2000年度は3年生で実施しましたが、2001年度は1年生で実施してみました。しかも、普通クラスでも実施しました。
新たに改良したところを赤色で書き加えます。


授業「自然との共生」  エコ・ロールプレイのねらい  エコ・ロールプレイの概要  エコ・ロールプレイの展開
エコ・ロールプレイ説明プリント  クリップボード  全体会議抄録  生徒の感想


授業「複数の目を」

2001年度は、加藤幸子の評論「複数の目を」の授業の後、エコロールをしました。この教材は、自然保護の基本は、経済性でも、人間が感じる美しさや快さでもなく、人間だけでなく他の生物の複数の目を持つことであるという主旨です。詳しくは、ここをクリックして下さい。

授業「自然との共生」

現代文(教科書は、第一学習社『現代文2』)で鬼頭秀一の評論「自然との共生」を授業した。要旨をまとめると、次のようになる。

「共生」と言う言葉は時代のキーワードであるが、そこには自然を人間がコントロールでき、多少の余裕があるから自然を守ってやるという、暗黙の前提がある。都会に住んでいる者は、通常の生活では、自然からますます離れた生活をしながら、生活の余剰の部分では、自然とのふれあいを求めて「自然との共生」をうたい上げる。ところが、自然の中に住んでいる者は、自然の脅威にさらされ、自然を「共生」の対象とは考えていない。自然との関わりの深さと、自然との共生との関係は簡単ではない。また、地元の住民が開発を支持する一方で、都会のよそ者が自然保護を提起するということがよくある。ここにも、逆説的な構図がある。しかし、よそ者の中には、もともと自然と深く関わってきた人もいる。逆に、地元の人の中にも、近代化が進んで自然との関わりの希薄な生活をしている人もいる。「地元」と「よそ者」の関係も簡単ではない。このように考えると、人間の営みと自然との関係が単純でないことがわかる。つまり、人間は一枚岩ではないので、人間と自然の二項対立的な関係で環境問題をとらえるのは間違いである。


エコ・ロールプレイのねらい

『自然との共生』では、開発がよいか自然保護がよいかは単純に言えない、人間にも様々な立場があると言うことを学んだ。そのことを、体験的に学習するために実施する。
ねらいは次の3点である。
○自然環境の保護と地域の開発について、よりよい問題解決の方策を考える。
○日頃の自分と違う様々な立場の人の考え方や気持ちを理解する。
○1つの問題に関して、様々な立場や価値観が存在することを認識する。

藤村コノヱ著『環境学習実践マニュアル〜エコ・ロールプレイで学ぼう〜』(国土社)を参考にした。


エコ・ロールプレイの概要

設定されたある環境と開発に関する課題に対して、日頃の個人の立場や考え方やかちかん都は関係なく、与えられた役割の立場で取り組む。
今回は、本校の地域と類似した架空都市「醍醐市」を設定した。醍醐市は昔からの農業地域であるが、農業の衰退に伴って活力を失いつつある。そこで、京都市に近いという地の利を生かして、ベッドタウンとして開発するというプロジェクトが持ち上がった。
以上の課題に対して、推進派農民と反対派農民、開発業者と自然保護団体、与党の推進派議員と野党の反対派議員が対立、地元住民や地元商店街店主の中にも賛成意見と反対意見がある。そこで、「醍醐市未来プロジェクト会議」を開催し、住民投票で賛否を問うことになった。
2001年度は、「地元住民」と「地元商店主」を、開発に反対する「昔からの住民」と開発に賛成する「新しい住民」に変えた。
生徒は4〜5人ずつ8つの役割グループに分かれて、まずグループ討論をし、その後、代表者が全体会議に臨み、最後に開発プロジェクトに対しての賛否と、説得力のあったグループを2つ投票し、エコロールプレイを感想を書く。


エコ・ロールプレイの

第1時(中間試験の答案返却後の15分)(正規の授業1時間を使って)

1.エコ・ロールプレイの説明プリントを配布する。
2.ねらいを説明する。
3.「醍醐市未来プロジェクト」を読み、簡単な解説をする。
4.プリントを読みながら、エコ・ロールプレイの進め方を説明する。
5.8つの立場から、賛成派と反対派の立場を一つずつ選んで、その立場からの意見文を書かせる。
5.グループ分けをする。
  ★グループ分けには、おもちゃ屋に売っている980円のビンゴルーレットを使い、出た番号によってグループに分かれる。くじ引きでするより、盛り上がった。

第2時(HR教室で)

1.グループに分かれて座らせる。
2.各グループに用具を配布する。
  ○カード(B4上質紙を16等分したもの)人数×10枚
  ○八ツ切り画用紙1枚
3.前時のプリントを読みながら、カード式発想法を説明する。
4.各自で自分のカードに自分の意見を書かせる。(15分)
  ★地元商店街と地元住民は、その立場から賛否両方の意見を出させる。
5.グループで自分のカードを発表させる。(10分)
6.前時に書かれた意見文を、住民の声として各グループに配布する。
6.グループとしての意見をまとめさせる。(15分)
  1)似た内容をまとめる。
  2)説得力のある意見から並べる。
  3)論理的になるように並べる。
  ★机間巡視をしてアドバイスをする。
7.次の事柄を画用紙にマジックで書き、クリップボードを作成させる。(5分)
  1)グループの役割
  2)メンバーの名前
  3)グループの意見
  ★色マジックを用意しておくと、カラフルなクリップボードが出来上がった。
  ★賛成派は黒マジック、反対派は赤マジックで書かせ、次時の討論の時に色で立場がわかるようにした。
8.全体会議に出る代表者を決め、名前を○で囲ませる。
9.クリップボードが完成したグループは提出させ、まだのグループは次の時間に提出するように指示する。



準備

1.資料を作る。
  ○クリップボートを50%に縮小し、8グループ分を裏表印刷でザラ半紙1枚に印刷しておく。
2.全体会議用にグループ名を書いた三角札を作る。
3.会場を設営する。
  1)会議室を借りる。
  2)黒板に、会議のタイトルと座席を書いておく。
  3)代表者会議用にロの字型に机を並べ、三角札とボードを置いておく。
  4)代表者の後ろにグループのメンバーが座れるように机と椅子を用意しておく。
  5)テープレコーダーを用意しておく。(ビデオカメラでもいい)
  6)入り口に、資料と判定用紙を置いておく。

司会
反対派農民




推進派農民
環境保護団体 開発業者
反対派議員 推進派議員
地元住民 地元商店街


第3時(会議室で。クリップボード回収、準備物作成のため、第2時との間に1時間あける)

1.入室時に、資料と判定用紙をとらせる。
2.代表者とメンバーを所定の位置に座らせる。
3.全体会議の進め方について、簡単に説明する。
  ○司会は教師がする。
  ○両派が、それぞれの立場で協力し、自分の派に有利な主張をしたり、相手の派に質問したりするように指示する。
4.各グループがクリップボードを使って1分間で冒頭意見を述べる。(8分)
  ★キッチンタイマーで時間を計り時間がくればブザーを鳴らし、途中でも打ち切る。
5.自由討議をさせる。(15分)
  ★発言を独占したり、発言がなかったり、暴言を吐いたり、話題から外れないように、司会がうまく交通整理をする。
6.作戦タイムをとる。(5分)
  ○代表者が自分のグループのメンバーと今後の展開について相談する。
  ○後半、代表者の交代も認める。
7.自由討議を再開する。(15分)
8.判定用紙に次のことを書かせる。
  1)プロジェクトに賛成ならば「○」、反対ならば「×」。
  2)説得力のあったグルーブ2つと、その理由。
  3)エコ・ロールプレイの感想
9.判定用紙を回収する。


教師の感想と課題

やはり、普通クラスではやや盛り上がりには欠けましたが、それでも十分成立しました。
学力伸長クラスでは2000年度の3年に負けない活気がありました。是非、必ず、絶対、もう一度やりたいと言う声ばかり(ホント!)。
話し合いの授業は、生徒の学力や意欲に負うところが大きいのでしょうか。
生徒の声として、ギャラリーが暇!という積極的な(?)ものも多くあり、その意味では大成功なのかもしれない。
労力としては、普通の授業をしている方がよほど楽です。しかし、チャレンジスピリットを失えば、ズルズル後退戦を余儀なくされます。
今回、1年生でやってみてよかったと思います。今後もめげずにチャレンジしていきたいと思います。

こんなに成功するとは思っていなかったというのが正直なところです。本当に白熱していました。さすが3年生、見直しました。二度としたくないという意見は全くなく、多くの生徒がもう一度したいと書いてくれました。
時間が短いという感想もありました。全体会議を2時間連続ですればよかったと思いますが、それ以上は難しい。腹八分目、やや物足りないところが丁度いいのかもしれません。
今回は、現代文の授業で扱った教材の補助としてロールプレイをしました。現代文の中で、ロールプレイなりディべートを取り立てて時間をかけて実施することには難しいものを感じます。ただ、この授業が「総合的な学習の時間」につながることは実感しました。
次に実施するときの改善点やアイディアを記しておきます。
1)冒頭意見の後にも作戦タイムをとって、他のグループへの質問、他のグループからの質問とその対応などを相談させる。
2)クリップボードは、グラフなども入れ、ビジュアル的になるようにする。
3)エコ・ロールプレイをすることによって生徒から問題を引き出し、その問題についてより深く調べさせたりする。

生徒のリクエストが強かったので、2学期には「舞姫」でロールプレイをやってみたいと思っています。 



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