第四段
ある日の夕暮れ〜背につつぎつ。
エリスとの出会い
教材観
人生の危機が迫ったある日の夕暮れ、エリスと運命的な出会いをする。真っ直ぐに家に帰らず三百年前のロマンに浸ろうとクロステル巷の教会の前に来る。豊太郎はいつもここで恍惚としてたたずむ。
この日もこの所を恍惚気分で過ぎようとする時、すすり泣きをする超美少女に出会う。彼女は父親の葬式の金が工面できず途方に暮れて、家の向かいの教会の前で泣いていたのである。その魅惑的な目で一顧された豊太郎は彼女の魔性の虜になってしまう。ただでさえ恍惚としていたので、臆病な心は憐憫の情に打ち勝たれてしまう。
商売女を買うことさえ出来ない豊太郎が見ず知らずの少女に声をかけるなど、あり得ないことである。憐憫という冷静な気持ちではなかったであろう。
エリスも初対面の外国人にペラペラと身の上を打ち明ける。豊太郎は事情を聞いて、とにかく家に送って行こうとする。もしかしたら、父を亡くしたという共通点に惹かれたのかもしれない。困っている人があれば助けてあげなさいと言う躾けを受けてきたからだろうか。彼女が若くも美しくもなければどうであったか。彼女の魔法というしかない。彼女は人目をいとわしく思っているが、彼女の家は教会の筋向かいである。送っていくもなにもない。
彼女が母親に「エリス帰りぬ」という声で彼女の名前を知る。また表札からユダヤ人らしいことも知る。家に入って言い争う声するが、母が慇懃にわびたことから、「どこの馬の骨か」と母親に言われて、エリスは「金を貸してくれる」とでも言ったのだろう。
そしてエリスは、豊太郎が知りもしない座頭の名前を出して「自分が愛人にならなければならないので、金を貸してくれ」とはっきり申し出る。例の、人には否とは言わせぬセクシービームで豊太郎を見るのである。それは意識的か無意識かと書いているが、意識的かと疑っていること自体、十分意図的であったと豊太郎が回想している可能性がある。有体に言えば、豊太郎はエリスに引っかけられたのである。金にうるさい母の影響を受けて、エリスも金勘定に長けていたのかもしれない。
豊太郎が時計を質草に貸すのだが、その時必然的に自分の住所を告げる。その時計は豊太郎にとっても手放せないものであったからであろうが、二人の関係が始まるきっかけになる。ウブな豊太郎はそこまで考えていないだろうが。エリスも、当座の葬式代さえ調達できればよく、その後の豊太郎との関係までは考えていなかっただろう。
指導のポイント
エリスに声をかけた豊太郎の気持ち、豊太郎に声をかけられた（させた）エリスの気持ち、エリスの目の魅力、金の無心、豊太郎の思惑について考える。
書いてないことを大問で質問する。
展開（板書は緑色）（質問は赤色）
１．「学習プリント第四段」を配布する。
２．「ある日の夕暮れ〜我がそばを飛びのきつ。」を口語訳し、舞姫チェック１〜10をさせる。
・「7.少女は超美少女だった。」は、自分に詩人の才能がなければ表現できないという所を根拠にしている。
３．豊太郎が歩いた教会までの道を確かめる。
・動物園→ウンテルデンリデン通り→クロステル通り→マリエ教会
・下宿はモンデシュウ街にあるので、クロステル通りの教会は寄り道になる。
・三百年前の遺跡をみて恍惚となるのを楽しんだ。
・留学直後は、あだなる美観に心を動かさないでおこうとしていたのに、美観に関心を持つようになっていた。
４．「５．ある日の夕方、教会の前で少女と出会う」についてまとめ、質問する。
1)少女の様子
・年は十六、七才。
・生徒と同じぐらいの年令。
・超美少女。
・詩人の才能がなければ表現できないほどという形容の仕方に注意する。
・もしエリスが美しくなければ声をかけたか。
・清くもの問いたげな憂いを含んだ目。
・目の表現に注意する。
・父の葬式の金がないので、泣いていた。
2)豊太郎の対応
・憐憫の情が臆病な心に打ち勝って、声をかけた。
大問１ なぜ臆病な豊太郎が憐れみだけで声をかけたのか？
・泣いている事情は後から聞いたことであり同情するのはおかしい。
・豊太郎の側の理由としては、
・留学直後なら声をかけたか。
・自我に目覚めで自由になっていた。
・自我に目覚めた直後なら声をかけたか。
・当時の地位が危うく不安定な精神状態であった。
・ウンテルデンリンデンの繁華街なら声をかけたか。
・教会の前で恍惚としていたから。
・エリスの側の理由としては、
・エリスの目が、憂いを含んでいた。
大問２ なぜエリスは人目につく教会の前で泣いていたのか？
・教会は家の近くにある。
・金が工面できず、家に帰れずに、途方に暮れていた。
・誰かが声を掛けてくれるのを待っていた。
・とすれば、豊太郎は引っかけられたことになる……。
・ここでは答えは出ないが、エリスに対する疑義を提示しておく。
４．「人の見るがいとはしさに〜背にそそぎつ」を口語訳し、舞姫チェック11〜22をする。
・「16．エリスは地方出身者である。」は、言葉に訛りがあることを根拠にしている。
・「17．愛人になれと迫られていた。」は、身勝手な言い駆けを根拠にして類推する。
・「19．ＭＵＧＯん・色っぽい」は、工藤静香のナンバーだが、生徒にはやや古いか。でも、カラオケで。
５．「６．エリスに金を貸して窮地を救ってやる」をまとめ、質問する。
大問３ エリスは母に何を話したのか？
・母親の対応が一変するような内容であるから、金銭に関したことである。
・エリスは豊太郎が金銭的に援助してくれる。
・しかし、豊太郎は「力を貸す」とは言っているが、「金を貸す」とは言ってい ない。
・エリスは最初から金を借りるつもりで豊太郎を家まで案内した。
・エリスは金を貸してくれるカモを探していた可能性が強まる。
大問４ 豊太郎が大金を貸してやろうという気になった理由は？
・自分も父を亡くした同じ境遇だったからから。
・エリスの人には否とは言わせない媚びを含んだ目。
・意識的？無意識？
・意識的か無意識か、と書いた時点で、意識的であった疑いを残している。
・大事な時計だったので質受けしたかったので、住所を教える。
・エリスに住所を教えたことにより、二人の交際が始まる。
６．まんが「舞姫」とハーレクインロマンス風「舞姫」を配布する。
７．あらすじを70字以内でまとめさせ、感想を書かせる。その時に、エリスを演じるにふさわしいと思う日本人の女優、タレントも書かせる。
・1)ある日の夕暮れ、2)教会の前で3)父の葬式の費用がなくて泣いている4)エリスに出会い、家まで送り、5)金を貸してやる。（51字）
・エリスを演じるタレントは、集計し、顔写真をつけてプリントして、生徒に配布する。
生徒の感想
▼母のもとで勉強一本でやってきた豊太郎にとって、初めての母以外の女性に目が移ってしまった、惹かれてしまったのかな。
▼精神的に不安定だった豊太郎が自分を必要としてくれる人＝自分の居場所がほしかったんだと思う。豊太郎は誰からも認められていないような状況だったから、自分を認めている人がほしかったんだと思う。たとえ相手が金だけを目的にしていたとしても。
▼自分の行為を涙を流して喜んでくれた人など豊太郎の
人生には１人もいないだろうからうれしかっただろう。
▼豊太郎がエリスに金を貸したのは、豊太郎と同じく父を亡くしたエリスに同情したのも理由のひとつだと思った。
▼エリスも美人だったんだろうけど、雰囲気に当てられたって感じが否めません。例えるなら、合コンでとなりに座ってた女があくびをしたとき、偶然目がうるんだ瞳に「見つめられている」と思い込んでしまうって感じですね。
▼少女が教会の前で人目につくところで泣いていたのは、よほど誰かに助けてほしかったんだろうなと思った。きっと誰も頼る人がいなくて孤独だったんだろうな。
▼エリスは「悪女」の素質がある。きっとうまくひっかかってくれるバカな男を待っていたんだ。だからわざわざ人目につくところで泣いていたんだ。そして自分の美しさを使っておカネを借りたんだ。この推理がもし正しければエリスはかなりやり手だ。
▼人目につくところで泣いていて、色っぽい目でいやと言わせない。実はとてつもない知能犯だ。
▼なぜ教会の前で泣いていたかはよくわからないけど、わざとではないと思う。きっとお金を集めるために、街中を走り回ってけど見つからず、困っていたのではないだろうか。そんな彼女の気持ちが豊太郎に伝わってお金を貸したのだと思う。
▼エリスはどうせ捨てるれると思って読むと、何とも言えないなあ。むしろ、この段落って不幸の始まりのような気がする。
▼エリスも人間なのだから、きっと心の中に罪悪感はあっただろう。豊太郎もどこか自己満足のためにしているような感じがした。なんか男女の区域が垣間見えていいやな感じだなと思った。
▼この話に出てくる少女は超美少女なのだ。それは空想の中で最高の形で表されている女性だ。そんな人を現実の人間に当てはめてしまったら、この話に登場するこの美しい少女が固定されてしまって全くつまらないものになってしまうのではないかと思う。お話しである以上自分の中で無限に連想できる美しい少女にしておきたいと思う。
▼私の中でのエリスの想像図は、美人で華やかで、その分気が強くてプライドも高くて、自分でも気づかないうちに周りを引きつけていく女性だった。宝生舞みたいな。ところがどっこい、これじゃまるで松田聖子やーん。かなりショック大きかった。女の子をか弱さを武器にして男に媚びる女性は大嫌いだ。グリム童話でも何でもそうだけど、所詮可愛い女性が幸せになれるのかなぁ。世の中って理不尽だなぁ。エリスを演じるとすれば誰がいいか？ エリスでイメージした人は松田聖子なんだけど、質問は「演じるとすれば」だし、
松田聖子はちょっとキツイ。おでこにシワ寄せて上目使いにされてもお金なんて貸さないと思う。演じてもらうなら菅野美穂がいいなぁ。あの人道で泣いていたらそれだけで可哀相だし、守ってあげたくなるし、私が男だったら真っ先に助けに行く。たとえ本性はか弱い女の子でなくっても、あの人だったらまんまと騙されてしまうなぁ。質問が「ドラマにするのだったら」なら話は別。菅野美穂だと、「かわい子ぶってる」って疑う余地がないから、榎本加奈子でいいです。あの人、音無可憐やってたし、そういうイメージがあるから。
 １位 14票菅野美穂 生年月日：1977年8月22日 出身地：埼玉県 血液型：ＡＢ |
 ２位 ９票安達祐実 生年月日：1981年9月14日 出身地：東京都 血液型：Ａ |
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 ３位 ７票松嶋奈々子 生年月日：1973年10月13日 出身地：神奈川県 血液型：Ａ |
 榎本加奈子 生年月日：1980年9月29日 出身地：東京都 血液型：Ｂ |
 葉月里緒菜 生年月日：1975年7月11日 出身地：東京都 血液型：Ｂ |
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 ６位 ４票奥菜恵 生年月日：1979年8月6日 出身地：東京都 血液型：Ｏ |
 深田恭子 生年月日：1982年11月2日 出身地：東京都 血液型：Ｏ |
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９位 ３票 上原多香子
10位 ２票 稲森いずみ 広末涼子 加藤あい 松田聖子 本上まなみ 内山理名 吉野さやか