華山をバックにたたずむ場面だった。ちょうど同じ場所、そして同じくらいの時刻になっただろうか。
時計の針は6時をまわり、だんだんと日が傾いていく。橋の上を市電が走っていく。橋の上を市電が走ると、夕陽によるシルエットでなんとも美しい情景を作り出していた。この瞬間を止めることができれば...。
市民会館を経由して、高島屋など中心部を通って、ホテルへ戻る。
しばらく夕陽をながめた後、ホテルに戻ることに。せっかくなので、多少疲れたが、さらに歩くことにする。万歩計はホテルにチェックインしたときに忘れてしまったが、おそらくもう2万歩を優に超えていることだろう。
適当に歩いたつもりだったが、気が付くと官庁街のようなところに出ていた。市民会館を通ったが、ここもまた映画の中で、ふたりが演奏会に出場したところだった。視線の重さを感じるシーンだった。ロビー前などは当時のままのようすだった。
夕食は、結局高島屋の地下でおいしそうなお弁当をタイムサービスで買う。さらに歩くこと10分あまり、ようやくホテルに到着。
スカイパーフェクトTVによると、前日に『薄れゆく記憶のなかで』を放映していたとのこと。解説にはこう書かれてあった......。
「将来の希望がまるでない高3の和彦は、同じクラスの少女に交際を申し込むが...。岐阜、長良川。ひとりの青年の心によみがえる初恋の記憶...。純粋であるがゆえに、残酷な若き日の恋を綴った異色作...。」