第5章 内 閣
第65条 [行政権]

行政権は,内閣に属する。

第66条 [内閣の組織,国会に対する連帯責任]

内閣は,法律の定めるところにより,その首長たる内閣総理大臣及びその他の国務大臣でこれを組織する。
内閣総理大臣及びその他の国務大臣は,文民でなければならない。
内閣は,行政権の行使について,国会に対し連帯して責任を負ふ。

第67条 [内閣総理大臣の指名,衆議院の優越]
内閣総理大臣は,国会議員の中から国会の議決で,これを指名する。この指名は,他のすべての案件に先立つて,これを行ふ。
衆議院と参議院とが異なつた指名の議決をした場合に,法律の定めるところにより,両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき,又は衆議院が指名の議決をした後,国会休会中の期間を除いて10日以内に,参議院が,指名の議決をしないときは,衆議院の議決を国会の議決とする。

第68条 [国務大臣の任命及び罷免]

内閣総理大臣は,国務大臣を任命する。但し,その過半数は,国会議員の中から選ばなければならない。
内閣総理大臣は,任意に国務大臣を罷免することができる。

第69条 [内閣不信任決議]

内閣は,衆議院で不信任の決議案を可決し,又は信任の決議案を否決したときは,10日以内に衆議院が解散されない限り,総辞職をしなければならない。

第70条 [総理の欠缺・新国会の召集と内閣の総辞職]

内閣総理大臣が欠けたとき,又は衆議院議員総選挙の後に初めて国会の召集があつたときは,内閣は,総辞職をしなければならない。

第71条 [総辞職後の内閣]

前2条の場合には,内閣は,あらたに内閣総理大臣が任命されるまで引き続きその職務を行ふ。

第72条 [内閣総理大臣の職務]

内閣総理大臣は,内閣を代表して議案を国会に提出し,一般国務及び外交関係について国会に報告し,並びに行政各部を指揮監督する。

第73条 [内閣の職務]

内閣は,他の一般行政事務の外,左の事務を行ふ。

法律を誠実に執行し,国務を総理すること。
外交関係を処理すること。
条約を締結すること。
法律の定める基準に従ひ,官吏に関する事務を掌理すること。
予算を作成して国会に提出すること。
この憲法及び法律の規定を実施するために,政令を制定すること。但し,政令には,特にその委任がある場合を除いては,罰則を設けることができない。
大赦,特赦,減刑,刑の執行の免除及び復権を決定すること。

第74条 [法律・政令の書名]

法律及び政令には,すべて主任の国務大臣が署名し,内閣総理大臣が連署することを必要とする。

第75条 [国務大臣の特典]

国務大臣は,その在任中,内閣総理大臣の同意がなければ,訴追されない。但し,これがため,訴追の権利は,害されない。

第6章 司 法
第76条 [司法権]

すべて司法権は,最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。
特別裁判所は,これを設置することができない。行政機関は,終審として裁判を行ふことができない。
すべて裁判官は,その良心に従ひ独立してその職権を行ひ,この憲法及びに法律にのみ拘束される。

第77条 [最高裁判所の規則制定権]

最高裁判所は,訴訟に関する手続,弁護士,裁判所の内部規律及び司法事務処理に関する事項について,規則を定める権限を有する。
検察官は,最高裁判所の定める規則に従はなければならない。
最高裁判所は,下級裁判所に関する規則を定める権限を,下級裁判所に委任することができる。

第78条 [裁判官の身分の保障]

裁判官は,裁判により,心身の故障のために職務を執ることができないと決定された場合を除いては,公の弾劾によらなければ罷免されない。裁判官の懲戒処分は,行政機関がこれを行ふことはできない。

第79条 [最高裁判所の裁判官,国民審査,定年,報酬]
最高裁判所は,その長たる裁判官でこれを構成し,その長たる裁判官以外の裁判官は,内閣でこれを任命する。
最高裁判所の裁判官の任命は,その任命後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際国民の審査に付し,その後10年を経過した後初めて行はれる衆議院議員総選挙の際更に審査に付し,その後も同様とする。
前項の場合において,投票者の多数が裁判官の罷免を可とするときは,その裁判官は,罷免される。
審査に関する事項は,法律でこれを定める。
最高裁判所の裁判官は,法律の定める年齢に達した時に退官する。
最高裁判所の裁判官は,すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は,在任中,これを減額することができない。

第80条 [下級裁判所の裁判官・任期・定年,報酬]

下級裁判所の裁判官は,最高裁判所の指名した者の名簿によつて,内閣でこれを任命する。その裁判官は,任期を10年とし,再任されることができる。但し,法律の定める年齢に達したときには退官する。
下級裁判所の裁判官は,すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は,在任中,これを減額することはできない。

第81条 [法令審査権と最高裁判所]

最高裁判所は,一切の法律,命令,規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である

第82条 [裁判の公開]

裁判の対審及び判決は,公開法廷でこれを行ふ。
裁判所が,裁判官の全員一致で,公の秩序又は善良の風俗を害する虞があると決した場合には,対審は,公開しないでこれを行ふことができる。但し,政治犯罪,出版に関する犯罪又はこの憲法第3章で保護する国民の権利が問題となつてゐる事件の対審は,常にこれを公開しなければならない。
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