セルフ・リサーチ (1)

 
 授業の主旨を伝え、簡単なゲームで名前を覚えながら、リラックスする。

1.ファイルを配布する。
2.「はじめに」を読んで授業の方向を説明する。
3.ジャンケン・ネームをする。
 ・ジャンケンをして、勝てば相手のフルネームを書いてもらう。
 ・7つ名前の揃った人から好きな場所にすわる。
 ・立っている人としかジャンケンできない。
 ・同じ人から名前をもらうことはできない。
  ★実は、ここには仕掛けがある。一度ジャンケンに負けた人でまだ立っている人と再度ジャンケンすれば名前がもらえる。さらに先読みのできる人は、勝つまでその人とジャンケンしていけば、7人の人とのジャンケンで7つ埋まることになる。
 ・残った人は数の多い人から座ることができる。同点の場合はジャンケンで決める。

 自分は自分のことをどれぐらい知っているか。人は自分のことをどれだけ知っているか。自他ともに知っている部分、自分だけが知っている部分、人の方が気づいている部分、自分も人も知らない部分がある。そんな不思議な自分について考える。

4.「ジョハリの窓」を配布する。
5.4つのジョハリの窓を書かせる。
6.ジョハリの窓を板書して説明する。
 ・アメリカの心理学者のジョセフ・ルフトとハリー・イングラムが考えました。

 セルフ・エスティーム、自尊感情について学習する。
 自己形成するには、まず自分自身を好きにならなければならない。「セルフ・エスティーム」はワークが進行するに連れて、どれだけ自己肯定感が高くなっているかのエビデンスを取るためのチェックリストとして使う。そのため、同じ質問に対して回答欄が6つあり、6回計測できる。
 質問項目は、1〜10が自己のあり方について、11〜20が対人関係についてである。それぞれ半分ずつ逆項目が含まれている。評定は3〜0の4段階で、真ん中はなしにした。
 それぞれの集計を座標に取ることによって、交流分析の4つの構えのどの位置にあるかを見れる仕組みになっている。「基本的な構え」は、セルフ・エスティームと4つの構えについて理解するためのシートになっている。

7.「セルフ・エスティーム」を配布する。(資料は一部)
8.質問に回答する。
9.集計する。逆項目は引き算をする。
10.グラフに座標を取る。
11.「基本的な構え」を配布する。
12.セルフ・エスティームの定義を説明する。
 「セルフエスティームとは、自尊感情、いいところも悪いところも丸ごとひっくるめた「ありのままの自分」を好きに、大切に思える感情です。この感情は、自分だけではなく、相手も好き  だという感情に広がります。」
13.基本的な構えについて、板書して空欄に記入する。
 1)私はOKで、あなたもOKである(自己肯定・他者肯定)
 精神的に健康な状態です。自分を信じ、相手を信頼して、相手と協力的にやっていくことができます。良い面も悪い面も、好きな面も嫌いな面も、すべて自分なのだと引き受ける状態です。その上で、よりよく生きていこうとします。自分が安定しているから、他人も受け入れることができます。本当の意味でセルフエスティームが高い状態といえます。
 2) 私はOKだけど、あなたはOKでない(自己肯定・他者否定)
 自信過剰で、自分だけが正しいと強く信じています。自分は犠牲にされていて、それは人のせいだと非難します。相手を傷つけたり、排除してしまいたいという衝動にかられます。一見セルフエスティームは高そうに見えるけれども、他者を尊重しない歪んだ状態です。
 3)私はOKでないが、あなたはOKである(自己否定・他者肯定)
 すぐに他人と比べてしまい、自分はダメだと劣等感を持ちやすくなります。問題から逃げようとし、逃げられなくなると、他人に依存的になり、絶えず人から承認を求めます。セルフエスティームのかなり低い状態です。
 4)私もOKでないし、あなたもOKでない(自己否定・他者否定)
 自分も他人も信じられなく、生きていく希望を失いがちです。自暴自棄になり、自分や他人を傷つけたり、引きこもったりします。セルフエスティームの最も低い状態です。
14.セルフ・エスティームの感想を書く。


生徒の感想
 
1)私は心理学に興味があり、進路もそっちの方向を考えているので、知っているようで知らない自分の内面を探求することはとても興味深くおもしろそうだなと思いました。席替えをジャンケンゲームでしたり、テストがないなど、他の科目とは違って心から楽しん授業を受けることができそうです。▼2)ジャンケンが弱すぎて半泣きやった。自分のこととか、いまいちピンと来なかった。でもおもしろくなりそうやなと思った▼3)結構実習が多いみたいなので楽しそうだなと思った。でももうちょっと受験に役立ちそうなものもやりたいなと思った。▼4)何か今まで自分のことが少し見えてきた気がします。これからももっと自分のことを発見したいと思った。結構自分を知らないことが多かった。▼5)ジャンケンの席替えが楽しかった。ああいう授業が多いとこれからすごく楽しみです。これからもより国語力を身につけていきたいと思いました。▼6)最初の席決めジャンケンでは不運にも負けまくってしまいましたが、逆に周りの人に幸せを与えられたかなと思います。セルフリサーチでは今まで考えていた自分とはまた違う自分の一面が見れておもしろかったです。▼7)これからやってく内容がわかった。ジョハリの窓をやってみて国語表現を通して新しい自分を発見することができたらいいなと思った。▼8)心理テストみたいで楽しかった。これからやっていく中で良い方向に進めばいいなと思います。じゃんけん1回しか負けませんでした。自分でもびっくりです。▼9)今日は何をしているのかよく理解できなかったのですが、とても興味深く楽しく授業を受けられました。ジョハリの窓は自分が思っていたより隠れている窓が多くて驚きました。気づいていない窓と誰も知らない窓が意外に小さいのにも驚きました。セルフエスティームは基本的信頼感・無気力・絶望と感じたり、考えたりしているという結果が出て、実際の自分てそうなのかなぁと疑問に思いました。これらの結果は時期によって変わったりするのかも知れないと思いました。今日はこんな感じでしたが、また次回からの授業が楽しみです。▼10)どんな授業やろうと思ってたけれど、心理学みたいで楽しかったです。これから楽しみです。▼11)今日はクラスのほとんどの人ジャンケンをしてコミュニケーションがとれた。自分のことを見つめる機会に少しなった気がします。▼12)意外と楽しかった。ちょっと心理的でびっくりしました。

10
理解ができたか
興味が持てたか
役に立ちそうか

教師の感想
 
 どんな授業でも最初の時間は緊張します。特にグループワークは最初が肝心なのだが、動きのあるアイスブレイキングから入る場合、失敗すると後々大きな禍根を残すことになる。かといって、動きのない説明から入ると、今後の盛り上がりが懸念される。従って、成功する確率の高いアイスブレイキングを選ぶ必要がある。それが、ジャンケン・ネームであった。勝ったものから好きな席を選べるというのも魅力的だっただろう。このあたりは、慎重に考えても考えすぎるということはない。この企画は当たりました。みんな必死でジャンケンしていまた。
 いきなり生徒の内面をえぐる心理教育。結果的には成功でしたが、大きな冒険であった。これで傷つく生徒が出ると後々このジャンルを扱いづらくなる。生徒はこの授業が、言葉と心理の二本立てであるということを認識してくれたようである。
 次回以降に期待してくれる感想は、御祝儀的な側面を割り引いても、そこそこいい感じであった。ただ、次回はセルフリサーチはお休みして、言葉について考えようと思う。一気に深入りするのは避けた方がよいだろう。              



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