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本をどこで買いますか?(その3)

(3)オークション−応用編その1−

「初心者」というのは、ある意味、無敵だと思います。
何も知らないから、全然「こわい」ものがないのです。
まさに、「蛇に怖じず」状態。
確かに最初の頃、緊張はしたけれど、
「こわい」と思ったことはありません。
無知と、永らく探していた本を見つけた高揚感で、
「こわい」と思うどころではありませんでした。
「こわい」こと、気をつけなければならないことがあることを、
全く、知らなかったのです。
何回か、本を買い続けていく中で、
「あっ!」と思うようなことがあり、
初めて周囲を見回して、オークションには
いろいろなトラブルがひそんでいることにやっと、気づいたのです。

顔の見えない者どうしの取引。
ビジネスライクとはいえ、1回のメールだけで、
いきなり、お互いの本名・住所・時には電話番号まで
明かすわけですから、これは、こわいといえば、
かなりこわいこと。
ひたすら、お互いに信用しあうしかないわけですから。

オークションサイトには、お互いを評価しあうシステムがあります。
これがある程度の抑止力にはなっているようです。
過度に気にする向きもあるようですが(※後述)、
まあとにかく、「悪い」と評価をつけられると、
その後もまだ、オークションに参加するつもりがあれば、
それなりに、信用に関わってきて不都合も出てくるかもしれません。
(特に、「悪い」の評価が累積されていくと。)
最初の頃は、何も気にせず、評価をしていました。
比べる対象もないわけですから、こんなものだと
特に考えず、儀礼的に「良い」評価をしていました。
何回か、回を重ねていくと、
あまり好感の持てない出品者にも行き当たりました。
でも、正直に「悪い」とつけることはなかなかできません。
それこそ、よっぽど腹に据えかねるようなことでもなければ。
なぜなら、相互評価システムなので、こちらが「悪い」とつければ、
多分、向こうも「悪い」と、評価をつけるのです。
たとえば、こちらに何も落ち度がなく、
相手の方がルーズで商品が着くのが遅くなっても、
対抗的に「悪い」と評価されることがあり得るのです。
(もちろん、そうじゃないこともあるでしょうし、
この逆に、出品者の方が落札者の評価に悩むこともあるでしょう。)
そうすると、取引の時に、不快な思いをして、
さらに、今後においても、ずっと、残るのは「悪い」という結果。
(一度ついた悪評価を消すことはできないしくみになっています。)
それはなんだか、割が合わない。そう思います。
だから、とりあえず、波風たてずに、
もう、この人からは絶対に商品を買わない。
そう、心に決めるのが一番賢く思えてきます。

多分、結構多くの人が、
こんな風に考えているのではないでしょうか。
だから、自分への対抗的な評価を気にして、
結局、お互いに、正直な評価ができなくなってしまう。
こんな風に、相互評価システムがちゃんと、
機能しない一面があるのです。
(一方では、「相互」だからこそ、
お互いに無責任な悪評価をしない、
できないというメリットもありますが。
相互評価システムというのも、一長一短です。)

はじめの頃は、そういうしくみ、
葛藤(笑)に気づかなかったので、
Y新聞のWEBサイトの投稿コーナーに
「相手の方が非常にルーズで、迷惑をした。
悪いという評価をしたいけれど、
今までの評価がみんな良いになっている。
私だけ悪いと評価して、相手の不興を買って、
自分にも悪評価がつくのがこわいので、
困っている。どうしたらいいでしょうか?」
という主旨の相談があったときも、
???
当時は、いっこうに、
その投稿をした方の悩みが分かりませんでした。
過度に気にする必要もないとは思いますが、
投稿した方の気持ちも、今ならよくわかります。
大げさな、と考える方も多いでしょうが、
オークションには実際のところ、
それほどに、悩ましい面があるのです。

「こわい」ことは、まだまだ続く。

シィアル , 2002/01/15(Tuesday)  



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