シンデレラをさがせ!


    プラトニック    






「たくさん食べてね」
ニコニコしながら手塚の母・彩菜はリョーマの目の前にどんどん料理を出してゆく。
「ありがとうございます!」
瞳を輝かせながらリョーマが礼を言うと、彩菜がさらに笑みを深くした。
「最近の子ってあまりお魚食べないのに、越前くんは焼き魚が好物だなんて、嬉しいわ」
「え、でも、部長だって魚とか、日本食好きでしょ?」
横に座る手塚に視線を向けてリョーマが尋ねると、手塚はふわりと笑って頷く。
「ウチはお爺ちゃんがいるから、日本食に馴染んじゃっただけじゃないかしら?」
「いえ、母さんの料理はいつも美味しく頂いています」
微笑みながら手塚が言うと、彩菜が少し驚いたように目を見開いた。
「あらあら、越前くんがいると、そんな優しいことを言ってくれるのね」
クスクスと笑われて、手塚は小さく咳払いをする。
「部長はいつだって優しいんじゃないんスか?」
「え?」
きょとんと目を丸くしてリョーマが彩菜に尋ねると、彩菜も目を丸くしてリョーマを見つめた。
「部長はすごく優しいけど口下手だから、いつも美味しいって思っていてもなかなか言葉に出来ないだけっしょ?」
「おだてても何も出ないぞ」
「おだててないよ。部長は世界一なんだから」
「ばか」
つん、と手塚に額をつつかれ、リョーマが楽しげに笑う。
「………あら…」
二人の様子を見ていた彩菜が、目を見開いたまま口元に手を当てて微笑む。
「昨日よりもさらに仲良しさんになっちゃったわね。何かあったの?」
彩菜の言葉にハッとした二人は、同時に口を揃えて「いいえ」と言った。
「あらあらハモっちゃって」
クスクスと笑われて、二人の頬が薄く染まる。
「学年を超えた男の友情、かしら?それとも愛が芽生えちゃった?」
「なっ!」
「か、母さん!」
顔を真っ赤にするリョーマと、珍しく取り乱した自分の息子を見て、彩菜は短く沈黙してから「フフッ」と笑った。
「青春ねぇ」
ニコニコと楽しそうに微笑まれて、手塚とリョーマは返す言葉を見つけられなかった。







先に風呂を使わせてもらい、次いで風呂に入った手塚を部屋で待ちながら、リョーマはフゥッと、何度目かの溜息を吐く。
(今夜、オレは部長のものになるんだ)
そう思うと、今から心臓が痛いほど高鳴り始める。
(い、今からこんなんじゃ、どんなんなっちゃうんだろ、オレ…)
家でもシャワーを使ったが、また風呂に入らせてもらって、頭のてっぺんからつま先まで、綺麗に磨き上げた。いつもは適当に洗う場所まで念入りに綺麗にした。
身体の準備は万端。だが、心の方が、まだ準備しきれていないのかもしれない。
(オレって、かなりヤラシイのかな……)
そわそわして、一人あれこれ考え、大きな溜息を吐き、時折心臓を抑え込むように胸をギュッと掴んでみる。
「はぁ………」
何度目かの大きな溜息と同時に、ドアがノックされて手塚が入って来た。
「お、おかえりなさい」
「……ただいま」
妙な会話になっている自覚はあったが、二人は薄く頬を染めて気づかないフリをする。
「飲むか?」
「ぁ、うん」
手塚は手にしていた二本のミネラルウォーターのうち、一本をリョーマに手渡した。
「アリガト」
ベッドに寄りかかるようにして床に座るリョーマから少し離れ、手塚は窓際の壁に寄りかかって、自分用のペットボトルの封を切る。
「………怖いか?」
一口水を飲んでから、手塚が静かにリョーマに問う。
「……怖いっていうか……すごく、キンチョーしてる」
俯いたまま首を横に振って、リョーマは答える。
「そうか…」
「うん」
手塚はそのまま黙って半分ほど水を飲み干し、キャップをして机の上にペットボトルを置いた。
「母さんが……」
「え…?」
驚いたように手塚を振り仰ぐリョーマに、手塚は柔らかく微笑みかけた。
「……冗談なのか本気なのかはわからないが、邪魔はしないから安心しろ、と言っていた」
「な……なに……それ……っ」
「今日は、祖父は友人宅へ泊まりにいっているし、父は接待で遅くなるんだそうだ。だから自分はもう早めに休むから、邪魔はしない、と」
「………で…でも…」
「ん?」
「こ……声は、だ、出せない、よ、ね?」
しどろもどろにリョーマが言うと、手塚はさらに柔らかく微笑みながら、ゆっくりとリョーマの傍に近づいて来た。
「俺は聞きたい」
「だって…」
「お前の声が聞きたい。乱れるお前が見たい。お前の全部が、欲しい」
「………っ!」
耳元に唇を寄せられ、熱く囁かれる。
「俺のものになれ、リョーマ」
「国光、は……?」
「ん?」
手塚の優しい指先が、まだ湿り気の残るリョーマの髪をそっと梳く。
「国光は、……国光も、オレのものになってくれる?」
「ああ」
深く頷かれ、リョーマは瞳を揺らして手塚を見つめた。
「じゃあ……いいよ……オレを、全部……あげる…」
「リョーマ……」
そっと、手塚の唇がリョーマの額に押し当てられ、そのまま滑り降りて唇に辿り着く。
「んっ」
ゆっくりと唇がこじ開けられ、手塚の舌が入り込んで来る。
「ぁ……んっ」
リョーマの手から、封を切らないままのペットボトルが滑り落ちて床に転がった。
甘い甘い口づけにリョーマがうっとりと思考を蕩けさせ始めると、口づけたまま、手塚がリョーマを抱え上げてベッドにそっと下ろした。
「リョーマ……好きだ……」
「オレも……大好き……国光…」
熱っぽく見つめられ、うっとりと微笑みながらリョーマがそう答えると、手塚が吐息だけで微笑む。
「ぁ…」
手塚の手がリョーマのTシャツにかかり、ゆっくりと捲り上げられる。そうしてそこに現れた小さな突起に、手塚はそっと口づけ、舌を這わせ始めた。
「はっ……んんっ」
左の突起を手塚の唇で愛され、右の突起は手塚の指先で弄られる。
「ぁ…あっ」
チロチロと先端を舐め回され、音を立ててキツく吸い上げられ、時折歯を立てられて引っ張られた。
「や、ぁんっ」
右の突起は指先や手の平全体で転がされ、摘まみ上げられ、先端をコリコリと爪で引っ掻かれた。
「あっ、あっ」
「……いい声だ。……たまらない」
固く凝る突起を強く吸い上げられ、リョーマの身体が軽く痙攣する。
「んっ」
手塚の左手が強く胸を掴み、揉み込むように撫で回してくる。
「ぁ……、くに、みつ…っ、電気……っ」
快楽に溶かされてゆく理性の欠片で、なんとかリョーマは懇願した。
「ん?」
「消して…っ」
「なぜ?」
「ヤダ…っ」
両手で顔を覆ってしまったリョーマを見下ろし、手塚は小さく溜息を吐いた。
「わかった」
手塚がベッドを降り、部屋の明かりを落として戻って来る。
「……アリガト」
微笑みながら小さく頷き、手塚が再びリョーマに伸し掛かる。
「国光……」
リョーマが手塚の身体に腕を回してギュッとしがみつくと、手塚は少し驚いたようにリョーマを見下ろした。
「リョーマ…?」
「わかる?……すっごい、ドキドキしてんの…」
「ああ……」
手塚はクスッと笑って、リョーマの額に口づける。
「俺も同じだ。わかるか?」
「うん」
密着した肌から、手塚の鼓動が伝わって来る。
それはいつもの手塚からは想像もできないほど早くて、手塚も、リョーマと同じように舞い上がってくれているのだと、リョーマにはわかった。
「今日着ていたお前の服、あの空港で着ていたものだな」
「…やっぱ憶えててくれたね」
「もちろんだ」
柔らかく微笑んで、手塚が触れるだけの口づけをする。
「……全部、俺が脱がせていいか?」
「……うん」
窓から入り込む月の光を頼りに、手塚は丁寧にリョーマの服をすべて剥ぎ取った。
「細いな」
リョーマの身体の線を確かめるように手塚の両手がゆっくりと脇腹を滑り降りる。
「…っ、……くすぐったい」
「ん?」
「脇、ダメ……っ、あっ」
リョーマの身体がゆらりと撓る。
「………」
ゴクリと、手塚の喉が鳴った気がした。その直後、手塚は吸い寄せられるように、リョーマの肌に舌を這わせ始めた。
「ぁあ……っ」
手塚の手と舌が、リョーマの全身を愛してゆく。
唇を追いかけるように指先が滑り、首筋から鎖骨を掠めて胸の突起を捉え、指の動きを辿るように口づけながら、ゆっくり滑り降りて綺麗な形を成す腹筋や臍の周りを丁寧に愛撫する。
「んっ、んっ」
時折キツく吸い上げられて小さな痛みが走る。その度に手塚が熱い吐息を零し、痛みの走った場所を優しく撫でて癒してくれた。
「ぁ……」
手塚の唇はリョーマの足の付け根を滑り、だが肝心な場所へは触れずに太腿を滑り降りる。
「ぁ…やっ……なん、で…っ」
「ん?」
リョーマの膝を立てさせ、腿の内側に舌を這わせながら、手塚が小さく笑う。
「意地、悪……っ」
ギュッとシーツを握りしめてリョーマが呟くと、手塚はまた小さく笑ってからリョーマの両膝を掴んで左右に割り開いた。
「わっ」
「もう固くなり始めてる」
「だって……だから、アンタに触られると、オレ、すぐ……」
すべてを口にするのが恥ずかしくて、リョーマは顔を真っ赤にしたまま口を噤む。
「……いつものように、して欲しいのか?」
「………ん」
顔を背けてコクコクと何度も頷き、リョーマはギュッと目を瞑る。
手塚はクスッと小さく笑ってから、躊躇いなくリョーマの雄を口に含んだ。
「あ……っ」
途端に、リョーマの背中を、ゾワゾワと快感が這い上がって来る。
いきなり深く飲み込まれ、先端まで強く吸い上げるようにして引き出される。それを何度も繰り返されて、リョーマの雄はすぐに固く変形を遂げた。
「ぁ……っ、いい……っ、すぐ、イっちゃう……っ」
手塚はリョーマの根元をギュッと掴み、先端を舌の平で舐め回す。
「ぅ、あっ……あっ、やっ」
リョーマの腰が時折痙攣しながら小さく波打つ。
手塚は、リョーマの先端にチュッと口づけて、根元を押さえつけていた手を緩めた。
「ぁ……っ、イ、ク…っ」
リョーマの身体が硬直するのと同時に、手塚は再びリョーマをすっぽりと口内に収めた。
「んっ、あっ、あぁ、んっ!」
ビクビクとリョーマの身体が揺れ、手塚の口内に熱い液体が広がる。
「あっ……は……ぁぁ……」
ゆっくりと弛緩してゆくリョーマの身体がベッドに沈み込むと、手塚は優しくリョーマの雄を口内から引き出した。
何も喋れず、ただ荒い呼吸を繰り返しているリョーマを見下ろしながら、手塚がゆっくりとTシャツを脱ぎ落とす。
薄く目を開けて手塚を見たリョーマは、手塚に向かって両腕を伸ばした。
「……起こして……」
「ん?」
怪訝そうにしながらも、手塚はリョーマの腕をとってゆっくりと引き起こしてやった。
「……今日は、オレにも、やらせて」
「え…?」
「国光の……口でしたい…」
「………いいのか?」
ゴクリと手塚の喉が鳴る。
リョーマはコックリと頷いて、手塚の下履きをずり下ろす。
「っ!」
跳ね上がるように現れた手塚の雄に、リョーマは一瞬怯んだ。
「……無理しなくていいぞ?」
「ムリなんかしてない」
キッ、と小さく手塚を睨んでから、リョーマは両手で大きな熱塊を包み込んだ。
「すごいね……熱くて、ドクドクしてる……」
「………」
手の中で脈打つ熱塊に、リョーマはそっと舌を這わせ始めた。
「……っ」
手塚の身体が微かに硬直するのがわかる。
「ん…」
手塚がしてくれるようにすべてを喉の奥まで飲み込むことは出来そうにないが、リョーマは懸命に口を開いてその先端を銜え込んだ。
「ぅ…んっ」
低く、小さく、手塚が声を漏らした。
それだけでリョーマは嬉しくなって来て、口いっぱいに銜え込んだ先端を丹念に舐め回してみた。
「ぁ…っ、くっ…」
手塚が熱い吐息を漏らす。途端にドクリと脈打ち、さらに一回り大きく変形した熱塊を見て、リョーマの頬が熱くなる。
「……気持ちいい?」
幹を左手で扱いてやりながらリョーマが手塚を見上げると、手塚は困ったように微笑みながら頷いた。
「我慢が利かなくなりそうだ」
「なんで我慢してんの?」
ムッとしてリョーマが唇を尖らせると、手塚はクスッと笑ってリョーマの頭を撫でた。
「暴走してお前に嫌われたくないんだ」
「嫌いになんかならないよ」
そう言ってリョーマはまた手塚の先端を銜え込み、今度は口の中を出し入れさせてみた。
「……っく…」
手塚がまた熱い吐息を零す。
(……国光も、いつもこんなふうに嬉しくなっていてくれたのかな…)
こうして触れているだけで嬉しい。
それなのに、さらに手塚が感じてくれていることが嬉しくてならない。
今ならばわかる。
どんなに手塚が、自分を想っていてくれたかを。
「離せ……出る……っ」
手塚が熱い吐息を零しながら、リョーマの前髪を掻き上げる。
だがリョーマは、チラリと手塚を見上げただけで、さらに深く、熱塊を口内へ迎え入れた。
「ばか……っ、ぁ…っ、くっ!」
手塚の身体が小さく痙攣を起こし、その直後、リョーマの口内に熱い液体が大量に流れ込んで来た。
「んっ」
その勢いと量の多さにたじろぎつつも、リョーマはすべてを嚥下してゆく。
「………」
「ん……っ、は…………ぅわっ!」
すべてを受け止め、リョーマがそっと手塚から離れると、いきなりきつく抱き締められた。
「ばかもの」
「……なんで?」
「お前に、そんなことをさせたいわけじゃなかったのに…」
「でもいつも国光がオレにしてくれたことじゃん。さっきだって…」
「俺はいいんだ」
「なにそれ」
リョーマが唇を尖らせていると、手塚がゆっくりと身体を離し、顔を覗き込んできた。
「気持ち悪くなかったか?」
「全然」
唇を尖らせたままリョーマが不貞腐れたように言うと、手塚は小さく苦笑して、再びリョーマをきつく抱き締めた。
「ありがとう、リョーマ。気持ちよかった」
「………ホント?」
「ああ」
優しく優しく頭を撫でられて、リョーマは嬉しそうに微笑む。
「あのね……今まで、いつもオレのしてくれてたでしょ?オレも、いつも、すごく気持ちよかったよ」
「……そうか…」
「うん。それにね、なんか、国光がどれくらいオレのこと好きでいてくれたかが、わかった気がする」
「え……?」
そっと手塚の身体を押し返し、リョーマは真っ直ぐに手塚を見つめた。
「他のヤツのなんか、死んでも口に入れたりなんか出来ないけど、国光のは特別。だって、国光の、口でしてたら、すごく幸せな気持ちになった」
「幸せ…?」
「うん」
リョーマは腕を伸ばして手塚の首に巻き付けた。
「アンタが、オレを感じてくれてるって思ったら、すっごい幸せになった」
「リョーマ…」
「国光も、オレが感じてると、幸せになる?」
「ああ」
静かに頷かれて、リョーマは微笑む。
「じゃあ、もっともっと、幸せにしたい」
何も言わず、手塚は微笑む。
「それで、オレも幸せになりたい」
リョーマを見つめる手塚の瞳が、ユラユラと甘く揺れる。
「ああ」
手塚がゆっくりとリョーマを抱き締める。
「一緒に……幸せになろう…」
きつくきつく抱き締めてくる手塚の腕の中で、リョーマは「うん」と頷いた。



手塚が、机の引き出しの奥から化粧水のような瓶を持って来た。
「それって…?」
「ローションだ」
「……準備してたの?」
「まあな」
クスクスとリョーマが笑うと、手塚も小さく笑った。
「……つらい時は言ってくれ」
「うん」
「俯せになってくれるか?」
「ぁ……うん…」
モソモソと俯せになり、リョーマはしっかりと枕を抱きかかえる。
「あっ」
手塚に腰を持ち上げられ、リョーマの頬が真っ赤に染まった。
「力を抜いて…」
「ん…」
ピチャリ、と水音がして、自分の後孔に、何か濡れたものが触れるのがリョーマにはわかった。
「ん」
リョーマが恐る恐る振り返ると、手塚がリョーマの双丘の間に顔を埋めていた。
「わっ、そんなとこ、舐めちゃダメ」
チラリと視線を向けたが、手塚は構わずにリョーマの後孔に舌を這わせ続ける。
やがて尖った舌が蕾を押し開いてめり込んで来ると、リョーマの腰の奥に、甘い痺れが広がり始めた。
「ぁ………あ、んっ」
ピチャピチャと水音が聞こえ、手塚の熱い吐息が尻朶にかかり、リョーマも甘く吐息を吐いた。
「あっ」
舌よりもずっと固いものが胎内に入り込んで来て、その刺激にリョーマは思わず声を上げる。
「痛いか?」
「い、痛くない……ちょっと、ビックリした、だけ…」
「そうか…」
手塚は少し安堵したように溜息を零し、めり込ませていた指を一度引き抜いてから、改めてゆっくりと埋めて来た。
「ぁ……」
ぬるりとした感触を伴っているのがリョーマにもわかる。
(ローションって、スゴイ……)
抵抗なく手塚の指が後孔を出入りする。時折奥深くを掻き回されて、リョーマは上がりそうになる声を枕に吸い込ませた。
「………」
手塚が、リョーマの後孔に指を入れたまま、リョーマの肩を掴んで仰向けにさせる。
そうして、リョーマが抱き締めたままでいた枕を取り上げ、前髪を掻き上げて来た。
「ぁ……」
「声が聴きたい」
「だ……って、オバサン……ぁ、……ぁあんっ」
深く埋め込まれた指にぐるりと胎内を掻き回されて、リョーマは思わず声を上げて仰け反った。
「ここ……いいのか?」
手塚の指が、リョーマの一番感じる場所を撫で上げる。
「ひ、あっ……ぁ、はっ」
ビクビクと身体を痙攣させるリョーマを見下ろし、手塚はゆっくりと指を引き抜いた。
「ぁ……」
「お前に挿れたい……いいか?」
「………っ」
手塚の言葉に、リョーマはふっと目を開いた。
「挿れたい」
「ぁ…」
「挿れたい」
手塚の瞳が、見たことのない光を宿している。
「お前の全部が欲しい」
真っ直ぐに見つめてくる手塚の瞳を真っ直ぐ見つめ返し、リョーマはニッコリと微笑んだ。
「………うん…」
手塚は一瞬目を見開き、そうして泣きそうに顔を歪めた。
「リョーマ…」
手塚が、真っ直ぐリョーマを見つめたまま下履きをすべて脱ぎ落とし、リョーマの足を抱え上げる。
「いくぞ」
「ん…」
リョーマは自分の後孔に、固く熱いものが押し当てられるのがわかった。
その次の瞬間、それがゆっくりとリョーマの胎内を押し広げながら捩り込まれて来た。
「ぅ……く……っ」
強烈な圧迫感に、思わずリョーマは小さく呻く。
「……痛いか?」
呼吸を荒げながら、手塚が尋ねる。リョーマは言葉ではなく、首を横に振って答えた。
「もっと、行くぞ…」
その言葉通り、巨大な熱塊がさらに奥へと押し込まれて来た。
「く……うっ」
歯を食いしばって強い圧迫感を堪えていると、熱塊が少し引き戻された。
「は…」
だがリョーマがホッとしたのも束の間、さらに強く、熱塊が一気に奥へと捩り込まれた。
「ひぁぁっ」
「く、うっ」
リョーマが声を上げて身体を硬直させると、手塚も苦痛に顔を歪ませた。
それでも手塚はさらに奥へと身体を進め、やがてリョーマの尻朶と手塚の肌とがぴったりと密着した。
「………全部入った」
「……ホ…ント…?」
荒い呼吸に紛れてリョーマが問うと、手塚は頷いてリョーマの手を取った。
「ほら……」
自分と手塚を繋ぐ部分に触れさせられて、リョーマは頬を真っ赤に染める。
「ほ、ホントに……入ってる…」
「……ああ」
手塚がふわりと微笑むと、リョーマも微笑み返した。
(スゴイ……あんなのが、オレの中に…)
間近で見た手塚の大きさを思い出し、リョーマはひどく驚きつつも、それ以上の大きな喜びを感じた。
「オレ……国光のものに、なれた?」
「ああ」
手塚がゆっくりと身体を倒して口づけて来る。
「そして俺は、お前のものだ、リョーマ」
「……うん…」
もう一度ねっとりと舌を絡ませ合い、見つめ合って微笑み合う。
「…だが幸せを感じるのは、これからだ」
「え…?」
「動くぞ」
「ぁ……あっ」
熱い肉棒がゆっくりと引き出され、またゆっくりと捩り込まれる。
「ぁ……は、ぁ……ぁ、ぅ…んっ」
太くて固いものに胎内をジワジワと擦られるようで、その異物感にリョーマは眉をきつく顰める。
(なに、これ……こんな……国光は、気持ち、いいのかな……?)
小さく呻きながらリョーマが薄く目を開けると、じっとリョーマを見つめながら熱い吐息を零す手塚と目が合った。
「……つらいか?」
少し掠れる声で、手塚が問う。
「痛く、ないけど……変な、感じ……が……あ……っ」
ぐぅ、と奥までゆっくり捩り込まれて、リョーマは言葉を失くす。
「くに…つ、は…?」
「……ん…?」
ゆっくりと引き出しながら、手塚が優しく聞き返す。
「国光は……気持ち、いい?」
「ああ……」
熱い吐息とともに答え、手塚は小さく微笑む。
「たまらない」
「あっ」
グッと、勢いをつけて奥まで肉剣が突き刺さり、リョーマが目を見開いて仰け反る。
「ひっ」
その奥で、ユラユラと左右に揺すられてリョーマは歯を食いしばる。
「…っう…」
だが小さく漏れた手塚の声を聞いて、リョーマは潤む瞳で手塚を捉えた。
(ぁ……)
小さく眉を寄せて頬を上気させ、乱れた熱い吐息を零し、時折込み上げてくる何かを堪えるように歯を食いしばる手塚。
その艶めいた表情に、リョーマは目を奪われた。
(気持ち良さそう……)
自分はまだ「気持ちいい」という感覚はあまりないが、初めて見る手塚の官能的な表情に、リョーマは大きな幸福感を感じる。
(オレの身体で、感じてくれてる…)
「国光……」
嬉しくて嬉しくて、リョーマは手を伸ばして手塚を抱き寄せた。
「リョーマ…」
「好き……大好き……ねえ、ホントに、好き…っ」
「リョーマ…っ」
手塚の動きが、一気に大胆に変わる。
「んっ、あぁっ、ぁあっ、あぁっ」
激しく揺さぶられ、胎内の奥深くまで抉り回され、リョーマは息を詰める。
「うっ、あぁっ、あ…ぁあっ」
「ぁ……リョーマ…、リョーマ…っ」
リョーマの大好きな声が、いつも以上に甘く、艶を帯びて掠れる。
「あ…ぁ…くに、みつ…っ」
「リョーマ…っ」
熱い肉棒が胎内を激しく出入りするたび、リョーマの腰の奥に何か得体の知れないモヤモヤとした感覚が溜まってゆく。
(なに……なんだろ……これ……?)
「ぁ……もっと……上……っ」
「ん…?」
思わず零れてしまったリョーマの言葉に、手塚が反応する。
「こう、か?」
手塚が入ってくる角度が少し変わる。
だがまだ届かない。いや、場所が、違う。
「あっ、もう少し……っ」
無意識のうちにリョーマの腰が微かに揺れ始める。
手塚はふっと小さく微笑むと、抱え込んでいたリョーマの足を解放し、今度は腰を掴んで下から抉るように突き上げた。
「ぁっ、はぁぅっ!」
リョーマの全身に電流が走った。
いや、電流のような快感が、突き抜けていった。
「ここ、だな?」
手塚が熱い吐息を零しながら微笑む。
そして、その場所だけを、突き上げ始めた。
「あっ、あっ、あぁっ、やっ、待っ……、そ、なっ……イっちゃ…うっ!」
何度か突き上げられて、いきなりリョーマが弾けた。
「あっ、はぁっ、あぁっ………あ……っ」
(うそ…っ)
射精の間も突き上げられ続け、射精を終えてもその余韻を味わうことなくさらに激しく揺さぶられる。
「あっ、ひっ、あぁっ、ぅ、あっ」
信じられないことが起こったかのように、リョーマは目を見開いたまま揺さぶられ続ける。
「気持ち、いいか?…リョーマ?」
手塚に問われ、リョーマはゆっくりと目を閉じる。
「ぁ……ぁ……スゴ……い……、いい…っ、気持ち…いいっ!」
頬を真っ赤に上気させ、涙を零しながらリョーマが仰け反る。
「あぁっ!」
すぐに張りつめて来た雄の先端から透明な雫を溢れさせ、リョーマは手塚の動きに合わせて自ら腰を振った。
「リョーマ……あぁ……っ」
「くにみつ……あっ、こわいよ……なんか……スゴイ……っ」
荒い呼吸の合間にそう告げると、手塚はリョーマをゆっくり揺さぶりながら、優しくその涙を拭った。
「…目を開けろ、リョーマ」
「……っ」
「お前は、誰に抱かれてる?」
「ぁ……」
「ん?」
「くにみつ…」
「そうだ……お前のことを、世界で一番、愛している男だ」
「あ…」
リョーマが潤む瞳で手塚を見つめ、そして、ニッコリと微笑んだ。
「国光…」
「愛してる、リョーマ」
「くにみつ……」
リョーマが腕を伸ばし、しっかりと手塚に抱き縋る。
「国光……このまま……ギュッて、してて……」
「リョーマ…」
「好き……大好き、国光……」
「あぁ……」
手塚の腕がリョーマの身体をしっかりと抱き締める。
「離さない…」
「うん…」
「二度と、お前を見失わない」
「オレも……国光のこと、離さない……どんなに声や姿が変わっても、オレは、絶対にアンタを探し出して、捕まえるよ」
「ああ」
二人は額を擦り合わせ、間近で見つめ合い、唇を深く重ねてゆく。
「リョーマ……一緒に……」
「ん…」
手塚が甘く掠れた声で囁き、リョーマの額や頬に口づける。そうして再びリョーマを激しく揺すりながら、何度も口づけた。
「んっ、あっ、あぁっ、あ……それ、そこ……もっと…っ」
手塚にしがみつきながらリョーマがねだると、手塚は小さく笑ってその願いを叶えた。
「ぁああっ、んんっ、ぁ、はぁ、んっ」
全身の毛が逆立つような快感に包まれ、リョーマはもう手塚のことしか考えられなくなってゆく。
「好き、好き……あ……国光…ッ、好き…!」
「リョーマ…リョーマ……っ、くっ、……出そうだ…っ」
「ぁ……オレ、も…っ、また……っ」
二人の呼吸が喘いでいるかのように激しく乱れ、肉がぶつかり合う音も、ベッドが軋む音も、すべてがさらに艶めいて加速してゆく。
「…っ、ぁ、……っ、あっ」
すでに声すらあげられず、リョーマは口を大きく開けたまま、強すぎる快感に意識を持って行かれないように堪える。
「くっ、ぅっ、んっ、う…っくっ」
手塚もまたギリギリまで射精を堪え、リョーマの胎内を深く激しく、声が漏れるほど強く抉る。
「くに、みつ、もぉ…ダメ…っ」
リョーマがポロポロと涙を零して限界を訴える。その涙を舐めとり、そのまま激しく口づけてから、手塚がリョーマの耳元で囁いた。
「いいぞ、リョーマ……俺も、出す…っ」
グッと、リョーマの身体が反り返るほど、手塚がリョーマの腰を強く引き寄せて深く穿つ。
「ぁ………あ、ぁ、あぁぁんっ!」
「く、うっ!」
奇跡のように同じタイミングで、二人は絶頂を迎える。
「あぁ、ぁっ、はっ、あぁっ」
「くっ、んっ、…っ、う、んっ」
深く繋がり合ったまま身体を硬直させ、互いに愛しき者へ向けて、想いの丈を迸らせる。
リョーマは手塚の腹へ。
手塚はリョーマの胎内奥深くへ。
「ん……っ」
「ぁ……っ」
二度目とは思えないほど大量に精液を注ぎ込まれて、リョーマはその刺激で射精するのとはまた違う快感を感じた。
「まだ…出る……っ、く…っ」
最後の一滴までリョーマの奥へ絞り出すように、さらに深く肉剣を押し込みながら手塚が息む。
「んっあっ……零れちゃう……っ」
リョーマの胎内に注がれた手塚の精液が、手塚自身に押し出されるように泡立ちながら滲み出て来る。
手塚はリョーマを強く抱き締めたまま暫く硬直し、やがて、ゆっくりゆっくり弛緩していった。
「………っ、ぁ……」
「は、ぁ……っ」
二人はともに深く息を吐き出し、繋がり合ったまま、ベッドに深く沈み込んでゆく。
「………」
「………」
暫くの間、言葉を忘れたかのように、その甘く熱い余韻に浸る。
「………」
「………」
「………リョーマ」
「………ん…?」
長い長い沈黙のあとで、手塚が掠れた声でリョーマに問う。
「……大丈夫か?」
「ん……」
肯定とも、ただ呻いたともとれる声でリョーマが答えると、手塚がゆっくりと身体を起こした。
「……すまない、抑えが利かなくて……無理を、させたか?」
「………」
リョーマはゆっくり目を開けて手塚を見つめ、そして、微笑む。
「オレ、今、嬉しすぎて、死んじゃいそう……」
手塚が目を見開く。
「……こんなに幸せな気持ち、初めて…」
微笑みながら、リョーマの瞳から透明な雫が零れ落ちる。
「俺も……こんな幸福感は、味わったことがない…」
優しく囁き、手塚がリョーマの涙をそっと唇で掬いとる。
「……魔法が解けてよかった」
「………ん?」
「シンデレラの、魔法…」
「………ああ……」
手塚が愛しげにリョーマの前髪を掻き上げ、露になった額に口づける。
「魔法の力を借りて着飾ったままじゃ、王子サマの本当の愛を、受け取れないもんね」
「……そうだな」
微笑みながら、手塚はリョーマの頬や瞼に何度も口づける。
「こうして抱き合って初めて、伝わる想いもあるだろう?」
「うん……そうかもね…」
見つめ合い、微笑み合ってチュッと軽く唇を触れさせ合う。
「好きって、想ってるだけじゃ何も生まれない。だってそれは、その人だけの、世界だから…」
「………」
「でもこうやって抱き合うと、自分の世界と、大好きな人の世界とが溶け合って、新しい世界になるんだ」
「ああ……だがそれは、ただ抱き合うだけでは生まれない世界だ。お互いに相手を想う心が強くなければ、それは単なる肉欲になる」
「心があって、身体が結ばれて、それで初めて、新しい世界になるんだね」
「そうだ」
手塚はリョーマをしっかりと抱き締めて柔らかく微笑む。
「俺たちは愛し合った証を残すことが出来ない代わりに、新しい世界を互いの中に見つけることが出来る。それこそが本当の……いや、格好をつけて言うなら、究極のプラトニック・ラブだ」
「カッコつけ過ぎ!」
リョーマが笑うと手塚も笑った。
だがすぐに、二人の視線は熱く、甘く、絡まり始める。
「………新しい世界、もう一度味わいたくないか?」
「うん……国光となら、何度でも新しい世界、見てみたいな…」
「その言葉、あとで訂正するなよ?」
「しないよ」
クスクスと笑い合い、その声が途切れ、甘い吐息へと変わってゆく。
「好き……国光……」
「ああ……愛してる、リョーマ……」
固さを失わないままの手塚の熱塊が、ゆっくりと加速しながらリョーマの中を擦り始める。
「んっ、ふっ、あ……っ」
「あぁ……」
二人はともに感じ入ったように熱い吐息を零し、ベッドを軋ませながらユラユラと揺れ合う。
「…つらくなったら、言ってくれ……お前が止めないと……俺は、ずっと、お前を抱いていそうだ…」
「ずっと…?」
「ああ……俺は今、お前に飢えたケダモノだからな……」
「……こんなカッコいいケダモノなら、食べられちゃってもいい、かも」
「ばか…」
「んっ、あっ、ぁあ、んっ」
深く深く、胎内を抉られてリョーマが仰け反る。
「オレの…シンデレラって、…ぁ、…こんな、危ない…ケダモノだったんだ?」
大きく揺さぶられながらリョーマが笑う。
「ああ、そうだ……どうしようもなくケダモノで、独占欲も強いぞ」
「どく、せん、よく?」
「誰にも渡さない。触らせもしない。……お前は俺だけのものだ」
「嬉し……あぁんっ!」
再び激しく腰を打ち込まれて、リョーマはギュッと目を閉じた。
「あっ、あぁっ、んっ、ぁ…はっ、あっ」
「リョーマ……っ、ぁあ……」
グチャグチャと粘つく水音が大きくなり、二人の会話はそこで途切れる。
月の光だけが照らす部屋の中で、二人はただただ愛しい者の名前だけを呼び合いながら、幸福感とともに快楽に身を委ねた。













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20080912