  
        休日 
          
         
<3> 
        
         
        あんなに何度も胎内に吐精されたはずなのに、やはりリョーマの身体には、『あの男』の精液は残されていなかった。 
シャワーを浴びながらそれを確認したリョーマは、小さく安堵の溜息を吐く。 
(今日はあんまり痕も残ってないや…) 
鏡の中の自分の身体を見分していたリョーマは、いつもよりは身体中に紅い痣が残されていないことに、また安堵した。 
昨夜の記憶を辿れば、確かに執拗な愛撫を受けたというよりは、ムチャクチャに揺さぶられていた感覚しかない。 
時折耳元に何か囁かれた気もするが、それ以外はキスはもちろん、リョーマの肌に唇を寄せることもしてこなかった気がする。 
それまでの貪りつかれるような感覚とは、少し、昨夜は違っていた。 
(これなら普通に着替えも出来そう) 
身体中に紅い痣を残された日は、他の部員たちの目に触れぬように緊張しながら着替えねばならなかった。だが今日はそんな思いはせずにすむ。 
頭から勢いよく湯を浴びながら、リョーマはふと思った。 
(そっか……今日から練習が始まるって、知っているんだ) 
だからリョーマの肌に痕を残さなかったのではないのか。 
(やっぱりテニス部で…この指輪が見える人……) 
その条件に当てはまるのは、今のところ一人しかリョーマは知らない。 
「…不二先輩……」 
あの不鮮明な視界では、相手の外見などは一切わからない。 
ただ、抱き締められた時の感触や、手を引かれて歩いた時のボンヤリとした後ろ姿からすると、相手はたぶん、リョーマよりは背が高い。 
(不二先輩にも訊いてみよう。『青い四角形』が部屋にあるかどうか…) 
そしてもうひとつ。 
昨夜、リョーマが手に入れた情報がある。 
(それも確認しなきゃ…) 
リョーマはギュッと唇を噛み締めてから、シャワーのコックを閉めた。 
         
         
         
         
         
「オーッス、越前!何か久しぶりだなぁ」 
「はよっス、桃先輩」 
いつものように家を出てすぐに声を掛けられ、リョーマは当然のように桃城の自転車の後部に乗り込んだ。 
「しゅっぱぁ〜つ!」 
「元気いいっスね、桃先輩。絶好調ってとこっスか?」 
「おう!今日から練習再開だからな。何つーか、楽しいだろ?」 
「はぁ…そっスか」 
溜息混じりにそう言ったリョーマを、桃城はチラリと振り返った。 
「なんだよ越前、元気ねぇな、元気ねぇぞ?」 
「ま、いろいろあるんス」 
「ふーん。……悩みがあんなら、相談しろよ?」 
「ういーっス」 
少し真面目な口調で言う桃城に、リョーマは適当に返事をしておく。 
(誰にも相談できないことが悩みでもあるし…) 
リョーマが溜息を吐くと、桃城に「また幸せに逃げられたぞ」と、少しからかうように言われた。 
         
         
         
自転車置き場に向かう桃城と別れて部室に向かうリョーマに、後ろから声がかかった。 
「越前、おはよ」 
「あ」 
振り向いた先に不二がいたので、リョーマはほんの少しだけ心を緊張させる。 
「はよっス、不二先輩」 
不審に思われないよう、いつものように小さく笑って、さりげなく不二を待ち、一緒に部室に入る。 
部室の中はまだそれほど部員はおらず、ゆったりと着替えられる空間があった。 
「あの、不二先輩」 
「ん?なんだい、越前」 
少し周りを気にしながら見上げてくるリョーマを、不二はいつもの微笑みを浮かべて見つめ返す。 
「あとで……ちょっと話があるんスけど」 
「………うん、いいよ」 
不二の微笑みが、一瞬途切れて真顔になる。 
「指輪のこと、だね?」 
「はい」 
リョーマが小さく頷くと、不二も静かに頷いた。 
「練習のあと、どこか行く?」 
「え、あ、いや、ちょっとしたことなんで、べつに……」 
練習のあとには手塚との約束がある。それをキャンセルするつもりは毛頭ない。 
「そう?」 
不二はまた微笑んで着替えを再開する。 
(部長が日誌を届けに行っている時にでも訊けばいいや) 
リョーマも小さく溜息を吐いてから制服を脱いで着替え始めた。 
         
         
         
着替えを終えてコートに向かうと、入り口近くに立つ手塚の背中がすぐに目に入った。 
隣には大石が立っていて、何か親しげに話をしている。 
リョーマはグッと帽子を深く被り直してから、コートに入った。 
「ちーっス」 
「ああ、越前、おはよう」 
大石がいつもの爽やかな微笑みを向けてくれる。 
チラッと手塚を見遣ると、手塚も柔らかく微笑んでくれた。 
(部長……) 
その微笑みに思わず見とれそうになり、リョーマはまたさらに帽子を深く被り直して二人の前を横切った。 
頬が熱い。 
手塚が微笑みかけてくれただけで。 
コートの隅まで行き、ストレッチを始めるフリをして、リョーマはまた手塚を見つめる。 
大石と話していた手塚のもとへ乾も加わり、河村や菊丸、そして不二も加わった。 
手塚を中心にしてどんどん人が集まるように見え、リョーマは小さく微笑んだ。 
(アンタの周りには人が集まるんだね……それだけ人間的な魅力があるってことかな…) 
そう考えて、リョーマはふわりと頬を染める。 
(オレが……好きになっちゃうくらいだし……) 
手塚を見つめているだけで、リョーマの心がほんのりと温かくなる。右手のリングも熱を持った。 
(部長に好きって言ったら……言えたら……いいのに、な…) 
そうしたら。 
きっと手塚は一瞬驚いた顔をして、そうして自分を力いっぱい抱き締めてくれるだろう。 
そして熱く口づけられ、すぐにすべてを奪い尽くしてくれるかもしれない。 
「ぁ……っ」 
ゾクリと、リョーマのカラダが疼いた。 
昨日触れた手塚の熱塊の感触を思い出し、身体の芯が震える。 
(何考えてんだ……オレは……っ) 
リョーマはブンブンと頭を振って、甘い願望を頭から追い出した。 
「何やってんだ?越前」 
「えっ?」 
いきなり桃城に顔を覗き込まれ、リョーマはビックリして一歩後退った。 
「うわ、お前、その顔………」 
「え?」 
桃城がいきなり頬を染めて視線を逸らしたので、リョーマは怪訝に思って首を傾げた。 
「…なんスか?」 
「何かお前、ヤラシイ顔してるぞ」 
「は?」 
内心ギクリとしながら、リョーマは眉を寄せて桃城を睨んだ。 
「なにそれ」 
「あー、いや、何か色っぽいっつーか」 
「意味わかんないっス」 
桃城を置いてリョーマがスタスタ歩き出すと、慌てて桃城が追いかけてきた。 
「まあ、怒るなって!」 
「べつに、怒ってないっス」 
「なぁ、越前」 
いきなり桃城に腕を掴まれてリョーマは立ち止まった。 
「今度、俺ん家、来いよ」 
「え?」 
「新しいゲーム買ったからさ、やらねぇ?」 
リョーマはすぐに断ろうと口を開いたが、ふと思い留まり、少し考えてから頷いた。 
(桃先輩の部屋を調べられるチャンスだ) 
「いつでもいいから来いよ。いつ来る?」 
桃城が嬉しそうに訪ねてくるのへ、リョーマはまた少し考えてから口を開く。 
「じゃあ、明日」 
「おっしゃ!明日、絶対な!」 
「ういっス」 
リョーマが返事をするのと同時にコートの中央から招集の声がかかった。 
「全員集合!」 
「ういーっス!」 
バタバタと部員たちが駆け足でコート中央に集まってゆく。 
リョーマもみんなのもとへ向かいながら、眉を寄せて溜息を吐いた。 
(もしも、不二先輩が『あの男』だったら、明日、桃先輩の家には行かない。でも不二先輩が違うなら……確かめないと…) 
さらにきつく眉を寄せてリョーマは俯く。 
(部長と…二人で過ごせるのも…もうそんなに長くはない、かな……) 
『あの男』を見つけ出したら、きっとリョーマは確信が持てた瞬間、その場でその人物を殴り倒すだろう。そうなったら、殴りつけた理由を部長である手塚に説
明しなくてはならない。なぜなら、『あの男』が不二であれ桃城であれそれ以外の誰かであれ、相手は『テニス部員』だからだ。 
部内の揉め事は、部長にきちんと説明しなくてはならない。 
そうしてそうなった時、リョーマはすべてを手塚に話すつもりでいる。 
(実は昨日が一緒に過ごせる最後の日でした、なんてなったりして…) 
自虐的な笑みを、リョーマは小さく浮かべた。 
つい三ヶ月ほど前まで、自分はこんなふうに誰かを失うことを恐れてはいなかった。 
もともと一人だと思っていたからかもしれない。 
だが今の自分は、手塚を失うことがつらくて堪らない。失わずにすむのなら、何でもしたいとまで思いそうになる。 
(カッコ悪い……) 
誰か一人に、こんなにも心を奪われるとは思いもしなかった。 
そうまで深く恋い慕える相手に出逢えたことは幸せだとは思うが、今のリョーマには、その出逢いがつらいものになってしまっている。 
「みんな、全国大会はご苦労だったね。よく戦ってくれた」 
顧問の竜崎が全国大会を戦った青学テニス部員への労いの言葉と、これからの練習方針などについて話し始める。 
全国大会が終わったことで三年は引退となり、すぐに開催される新人戦に向けて、新部長の下で部の活動が始まることにも触れた。 
(そっか……三年はもう、引退なんだ…) 
リョーマは竜崎の横に立つ手塚をふと見つめた。手塚の表情に変化はない。 
だがリョーマと目があった瞬間、手塚は寂しげに微笑んだ。リョーマにだけわかるほど小さく、一瞬だけの微笑み。 
(部長……) 
リョーマの胸が切なく軋む。 
部を引退したからといって一生逢えなくなるわけではないが、コートで会えない分、顔を合わす頻度は格段に少なくなるだろう。 
そしてもしも、リョーマがすべてを話して手塚に軽蔑されるようなことになったら、きっとそのまま、手塚はリョーマとは逢ってくれなくなるような気がする。 
(部長に…逢えなくなる………?) 
リョーマは愕然と目を見開き、そのまま俯いた。 
(部長に…逢えない……) 
今まで漠然と考えていたことがいきなり目の前に『現実』として突きつけられた気がした。 
        
         
         
         
         
         
         
         
         
 
何とか気持ちを切り替えて練習を終え、コートにブラシをかけながらリョーマは何度も溜息を吐いた。 
(部長に逢えなくなる…) 
まだ夏休み中は手塚を始め三年生は部活には出てくるが、新学期が始まると同時に新部長が選出され、新しい『青学テニス部』になってゆくのだ。 
リョーマはそっと手塚の座るベンチを見遣った。 
最近手塚は部室では日誌を書かず、練習終了後にベンチに座り、組んだ足の上で日誌を書いている。 
片づけやコート整備をする一年生たちは手塚がそこにいるだけで緊張し、以前よりも丁寧に整備をするようになった。手塚がその効果を狙っているのかはわからないが、リョーマの視線には気付かずに、手塚は今日も黙々と日誌を書きながら、そこに居る。 
だが手塚は、ふと視線を上げてコートを見回し、じっと自分を見つめているリョーマを見つけた。 
「…どうした、越前?」 
部長の顔をした手塚が穏やかな声で尋ねてくる。 
「………なんでもないっス」 
どこかいたたまれなくなって、リョーマは視線を逸らした。 
手塚が立ち上がる気配がする。 
「越前」 
すぐ傍まで来た手塚が静かに声を掛けてくる。 
「……なんスか、部長」 
いつものように素っ気なく言って振り返ると、小さく眉を寄せた手塚がじっとリョーマを見つめていた。 
「…やはり調子がよくないのか?練習中は精神力で身体を支えていたようだったが…」 
「大丈夫っス」 
手塚を見上げて、リョーマは小さく微笑んだ。手塚の表情も少し和らぐ。 
「越前」 
腕を組んだまま少し身を屈めて、手塚がリョーマだけに聞こえるように柔らかく名を呼ぶ。 
黙ったまま見上げていると、手塚の瞳が優しげに細められる。 
「着替えたら部室で待っていてくれるか?」 
「うん」 
コクンと頷くと、手塚は嬉しそうに微笑んだ。 
その笑顔をいつまで見ていられるのだろうかと思い、リョーマは小さく微笑み返しながら瞳を揺らした。 
         
         
         
         
日誌を届けに行く手塚の背中を見送ったあとで、部室に足を向けたリョーマは、ちょうど部室から出てきた不二と鉢合わせをする形で足を止めた。 
「ちょうどよかった、越前、話、聴くけど?」 
「あ、はい」 
「少し場所を変えようか」 
コート整備を終えた一年が部室へゾロゾロと入るのを見遣りながら不二が言う。リョーマも「ここでは落ち着けないっスね」と苦笑して場所を移動することにした。 
部室に出入りする部員からは死角になるようなコートの裏手へ回り、リョーマは不二と向き合った。 
「ここならいいかな」 
不二に柔らかく微笑まれて、リョーマはグッと両手を握り込んだ。鼓動が緊張したリズムで加速していくのがわかる。 
一度深く息を吐き出してから、リョーマは不二を真っ直ぐに見上げた。 
「不二先輩、ちょっと試して欲しいことがあるんス」 
まずはそれからだ、とリョーマは思う。 
「試して欲しいこと?」 
リョーマは頷いて右手を差し出した。 
「このリングが見える不二先輩なら、もしかしたら外せるんじゃないかと思って」 
「ああ、……なるほど」 
不二は笑みを消して頷いた。 
「やってみよう」 
不二がリョーマの右手をそっと掴み、リングを指先で摘んだ。 
「いくよ?」 
「はい」 
不二が指先に少しずつ力を入れて指輪を引っ張り始める。 
だが。 
「い……っ」 
「………動かないね」 
「………」 
引っ張られる指輪にくっついているようにリョーマの指の皮膚が動き、引き連れる。 
「回すのも……だめみたいだね」 
「………不二先輩」 
「ん?」 
そっと不二が離してくれた右手を見つめながら、リョーマが呟くように言った。 
不二の右手指にはリングは嵌っていない。だから、今は指輪を抜くことが出来ないことは、ある程度予想していた。 
ならば次の質問をぶつけるまでだ、とリョーマはすぐに思考を切り替える。 
「先輩の部屋に、何か青い四角いもの、ありますか?」 
「え?青い、四角いもの?」 
ゆっくりと、視線を不二に向けてリョーマは頷いた。 
「青い四角いもの、か……いろいろあるな……」 
「いろいろ?」 
「うん。自分で撮った写真とか壁に貼ってあるし…この前青い表紙の本も買ったし……」 
リョーマは少し考え込んだ。 
自分の見た、あの不鮮明な世界で見つけた「青い四角形」はそんなにたくさんはなかった。とにかく印象に残るような場所に、一つだけ在った気がする。 
「……じゃあ」 
リョーマは、とっておきの質問を、不二にぶつけてみることにする。 
「不二先輩の部屋にベッドあります?」 
「うん、あるけど?」 
「部屋のどこに置いてあるんスか?、間取り、教えてください」 
不二は短い沈黙の後で、しゃがみ込んで傍に落ちていた小枝を拾い、地面に四角を書き始めた。リョーマも一緒にしゃがみ込む。 
「…こっちが南で、ここに出窓があって、ドアがここ。で、ベッドはこの東側の壁にくっつけておいてあるよ」 
「あ……これって、頭は南の方に向けて寝るんスよね?」 
「うん」 
微笑みながら頷かれて、リョーマは全身の力を抜いた。 
「はぁ………よかった……不二先輩じゃなかった……」 
「……どういうこと?」 
笑顔のまま瞳を覗き込まれて、リョーマは「ぁ」と気まずそうに眉を寄せた。 
「実は、オレ……変な夢を見るんスけど……その夢に出てくる人が、オレと同じ指輪をしてて、オレの指輪を外せたんス」 
「ふぅん?……で、その部屋に『青い四角いもの』とベッドがあったわけ?」 
「あ……はい、そうっス」 
「夢、なんでしょ?」 
リョーマはギクリとして不二を見つめた。 
「……すごく…リアルな夢なんで……」 
「そう。それで僕を疑ってみたわけか」 
「すみません…」 
「気にしてないよ」と言ってゆっくり立ち上がる不二を見上げ、リョーマも立ち上がった。 
「あ…」 
だがリョーマは立ち上がった拍子に眩暈を起こし、倒れ込みそうになるのを不二の腕に抱き留められた。 
「………大丈夫?」 
「すみません…また寝不足気味で……わ」 
身体を離そうとしたがまたよろめいてしまい、不二の腕にギュッと抱き込まれた。 
「もしかして、無理して練習していたの?少し身体が熱いよ?熱があるんじゃない?」 
不二はリョーマの額にかかる髪を掻き上げ、自分の額を押しつけてきた。 
「せんぱ…っ」 
「微熱、かな……そんなに熱はないね。よかった」 
「不二先輩……あのっ」 
離れようと藻掻くリョーマの身体を不二は簡単に押さえ込む。 
「越前って、やっぱり細いね。こんなに華奢なのに、あんなショットを打つんだから、すごいな」 
そう言ってクスクスと笑いながらギュッと抱き締められて、リョーマの背筋にゾワリとした嫌な感覚が走る。 
「離してくださ…っ」 
リョーマは半ば突き飛ばすように本気で不二を押し退けた。 
「越前っ!」 
不二を押し退けた反動で脚が縺れて地面に座り込むのと、リョーマの大好きな声に名を呼ばれるのはほぼ同時だった。 
自分の傍に駆け寄ってきた手塚を見上げて、リョーマはほっと安堵の息を吐く。 
「何をしていたんだ、不二?」 
「越前と指輪のことを話していただけだけど?」 
きょとんと視線を向けてくる不二を、一度きつく睨んでから手塚は小さく溜息を吐いた。 
「大丈夫か?越前。……立てるか?」 
「はい……平気っス…」 
手塚に支えられるようにして立ち上がると、リョーマは手塚を見上げてニッコリと微笑んだ。 
「ありがと……部長…」 
「いや……」 
リョーマのウエアに付いた土を軽く払ってやる手塚を見ながら、不二は「ふぅん」と呟いた。 
「キミたち、いつから付き合ってるの?」 
「え?」 
不二の言葉にリョーマは一気に頬を染め、大きく見開いた瞳で不二を見つめた。 
だが手塚は、短い沈黙の後、落ち着いた口調できっぱりと言った。 
「いや、俺たちは付き合ってはいない」 
「ぶちょ……」 
「すまない、越前」 
「え……?」 
手塚はリョーマに小さく微笑みかけると、真っ直ぐに不二を見た。 
「勝手に俺がまとわりついているだけだ。越前のことは、そういう目で見ないでやってくれ」 
「………」 
不二は意外そうに目を見開いてからスッと細め、探るような視線を手塚に向ける。 
リョーマは、何も言えずに立ち竦んだ。 
「まあ……そういうことにしておこうか」 
小さく溜息を吐いて、不二が呟くように言った。 
「越前、指輪の話とは……昨夜、また何かわかったことでもあったのか?」 
話題を切り替え、手塚がリョーマに優しく訪ねる。リョーマは一瞬間をおいてから首を横に振った。 
「特には何も……ただ、不二先輩は指輪が見えるから、もしかしたら外せないかなって…」 
「不二にも見えるのか?」 
手塚が少し驚いたように目を見開き、不二の腕を掴んだ。 
「え?何?手塚」 
「お前も越前と同じリングを嵌めているのか?」 
不二の左右の手を交互に見ながら手塚が問う。その手塚の行動に、不二は少し驚いたふうに小さく目を見開いた。 
「………いや、僕は着けてないよ」 
手塚は我に返ったように「すまない」と言って不二の手を離してから、小さく溜息を吐いた。 
「…越前と対のリングを嵌めているわけではないのに、なぜ不二には越前のリングが見えるんだ?」 
「さあ……僕にもそれが不思議なんだ」 
リョーマのリングに視線を向けながら言う不二を、手塚は少しの間、眉を寄せてじっと見つめた。 
「…とりあえず、今日はもう帰るよ。また何かあったら教えてね、越前」 
「ぁ、はい」 
頷くリョーマに微笑みかけてから、不二はバッグを担ぎ上げて二人に背を向けた。 
「………」 
「……越前」 
呼ばれて手塚を振り仰ぐと、手塚にじっと見つめられた。 
「部長?」 
「ん……いや……帰るか?」 
「はい」 
リョーマはコクンと頷き、手塚とともに部室へ向かって歩き始めた。 
         
         
         
         
         
         
         
         
         
手塚と共に家へ帰る道すがら、リョーマはずっと先程の手塚の言葉が頭から離れなかった。 
         
『勝手に俺がまとわりついているだけだ。 
 越前のことは、そういう目で見ないでやってくれ』 
         
不二の、そしてひいては世間からの、奇異なものを見るような視線から、リョーマを庇ってくれた。 
自分を盾にして。 
そしてその言葉は、手塚の本心を表しているに違いなかった。 
(部長は……自分だけが相手のことを好きなんだと、思っているんだ…) 
つまり手塚は、リョーマも手塚を好きだと言うことを、本当は信じてくれていないのだろう。 
それは当然と言えば当然のことだった。 
リョーマは手塚に対してはっきりと意志を示したのではないし、「好きだ」という言葉を口にしてもいない。 
ただ手塚に流されるまま、拒めないままにズルズルと疑似SEXを続けているだけだと、思われているのかもしれない。 
(オレは……部長に、ひどいことをしているんじゃ……) 
手塚が心から自分を大切に想っていてくれることはリョーマには痛いほどよくわかる。 
切ないほど真剣で、深くて、決して一時的な感情ではないということも。 
だが、だからこそ、このまま手塚に想われていてはいけない気がしてきた。 
リョーマの身体が男に何度も蹂躙され、その行為を受け入れ始めていると知った時、手塚は自分の恋情が踏みにじられたと感じるかもしれない。 
それは時間が経てば経つほどに、重い傷になる気がした。 
「……どうした?越前」 
「………え?」 
「学校を出てからずっと……何か考え事をしているだろう?」 
「……部長のこと、考えてるっス」 
「え?」 
「…え?あ!いや、その……えっと…」 
頬を真っ赤に染めて俯くリョーマを、手塚はじっと見下ろした。 
「越前」 
「………はい」 
手塚が足を止めたので、リョーマも立ち止まった。 
もうすぐリョーマの家に着く住宅街の真ん中で二人は見つめ合う。 
「…不二とは二人きりで会わないで欲しい」 
「え?」 
「唯一指輪が見える不二を頼りたくなる気持ちはわかるが……アイツと指輪の件で話がある時は、俺も同席させてくれないか?」 
なぜ、と訊こうとして、リョーマは口を噤んだ。 
手塚が、不二に嫉妬してくれている。 
「あ………の……」 
リョーマは手塚が嫉妬してくれるのが堪らなく嬉しい。今すぐに手塚を抱き締めたいほどだ。 
だが同時に、切なく、つらい。 
もうすぐ自分は、手塚からそんなふうに想ってもらえなくなるだろう。そう思うと、胸が締め付けられるように、痛む。 
リョーマが黙っていると、手塚は小さく苦笑した。 
「……さっきは……自分でも驚くほど、嫉妬した……お前には迷惑かもしれないな…」 
「そんなことはないっス」 
真っ直ぐ手塚の瞳を見つめながら、リョーマはきっぱりと言った。 
「さっきは、アンタが来てくれて本当にホッとしたっス。不二先輩にはその気はなかったみたいっスけど……身体に触られて…嫌だったから…」 
「越前…」 
「ぁ……」 
自分で言った言葉で、リョーマは改めて自覚した。先程不二に抱き締められて感じたのは、快感でも情欲でもなくて、嫌悪感に近かった気がする。 
不二のことは嫌いではないが、好きでもない相手、しかも同性にきつく抱き締められて嬉しがる男は少ないだろう。 
(オレのカラダは……誰でもいいわけじゃないかもしれない……) 
そのことにホッとしかけ、しかし、そうなるとまた別の不安が胸に込み上げた。 
(じゃあ、オレはアイツに好意を持っているってこと……?) 
しかも、それが肉欲に繋がるほど強い好意である可能性がある。 
(そんなバカなこと……) 
また黙って俯いてしまったリョーマを、手塚はどこか心配そうに覗き込んだ。 
「越前?」 
「え……」 
リョーマが顔を上げると、すぐ傍で手塚がふわりと微笑む。 
「今日も…部屋に……上がっていいのか?」 
囁くように尋ねられ、リョーマの身体がゾクリと震えた。 
不二に抱き締められて感じたのとは全く違う、艶めいた感覚。 
「もちろん。……昨日……そう約束したじゃないっスか」 
頬を染めて、上目遣いに手塚を見上げると、手塚の頬も微かに色づいた。 
手塚が「部屋に上がる」ということが、他のことを意味しているように思えて、リョーマはさらに頬を熱くする。そして「それ」を期待している自分が恥ずかしい。 
「……早く…行こうよ、部長」 
頬を染めたまま視線を逸らしてそう言ったリョーマの頭を、手塚が優しく撫でる。リョーマがまたチラリと視線を向けると、そこにはさらに優しげな手塚の微笑みがあった。 
「部長…」 
「ん?」 
リョーマは自分の髪を撫でる手塚の手を握ると、そのまま手を引いて自分の家へと早足で歩き始めた。 
手塚も黙ってついてきてくれる。 
「ただいま!」 
「お邪魔します」 
シューズを脱ぐ間だけ手を離し、手塚が脱ぎ終えたのを見てすぐにまたリョーマは手塚の手を取った。 
階段を軽く駆け上がるような勢いで登り、自分の部屋に直行する。 
部屋に入ってドアを閉めた途端、リョーマはバッグを投げ出して手塚に抱きついた。 
「越前…?」 
「オレはアンタに流されてなんかいない」 
「え?」 
手塚の胸に顔を埋め、呟くように言うリョーマを手塚がそっと覗き込む。 
「アンタが勝手にまとわりついているわけじゃない」 
「………」 
「ごめん、部長………オレなんかが………ごめん……」 
         
(もっと早く、アンタを好きになりたかった…) 
         
手塚のバッグがドサリと足下に落ち、リョーマの身体がきつく抱き締められる。 
「なぜ謝るんだ?………俺の方こそ…こんな俺の想いは、お前には負担じゃないのか?」 
リョーマは俯いたまま首を横に振る。 
「男の俺に抱き締められて、身体中触られて……本当は逃げ出したいんじゃないのか?」 
リョーマは力いっぱい、首を横に振る。 
「ならばどうして……」 
手塚はその先を言わずにリョーマをさらにきつく抱き締めた。 
切なげに零される吐息がリョーマの耳にかかり、リョーマのカラダが発情する。 
「触って……部長……」 
「越前……」 
きつく抱き締めていた手塚の腕が弛み、優しく髪を撫でられる。そのまま首筋を滑り降りて、その指先がリョーマの頬で止まった。 
「キスも……まだ、だめなのか?」 
吐息が唇にかかるほど近くで囁かれ、リョーマは軽く眩暈を起こす。 
「……部長…今まで、誰かとキスしたこと、ある?」 
「なぜ?」 
「誰ともしたことないなら、オレにもキス…しないでください………オレなんかが部長のファーストキスの相手になるなんて…できな……」 
後に続く言葉は、すべて手塚の唇に吸い取られていった。 
言葉だけでなく、リョーマの呼吸も、思考も、すべて手塚に奪われる。 
「ん……っ」 
「………っ」 
息を継ぐ間も惜しむように二人は深く深く、互いの唇を貪る。 
舌を熱く絡め合い、唇を吸い上げ、口蓋から舌の裏側までもすべてを舌で撫で上げた。 
「……ふ…ぅ…んっ」 
激しく口づけあいながら崩れるように座り込み、互いのズボンのベルトを外し、手探りでファスナーを下げる。 
手塚の手が先にリョーマの熱塊に辿り着き、すぐに優しく揉まれ、扱かれて、リョーマは鼻にかかった甘い声を漏らした。 
「ん……んっ」 
手塚の左腕がリョーマの肩に回され、ゆっくりと押し倒されてゆく。 
のし掛かるようにして口づけられ、熱塊を強く扱かれて、リョーマは我慢できずに手塚の首に腕を回して腰を揺らした。 
「んっ、あ……ぶちょ……っ」 
「……越前……っ」 
クチャクチャと湿った粘着音が聞こえ始める。リョーマは、自分の雄の先端がすでに濡れているのを感じた。 
「ぶちょ……そんな…したら、…も……でちゃ…う、よ……っ」 
「……」 
手塚は吐息でふっと笑い、身体を起こしてリョーマの中心に顔を埋めた。 
「やっ!な……に……っ!」 
卑猥なほどの音を立てて、手塚がリョーマを口で愛撫し始める。 
「あ、あっ、あ……っ!」 
射精を促すようにきつく吸い上げられ、ひとたまりもなかった。 
「あぁっ、あああ………っ!」 
リョーマの腰が浮き上がり、痙攣し、硬直する。 
一気に追い上げられた割には長く尾を引く絶頂だった。 
「あ……ぁ……」 
すべてを吐き出し終え、弛緩してゆくリョーマの中心から、手塚がゆっくりと顔を上げる。 
リョーマを見つめたまま、濡れた口元を手の甲でぐいっと拭う手塚の仕草に、リョーマの心臓がドキンと大きく音を立てた。 
二人ともほとんど服を乱さないまま、呼吸だけを乱して見つめ合う。 
そうして見つめ合ったまま、手塚がゆっくりとリョーマに覆い被さってきた。 
「………」 
「………」 
黙ったまま見つめ合い、言葉を交わさないまま、再び甘く口づけあう。 
あまりの幸福感に、涙が出そうなほどリョーマは幸せだった。 
手塚の指先が再びリョーマに触れてくる。 
「ぁ……あ、んっ」 
唇が触れそうなほど近くで見つめられ、リョーマはその恥ずかしさに目を閉じる。すると、顔のあちこちにキスを落とされた。 
「ぶちょう…」 
リョーマが睫毛を震わせながら薄く目を開けると、手塚が微笑んで唇にもキスしてくれた。 
「や……もっと……」 
触れるだけのキスではなく、もっと深く、すべてを奪われるようなキスが欲しい。リョーマが瞳でそう訴えると、手塚はまた微笑んで深く口づけてくれた。 
(ごめんね、部長………今だけ……もう少しだけ……) 
唇を離そうとする手塚を何度も引き留めてキスをねだる。 
手塚に甘く深く口づけられながら、リョーマはその後続けて2回の絶頂を味わった。 
         
         
         
「ぶちょう…」 
「ん?」 
いつの間にか運ばれていたベッドの上で、手塚に抱き締められながらリョーマは気怠げに口を開く。 
穏やかな手塚の声が触れ合った部分から全身に広がるようで、リョーマはあまりの心地よさにそのまま眠りに落ちそうになる。 
だが何とか目を開けて、そっと手塚の胸に頬を擦り寄せた。 
「キス………初めてじゃなかったんスか?」 
「……え?」 
呟かれたリョーマの言葉に手塚は小さく目を見開いた。 
「だって……初めてならキスしちゃダメだって言ったのに……部長……したじゃないっスか……」 
「ああ………」 
そう言うことか、というふうに小さく微笑んで、手塚はリョーマのこめかみに口づけた。 
「正真正銘、初めてのキスだ」 
「え……!」 
リョーマはビクリと身体を震わせて、グッと唇を噛み締めた。 
罪悪感が、胸一杯に広がり始める。 
「…どうした?」 
「ごめん………部長の初めてのキスだったのに……オレなんかに……」 
「越前?」 
手塚から離れて身体を起こしたリョーマを訝しげにじっと見つめてから、手塚もゆっくりと身体を起こした。 
「………お前は初めてじゃなかったのか?」 
包み込むように背中から抱き締められて、リョーマは頬を染める。 
「ぁ………いや、その………挨拶程度のなら……何回か……」 
「………」 
リョーマの答えに手塚は一瞬沈黙し、そして深い溜息を吐いた。 
「そうか……挨拶程度でも、妬けるな……」 
ギュッと抱き寄せられ、リョーマの身体が手塚に倒れ込む。いつの間にか完全にズボンと下着を脱がされている下半身がはだけたシャツの合間から覗き、リョーマは慌てて膝を立てた。 
「それで俺が初めてならだめだと言ったのか?」 
「………」 
リョーマが曖昧に頷くと、手塚はクスッと笑みを零した。 
「挨拶程度のキスを経験済みだからと言って、俺は気にしないぞ?」 
「ぶちょ…」 
「お前が本気で好きになった相手がいて、その人と想いを込めたキスをしたことがあるというなら傷つくかもしれないが、な」 
「そんなのいないっス」 
「…なら、いい」 
満足げに囁いて、手塚がリョーマを抱き締め直す。 
後ろから肩口に唇を寄せられ、リョーマはゾクリと身体を震わせた。 
「………部長…」 
「…ん?」 
「部長は……もしも恋人がいたら、浮気とか許さないタイプ?」 
「え?」 
手塚がふっと顔を上げる。 
リョーマにはその表情が見えなくて、この質問を続けるのが、ほんの少し怖くなる。 
だが訊いてみたいと、リョーマは思う。 
その返答次第では、リョーマにもまだ望みがあるかもしれないのだ。 
「………浮気、か…」 
手塚は少し考え込むように黙り込んだ。 
リョーマには何時間にも思えるような数秒の沈黙の後、徐に、手塚が口を開いた。 
「…俺は、それほど出来た人間じゃないな」 
「え……」 
「自分の恋人が、他の人間に触れられたかと思うだけで冷静ではいられない。きっと……許せないと思う」 
「………」 
リョーマは絶望に目を見開いた。 
呼吸が止まり、鼓動が妙なリズムを刻み始める。 
「…どうかしたのか?」 
カタカタと小さく震えだしたリョーマを不思議そうに見つめながら、手塚が尋ねる。 
「なんでも……ないっス……」 
なんとかそれだけを言って、リョーマはベッドを降りた。 
ガタガタ震えそうになる手足を叱咤し、平静を装って下着とズボンを身につけ始める。 
「越前」 
「…なんスか」 
服を整えるフリをして手塚を見ずに答えると、手塚もベッドを降りて近づいてきた。 
「明日も部活のあとで、逢いたい」 
後ろから抱き締められ、リョーマのカラダが甘く震えた。 
「………明日は、だめっス」 
「なぜ?」 
「明日は……桃先輩の家に行く約束してて……だから…」 
「桃城の家に?」 
手塚の声に剣呑な響きが混ざったのを感じて、リョーマは恐る恐る手塚を振り返った。手塚はきつく眉を寄せてリョーマを見ていた。 
「いや、あの、遊びに行くって言うことにしてますけど、本当は、オレ、確かめたいことがあって行くんス」 
「……確かめたいこと?」 
誤解されたくなくて、リョーマは慌てて「部屋の様子と間取りをこの目で確認しに行く」のだと説明した。 
「そういうことか。……ならば俺も一緒に行こう」 
「え?部長も一緒に来てくれるんスか?」 
嬉しそうに言うリョーマに小さく目を見開いてから、手塚もふっと微笑んだ。 
そうしてくれるなら心強い、とリョーマは思う。 
もしも桃城が『あの男』だった場合、その正体を見抜いて殴りつけたリョーマにどんな仕打ちをしかけてくるかわからないからだ。 
「越前」 
「はい」 
「お前は、夢に出てくる男を見つけてどうするつもりなんだ?指輪を外してもらいたいだけなのか?」 
「え………まあ………そうっス」 
言葉を濁すリョーマに小さく眉を寄せた手塚は、だが、「そうか」と言っただけでそれ以上は追及してこなかった。 
「そういえば、課題は進んだのか?」 
「へ?」 
大真面目な顔で訊かれ、リョーマは一瞬答えに詰まった。だがすぐにプッと吹き出してクスクス笑い始めると、手塚がきつく眉を寄せた。 
「課題は何とかなるっス。まだ少しは夏休みもあるし」 
「ならば、今度の土日はずっとつきっきりで見てやる。いいな?」 
手塚にふわりと微笑まれて、リョーマの頬が真っ赤に染まる。 
もしも、桃城が『あの男』だとしても、今度の日曜を過ぎるまでは殴りつけるのは我慢しようかと、リョーマは思う。 
(最後の、休日になるかもしれないから……) 
心の奥でそう呟きながら、リョーマは手塚を見上げた。じっと見つめ返され、リョーマのカラダが甘く疼く。 
手塚に見つめられるだけで、リョーマのカラダは発情し始める。 
「部長……キス…」 
言い終わる前に手塚に引き寄せられ、唇を奪われた。 優しく、甘く、深く、だが魂ごと持って行かれるような熱い口づけに、リョーマはうっとりと瞳を閉じる。 
(部長……) 
早く手塚を解放してやらなくてはならないとは思う。 
だがリョーマはもう、自分から手塚の傍を離れることができなくなっているのかもしれない。 
(でもきっと、もうすぐだから……だから…あと少しだけ……このまま……) 
閉じた瞳の睫毛が、切なさに小さく震える。 
         
        指輪の謎も、『あの男』の正体も。 
すべての真実を知る日が、すぐそこまで近づいてきているように、リョーマは感じていた。 
         
         
 
         
         
         
          
         
         
         
         
         
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        20060208 
         
         
          
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