舞姫悪者探し 

ねらい 

1) 自分の価値基準で考える。 
2) 自分の意見を主張し説得する。 
3) グループで意見を集約し、発表し、討論する。 
 
第1時  
 
1.『舞姫』の登場人物、豊太郎・エリス・相沢・大臣・豊太郎の母の中で、このような悲惨な結末に至った責任が最も重いと思う順位を付け、その理由を書いてください。 
2.グループ分けをします。 
 

第2時 

3.グループで、司会者・記録者・発表者・討論者を決めてください。決め方は、話し合いが望ましいですが、愚かなグループはジャンケンに頼りがちです。 
4.グループで1回目の話し合いをします。まず、司会者が司会をし、自分がつけた順位と理由を発表し合ってください。 
5.次に、司会者が司会をし、記録者がメモをとり、グループで話し合い、グループでの順位と理由を決めてください。司会者の仕切り方がグループの勝敗を左右します。 
6.記録者は、「発表用紙」にグループの順位と理由を記入して提出してください。記録者のまとめ方がグループの勝敗を左右します。 
 

第3時 

7.「発表用紙」のまとめを配布し、発表者がグループでの順番と理由を発表してください。発表者はプリントを棒読みするのでなく、グループの意見が伝わるように工夫してください。 
8.他のグループの発表を聞いて、2回目の話し合いをします。次の時間の討論で他のグループを論破できるように作戦を考えてください。 
 
第4時 

9.討論者が自分のグループの意見をもとに、討論してください。 
10.討論の後、1人2票で挙手します。もちろん、1回は自分のグループに挙げてもよろしい。 
11.討論を振り返り、自分の役割を反省し、感想を書いてください。 
 


『舞姫』悪者探し(のぶさんの模範解答)

 
                                     偏屈王
 そもそも森鴎外が『舞姫』を執筆した動機は、当時の立身出世を至上主義とする血も涙もない社会に対する、身を挺しての抗議であると考える。とすれば、そういう社会の象徴として存在する「大臣」が最も悪いことになる。 
 そして、「大臣」の対極にある「エリス」が5位になる。あとの3人は、「大臣」とエリスを座標軸とする物語のなかで揺れ動くピエロたちである。 
 3人の中で、もっとも滑稽なピエロ役に徹しているのは「豊太郎」である。「豊太郎」は「大臣」と「エリス」の間で右往左往する主体性のない優柔不断な男として当然非難されるべきである。しかし、「豊太郎」は鴎外の分身であり、己の恥を誇張して曝してまで社会に抗議しているのであるから4位である。 
 では、「母」と「相沢」のどちらがより悪いのか。これは現代社会と重ねてみれば理解しやすいだろう。現在もなお明治時代同様、教育制度としては東京大学を頂点とする、社会制度としては高級官僚や一流企業を頂点とする社会構造であることにはかわりない。 「母」は0歳児教育から始まり有名幼稚園・小学校・中高一貫教育の有名私立学校・東京大学と、わが子をファミコンゲームのキャラクターよろしくこね繰り回す教育ママの元祖である。「相沢」はそうしたエリートコースの途上にある人物である。どちらがより意図的にこの社会構造に加担しているかといえば、あきらかに「母」である。よって、「母」が2位、「相沢」が3位の順になる。また、「母」は幼少期ばかりでなく、二十を越えた大人になった「豊太郎」のもとにまでおしかけ同居することでコントロールし、揚句の果ては、自我に目覚めようとするわが子を、自らの死によって諌め、死んでもなおわが子を呪縛しようとしている所から考えても許すべからざる存在である。 
 
 
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