1.構成的グループ・エンカウンターとは
 1)ベーシック・エンカウンター・グループの特徴
 2)構成的グループ・エンカウンターの特徴
 3)構成的グループ・エンカウンターの手順
 4)その他の参加体験型学習法
2.導入・ウォーミングアップ
3.インストラクション
 1)インストラクションですること
 
2)留意点
4.エクササイズ
 1)エクササイズの役割
 
2)エクササイズのねらい
 3)エクササイズを選ぶ基準
 
4)エクササイズのレベル
 5)エクササイズのベーシック・パターン
 6)エクササイズの学期ごとの組み立て
 
7)エクササイズの小学校の学年別の組み立て
 8)ワークシートの作成
 9)エクササイズ中の生徒の参加度の観察
5.シェアリング
 1)シェアリングの形態
 
2)シェアリングの話し方
 3)シェアリングの聞き方
 4)まとめの仕方
6.構成的グループ・エンカウンターの参考文献
7.私の実践リンク


1.構成的グループ・エンカウンターとは
 
 エンカウンター・グループとは、「出会い」という意味であり、情報や知識や物事の善悪ではなく、感情の交流を主とし、自己についての発見や他者の存在や他者との関係を確認し、行動の変容と成長を狙ったグループ体験である。
 エンカウンター・グループには、ベーシック・エンカウンター・グループと、構成的グループ・エンカウンターがある。
 
 
1)ベーシック・エンカウンター・グループの特徴
  1)自発的に集まった少人数のメンバーによって構成される。
  2)あらかじめ準備されたプログラムやテーマはなく、メンバーから自由に提供された話題に添って展開する。
  3)他のメンバーは受容と共感によって、話題を提供したメンバーに関わっていく。
  4)グループが親密な雰囲気になり、かなり深い感情レベルでの交流になることが多い。
  5)非常に時間がかかる。
  6)ファシリテーター(リーダー)は、カウンセリングの深い素養を必要とする。グループの安全と信頼に気を配りながら、メンバーのスムーズな相互交流を促進する。危機的な場合は介入する。
 
 
2)構成的グループ・エンカウンターの特徴
  1)クラスなど、偶然集まった、多人数のメンバーでも活用できる。
  2)個人の問題ではなく、エクササイズによる共通体験の中で起こった感情について、メンバー相互の交流をする。
  3)エクササイズを誘発剤にして、交流の方向や深度をコントロールできる。
  4)短時間でできる。
  5)リーダーは、カウンセリングの基本的な素養は必要だが、プログラムの定型化により熟練者でなくても展開できる。的確な指示を出して、集団を引っ張っていく力が必要になる。
 
 
3)構成的グループ・エンカウンターの手順
  1)導入
  2)ウォーミングアップ
  3)インストラクション
  4)エクササイズ
  5)シェアリング
  6)まとめ
 
 
4)その他の参加体験型学習法
  1)ピア・カウンセリング
  2)ニュー・カウンセリング
  3)学校グループワーク
  4)ソーシャル・スキル・トレーニング
  5)ライフ・スキル・トレーニング
  6)開発教育(グローバル学習)
  7)プロジェクト・アドベンチャー
  8)学習ゲーム
  9)ネイチャー・ゲーム

★構成的グループ・エンカウンターは、あくまでもエンタウンターであり、その目的はシェアリングでの感情の交流にあり、エクササイズは誘発剤にすぎない。しかし、学校などで使う場合、エクササイズの方に注意が向けられていることは確かである。
★私は、ベーシック、構成的、いずれのエンカウンターも何度か体験した。構成的にしても、泊を伴う長期のエンカウンター・グループも、学校でのグループも体験した。そこで実感したことは、エンカウンターが感情の交流を目的としているとするならば、学校で行なう構成的グループ・エンカウンターは、どうしてもエンタウンターにはならないということである。
★その理由は2つある。1つは、シェアリングの時間が短いことである。感情の交流をしようとすれば、やはり時間ががかる。自分の気持ちを表現するには、それなりの熟成期間が必要だと思う。いきなり感情の深い所まで表出させるエクササイズもあるかもしれないが、それは劇薬であり危険である。怪しげな宗教体験や、過激な自己啓発セミナーでは使用されているのかもしれないが、それは、エンカウンターとは別のものであり、エンカウンターの信頼度をおとしめるものである。
★もう1つの理由は、教師の力量の問題である。本当に感情の交流をさせたいならば、やはりカウンセリングの深い素養が必要である。熟達したカウンセラーが1対1で面談するのも大変であるのに、また、ベーシック・エンカウンターでも健全な大人であることを参加資格にしているのに、40人もの子どもの深い感情の交流を普通の教師が整理していくのは不可能である。
★しかしながら、だからといって、学校での構成的グループ・エンカウンターを否定しているのではない。
★従来、教師が行なう教育相談(カウンセリング)といえば、不登校の生徒などに対する、1対1の、「治療的な教育相談」というイメージがあった。しかし、不登校の生徒の症状がどんどん変化して複雑になっていること、外部の専門機関がそこそこ充実してきたこと、また教師の適性から考えて、これから教師が学校でする教育相談は、比較的健全な、多人数の子どもに対して行なう、「開発的な教育相談」であると思うようになった。
★その開発的な教育相談の手法の1つに、構成的グループ・エンカウンターがあるという位置づけが適切である。開発的な教育相談の目的は、学校に登校している、比較的健全な、多人数の子どもの、心を育てることである。これは、教育全体の目的でもあるのだが、開発的教育相談は、その枠組み作りに役立つ。また、「総合的な学習の時間」に見られるような、参加体験型の学習が見直されているが、開発的な教育相談はその手法を提供できる。
★最初にも書いたが、学校で行なう構成的グループ・エンカウンターでは、エクササイズが注目されるのも、このあたりの理由である。参加体験型の学習の形態は、
構成的グループ・エンカウンターに限らず、上記の様々な手法も提供してくれる。また、エクササイズに当たる部分の内容もかなり重複している。さらに、どの手法も、シェアリングに当たる部分を強調している。混沌としている状況である。
★しかし、学校現場においては、それはどうでもよいことである。構成的グループ・エンカウンターが、折衷主義から出てきたように、様々な手法の良い所、使える所を利用すればよいのである。


2.導入・ウォーミングアップ
 
・導入では、エクササイズの名をはっきり告げ、心の準備をさせておく。
・ねらいについても、短い文で、わかりやすく、はっきり告げる。ただし低学年では、ねらいをはじめに告げることにこだわらない。
・ウォーミングアップによって、リレーション作りと心身の準備運動をする。ゲーム性の強いミニ・エクササイズや、簡単な準備運動やマッサージを使う。ウォーミグアップを 利用してグループ分けをしてもよい。

 
★教師の説明は冗漫になりがちである。短く伝えるのは意識しないと難しい。
★私は、体ほぐしやセンタリングやリラクセーションなどの、身体系・イメージ系のウォーミングアップを多用する。
★グループ分けには、バースデーラインやジャンケン列車をよく使う。しかし、あまりこだわらずに、生活班や掃除班、座席の塊でもよい。ただ、男女のバランスが必要なときは考慮する必要がある。
クラスにある程度の人間関係がある場合、何回か構成的グループ・エンカウンターを体験している場合は、あえて型通りにウォーミングアップをすることはない。時間の配分を考えて、時間があればしてもよいが、割愛してもよい。
★ウォーミングアップはエクササイズとの関連を考える。とってつけたようなエクササイズは、むしろ妨げになる。


3.インストラクション
 
 
1)インストラクションですること
  1)エクササイズの概要、ねらい、やり方、時間配分、留意点、実施後の効果や問題を説明する。
  2)最低限のルールを明確に伝え、徹底する。
  3)質問を受ける。
 
 
2)留意点
  ・教師が自分ならどうするかを示してみたり(自己開示)、子どもを使ってデモンストレーションをする。
  ・特に動きのあるものは、安全確認も含めて試しにやって見せる。
  ・板書したり、ルールの書かれた紙を配布して読み合わせるのもよい。
  ・作業開始後にはインストラクションの追加をしない。
 
★インストラクションがエクササイズの成否を決定するといっても過言ではない。カウンセリングは自由な雰囲気で許容度の高い方がよいが、エクササイズの曖昧な説明や指示は、子どもを混乱させる。ずさんなインストラクションは論外だが、「どちらでもよい」と言う指示は、子どもの高度な判断力が必要であることを頭に置いておくことが必要である。
★また、自己開示もエクササイズの成否を左右する。論より証拠、百聞は一見にしかずで、やって見せることが理解を促進する。また、教師と子どもの親近感も増し、いい雰囲気でエクササイズに取り組める。ただ、子どもが教師に影響されやすい場合は、いくつかの自己開示を用意しておく必要がある。
★できれば教員同士でエクササイズをしてみるのがよいが、実際は難しいだろう。少なくとも、頭の中で自分ならどうするか、シュミレーションしてみることは必要である。そして、何をインストラクションしたら分かりやすいかを自分で考えることである。マニュアルがあったとしても、その通り行かないのが普通である。
★子どもへの指示を文章に書いて、誰もが理解できそうであるかを確かめるぐらいの慎重さというか熱意が必要である。


4.エクササイズ
 
 
1)エクササイズの役割
  1)短時間で気づきを促す。
  2)自分を見つめる範囲を指定して、参加者を守る。
  3)みんなと同じ体験をすることで、共通の場で起こる感情を共有したり、仲間意識を高める。
  4)いきなり話し合いをすることによって起こる心理的な抵抗を軽減する。
 
 
2)エクササイズのねらい
  1)自己理解
  2)他者理解
  3)自己受容
  4)自己主張
  5)信頼体験
  6)感受性の促進
 
 3)エクササイズを選ぶ基準
  1)子どものモチベーション(意欲)の高さ
  2)子どものレディネス(エクササイズ前の状態や様子)
  3)教師自身のリーダーとしての経験度
 
 
4)エクササイズのレベル
  1)知識や情報を交流する思考レベル,
  2)動きのある作業を伴う行動レベル
  3)感情の交流まで踏み込む感情レベル
 
 5)エクササイズのベーシック・パターン
  1)アンケート、チェックシート
  2)ランキング
  3)問題解決ゲーム
  4)ブレーンストーミング・KJ法
  5)ジャンケン
  6)集団遊び
  7)インタビュー
  8)ロール・プレイ
  9)イメージ・ワーク
 
 
6)エクササイズの学期ごとの組み立て
  1学期=肯定的で対等な人間関係(リレーションづくり)。
  2学期=自己への気づきや自己肯定感。学級集団として深い関わり。他者を深く知り、良い所に気づける。
  3学期=自己の内面にある可能性を探索と自己表現。学級に対する満足感。
 
 
7)エクササイズの小学校の学年別の組み立て
  低学年=1)同じエクササイズを繰り返す。2)担任がリーダー性を発揮する。3)ゲーム性が強く身体を動かすことや、参加の機会が多い内容や、バラエティーに富んだものがよい。4)シェアリングは方法や機会を柔軟に考える。5)友達のよさを知る機会を増やす。6)ルールのあるエクササイズを体験する。
  中学年=1)友達のよさを知る機会を増やしたり、共同で何かをする楽しさを味わわせる。2)身体接触のあるエクササイズに取り組める。3)挑戦意欲や冒険心を満たすようなエクササイズをする。4)ふり返り作業やカードを記入させる。5)じっくりと自分や友達について考える。6)自己理解や他者理解を深めるエクササイズを取り入れる。
  高学年=1)身体接触に抵抗を持ちはじめる。2)異性と上手につきあえるエクササイズ。3)自己理解を助け他者理解を深めるエクササイズ。4)学級の凝縮性を深め、連帯感・所属感が満たされるエクササイズ。
 
 
8)ワークシートの作成
  ・ワークシートは生徒との間で開発したものである場合が多いので、まず使ってみて自分のやりやすいようにアレンジする。
  ・アレンジするときに凝りたくなるが、仕掛けシンプル、自然なシェアリングを心がける。
 

 
9)エクササイズ中の生徒の参加度の観察
  ・積極的、意欲的に参加しているか。
  ・目的を理解し、ルールを守っているか。
  ・多くの子どもが発言しているか。
  ・気づいたことを率直に相手に伝えているか。
  ・仲間の話をしっかり聞いているか。
  ・他の子どもからの働きかけがあったか。
  ・どんな感情が起こっているか。
  ・非言語的な表現やコミュニケーションを持ったか。
  ・入れない生徒や、心理的なダメージを受けている子どもがいないか。
 
★エクササイズのねらいを6つにまとめたが、多くはいくつかが複合している。ねらいは明確に、絞ることが必要である。
★エクササイズは、まず、安全なもの、実施したことによって傷つく可能性が少ないもので、余り経験していない教師でもできて、子どもが興味を示すものから実施した方がよい。とすると、ゲーム性の高いものになる。しかし、そうすると単なるクラス交流、親睦だけに終わってしまう可能性もある。構成的グループ・エンカウンターの特徴はシェアリングにあるというが、感想を言わせたり書かせたりするだけで、構成的グループ・エンカウンターと言えるのだろうかと疑問に思うことがあるだろう。しかし、何回か継続していく内に、構成的グループ・エンカウンターの目的に近づいていく。と、物の本には書いてあるのだが、私も疑問である。
★エクササイズのレベルで、知識や情報の交流でも、それがその子どもの琴線に触れた内容であった場合は、感情の深いレベルまで反応することもあり得る。また、グループで意見交換などで交流する場合にも、普段の人間関係などから思わぬ感情が表出されることもあり得る。また、一般に体を動かすエクササイズは、感情を誘発しやすい。感情のレベルまで扱うことを目的とするエクササイズは、教師の力量は勿論、力量があってもクラスの状態によって慎重に行なう。できれば、少なくとももう1人教師が入った形態で実施した方がよい。
構成的グループ・エンカウンターの書物は多く出て、次々とエクササイズが紹介されているが、パターンは決まってきている。その微妙な違いが、教師の工夫の余地である。逆に言えば、基本的なパターンを理解していると、独自のエクササイズが作りやすくなるということである。それにしても、他の参加体験型学習の手法のエクササイズに当たるものとの重なりは大きく、何でもありの様相を呈している。シェアリングさえすれば、なんでもエクササイズになるのか、と思わず思ってしまう。
★それなら、授業の後で、理解したことや考えたことや感じたことを交流するのも、立派な構成的グループ・エンカウンターである。
★エクササイズ中の観察は、小学校や、体育や実技科目の先生は慣れていることであるが、一斉授業を主としている教師には難しいことである。何事も経験であるが、実技科目の先生からポイントを学ぶことが必要である。


5.シェアリング
 
 同じエクササイズを体験しても、人それぞれユニークな気づき受け取り方をしている。その気づきや感情を明確化し、他の人と共有する。
 
 
1)シェアリングの形態
  1)小グループごとにする。
   ・ホンネで気持ちを分かち合いやすい。
   ・フィードバックが少ない。
   ・他のグループに広がらない。
   ・巡回し、チェックしておき、全体に紹介する。
  2)全体でする。
   ・大勢の多様な気づきがある。
   ・発言をためらう生徒が出てくる。
   ・発言できる人数に限りがある。
   ・沈黙の時間は覚悟する。話したそうな顔を探して指名する。
  3)両方をあわせてやる。
   ・時間が多くかかかる。
  4)ふりかえり用紙に記入させる。
   ・書いたものを、別の時間に生徒に読ませたり、まとめて教師が伝える。
 
 
2)シェアリングの話し方
  1)今、ここで感じていることを話す。
  2)照れずに、大きい声ではっきり話す。
  3)まず自分について、学んだこと、気づいたことを話す。
  4)友だちについて、気づいたことを話す。
  5)なるべくみんなにわかりやすく話す。
  6)下を向かず、聞いている人の顔を見ながら話す。
 
 
3)シェアリングの聞き方
  1)友だちの話は最後まで聞く。
  2)ひやかしたり、ばかにしたりしない。
  3)話の途中で、否定するようなことは言わない。
  4)よくわからないときには、遠慮しないで質問する。
  5)いい所をみつけ、言ってあげる。
  6)人の話から、自分が学ぼうとする。
  7)話が終わったら、感謝の気持ちをこめて拍手する。
 
 
4)まとめの仕方
  1)全員を教師の方に向くように座り直させる。
  2)エクササイズの意義や目的を確認する。
  3)今後どう生かしていくか、教師自身がグループや個人について感じたことを話す。
 
★シェアリングにじっくり時間をかけたいものである。しかし、生徒はエクササイズで体験したことを話すだろうかという不安は絶えずある。
★そうすると、ついついふり返り用紙に書かせてしまうのだが、子どもは何か行事の後に感想文を書かされることが多いので、またかというマンネリ反応をすることもある。しかし、いいエクササイズの後はよく書いてくれる。でも、そういう時は、書かせなくても話し合いができる。やはり、エクササイズ次第か。
★最初にも書いたように、学校で実施する構成的グループ・エンカウンターでは、シェアリングでそれほど深い感情の交流はできないし、教師に力量がなければしてはいけない。世間話ではなく、ちょっと心のレベルで話ができたかな?というシェアリングができれば大成功である。もっと深い感情の交流を期待する人は、信頼できるファシリテーターのいるベーシック・エンカウンター・グループに参加して下さい。


6.構成的グループ・エンカウンターの参考文献
 

「エンカウンターで学級が変わる 小学校編1〜3 中学校編1〜3 高等学校編」國分康孝監修(図書文化)
「エンカウンターで学級が変わる ショートエクササイズ集」國分康孝監修(図書文化)
「サイコエジュケーション」國分康孝監修(図書文化)
「人間づくり 1〜5集」國分康孝監修(瀝々社)
「学級担任のための育てるカウンセリング全集 1〜10巻」國分康孝編集(図書文化)
「正・続構成的グループ・エンカウンター」國分康孝編(誠信書房)
「エンカウンター」國分康孝著(誠信書房)
「エンカウンターとは何か」國分康孝ほか共著(図書文化)
「エンカウンターによる”心の教育”」山本銀次著(東海大学出版会)


7.私の実践リンク
 
★LIVE KOKUHYOU
★エコ・ロールプレイ
★これからの生き方を考える
★さまざまな価値観



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