観光案内3   


今度は右手(東側)の高台に行ってみましょう。
ここも坂を登ったてっぺんに四阿があり、屋根の下のベンチに掛けると
――これは素晴らしい展望です。背後に通って来た鵜原の海岸と鏡の
ように静かな湾、目の前に太平洋、左手にはさっきの小広場が、岬の
根元から一続きの、緑に覆われた山の嶺のように見え、左手奥には
勝浦湾をはさんで彼方の八幡岬が眺められます。心地良い海風、
果てし無く続く空と海、生い茂る緑の樹々。
なるほど。――理想郷、かもしれません。

さてと。こうして岬を一望して、館の立地に合った場所を見てみましょう。
正門への道は岬の途中にあったのですから、やはり岬の中程――東側
から来る時に抜ける鬱蒼とした林――を整地して館を建て、廊下をずっと
伸ばして…あの小広場が「書斎」と桜の植えられた「墓所」になりますね。
それにしても険しい土地です。もう少し、広い大きな「館の跡」に私達が
立つ事はできないものでしょうか。
実は心当たりがあります。ここ、ではないのですが、後程御案内する
ことにします。その前に岬の左側(西側)を見ておきましょう。
ああ、雲が切れてきましたね。


最初の別れ道に降りると、さっきの婆様が戻って来ていました。
背から降ろした籠を平らな岩の上に乗せて、ひょこひょこと先端へと行ってしまいます。…籠を覗いてびっくり。細かい枝形の褐色の海草が、籠一杯にきらきら光っています。だって、15分しか経っていないのですよ、この途でお見かけしてから。
婆様、忍びかイワトビペンギンか。





1998年08月



*- INDEX / 京極堂Index -*