小児病棟

  小児病棟というのは、少し特殊な病院です。
まず第一に驚いたのは、平日は病院で出されるおやつ、食事以外は口にする事が出来ません。
彰にとって、これが一番辛かった事です。
今まで好きな時にジュースやお菓子を手にしていたのですから当然です。
食事も、もちろん栄養等を考えているせいでしょうが「美味しい」とはお世辞でも言えません。

抗がん剤等の治療で食欲が落ちてしまう子供たちにとって、好きな物が食べられないのは辛い事でしょう。
ただ週末の土・日だけは家から おかずのみを持ち込んで良い事になっていました。
入院中の子供たちには、この日が楽しみで何日も前から、「あれを持って来て、これを作ってきて」とあちらこちらで注文の声が聞こえます。
中学2年といっても、まだまだ子供です。
彰も「唐揚げ」「春巻き」「春雨サラダ」等、調子の良い時は あれこれ注文してきました。

  入院の初めは、なかなか病院に慣れず苦労しました。
中学生の男の子は病棟には一人(骨髄移植をした子が無菌室にいました)、あとは赤ちゃんから小学生迄 総勢
20人位、それは大変な騒ぎです。

慣れないのに加えて、抗がん剤の副作用で身体の具合は悪いしで、この先どうなるのか本当に不安でした。
思春期に入った、この位の年齢になると大人と同じ扱いの病院が良いのではないかと随分悩みました。
担当の看護婦のTさんに相談した事もありました。
>「今までとは、あまりに環境が違うので、それだけで相当参っているみたいです。このまま治療に耐えられるか  どうか・・・。もし差し支えがなければ、どこか大学病院へでも紹介して頂けないでしょうか?」
>「わかりました。転院の事は先生と相談してみます。多分、大丈夫だと思います。でも、ここには学校があります  。そう言う事もよく考えられて、1ヶ月待ってみませんか?1ヶ月様子をみて難しいようでしたら、そういう方向   へもっていきませんか?」
今、考えると軽率な考えでした。
いつの間にか、ここの生活に慣れ、小さい子供たちに折り紙を折ってあげたり、彰のベットの周りには、小学生の子供たちが何人か集まってゲームボーイをしたり、すっかり お兄ちゃんになり私をビックリさせました。

学校の先生方にも、随分助けられました。
この先生方がいらして下さらなかったら、ずっとつまらない入院生活になっていたでしょう。
入院当初、彰の事が心配で交換日記をしていただきました。