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母子家庭でありながら英才教育を受けて大きくなった豊太郎が、ドイツに留学して、自我に目覚め、反抗をしているうちに免官の危機に陥る。そんな時に出会ったエリスと深い仲になり、貧しいながらも楽しい刹那的な生活をしているが、エリスが妊娠して豊太郎は慌てる。そんな時に、友人の相沢が大臣を紹介してくれる。優柔不断は豊太郎は相沢にはエリスと別れると約束しながら再びエリートへの道が開けた自分の立場に気がついていない。そして、大臣に付いて日本に返ることを約束した豊太郎は、そのことをエリスに説明できずに病に倒れる。その間に相沢が処理をしてくれて、エリスは発狂するが、豊太郎は日本に返ることになる。豊太郎には一点の相沢を憎む心があって、帰途の船中で日記の筆が進まない。 第一段 第二段 第三段 第四段 第五段 第六段 第七段 第八段 第九段 第十段 まとめ |
1.「恋愛か仕事か」を読ませ、選択して理由を書かせる。 2.「恋愛か仕事か」が「舞姫」の前半のあらすじであることを説明する。 第一段 1.教師が原文で最初の部分を音読し、擬古文であることを説明する。 2.原文を読まずに、口語訳をしていく。 3.舞姫チェックであらすじを確認する。 4.日記が書けない理由を質問する。(板書0) a)ニルアドミラリー(無感動) b)自分自身が信用できない c)人知れぬ恨み ●ニルアドミラリー(無感動)」や、「我と我が心さえ変はりやすきをも悟り得たり」とあるが、いずれも否定 している。しかし、これらも理由の一端に放っている。 ●本当の理由は、人知れぬ恨みである。これについて、自分の半生を振り返ることが「舞姫」 のテーマ、動機になっている。 5.あらすじをまとめさせる。(提出) ・五年前、洋行の官命を受けた帰りの船の中で、人知らぬ恨みのために日記が書けない。その概略を文に綴ろうとしている。 第二段 1.明治二〇年前後の社会状況の説明。 ・国家の目標としては欧米に追いつくために「富国強兵」、個人としては「立身出世」を目指した。 2.「余は幼き〜都に来ぬ」の舞姫チェックをする。 3.「豊太郎の生い立ち」を説明する。(板書1) @一人っ子で、幼い頃から厳しい家庭教育を受けた。 ・幼い頃から家の期待を一身に担って育った。 ・現代人顔負けの幼児教育。 A父を早くに失う。 ・母子家庭。 ・家父長制度の強い当時は現在以上に厳しい環境。 B学校ではいつも首席を通す。 ・旧藩の学館ということは士族の子ども。 ・父親の遺志を継いで、父親や太田家の名誉ために母親が自分のすべてを犠牲にして育てた。 ・豊太郎も期待を裏切らないよう従順な性格で努力した。 C十九才で東大法学部を卒業する。 ・普通は二十四才位で卒業。 ・日本の最高学府である東京大学を最年少で首席で卒業するのであるから、日本一優秀な青年であった。超エリートである。 D某省に出仕する。 ・当時の憧れの職業である上級国家公務員。 ・日本を動かせる。 E三年間、母と楽しい生活を送る。 ・母への恩返し。 ・親孝行と見るか、マザコンと見るか。 F官長の評判がよく、ドイツ留学の命令を受ける。 ・官費留学生は最高の名誉。 a)我が名を揚げ、我が家を興す。 ・立身出世。 b)五十を越えた母と別れる。 ・当時の女性の平均寿命は四十四才。 4.このような豊太郎をどう思うか、書かせる。(提出) ・現在の子どものように幼児期から英才教育を受け、エリートコースを進んでいることをどう思うか。 ・母親との関係についてどう思うか。 5.「余は模糊〜行きて聴きつ」の舞姫チェックをする。 6.「留学直後の様子」をまとめる。(板書2) @あいまいな功名の念と自己規制に慣れた勉強力。 ・自分でも功名心の目的がわからない。 ・自発的にする勉強ではない。 A美観に心を動かされない。 B大学で政治や法律の勉強をする。 ・国家を動かすための学問。 7.あらすじをまとめさせる。(提出) ・幼い頃から母親に育てられ、超エリートとして成長し、自分と家の名誉のために洋行し、仕事も着実にこなしていく。 |
第三段 1.「かくて三年〜薯を噛む境に入りぬ。」の舞姫チェック(1〜7)をさせる。 2.「豊太郎の変化」について考える。(板書3) @「それまでの豊太郎」についてまとめる。 ・所動的、器械的の人物。 ・母→生きた辞書 ・官長→生きた法律 ↓ ・母や官長の操り人形であったことに気づく。 (父や母の期待、周囲の人々の称賛、官長に認められるなど、人からの評価ばかりを気にして生きていた。) A大学の自由な雰囲気に触れて自我に目覚める。 (日本の大学と西洋の大学では雰囲気が違う。) (現在でも日本の大学のランクは低い。) B「その後の豊太郎」をまとめる。 ・官長に自分の意見を主張する。 ・大学で歴史や文学を学ぶ。 (当時の二十五才という年齢は、現在の三十五才位に当たる。) (働き盛りである。) 3.「官長はもと、〜媒なりける。」の舞姫チェック(8〜12)をさせる。 4.「地位が危うくなる」理由をまとめる。(板書4) ・官長の評判が悪くなる。 (官長は自分の思う通りに動く有能な部下が必要なのであって、いくら有能でも自分の意見を主張する人物は有害である。これは今の官僚についても言える。) (国費留学生である豊太郎に反抗する権利はない。) ・留学生仲間との付き合いが悪く、中傷される。 ↑ ・臆病な心=本性 (一度快楽を覚えるとのめりこみそうなので、我慢して避けていた) ↑ ・早くに父を亡くして、母の手で育てられたから。 (母に対する疑問が生じる) 5.あらすじをまとめる。 ・三年後、自我に目覚め、官長に逆らったりして地位が危うくなる。また、自分の臆病な性格から留学生仲間ともうまく付き合えない。(60字) 第四段 1.「ある日の夕暮れ〜我がそばを飛びのきつ。」を舞姫チェックする。(1〜10) 2.豊太郎の歩いた道を記述と地図で確かめる。 ・動物園→ウンテルデンリデン通り→クロステル通り→クロステル教会 (下宿のあるモンデシュー街から離れるので矛盾がある。) 3.「ある日の夕方、エリスと出会う」についてまとめる。(板書5) @エリスの様子 ・年は十六、七才。(みんなと同じぐらいの年) ・たいへん美しい。(もしエリスが美しくなければ声をかけたか。) ・清くもの問いたげな憂いを含んだ目。(目の表現に注意する) ・父を亡くし、葬式の金もないので、教会の前で泣いていた。(教会で金を工面しようとしたが、夕方で閉まっていた。) A豊太郎の対応 ・憐憫の情が臆病な心に打ち勝って、声をかけた。 問1★臆病な豊太郎か憐れみだけで声をかけるか? ・泣いている事情は後から聞いたことであり同情するのはおかしい。 ・エリスの美しさ、特に憂いを含んだ目に引きつけられた。 ・自我に目覚めで自由になっており、また、当時の地位が危うく不安定な精神状態であった。 ・自分と同じく父を亡くした境遇に同情した。 4.「人の見るがいとはしさに〜背にそそぎつ」の舞姫チェックをする。(11〜19) 問2 エリスは母に何を話したのか? ・母親の対応が一変するような内容であるから、金銭に関したことである。 ・エリスは豊太郎が金銭的に援助してくれるという内容を話したのではないか。 ・エリスが家の近所の教会の前で泣いていたのも不自然である。 ・詮索すると、エリスは金を貸してくれるカモを探していたのではないか。 5.エリスの窮地を救ってやる。(板書6) 問3 豊太郎が金を貸してやろうという気になった理由は?(板書6) ・エリスに嘆願されたのではあるが、人に否と言わせぬ媚態があったからである。 問4☆豊太郎が自分の名前と住所を告げた理由は? ・大事な時計だったから質受けしたかったから。 ・エリスとの交際を密かに望んでいたから。 6.あらすじをまとめる。 ・ある日の夕暮れ、エリスに出会い、父の葬式の費用を貸してやる。(30字) 第五段 1.「ああ、なんらの悪因〜運びを妨ぐればなり。」の舞姫チェック(1〜5)をする。 2.エリスとの交際が始まる。(板書7) (「悪因」といっている。) (エリスとの交際が原因になって人生を誤ったと後悔している。) (しかし、もっと深いところに原因があるが、責任転嫁をしている。) 3.官長や留学生仲間の中傷で免官になる。(板書8) a)すぐに帰国→旅費は出す。 b)ドイツに残留→援助を断ち切る。 (今まで営々として築いてきた栄光がはっきりとした形で崩れた。) 4.母の死を知らせる手紙を受け取る。(板書9) 問1★母の手紙の内容は? ・官長に逆らわず、出世をして、早く日本に帰ってきてほしい。 (母は、自我に目覚めたことよりも、出世して、太田家を再興してほしいことが最大の願いである。) 問2★豊太郎に与えた影響は? ・母の願いをかなえるために出世をしなければならない。 ・日本に帰らなければならない条件がなくなる。 (しかし、すでに免官になっているので、出世の見込みはない。) (母が死んでしまったのだから、直ぐに帰国する必要はない。) 5.「余とエリスとの交際は〜手だてなし。」の舞姫チェック(6〜15)をする。 6.エリスと離れ難い仲になる。(板書10) 問3★人生の別れ道であるのに、その理由は? ・将来の展望や母を失い、精神的に不安定である。 ・美しいエリスが同情してくれる。 ・現実から逃避しようとしている。 7.運命の日が迫る。(板書11) a)すぐに帰国→学問が完成せず出世の見込みがない。 b)ドイツに残留→学資を得る手段がない。 問4☆豊太郎にとって最大の問題は何か?(板書11) ・豊太郎にとって最大の問題は、エリスとの仲ではなく、学問である。 8.「この時余を助けしは〜読まぬがあるに。」を読まずに、舞姫チェックはすべて正解であることを伝え、板書だけでまとめる。 9.相沢とエリスに窮地を救われる。(板書12) ・相沢は、通信員の職を世話してくれる。 ・エリスは、同居できるように世話してくれる。 10.つらい中にも楽しい月日を送る。(板書13) ・貧しく、将来の展望はなく、学問が衰えた。 (「我が学問は荒みぬ」と二回書いていることに注目する。) ・エリスと二人で愛の生活ができる。 11.あらすじをまとめる。 ・エリスとの交際がきっかけになって免官になり、母の死を伝える手紙を受け取る。帰国が残留かを迫られる中で、エリスと離れ難い仲になる。相沢とエリスに経済的な窮地を救われ、つらい中にも楽しい生活を送る。(97字) |
第六段 1.「明治二十一年の冬〜車を見送りぬ。」の舞姫チェックをする。 2.「明治二十一年の冬」と時を明記した理由を説明する。 ・緊張感と新たな展開を感じさせる。 ・時代を明記して現実味を帯びさせる。 3.エリスが妊娠する。(板書14) 問1★「もし誠なりせば、いかにせまし」と思った理由は?(板書14) ・子どもができるとは思ってもいなかった。(性に対する無知。) ・二人だけの楽しい生活が出来なくなる。 ・初めて現実の不安定な生活に気づき、将来に不安を感じる。 (自分の収入も不安定でエリスも働けなくなれば、出産費や育児費だけでなく、生活費にも困ることになる。) (学問がますますできなくなる。) 4.相沢からの手紙を受け取る。(板書14) ・名誉を回復するために大臣に会いに来い。 問2 豊太郎が茫然とした理由は?(板書14) ・豊太郎は、相沢の突然の出現に驚いたから。 問3 なぜ豊太郎の住所が分かったのか? ・ベルリンに来る前に周到に調べておいた。 ・相沢の性格として何事にも調査をして確実に実行する。 5.相沢に会いに行く。(板書15) 問4★エリスが「出世しても捨てないでほしい。たとえ妊娠していなくても」と言った気持ちは?(板書15) ・エリスは女の直観で豊太郎が自分を見捨てて遠い存在になることを予感している。 (もし、妊娠してなくても捨てないで欲しい。まして、妊娠しているなら捨てるはずがない。) ・エリスは子どもが出来れば豊太郎に捨てられることはないと信じている。 問5☆豊太郎の気持ちは?(豊太郎の言葉を信じるかどうか)(板書15) ・大臣に会って出世を考えたのでなく、ただ親友の相沢に会いたかったからである。 6.あらすじをまとめる。 ・明治二十一年の冬、エリスが妊娠し、豊太郎は将来に不安を感じる。そんな時に相沢がベルリンに来て大臣に会って名誉を回復するようにという手紙を受け取り、豊太郎は相沢に会う ために出かける。 (90字) 第七段 1.「余が車を降りしは〜寒さを覚えき。」の舞姫チェックをする。 2.豊太郎が相沢に会うまでの様子を説明する。 ・クビになるまでよく通ったカイゼルホオフホテルに久しぶりに訪れた。 ・相沢に会うのを一瞬ためらった理由は、かつては自分の方が優秀な成績で出世していたのに今は逆転している、そんな自分を責めるのではないかと思ったからである。 ・相沢の性格は、快活で、貫祿も出てきている。 ・別後の情を述べるまもなく用件に移るところは、情に流されず仕事ができる男である。 3.大臣がドイツ語の翻訳を依頼する。(板書16) 4.相沢が忠告する。(板書17) @豊太郎の臆病な性格を見抜いている。 A大臣に語学の才能を示して信用を得ること。 問1★大臣の信用をえるように忠告した理由は?(板書17) ・親友に再び出世して幸福になってほしいという純粋な友情。 (出世だけが幸せだという当時の価値観を代表している。) (母に代わって、現実的に出世をサポートする人物として登場。) ・大臣に優秀な人物を紹介して自分の評価を上げる。 ・大臣が豊太郎の免官の理由を知っているので、無理に推薦して自分の立場が不利にならない配慮も忘れていない。 Bエリスと別れること。 問2★エリスと別れる理由は?(板書17) ・身分が違うから。 (当時は、身分や家柄が結婚の大きな条件であった。) ・優柔な性格を変えさせ、仕事に専念させるため。 (しかし、当時は、現地妻や愛人は許容されていた。) (遊びならいいが、本気だと仕事に支障が出てくる。特に、豊太郎は本気になりやすいのでまずいと思った。) 5.相沢にエリスと別れることを約束する。(板書18) @豊太郎の気持ち ・大洋=ヨーロッパ ・舵を失ひし舟人=豊太郎 ・はるかな山=大臣の信用を得ること。出世 ・相沢の示した出世の道は遙か遠く、実現の可能性もわからない。 ・エリスとの生活は貧しいが楽しいし、エリスの愛は捨てがたい。 A約束した理由 ・はっきりと決断したのではなく、親友の意見には逆らえないから。 ・優柔不断な性格。主体性の欠如。 Bその後の気持ち ・約束したことを後悔している。 問3 豊太郎の心に感じた寒さは? ・気温だけでなく、エリスを裏切った心の寒さ。 6.あらすじをまとめる。 ・大臣から翻訳の仕事を依頼される。相沢からは、語学の才能を大臣に示して信用をえることと、エリスと別れることを忠告され、友人に対して断りきれず約束してしまう。(76字) |
第八段 1.「翻訳は一夜に〜多くは余なりき」の舞姫チェックをする。 2.ロシア行きを承諾する。(板書19) ・信頼している人の依頼を断れない。 (相沢に約束した時と同じ、優柔不断な性格。) 問1☆「答への範囲」とは何か? ・大臣の信用を得つつある。 ・エリスとしばらく別れなければならない。 ・エリスと豊太郎を信じて送り出す。 3.「この間、余はエリスを〜天方伯の手中にあり。」の舞姫チェックをする。 問2 「余はエリスを忘れざりき」と「え忘れざりき」の違いは? ・「余はエリスを忘れざりき」は、自分の意志でエリスへの愛情で忘れなかった。 ・「え忘れざりき」は、豊太郎の意志でなく、エリスの手紙で忘れることができなかった。 4.エリスの手紙で自分の地位に気づく。(板書20) 問3☆エリスの手紙のどの部分から何に気づいたか? ・「大臣の君に重く用ゐられたまはば、我が路用の金はともかくもなりなむ」 ・大臣の信用を得て、日本に帰れる可能性が出てきた。 (豊太郎は自分の地位に気づいていなかった。) 問4☆大臣の信用を得た理由は? ・豊太郎の語学の才能が認められたから。 ・相沢が大臣に豊太郎がエリスと別れると約束したことを伝えたから。 ・自我の目覚めが偽物であった。 ・大臣の操り人形になっていた。 ・帰国(出世)を取るか、エリスとの愛をとるかに悩み始める。 5.「余が大臣の一行とともに〜涙満ちたり。」の舞姫チェックをする。 6.ベルリンでエリスと再会する。(板書21) ・帰国や出世の気持ちより、エリスとの愛が強くなる。 (当事者に左右され優柔不断である。) 問5 エリスの気持ちは? ・豊太郎の子どもを産むことができる喜びに浸っている。 ・子どもが産まれるのだから、まさか捨てたりしないだろうと念を押す。 (子どもを楯に豊太郎の愛情をつなぎ止めようとしている。) 問6★豊太郎の気持ちは? ・返事をしない。 ・エリスへの愛情は強いが、エリスの愛を負担に感じている。 7.あらすじをまとめる。 ・信頼する大臣の依頼を断りきれず、ロシアに同行する。エリスの手紙で再び出世の可能性があることに気づき、心が動く。ベルリンでエリスと再会してまたエリスへの愛情が強くなる。(83字) 第九段 1.「二、三日の間は大臣をも〜そのまま地に倒れぬ。」の舞姫チェックをする。 2.大臣から帰国を勧められ、承知する。(板書22) ・豊太郎の語学の才能を認めた。 ・豊太郎がエリスと別れたと相沢から報告を受けていた。 問1☆承知した理由は? ・相沢の言葉を嘘だと言えない。 ・この機会を逃せば、帰国することも、出世することもできない。 (相沢との約束、ロシア同行とは違い、確信的な返答である。) 3.エリスを裏切った罪悪感に苦しむ。(板書23) 問2★豊太郎の悩みは? ・自分を信用しているエリスに、帰国することをどのように説明すればいいのか。 ・正直に話す→エリスがどのような反応をするか恐ろしい。勇気がない。 ・黙って帰国する→良心が許さない。 ・ドイツに残留する→帰国や出世の道は二度と閉ざされる。 4.帰宅と同時に倒れる。(板書24) 問3★どんな意味があるのか? ・エリスに帰国を説明しなくていい。 (自分の手を汚さずに、何とかなるかもしれない。) (無意識の内に期待していた。) 5.あらすじをまとめる。 ・大臣の帰国を勧めを承知し、エリスへの罪悪感から病気になって倒れる。(33字) 第十段 1.「人事を知るほどに〜おわり」の舞姫チェックをする。 問1 「余が彼に隠したる顛末」とは? ・エリスと別れていなかったこと。 ・エリスが妊娠までしていたこと。 2.相沢がエリスに真実を知らせる。(板書25) 問2 「余が相沢に与へし約束」とは? ・エリスと別れるという約束 問3 「かの夕べ大臣に聞こえ上げし一諾」とは? ・大臣と一緒に帰国すること。 問4★相沢がエリスに真実を話した理由は? ・エリスが豊太郎を諦め、豊太郎が帰国する方がよいと判断した。 ・豊太郎の弱い性格から、エリスには話せないと思い、憎まれ役を買って出た。 ・豊太郎がエリスを諦めなければ、大臣の自分への信用が落ちる。 ・豊太郎への友情と保身。 3.エリスが発狂する。(板書26) 問5★豊太郎にとっての意味は? ・豊太郎はエリスに謝罪する責任を回避できた。 ・最後までエリスを愛していたという思い出を残せる。 ・生ける屍となったエリスだからこそ、安心して抱ける。 問6★エリスにとっての意味は? ・エリスの愛が立身出世に敗れた。 ・豊太郎との愛の思い出の中に生きることができる。 4.エリスを残して帰国する。(板書27) ・相沢を憎む心が今日まで残っている。=人知らぬ恨み 問7★豊太郎が相沢を憎んでいる理由は? ・エリスを発狂させたから。 ・しかし、相沢が言わなければ、いずれ豊太郎が言わなければならなかった。相沢に自分の責任を転嫁している。 ・自分の中にある相沢的なもの(立身出世)を恨んでいる。 問8★これ以外の結末は考えられるか。 5.あらすじをまとめる。 ・相沢がエリスに真実を伝え,エリスが発狂する。豊太郎はエリスを残して帰国するが、相沢を憎む心が今日までも残っている。(56字) |
1.プリントを配布する。『森鴎外の系族』を音読する。 2.『舞姫』との違いについて整理する。 1)『森鴎外の系族』を音読し、『舞姫』との違いを質問する。 ・エリスが実在し、発狂せず、来日した。 ・エリスとの関係は、それほど親しくなく、「普通の関係の女」「路頭の花」である。 ・母が死なずに、森家を切り回している。 2)鴎外のプロフィールを説明する。
1)『舞姫』で、なぜ、母を殺し、エリスを妊娠させ、発狂させ、捨てたように書いたのか。 2)鴎外のプロフィールを説明する。
3)執筆までの事実関係を確認する。 ・エリス帰国の翌月に婚約している。婚約が決まっていて、エリスの存在が邪魔だったので慌てて追い返した。 ・結婚の翌年に『舞姫』を発表する。 ・八ヵ月後、長男が誕生したにもかかわらず離婚する。 4)『舞姫』の疑問について考える。 @なぜ、母が死んだことにしたのか。 ・母が死ねば、すぐに帰国しなければならない条件が弱まり、葛藤が少なくなる。 ・出世が豊太郎の心に刻みつけられる。 ・自殺だとすれば、出世に執着する母への当てつけになる。 Aなぜ、エリスが妊娠したことにしたのか。 ・帰国を妨げる要因を大きくする。 ・登志子と別れる口実にする。 ・子供ができても離婚することを暗示する。 Bなぜ、エリスが発狂したことにしたのか。 ・帰国しやすくする。 ・自分がそれほど酷い人間であるように表現する。 Cなぜ、豊太郎は相沢を憎んでいるのか。 ・豊太郎が倒れなかったら、自分で真実を伝えなければならない。 ・相沢が大臣を紹介しなくても、妊娠によって二人の関係は崩れていったはず。 ・豊太郎の中にも出世の未練はあったはず。 ・だから、相沢個人を憎んでいるのではない。 ・自分の中にある相沢的なものに対する恨み。 ・相沢に代表される当時の社会への恨み。 5)『舞姫』執筆の動機について、評論家の意見を読む。 @長谷川説(エリスとは軽い気持ち) A渋川説(陸軍内部の批判を抑える。エリス事件が陸軍省に知れ渡り、鴎外の立場が苦しくなるのを心配した賀古が山県に事情を打ち明けて、その了解を得たことを知らせるために書いた。) B平野説(家族エゴへの反逆) C稲垣説(国家官僚機構に対する反抗) 4.「舞姫悪者探し」をする。 |
エリスが妊娠するまでの部分を人生相談風にまとめたものを読ませ、あなたならどうしますか? と問いかけます。動機付けとしては最適の教材です。 ★舞姫チェック 各段落のはじめに配布して、あらすじをとらせます。現代語訳ができなくてもできます。擬古文とはいえたった100年ほど前に書かれたものですから。 ★まんが 各段落の終わりに配布して、あらすじを確認させます。東京の女子高生の久保美紀さんの作品です。小学館の「国語フォーラム」に掲載されていましたが、何年の何月号かわかりません。絵は拙いですが、原作に忠実で、あらすじを確認するのには最適です。裏面に別冊宝島31「珍国語」の「ハーレクインロマンス風 舞姫」を印刷してパロディの面白さも味わってもらいます。 ★映画 ご存じ郷ひろみ主演の『舞姫』です。郷が登場した瞬間から歓声があがり、タイトルの直前にエリスが登場するやいなや爆笑がおこります(エリスのイメージが壊れてしまうようですね)。反国家分子の部分はカットして50分に編集します。抱擁シーンからオペラが流れる部分では決まってプーイングがおこります。 ★舞姫の真実 エリスが実在していたことに気づかせる衝撃のプリントです。 ★舞姫悪者探し 豊太郎・相沢・エリス・大臣・豊太郎の母、さて、これらを悪者順に並べてください。生徒の価値観がよくわかります。ここで明治という時代について考えることもできます。 |
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