書架新風(下半期)

牛山ゆう子歌集『しぐれ月』(砂子屋書房)
・街並を隔て流るる多摩川の春の彼方に新都心見ゆ
・幼子と母と草野の柵に寄り手を振りてをりはしる電車に
・冷えびえと外灯の灯を照りかへす道のゆくてのマンホールの蓋
・そろりそろりと夜の廊下をトイレまでからだをはこびもどる足音
・防護服まとひ消毒する人ら宇宙飛行士歩くにも似て
・霜の朝女(め)の刃と男(を)の刃すれちがひ思ひ出のわがベルベット裁つ
・しぐれだわ 然うしぐれだね 山茶花の垣に路上に草のもみぢに
・鯉泳ぐ池に夏空映りをりこの夜にふたりゐるわれならず
・金峯山寺の円柱太き蔵王堂香のけむりにわが身を浄む
・醒めぎはとおもひみてをり亡きひとの障子を開けて夢に入り来る

靑戸紫枝歌集『海の石鳴る』(ながらみ書房)
・自らの輝き知らぬ少女(をとめ)らが午後の廊下に声を散らせり
・かけ声に八十の足は地(つち)を蹴りひとつの塊(くわい)が大縄を跳ぶ
・ひと日かけ地底の泥を除(と)るをとこ細身の肩はまさにブロンズ
・自画像にマスクのままの女生徒が鼻がきらひと大き眼に言ふ
・窯の内のオレンヂいろの巻きあがりゆらめきながら放つ輝き
・父の留守を守らむ幼がヒーローとなりて無双の構へにて跳ぶ
・夕ぐれの職員室に絵を描きて母われを待つ子の日がありき
・害獣と人は勝手によび慣ふ生きむとのみに生きるけものを
・いつぴきの蟻が墜ちゆく蟻地獄いのちの音はひそかなりけり
・手に持つはコルクの銃弾見定むる冬のひかりのなかのきやらめる

小畑庸子歌集『球体の声』(角川書店)
・霧出づる朝くろがねの鶏も濡る角錐形の屋根の先にて
・山あひに鏡いく枚光らせて遠き棚田の里は六月
・低音にブザーは太く鳴り終はりはや暗闇となれるシアター
・コノハズク電子辞書にて姿を見 序でに啼かす十とふたこゑ
・葛原を貫きて立つ鉄塔に秋のいかづち遠く鳴り出づ
・見果てざる夢を負ひゆく蛞蝓にな振りそふりそ しろき辛塩
・国宝館拝観券の阿修羅像凜凜しき眉をはつかに寄する
・落ちながら凍てたる瀧は石走る水に戻らず如月の昼
・夜の更けの駅に二輌の電車着き十人ばかりを降ろして攫ふ
・充電を終へしをみじかく鳴りて告ぐ秋の机の文殻の下

宇田川寛之歌集『そらみみ』(いりの舎)
・満員の通勤列車に定位置は決まらず樹々のごとくしなへり
・間の抜けた謝罪を朝に投函す酒のちからの口論の果て
・くちびるの荒れゐし朝のくちづけはつかのまの風花の感触
・定型の喪中の知らせ、親のゐない友少しづつ増えてゆくべし
・パソコンの立ち上げ画面の気にかかり子はわが膝から身を乗り出しぬ
・歌をやめてしまひし人と酌む酒よ戻つて来いとわれは言はずも
・補助輪をけふより外せる自転車よ団地の庭の子のあとを追ふ
・フリーゆゑ休まず働く我々と複数形に言ひ落ち着きぬ
・縁側とふものなき暮らし、ベランダに出でて背伸びと屈伸をせり
・知り合ひの多きむすめと休日を歩めばむすめに合はせ会釈す

中埜由季子歌集『ユリカモメの来る町』(青磁社)
・学べよとわが贈られしパソコンの蒼き光に戸惑ふばかり
・節電の地下道歩み懐かしむニューヨークの地下道パリの地下道
・もどり来て父母(ちちはは)すでに棲まぬ家の廊下を踏むは冷たさを踏む
・三歳のその姉のこゑ聴きとめてみどりが児耳澄ますたまゆら
・陽光(かげろふ)のなか揺らぎ来し観光バス修学旅行生おほかた眠る

伊勢方信歌集『ピアフは歌ふ』(本阿弥書店)
・コンテナをおろすフォークの切先が荷に研かれし光をかへす
・溝川の底ひに育つ白蝦がほそき身に跳ねよどみを広ぐ
・新聞を買はむと入るコンビニに街樹の枯葉匍匐して来し
・温(あたた)めて飲む牛乳の張る膜が麻酔の消えぬ唇(くち)に張りつく
・ガード下の古き市場に烏賊を焼くにほひと共にしばらく歩む
・廃業のホテルの壁を鋼球(もんけん)は振幅ひろげ一息に打つ
・ビル窓の方形の空ひたあをく方舟(はこぶね)のごとく飛行船ゆく
・隣室に妻の進むる採点の○×(まるばつ)の音聞き分けてをり
・車椅子の老女居眠る描きかけの皇帝ダリアをそよがせしまま
・幼らの紙飛行機に破(や)られたる障子の穴に桜を咲かす
・演習に出でゆく戦車の無限軌道(キャタピラ)に茜蜻蛉従きて浮遊す
・山峡の里とよもして演習の砲声夜に入りても続く
・つくばひのまろき蒼穹(あをぞら)ゆさぶりて水舐めてゐし雀たちたり
・漂流木もて組みたる小屋に鼻繋(はながい)を箱にうちつつ牛は喰ひつぐ
・玻璃窓に止まりて六花(りつか)くづすなき雪のしづけさ須臾にはあれど

川野里子歌集『硝子の島』(短歌研究社)
・大日本帝国の兵ジャングルにスマトラオホコンニャクすなはち死体花見き
・太平洋といふ海ぬつとあらはれぬ嘉永六年黒船の背後
・わが憂ひ息子の未来の上空を一反木綿となりて飛びそむ
・ウェブ・システム売り歩く息子じつとりとリアルな汗を背中に広げ
・滑走路のかなた色づきはるかなる薔薇窓のやうに入り日は赤し
・非常口みつけしやうに飛行機はつぎつぎ飛び立つゆふべの空に
・島一つ廃墟となりて浮かびゐつ過去(すぎゆき)のやうに未来のやうに
・ベネチアに見てゐる古地図日本(につぽん)のあらかじめなくこののちもなき
・砦にて囲はれゐるは墓地の島ひとりとてそこを出づる者なき
・火を噴きし石油タンクは風景のなかに沈みぬ火の消ゆるころ
・ほろびたる家にほろびぬ井戸ありて暗く澄みたる水満たしをり
・見しことなく触れしことなく近づけぬ神のごとくに炉心はありぬ
・消えた老人消された老人消えさうな老人あつまる児童公園
・遠野物語のどこにもお蚕さまをりてさりさりさりさり現世(うつつよ)を喰ふ
・白昼の美術館には生きてゐる女はわれのみ絵に見られつつ
・うすずみのおほきな白象その背(せな)に乗りてゆきたきやうなゆふぐれ
・兎の鼻こまやかにさぐりゐたりしは危ふきものであらむ吾の手
・目眩ましの春光は来て認め印押せといふなり扉あければ
・わが裡のしづかなる津波てんでんこおかあさんごめん、手を離します(*三句傍点付き)
・屋久杉は鳴かねどあまたの蝉は鳴き三千年めの夏休みなり

野一色容子歌集『自堕落補陀落』(ふらんす堂)
・いにしへの平城の都の夕空をいろ淡あはと赤さんぼ飛ぶ
・親しげに廊下で挨拶するふたり分娩室の戦友といふ
・街を抜け人里をぬけ流星(りうせい)のこよひ降るなる山へと急ぐ
・蜜蜂(はち)を飼ふ友のひと瓶ひと匙のとほい昔の野原の匂ひ
・アオサギは畳むつばさの裏を見す王のマントのごとくゆつくり
・バスの窓に見おろす無礼を許されよ街道をゆく比丘(びく)多くして
・ふらんすの一茶の猫はをす、めすと区別をさるる即物的に
・行列にならびて鯛焼き五尾を買ふ創業九十余年の鯛焼き
・ををしくも郷に入りては濃き髭に働くらむかデリーは炎暑
・よきこゑの歯医者なりしが診察にひとりごと言ふ中年となる

鶴田伊津歌集『夜のボート』(六花書林)
・渡されし安全ピンの安全をはかりつつ子の胸にとめたり
・クレヨンの鮮やかすぎる丸として子に描かれしわたしとあなた
・まお・こはる・ゆい・はるな・ひより 子の友に「子」の字のつきし名を持つ子なし
・さくらすみれ組の名札を揺らしつつ子はブランコを漕ぎ上げている
・はじめての子の前まわり鉄棒の鉄の匂いをてのひらに込め
・子は常にきみの側へと組み込まれ「宇田川実生」の名札をつける
・先生に期待するなとじゅんじゅんと子に言い聞かせ便箋たたむ
・我が実家の柱に父の刻みたる子の身長とわれの身長
・秋、冬と過ぎれば吾子は「つ」でかぞえられない歳になるのだという
・ざぶざぶと脛まで浸かり子は追いぬ水面を揺らす銀の魚を

八國生博香歌集『青葉の季(とき)』(角川書店)
・人々の沐浴をせる川なかを児のなきがらの浮きては流る
・うす紅にけぶる秩父の山ざくら馬の背(せな)より見つつ下りぬ
・みちのくの仏の面輪やはらかし鉈彫りといふも刃跡うすれて
・掃き寄する落葉を焚きて亡き母の黄ばめる日記読まず燃やしつ
・満州より男に扮し引き揚げし母の友人今年は白寿
・太ももに弾丸(たま)跡ふたつ残る伯父中国戦線語らず逝きぬ
・ひと夏を電源切りたる便座なりけさはひいやり肌につめたく
・長ながと祈る人あり初詣の賽銭をわれ握りたるまま
・時かけて波のうがてる洞窟のむかうに見ゆる初春(はる)の海域
・あかあかとアロエの花の燃えあがるさねさし相模の陽のあたたかさ

外塚喬歌集『散録』(短歌研究社)
・近づくに距離をたもちて街川に鴨の泳ぐにさざなみを引く
・古書店をさかりきぬれば首都高の明かりは夢をはこぶがに見ゆ
・足の爪を切るに左が先になる右利きなればいたしかたなく
・此岸より彼岸にことわりもなく行きて雪は降り積むきさらぎなかば
・耐用年数はるかにこえしフライパン別れねばこの後(のち)も使はむ
・これしきがなぜ開(あ)かぬかと壜の蓋(ふた)妻にかはりてわがあけむとす
・髭剃りを終へてつるんとしたる顎 負けさうなときは丹念に剃る
・泥中にその身かくせる底魚(そこうを)のごときかも気がのらぬ一日
・鼻の差も勝ちは勝ちなりウイニング・ランの馬には紙ふぶき舞ふ
・二日(ふつか)三日(みか)見ぬうちに桐の花落ちて一枚岩のやうな青空

藤田冴歌集『湖水の声』(ながらみ書房)
・新しき手帳がしづけき量感を醸しぬ記念日書き入るるたび
・Eテレにすれば第九が聞こえ来ぬ歪(ひづ)みし心のとある淵へと
・ルーペにて覗くなら嘘のない世界めだかが一尾緋めだかが二尾
・縁石を踏みて縦列駐車するタイヤよりこころ軋みてゐたり
・工事灯明滅してゐるこの辺り声かけくるる風とゆき逢ふ

神谷佳子歌集『窓』(短歌研究社)
・大洋を方形にきるラスト・ドア奴隷船ならぬタンカーの過ぐ
・プールより身を抜きたればたちまちに四肢の重さよこれにて生きる
・とりよせし『らいてう自伝』黄ばみたる頁に紙魚(しみ)の鱗粉光る
・秘められし記録といひて八月のくれば新たな戦史語らる
・山姥(やまんば)の駆けてなびける髪のごとしだれ柳の冬の枝(え)ゆるる
・ひと鍬に土の手応へ筍(のこ)傾ぐ気配にぐいと親よりはなす
・八階は天よりの途次白き幕おろす勢ひに隙なく雪は
・台風の先ぶれの雨ものかはと裃(かみしも)そろひ鉾すすむ大路
・君在らず音も形も在らぬことたしかめるため今日も醒むるや
・好もしき墓とし夫の書き遺しき二百年の古梅と清廉の石柱(いし)

栗原浪絵歌集『藍色の鯨』(ながらみ書房)
・立つことを覚えし我が子五十センチ高い視線で猫を見ている
・眠りたる赤子の手より我が指をそっと引き抜く午前四時半
・何かまだ言い足りなかった心地してゴミ袋さげた君を見送る
・お雛様出してみたよとメールあり人形たちも三十五歳
・みどりごの脇でスーツに着替えたり君のママから先生になる
・腕太き父に抱かれて夏祭り愛されしことの記憶の一つ
・初雪の上をコゲラが跳ねてゆく扇子のような足跡つけて
・手鞠麩の吸い物お代わりしたいです今日の幼は敬語を使う
・前髪をいじり続ける学生の答案のぞく午後の教室
・ランドセルに手足が生えているような幼が今日は「母さん」と呼ぶ

江坂美知子歌集『水の声』(角川書店)
・朝のバス並び待ちゐる束の間を銀杏黄葉の積もる静けさ
・闘はねばならぬことなどまう無くて海釣りの夫の背中の丸し
・濡れ足に入りくる猫にも長病みの我にも穏しく夫はもの言ふ
・介護士とひと日留守居の夫の背を湯殿にゆるりゆるらに流す
・施設訪ふ度に息子をよろしくと白寿の姑の頭を下ぐかなし

森島章人歌集『アネモネ・雨滴』(短歌研究社)
・一枚のシーツを剥がすごとく海やや持ち上げて覗く子やある
・風来れば風を指すのみ愛憎の外風見鶏くるくる回る
・抽斗(ひきだし)に海をしまへば生きやすき少年といふもろき巻貝
・然(しか)るときはあざやかなれどあとはおぼろ飛行機雲のやうなる決意
・食ひしん坊だつたからねとおさしみや鶏肉、チーズ持たせて送る
・五グラムのせつなさのほか積荷なし紙飛行機を夏に投げ上ぐ
・縮小を重ねて猫と白桃の種の中なら亡命したし
・古びたる真空管よ少年の夏閉ぢこめたまま地に刺さる
・さてここにきみの片腕ひつそりと置かれし外は白き淡雪
・頭蓋のなかに考へを食ふ鰐がゐてひとところ空白の十五夜

米山髙仁歌集『不死鳥』(ながらみ書房)
・検診の結果判るは二週間後ひとまづ安堵の晝酒旨し
・藤の咲く小學校の校庭に地震の爪痕地割れは太し
・藏跡の更地をわたりゆく風は父祖のにほひをまとひてをりぬ
・帽子脱ぎ頭の汗を拭ひゐるバス運轉手暑き秋日に
・髭生えし我の顔見て何だそれさういふ君の頭光れり

くぼたかずこ歌集『お気に召すまま召されるままに』(ながらみ書房)
・酒場にてこころの定点観測をすれば氷河もときには熱帯
・今日の客博多長崎若松と玄界灘がさざめいている
・君と歩く桜並木はちりぬるをわれら葉桜すこし輝き
・雑草を抜くがごとくにひとつずつ抜いてみたいね高層ビルを
・旭川マイナス八度の夜を歩くネオンの灯り雪に映って

山中昌子歌集『枇杷の種ひとつ』(本阿弥書店)
・亡き父に背きてとりし免許にて介護の母の送り迎えす
・発車する新幹線の窓たたき泣きいしあの子京都あたりか
・人待ちぬ日傘の影を出入りする蝶としばらく楽しみながら
・読みきかす本のうえ這う羽蟻を殺せばわれを少年が見る
・この先に娘の家あり歩道橋を渡ればすぐだが近くて遠い

萩岡良博歌集『周老王』(ながらみ書房)
・さみだれのたたける青葉は魚(いを)となり泳ぎ出すなりしぶきをあげて
・白鵬に君が代唄はせ千秋楽かなしきまでにわれら日本人
・ミニスカート流行(はや)りあなたのあげそめし白きふとももまぶしかりけり
・草にくすぐられこゑたてをらむ目も鼻もおぼろになりし道祖神(くなど)の神は
・颱風の〝爪痕〟は擬人法 道ふたぐ倒木を越ゆまたぐら擦りて
・幼児なれどをんなはときに気むづかしく砂場の隅ですねてゐるなり
・遇ひしときお辞儀の美(は)しきひとなりきただそれだけで妻とし決めぬ
・害獣といへどをさなし近寄れば檻にぶつかり逃げまどひけり
・あつ気なく父逝きたまふあつ気なく逝かしめしこと孝養として
・藍ふかき冬空へ火に浄められ棺は縦に昇りゆきたり

鈴木香代子歌集『あやめ星雲』(ながらみ書房)
・いもうとを失くした人がもうひとりさびしき瞳(め)にて壺抱きいる
・雪という漢字たやすく書けてまだ雪見ざる子に冬はやく来い
・ごろごろと点滴台をつれてゆく 否 難破したわれが曳かれゆく
・ごっそりとよろい着て尻むける犀(さい) 鎧(よろい)なくばきっとさみしい体
・コウノトリ雨にうたれて不動なり関わらぬという関わりかたある

上田倫子歌集『刳舟』(本阿弥書店)
・手斧(てうな)跡うろこのやうに纏ひゐる素裸の樹にそつと手触れぬ
・巻貝の腸(わた)に入りゆく心地なれ地下駐車場の暗きを下る
・いつせいに翔つ鴨の群遊歩道まなかのわれを置き去りにして
・天誅組の足跡たづね来し里にひしめく花のしづけさありぬ
・白雲が草書体「ろ」になりて飛ぶ如月の空風あるらしき

服部崇歌集『ドードー鳥の骨』(ながらみ書房)
・鎧戸を閉ざせるパリの昼下がり古今和歌集恋の部ひらく
・助手席のドア外れたる自動車の置き捨てられて朝の始まる
・地中海の底にウツボのぽつかりとあいてゐるくちひとつまたひとつ
・をさなごが見せてくれたりこの国に角のかたちが違ふまひまひ
・晩秋のパリの市場の夕暮れに大きく厚き豚のみみたぶ
・読みかけの超現実主義(シユルレアリスム)の書を照らす間欠泉のごとき木漏れ日
・月の夜の牛舎に草を食む顔をのぞきみすれば一斉に向く
・右側の窓の座席を求めたり見納めの旅とならむ富士山
・公園のキリンは硝子の檻のなか硝子の壁を舐め続けをり
・ちくちくとエッフェル塔が点滅し今宵はわれを弔ひてゐる

枡田紀子歌集『夜香木匂う』(ながらみ書房)
・時折は諍う夫と二人して子に説いており結婚の意義
・それぞれが無口になりて猫抱く 猫はときどき姿消すなり
・取り違えし眼鏡に始まる諍いも共に老いゆく日常となる
・「死にたい人の入山許す」と笑えない看板ありぬハブの棲む島
・種子島ロケット基地に月までを飛び行く夢を子等と語りぬ

松本榮歌集『うちうみ』(発行者 松本裕喜)
・召され往く看護婦われを送りくれし歓呼の中の母の顕(た)ちくる
・高空に村民運動会の声援の折々聞こゆ臥所(ふしど)にひとり
・若き日に恋せし神田神保町あこがれの地に子は勤め持つ
・口開けず眼開けと眼科医の言うを聞きつつわが番を待つ
・わが鍬にちょんぎられたる蜥蜴の尾ぴんぴん跳ねてのたうちまわる
・向日葵にとまる揚羽の羽たたみひらく動作は呼吸のごとし
・エレベーターの中の鏡で整えて四階に入院の君を見舞いぬ
・元院長の葬儀に集う元ナースおのもおのもに老い深まりて
・トイレットペーパー一月分を使い切り孫子去にけり正月四日
・高速も通らぬ里に井の中の蛙のごときわが一世なる
・虫籠を置くごと毎夜虫の声聴きつつ眠るこれも恩寵
・話したきことをおもいて目覚めたり話す相手はみな黄泉の国
・敗戦の玉音聞きし北支那に兵の終焉看取りきその夜
・白い地が薄茶にくすむ日の丸が簞笥にありぬ戦後掲げず
・早々と雨戸を閉めて台風の進路に気をもむ昨日も今日も

小宮山久子歌集『百観音』(本阿弥書店)
・酔ひすでにまはれる舌に吐く言葉聞きとりがたくゆゑに残れる
・よそ人に指摘されたる母の老いわかりをれどもなにか悔しき
・小半時草に挑みて救ひだす母の畑のとまとやなすび
・立つ湯気の風に動けばあらはにも間歇温泉噴かむ穴見ゆ
・豊かにも湧く霊泉の澄みたるがボトルに満ちてなほこぼれたり
・身に触るるたすけはいらぬといふやうに九十歳が髪洗ひをる
・中腹の森にあがれる硫気あり火山国日本のひとつ山くだる
・長く濃く木の影すずし トラックに男寝てをり路肩によせて
・夜の雨のしめりのこれる細道を列車に見つつ窓くもりたり
・階くだるときの揺らぎに思ひをりひとつ腑を欠くおのが身のこと

畑彩子歌集『虫の神さま』(ながらみ書房)
・もう産めぬ身体といまだ産まぬ身体がひとつの湯船にしずむ
・子を産めるタイムリミット過ぎゆけば若やぐ友あり老け込む友あり
・みどりごがほにゃあと泣けばその兄は母より早く駆け寄りてゆく
・破顔とう言葉はありて生まれたての弟を抱く兄の表情
・乳房持つ悲しみ喜び知り得ない男性医師に胸を診らるる
・「なかじょうふみこさん」と呼ばれて立ち上がる幸せそうな皺刻むひと
・幸福な妊婦は夫と母を連れゆったりゆったり廊下を歩く
・物凄い美人ぱかりと足開き眠りていたり昼の電車に
・美しい四股ふむ力士居なくなりもたりもたりと肉塊ゆれる
・あの柱時計が昔はこわかったボンと鳴り出すその瞬間が

勺禰子歌集『月に射されたままのからだで』(六花書林)
・「お子様の手をしっかりとお繋ぎく…」エスカレーターにまで糺される
・幼き日風呂場でゆまりせしことの開放感をしばし思ひぬ
・自意識のかたまりのやうな思春期の少女集団で居れば疎まし
・とりわさは何故にとりわさびといはぬ行方不明の「び」を思ひ食む
・水色のセーラー服はマニアにも人気でときどき盗まれてゐた
・人の波引いてしばらく思慮深くエスカレーター止まりゆくさま
・震災で借金もみ消し帰阪したときの名前は直木三十二
・半分はやけくそなのかもしれないがプラカード掲げて電車で帰る
・そのむかし千三百度の熱を持ち焼かれしものが並ぶ涼しさ
・几帳面に展示ガラスの指紋消す白き作務衣の職員たちは

小見山輝歌集『神島』(潮汐社)
・ほととぎすが鳴くよといひてふり仰ぐ空の青みの身のおきどころ
・高空をとよもし過ぐる風の音春の音よとわがうち仰ぐ
・木々のみどりの勢ふ頃となりながら静かなりけり虻も飛ばねば
・暮れ方の電車明るく灯をつらね水に映るもたちまちのこと
・水の底にある青空には雲がゆきこぼれるやうに鳥も飛びゆく

平田利栄歌集『御幸橋まで』(本阿弥書店)
・わが見舞ひ待ちゐる母か目の合へば言葉にならぬ声を発する
・最後かもしれぬ花火を四階の母の病室より眺めつづくる
・ふるさとの野山に父も聞きにけむ「ひるのいこい」のメロディー流る
・足裏をくすぐるやうに沸きはじめ薪の匂ひが湯殿にこもる
・手作りの課程見てのち亡き父母に花の絵柄の和らふそく買ふ

奥村晃作歌集『八十の夏』(六花書林)
・山々に囲まれて広き湖の全水面をバスに見下ろす
・トンネルの出口明るく見えて来ぬトンネルの道直線となり
・椅子十脚積み立てし上で逆立てる芸人の頭(ず)にヘルメットなし
・大相撲若手競いて台頭し面白くなる〈満員御礼〉
・水面を勝手に進む子らなれど親カルガモに付きて離れず

松村正直歌集『風のおとうと』(六花書林)
・カウンターあればすなわち制服の人と私服の人とを隔つ
・注がれてシャンパンタワーは満ちてゆく春の明るき棚田のように
・砲弾のごとく両手に運ばれてならべられたり春のたけのこ
・パンを買うひとのトングの迷えるを二階席より見つつ楽しむ
・エキチカの指名手配書そこだけが七〇年代の髪型をして
・みそ汁の澄みゆくまでを見ていしが宇宙に果てはあるのかと訊く
・父と子のあいだ何度か行き来してシャトルは草のうえに落ちたり
・夕されば鹿のひとみの中にある野原にきょうも子どもが遊ぶ
・春空の高きところを歩みゆくキリンは時に向きを変えつつ
・一台が倒れてあれど自転車は仲間を助け起こすことなし
・巻き網に掬い取られし小魚のきらきら跳ねて新学期来る
・しばらくを電車の床に転がりていし空缶の行き詰まりたり
・みずからの重さのひとつ浴槽のひとつ穴より湯は抜けてゆく
・ホッチキスの中に小さき「ツ」のありてカチッカチッと紙を留めゆく
・ひとつだけのタイヤ回して進みゆく少女は八分音符となって

本間温子歌集『書架をへだてて』(青磁社)
・空爆の止みしカブールに少年が親族(うから)の墓標八本建てる
・瞬間に選り分けられし春雛は雌雄の箱にそれぞれ鳴ける
・稲熱病(いもちびょう)にかかっているぞと老いの言う写真展の稲じっと見つめて
・幼児の映るビデオにゆくりなく病みいし母居り 巻きもどし見る
・ふるさとを訪いたる夫がかあちゃんと母を呼ぶなり越後は小雪
・越後より届きし手紙二百余通母の歳月われらのさいげつ
・止まりたる虻もいっしょに揺れていて藤房に風しずかにわたる
・鉄板にたこやきくるんと返しおり明日は子らみな遠くへ帰る
・ひっぱられひっぱられして八方に伸びたる蛸が秋日にかわく
・嫁ぎ来しわれにホーエヤ貝殻節歌いてくれし人の逝きたり

山本夏子歌集『空を鳴らして』(現代短歌社)
・学校の焼却炉には何もかも燃やしてくれるおじさんがいた
・デパートの洋菓子売り場の人混みと同じ数だけ贈られる人
・自転車を修理に出せば自転車とだけ会話する職人がいる
・野良猫が鳩の遺骸を持ってゆく動物として弔うために
・電線の上をネズミが這いまわる乱れた波形を尾で描きつつ
・飲み会の帰りに過ぎる交番に書き足されている今日の死者数
・いつだって消されるために点されるケーキの上の笑顔を照らし
・点されたキャンドルの火に照らされて新郎新婦についてゆく影
・紙のクマを作る男の指の毛も黒々映す教育テレビ
・彗星のしっぽのような影を曳くテーブルの上にこぼれた砂糖
・知らぬ間に知らない人が出て行って知らない人が住む上の部屋
・うずくまり膝を抱えた少年に似る道端に置かれたテレビ
・救急車の扉が開きまっしろなひかりが男を飲み込んでいく
・さんかくのおしりを立てて餌をとる真冬の池にいる鴨四羽
・オスプレイ飛んでますよと空を差す先まで焼けた分厚い指が
・山積みにされたレタスをひとつ選る子どもの頭を摑むみたいに
・庭先にかき氷機が置いてあるビニールはまだかけられたまま
・広場からうさぎを一羽選るように子が保育士に抱き上げられる
・泣きながら嫌がる顔を押さえつけ十六本の子の歯を磨く
・三度目の春の蛇口に届く子の手が出会わせる水と光を

谷とも子歌集『やはらかい水』(現代短歌社)
・通された室から眺めるアドバルーンことば無くした吹きだしのやう
・さらさらと一枚岩を裂くやうにくちなはは這ふ まもなく瀞だ
・駅からのひと少しづつ減る道のくらさ濃くして虫は鳴きをり
・帰りゆく途中に橋があつたこと、水嵩の減る川を見たこと
・錆びつきしシャッターにかかる大き手が夜をひきずりおろす音たつ
・しじみ蝶うづまくほどに群れとびてその芯に隠しゐるのは誰
・次の世は苔になりたい湧きながら流れやまない水に洗はれ
・鳥のブローチいつから歪んでたんだらうぼんやり映す地下鉄のドア
・突風にゆがんでしまつた傘を捨てどうなつてもいい傘を買ひたり
・このみづをいつか素足で渡るとき言ふのだらうか清め賜へと

川口滋子歌集『世界はこの体一つ分』(角川書店)
・大粒の雨がふってる負けるものかと思いっきり傘を開いた
・正座して説法を聞くお尻より空豆に似て二つの足裏
・君の声残る耳よりイヤリング外せば赤い音符のかたち
・電球を替えんと椅子に見下ろせば我が暮らしいる一室縮む
・傷ついた私から少し傷ついた私へ戻るミスタードーナッツ
・プライドごと淘汰されゆく恐ろしさぶ厚く削る渋柿の皮
・舞台そでに楽譜を置きぬ幼き日ここで見守りくれし先生
・左手の二分休符自由となれば音たてぬよう蚊を叩きたり
・新宿駅すれ違いざま美しい破裂音にて「ブス」と言われぬ
・真夜中のシャワーがどこまでも響く 世界はこの体一つ分

中井茂歌集『木漏れ日のように』(角川書店)
・ミステリー小説 通勤電車の僕はいつも事件に巻き込まれてた
・引き抜けば次のティッシュが顔を出し次の消費を促す仕組み
・街路樹は兵士のように立ち並び「直れ」の号令まだ待っている
・使い捨てなどと呼ばれる百円のライターの火の暖かさ
・右足と右手同時に出ることが心配で歩けなくなる時
・真昼間の電車 明暗明暗と目を閉じたまま光見ており
・声低く話す上司の折衝の電話のゆくえ探る耳先
・生産を伴わぬゆえ何となく後ろめたさのある庶務の事務
・通勤の電車にも慣れ定位置と呼べる位置にて心を閉ざす
・この星にホモ・サピエンス栄えたことの証として残る放射性残渣は

若松喜子歌集『砂嘴のソクラテス』(ながらみ書房)
・夫と子は湯船に何を語りいん声柔らかし晦日の夜に
・「かあさん」と夫が吾を呼ぶことも幸せのひとつ紛れもあらず
・出勤のはずの月曜その朝がいちばん寂しいと夫のことば
・束ねられ届きし寄せ書き〈大好きな若松校長先生〉と児ら
・生前の夫みずから書き置きし喪主の挨拶わたくしが読む
・臨終の九時四十分そののちを報告せんと墓に来て立つ
・降るようにしきりに落ちくる枯れ葉 にわか雨かと空仰ぎたり

西堤啓子歌集『カピバラを抱く』(砂子屋書房)
・窓越しに雀追う眼の炯々(けいけい)と尾の先までが狩りをしている
・弓張りの猫の怒りは尾に風を孕ますごとし夏の短夜(みじかよ)
・つながれて狸はお手もお座りも知ってしまった温泉の町
・どこにでも転がっている争いの職員室に繁きこのごろ
・菓子一つ見えなくなって満月の母口元を押さえつつ笑う

小谷博泰歌集『シャングリラの扉』(いりの舎)
・牛小屋の牛がしっぽで虻を追うけだるい昼がにおっていた
・庭に出て線香はなびに火をつけるいのちの色が闇にこぼれる
・紐に布を吊したような水着付け白い少女ら海辺で遊ぶ
・稲刈りもほぼ終りたる信濃路に夢のごとくにSLの来る
・敦盛の塚にこぼれるいちょう葉のかがやきながら冬が始まる
・ぴったりと男と女がくっついて電車の中で何してくれんねん
・船たまりにカモメが群れてないており冬の休日人なき港
・飛行機は低く低くと下りてゆき松の林のむこうに消えた
・日が道に照りながらちらちらちらと冷たい風に粉雪まじる
・ファミレスもカフェもこみいて海辺吹く風のようやく春となりゆく

加藤走歌集『風よ、ここに』(ながらみ書房)
・退会者のリストにありし君の名はしづかに強き意志を示せり
・地下鉄で歌集開きて眠り込む歌は晒され解き放たるる
・浴槽の水が大きく揺れてゐるすでにあがりし肉体はなく
・いめのなか巨大な蝸牛(くわぎう)が大路をすすむ都市のものみな粘液で光る
・真夜中に聞こゆるいびき歯ぎしりなど白山の夜はすべてを包む

中川佐和子歌集『花桃の木だから』(角川書店)
・向かい席七人がみなうたた寝の七つの頭の中なる宇宙
・ひとところ菜の花の黄のはげしさよ蘇我入鹿の首塚あたり
・藤棚の下にも風の抜くるらし薄き陽射しに花揺れ出して
・草を刈る機械の音とあぶらぜみ啼くが聞こえる競うがごとく
・向こうから埴輪のような口の女(ひと)あくびとわかるまでに近づく
・如月の沖に出てゆき波を待つサーファーの時間それもまたいい
・妻ならぬ声の流れて風呂の栓したのかどうか夫は見にゆく
・教会のロードを夫がぎこちなく団塊世代の貌をしてゆく
・北国の蔦這う倉庫その上の白き満月のぼりつづけよ
・全身を的にしながらフェンシング美しすぎる闘いをする

大室ゆらぎ歌集『夏野』(青磁社)
・犬を連れてゐるゆゑ少しもあやしまれずにこころゆくまで岸にたたずむ
・かなむぐらががいもひるがほ蔓草をたぐれば出づる根の国の声
・これほどにおたまじやくしがゐるからはその四倍は出づる手と足
・水流はふた分かれする蕗の葉の青く茂つてゐるところから
・谷風にわれとわが額吹かれたり供物のやうに猫をかかへて
・磨滅した小さな墓にもひとつひとつ矢車草が供へてありぬ
・浮御堂さかさに映す春の水「波の底にも都はありや」
・ひとつひとつが米粒となる稲の花、古墳に沿うて小道は曲がる
・きのふから雀の死骸がある茂み、嗅がないやうに犬を引き寄す
・落ち蟬に触れてするどき羽ばたきよ死ぬ間際まで生きてゐる蟬

石井絹枝歌集『相寄る家族』(青磁社)
・わがバスと同じ速さに走り来る月かと右の窓越しに見る
・縁者とは有り難きかな故郷の廃屋のめぐり草引かれおり
・店主店員合わせて二人のわが店を主張を掲げ労働歌過ぐ
・置物かいや本物と指す亀がズブリと沈む寺の蓮池
・父と来て耕し母と桑摘みし畑はここらか山に分け入る
・船団と埠頭をつなぐ紙テープ大漁帰港を期して伸び行く
・ゆっくりと手足寛ぐ浴場に近く響きて救急車過ぐ

五十嵐順子歌集『奇跡の木』(ながらみ書房)
・イチローが元気にビールを飲んでいる看板見ながら快速を待つ
・幼子と遊ぶついでに乗ってみるぶらんこ空を少し近づけ
・県庁前駐車場横に積まれたる冬の残滓のような残雪
・円空の長き一人の旅をおもう展示会場混みあう中に
・身体の不調しばらく聞きくれし医師が昼寝をせよと言いたり
・おれの杭と言わんばかりに一本を占めたる川鵜が杭ごとにいる
・道路工事の現場に一人女性いて車誘導の声のはなやぐ

浜田昭則歌集『暗黒物質(ダークマター)』(青磁社)
・柏手をうてば昭和がこだまするターザンごつこしたる杜より(*「こだま」に傍点)
・酔ひて乗る御堂筋線ものいはぬケータイ猿にかこまれながら
・このあたり酸性ならむあぢさゐの薄きみどりの青いろとなる
・アメリカの暮れのニュースに幼子が銃もてあそび母親を撃つ
・先生が逝かれて二十六年目 オンザロックに浮かれてゐます

小久保晴行歌集『北回帰線』(現代短歌社)
・建国の集まりのあり久しぶり白髪ばかり後ろから見る
・誕生日祝いのメール数多く馬齢を重ねてひとごとのよう
・緑陰に木漏れ日浴びてこともなく片手にビール読書する午後
・縄文の文化の興亡読みゆきて面白きあまり朝をむかえる
・入院の友を見舞いて手を握る骸骨のごとき固き触覚

井上久美子歌集『マザーリーフ』(本阿弥書店)
・冬晴れの住宅展示場の空そろり飛び立つあかい風船
・注文書渡して春待つ身となればランラン、ランドセル子が高らかに
・水音をたてて金魚は寄ってくるマンママンマのマの形して
・朝練のブラスバンド部校庭へロングトーンをひびかせており
・八歳はわれには聞かず〈ニュース7〉体育すわりで見入ってしまう

遠藤由季歌集『鳥語の文法』(短歌研究社)
・おにぎりとペヤングソース焼きそばの昼食ののち読書する社長
・常磐線日暮里経由で帰る夜かつての最寄り駅を見おろす
・指と指触れて生れたる静電気ふゆぞらをゆく蝶となりにき
・タッチ・アンド・ゴー次々と人間が改札機より旅立ちゆけり
・低き山どの窓からも遠く見え車両短き奈良線はゆく



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