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リンダ・ハワード・リーディング(その3)

--自分の人生や運命と闘うヒロイン--

リンダ・ハワードの一番の魅力は何だろうか。
語り部リンダのストーリーの巧みさ?
安心して読めるハッピーエンディング?
はらはらどきどき、でも勧善懲悪な展開?
濃厚かつ執拗なラブシーン(笑)?

まだまだいろいろあげることはできるけれど、
自分の仕事を持ち、
自分の人生に正面から向き合い、
自分の足でしっかりと立っている、立とうとしている、
ヒロインの心(しん)の強さにあるのではないかと思っている。

最近、リンダの本は「癒し」だとしみじみ感じる。
単なるシンデレラ・ストーリー、
おばあさんの魔法で幸せをつかむ、
受け身のヒロインではなく、
リンダのヒロインたちは、自らの力で幸せを手にしていく。
そこに、精神的な「同志」としての安堵感を覚えるからだ。

確か、「危険な駆け引き」(シルエット・ラブストリーム刊)のヒロインが、
「敵から逃げている途中でヒーローの忠告を聞かず、
足手まといになるような小説の中のばかな女とは違う。」
というようなことを言う、痛快なシーンがあった。
リンダの作品には、
ステレオタイプの可愛いだけの愚かな女は登場しないから、
本を読みながら、顔をしかめたり、いらいらさせられることはない。

リンダのヒロインは聡明で、精神的にタフだ。
さまざまな苦労の中でも、何とか折り合いをつけ、
自分の力で乗り越えようとしている。
女であることに、決して甘えていない、人間としての強さがある。
別段、「頑張れ!」と女性に対する声高なエールが送られているわけではないが、
本を開く度に、何だか温かく頼もしい作者のメッセージを感じる。

感じるけれど、でも、
それでも、やはり。
頑張れないとき、辛いときはある。
誰かに頼りたい、心細さ。
「自立する女性」という言葉が雑誌の表紙で華々しく踊る昨今、
闘う女性だって、ときには、誰かに守られたい。

その辺の微妙な綾が、これがまた、リンダの魅力。
ただ、ヒーローに守られるだけのお姫様でなく、
ただただ、ヒーロー顔負けの強いスーパー・ウーマンでなく、
ときに強く、ときにか弱い、けれどとことん心の強いヒロインたち。

そのヒロインを守り、ともに闘う男たちももちろん、
ただ者ではない。体も心も、とことん大きい。
現実離れした設定であっても、読む者に共感をもたらす理由は、
男女ともに、人間として、きちんと描かれているからだろう。
濃厚かつ執拗なラブシーンがあろうとなかろうと、
リンダの描く世界は男女がちゃんと互いに相手をみつめ、
理解し合おうと向かい合っている。

そこが「癒し」のポイントでもあるのだと思う。

仕事に疲れきった後、
リンダの本を読み始める。
屈することなく闘うヒロインが、
大きなヒーローの腕の中で、しばし、翼を休めるとき、
ほっとあたたかな気持ちに満たされ、つかの間疲れを忘れるのだ。

シィアル , 2002/05/09(Thursday)  



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