〜エコ・ロールプレイ〜

ねらい
●日頃の自分の立場と違う様々な立場の人の考え方や気持ちを理解する。
●1つの問題に関して、様々な立場や価値観が存在することを認識する。
●自然環境の保護と地域の開発について、よりよい問題解決の方策を考える。

進め方
1.全員が、醍醐市の現状について把握する。
2.クラスをA〜Hの8つのグループに分ける。
3.各グループで話し合う。
  1)与えられた役割の基本的な立場を理解し、その立場になりきって、意見を述べる。
  2)カード式発想法を使って、開発に賛成する(反対する)理由をまとめ、クリップボードを作る。
  3)どんな反対意見が予想され、それに対してどのように反論するかを考える。
  4)全体会議に出席する代表者を1人決める。
4.全体会議をする。
  1)各グループの代表者が前に並ぶ。
  2)代表者が、クリップボードを使いながら、各グループの主張を1分以内で述べる。
  3)自由討議をする。
  4)プロジェクトについて、賛否の投票をする。
  5)どのグループの主張が説得力があったか、1人2票で投票し、その理由を書く。
6)エコ・ロール(グループ討論と全体会議)の感想を書く。

カード式発想法
1)1人に10枚程度のカードを配る。
2)テーマについて,自分のアイディアや意見を書く。1枚のカードに1つ,できるだけ具体的に,単語ではなくまとまった文章で書く。
3)1人ずつ順番に自分のカードを読み上げて,前に出す。
4)他のメンバーは発表を聞き,わかりにくければ質問する。
5)他の人が自分と同じ意見を発表したらその意見は発表できない。
6)他の人が発表している間に新たなカードを書いてもよい。
7)手持ちのカードがなくなったら終了する。
8)グループで優れた内容であると判断した順番に8〜10枚を選ぶ。

醍醐市未来プロジェクト

醍醐市は、醍醐川の下流に位置する人口6万人の地方都市である。人口100万人の京都市へは車で1時間足らずのところにある。豊かな土地と水に恵まれたこの地域は,京都市へ新鮮な野菜を供給する農業地域として栄えてきた。また,醍醐川の河口にはさまざまな生き物が生息し豊かな自然の生態系を形作っている。さらに,この地域の農作物や樹木は,京都市を走る車の排気ガスによって汚染された空気をきれいにしたり,京都市が大量に消費するエネルギーによって温暖化された空気を冷やすなど,環境の悪化を和らげる役割も果たしている。市も「豊かな自然を子どもたちの世代に」をスローガンとして掲げてきた。
 ところが,政府の減反政策で休耕田が目立つようになった。さらに,ここ2,3年の異常気象が収穫に大きな打撃を与えている。農家の中には,新しい農機具を買ったりして努力したが,農作物の自由化で安い農作物が大量に輸入されるようになり,借金ばかりが残る農家が多くなった。後継者も減り,先祖代々の農地を売ってそのお金で新しい仕事を始めようと考える者も出るようになった。
 一方で,この土地と農業に対する愛着から,都市部に近いという地の利や,先祖代々の自然農法で安全でおいしい作物を消費者に提供して行けば,必ず未来はあると信じている農家もある。
 この状況に目をつけたのが,大手開発業者である。最近,京都市のベッドタウンとして人気が急上昇し,土地の価格もどんどん上がっている。道路を整備し,農地を宅地に変えて新しい家を建て,新しい住民を増やし,学校や病院等の公共施設や商業施設を次々と建設するという一大プロジェクトになる。地元の人の生活も豊かで便利になるはずである。
 醍醐市はここ数年税収が減少傾向にあった。推進派議員は開発プロジェクトによって企業を誘致し,新たな住民が増えれば,市の活性化につながり,税収も増えると考えている。しかし,反対派議員は間近に迫った市長選挙を意識して,市のスローガン「豊かな自然を子どもたちの世代に」を公約に掲げ,市長派が推進する開発プロジェクトに反対している。

醍醐市は「醍醐市未来プロジェクト」をめぐって,推進派と反対派が激しく対立している。そこで,公開討論会を開催することになった。

A 推進派農民  B 反対派農民  C 開発業者  D 環境保護団体
E 地元商店街店主  F 地元住民  G 推進派議員  H 反対派議員



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A 開発推進派農民
1)土地の価格が上がっているうちに売った方がいい
2)農業を続けていても借金が増えるだ け、早く借金を返したい
3)努力しても実らないことがあり、異常気象など天候のこともあり、思い通りの値段で売れない
4)他の仕事に就いた方が安定した収入が得られる
5)農業をしていると毎日仕事をしなければいけないし、他の仕事なら時間が自由に使える
6)後継者がいないので続けようがない
7)都会に住んでいる人には、自然との共生の厳しさを分かってもらえない
B 開発反対派農民
1)京都市に新鮮な野菜を供給する
2)税収を増やしたければ、まず経営者の危うい農業をたて直していけばそれによって環境保全と税収アップの2つの利がある
3)安全でおいしい野菜がなくなって、すべてを輸入に頼らなければならなくなる
4)伝統的な自然農法による野菜もできなくなり、しいては日本の文化をつぶすことにつながる
5)今でも農業を続けていていこうと頑張っている人がいる
6)自分が少年時代から見てきた自然を子供にも見せて受け継いでほしい
C 開発業者
1)今までと違って自然や省エネに重点を置いた環境に優しい住宅地を作ることが可能
2)緑が失われるというなら街に木を植えて貴重な虫は保護施設などで保護する
3)人間が安らぎを得るような施設や公園を作っていった方がこれからのためになる
4)土地の値段が上がってきてるから儲け5)時農業をやるより商業施設をつくった方がもうかる
6)開発が進めば私たちがもうかるため、その1部は市に税金として出る
D 自然保護団体
1)子供たちのために自然を残す必要がある
2)自然を愛する心がなくなって感受性が乏しくなり犯罪を犯すこともが増える
3)自然の中で安らぎを得ていたけれど、それがなくなるとストレスがたまってゆく
4)自然を多く残した貴重な都市をあえて近代化する必要はない
5)醍醐川の自然の生態系が崩れる
6)温暖化などの自然災害か起こる
7)木は一瞬にして切断できるが、育てるには何十年もかかる
8)木は切ってしまえば木材にしかならないか、植えていたら酸素が得られる
E 地元商店街店主
1)大型商業施設ができるとお客さんが新しい店にとられてしまう
2)多くの人が醍醐市を訪れるので商売が繁盛する
3)大型商業施設のをテナントに入ることもできる
4)商店街に独特の商品で大企業に対抗する
5)大きな商業施設の商品より質の良いモノを売る
F 地元住民
1)交通量の増加により危険が多くなる
2)治安が悪くなり犯罪が増える
3)子供の自然との触れ合いがなくなる
4)ごみの増加によるカラスの増加
5)町の外観が損なわれる
6)交通機関の整備により通勤通学が便利になる
7)近所にスーパーなどができると非常に便利で時間が短縮され豊かに暮らしやすくなる
8)病院などの施設ができ安心できる
9)町が活気づいて仕事も増え人口が増えると娯楽施設もでき生活が豊かになる
G 開発推進派議員(市長派)
1)減反政策で増えた休耕田の土地を有効に利用する
2)税収増加で財政が安定する
3)企業誘致で求人が増加する
4)開発により病院や学校ができるので住みやすくなる
5)商業施設を建設すれば生活も豊かになり、新しい住民も増え、結果的に町が活性化する
6)このままでは町が衰退して若者が都会に出で行き過疎化が進む
7)今まで開発しなかったのがおかしかっただけで、この地の利便性を考えると商業都市にした方がよい
8)開発しなければ行政からお金がおりない
H 開発反対派議員(反市長派)
1)自然ががなくなり空気が悪くなると住民の健康を害してしまう
2)人口増やすと今までなかった犯罪が増える
3)子供たちの世代には自然の方が大切である
4)今までの市がのスローガンを無視してはいけない
5)自然を壊して環境を悪くしてしまえ ば、一時的には人口は増えても将来的には減ってしまうかもしれない
6)開発して人が入ってくるという保証はない
7)この大不況の時にこんな金がかかる事業はリスクが大きい
8)市長は自分たちの利益しか考えていない

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反対派農民 ここにはもともと私たち農民が住んでいました。開発をすれば私たちはどうすればいいですか。住宅を建てるよりも農業を推進した方が税収のアップにつながるではないですか。
推進派議員 それは現状維持の消極的な意見だと思います。
推進派農民 同じ農民として質問ですが、農業だけで生活していけますか。
反対派農民 市がバックアップすればきっとうまくいく方法があると思います。
推進派議員 それは昔の醍醐市に戻すだけでそれ以上の発展は望めないと思います。
司会 反対派議員の方どうですか。市長選も近いようですが。
反対派議員 市長派議員は自分たちの利害ばかり考えて町の発展を考えていないと思います。
司会 開発に関してわいろが流れているという噂があるというわけですね。
推進派農民 土地を売れば私たち農民も助かります。
環境保護団体 自然はお金では買えないので慎重になるべきです。自然は私たちの財産だから大きな目でみればどちらが損か得かよく考えるべきです。
推進派農民 減反政策や輸入の自由化で農業の限界が見えている。ここで発想を転換すべきです。
保護団体  減反政策で政府からお金がもらえるかもしれないが、そのお金だけで生活ができますか。
開発業者  農業を続けることが本当に環境保護につながるのですか。
反対派農民 土地を売って具体的にどのように生活していくと考えているんですか。
推進派農民 人が増えれば車も増えるので駐車場が必要になるだから、駐車場にして貸してもうけます。
反対派農民 水田を宅地に変えるのはお金がかかります。それは大手の開発企業がするので、結局農民は土地を売らればならないのではないですか。
地元住民  醍醐市を他の都市と同じ形にしまっては意味がないです。醍醐市の特徴を生かして開発をすべきです。醍醐市の特徴とは自然との共存です。
開発業者  確かに醍醐市の特徴は自然との共存です。しかし環境保護団体がいうように「開発=自然破壊」ではありません。自然を保護しながら開発にことも可能だと思います。
地元住民  しかし、実際にできるかというと無理だと思います。
保護団体 開発というと農地だけでなく森林の伐採されます。だから自然を残すというのは難しいではないですか。
反対派農民 市のスローガンにあるように「豊かな自然を子供たちに残す」ということを第一に考えるべきだと思います。住宅よりも農地を残すことの方が大切だと思います。
地元住民 開発業者の方はどのようなプランを持っていらっしゃるでしょうか。
開発業者 開発といってもすべての木を切るわけではないです。自然を残すというのと自然をほったらかしにしておくのとは違うわけです。あなた方は何か自然を保護するために何かしてきましたか。
保護団体 豊かな自然とはだれかに保護された「きれいな自然」を言うのですか。
推進派議員 自然を残すといっても、このだけ文明にどっぷりつかってしまった人間が自然の中でやっていけないでしょう。ある程度自然とのラインを引くことが大切だと思います。
保護団体 だったらこれ以上開発する必要はないでしょう。十分にラインは引かれています。
地元住民 そうですよ。醍醐市の住民は静かな所に住みたいと思ってここに住んでいるんですよ。
開発業者 開発といっても、大きな建物を建てるだけではないです。公園とかも作ります。
推進派議員 借金で苦しんでいる農民の人をこのまま放っておくわけにはいきません。企業を誘致すると求人も増えます。働き口が増えるのです。
反対派農民 休耕田をなぜ放っておくんですか。市がバックアップをすればいいのです。その方が農民のためになります。いきなり職を変えられるよりもずっといいです。
反対派議員 農業をやっていた人が、ネクタイを締めて働く方がいいと言いましたが、労働者は京都市から若い人が雇われるんではないですか。
推進派農民 いくら農作物を作っても、安い輸入品が入るので私たちの農作物は売れないのです。作れば作るほど借金がかさみます。
反対派農民 弱い者はつぶしていくということで、日本の農業をすべて潰していくのですか。良いものを作れば絶対に需要があるからつぶれないと思います。そのようにすれば道はあると思います。
地元商店街 われわれ商店街としては生き残っていくという道はあるのでしょうか。
開発業者 住宅を開発すれば、人が増え当然商店街はにぎわうと思います。
地元商店街 新しい住民が増えるともに、新しい商業施設も増え地元の商店街はさびれていくのではないですか。
推進派議員 推進派議員も、地元の商店街の人を大切に考えています。
地元商店街 具体的に言って貰えますか。
推進派議員 新しい商業施設は地元商店街の近くには建てさせないようにします。
地元商店街 それでは醍醐市の開発という点においては何のメリットもないのではないのでしょうか。
開発業者 商店街は、新しい商業施設のテナントなどとして入るという方法もあります。また、商店街独自の商品を開発するという方法もあると思います。
反対派議員 市のスローガンをないがしろにしていいんでしょうか。
推進派議員 自然保護も大切ですが、市の現状を考えると開発を急がなければなりません。まず子供たちにしっかりとした市を残すのが先決です。環境を保護はその後で考えるべきです。
推進派農民 輸入の自由化や異常気象などで条件は悪くなっています。また後継者もいません。反対派の農民の方はそのあたりをどのように考えているですか。
反対派農民 日本が輸入できなくなった場合のことを考えると、自分の国で食べるものは自分の国で作ってゆくことが必要だと思います。
地元住民  人が増えるとを犯罪も増えると思うのですが、推進派議員のことはどのような対策をお考えですか。
推進派議員 交番を増やしたり、夜のパトロールを強化したりすることを考えています。

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開発を推進する意見

▼世論が自然保護とかに傾いてきているので、開発を主張するのは難しいかなと思いました。でも現実では開発されているわけですから、世の中生きていくにはお金がやっぱりいるんだなぁと思いました。お金がもうからないと企業や市が動いてくれないだろうと思います。はっきり場所を決めて自然保護すればいいと思う。(こうやってお金や便利さに負けていくのだろう)▼全体の意見を聞いていると、やっぱり自然は大切なものだと思うけれど、それだけでは市の発展もないし、過疎化の問題もあると思うし、開発には賛成だと思った。それに今、自然を壊して造られた施設をみな便利に利用しているのを見ていると近代化に逆らうことが不可能になっててしまうと思った。▼売れない農業をバックアップするより町のためにより税収を増やすために政策をとるのが普通である。自然が壊れるというのが、今や世界は人口が急増している。住むところがなくなればどうするかといえば家を建てるしかないと思う。自然は大切だけど、人間どんな人でも自分の命を捨ててまで自然を守る人はいないはずです。▼開発=自然破壊と思っている人が多いけれど、かならずしもそれが環境破壊にはつながらないとも思う。農民だって今は輸入でいっぱい農作物が入ってくるのに、たくさん農作物を作っても売れないだけで残るものは借金、そんなことをずっと続けられないと思うし、価格が上がっているうちに土地を売って多く収入を得た方が自分たちにもいいと思う。環境問題や開発の問題に正面から向き合うよい機会になったと思いました。▼私が1番納得したのは、推進派議員の、このままだと町が衰退して過疎化が進むということ。確かに世界は進化し続けるわけだから、時間が止まったような街に若者がいつまでもいると思えないです。



自然を保護する意見

▼いろいろ考えていると、やはり森林が多いという特徴を持った醍醐市を開発せずこのまま残しておいた方がいいのかなと思って反対した。▼人間と環境の共存という大きなテーマの中では両者は一歩も譲らない姿勢がよく表れていた。とくに農業に対する思いがよく表れていた。今回は特に農地をどうするか、森林をどう保護するかに焦点が当たっていたし、聞いている私たちでも賛成か反対かの判断はなかなか難しい。開発が進んだために不利な生活をしなければならないかもしれない地元住民のことを考えると、本当に難しいし、真剣に考えることの重大さを知った。▼開発を進めることによって私たちは本当にいい暮らしができるのだろうかと思った。今のままでは厳しい状況だという農家や自然破壊を訴えているのがすごく話し合いされていてよかったと思います。▼私も学校の近くにコンビニや遊べるところがあったら便利だとは思うけれど、やっぱりグランドから山や青い空を見た時は醍醐の自然はいいなあと思う。私が大人になってここが開発されて自然がなくなると思うといやだと思った。▼市民の安全を考えると、開発はしない方がいいと思う。犯罪、交通量、自然破壊などマイナスの方が多いと思う。▼地元商店街の問題いってのは実際に難しいことなんでしょうねぇ。企業の大きな店が出てくると、小さな店なんかすぐにつぶれてしまうし。コンビニがいい例だと思います。▼農業のメリットは、野菜を作ることにより、ものを愛する心が生まれ、人々をも愛する心に伝わるものだと思う。



その他

▼市のことをだけでなく地球環境全体のことを考えなければいけないので、それも話し合うのが難しいところでありました。




エコ・ロールについて

▼討論は楽しい。その立場になって初めて理解できる面などさまざまな発見があった。▼自分の意思と関係なくある立場に立たされたのでいろいろ考えることも多かった。自分だけの良い点で回りを見るのでなく、いろいろな立場、視点で物事を見るのはとても重要だと思う。討論することで自分の意見、相手の意見を吟味し、そこから論を展開されることができれば楽しいそうだなぁ。▼ちゃんと会議が成立していたので驚いた。理屈で攻めてくるところや、勢いで押してくるところなど、それぞれの班で特徴が出て行って見ていて面白かった。討論に出ていた人は、最後の方は熱くなったりしていたのでこの会議は成功したと思う。▼反対の質問などに対抗するために、意見をしっかり聞くことも学べた。▼一つのことをするにも賛成、反対に割れるのだなぁと思った。すべてのことに発言するにはそれなりの知識が必要だと思った。感情だけでは多くの人が生活をしている都市を動かすことは難しい。▼みんなで話し合った結果をまとめて1つの上にするのは難しかった。でもみんなに納得させることができるものだと私は思った。▼反対の人からいろいろ言われて、その理由などを問われたときに、なぜかということを論理的に考えることが結構難しいと思ったが、自分の意見を言うことで他の人を納得させられるという面白さを味わえた。こういう会議はとても頭を使うので、自分がもっとありとあらゆる知識を取り入れることが必要だと思いました。▼何かを決めると違う方のデメリットが生まれてきたりする。実際にこういうことはある。こんなふうに討論して決めているんだなあと思った。▼ボードにグラフとかがあって、客観的な事実が明確になっていたらもう少しやりやすかったかもしれない。▼資料などが少ないのであまり掘り下げた討論ができなかったのでそこのところが少し物足りないと思いました。▼もっと時間がほしかった。1回の授業だけでは短いと思った。

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