第一段
はじめ〜文につづりてみん。

復路の船中での豊太郎


教材観

 小説の枠組みの部分である。五年前の往路ではいくらでも文章が書けたのに、復路では全く書けない。
 その理由は、ドイツで無感動の習性がついてしまったからでもあり、自分自身を信じられなくなったからでもあるが、最も大きな理由は「人知らぬ恨み」である。
 そのため、せっかくの景色や遺跡にも心が動かず、他の客とも会話を交わすことができず、非常に激しい苦痛を感じていた。
 船はサイゴンの港で石炭を補給するために停泊していて、他の船客は陸のホテルに宿泊していている。幸い、中等室にはわたし一人しかいない。その正体について書いてみる。それが、「舞姫」である。


指導のポイント

 擬古文になれることと、この小説のテーマが「人知らぬ恨み」の正体を考えることを確認する。サラッといこう。


展開板書は緑色)

1.教師が原文で最初の部分を音読し、擬古文であることを説明する。
 ・「これは現代文ではない」という声が予想される。明治以降に書かれたものは現代文の分野に入ることを説明する。

2.「学習プリント第一段」を配布し、原文を読まずに、口語訳をしていく。
 ・口語訳することによって、言葉の壁を超えて話の面白さや読解に重点を置く。口語訳を聞き取り、舞姫チェックでどれだけ聞き取れたかを確認する。
 ・学力の高いクラスでは、原文を読む。舞姫チェックでどれだけ理解できたか確認する。古文の速読になる。

3.舞姫チェックに答えさせ、あらすじを把握する。
 ・往路と復路の気持ちの違いに注意する。
 ・留学先で何があったのかという疑問を投げかける。

4.「0.復路の主人公の気持ち」をまとめる。
 a)ドイツで無感動になった。
 b)自分自身が信用できなくなった。
 c)人知れぬ恨みに悩まされている。
  ・無感動や自分自身が信じられなくなったことも、正体の一つになっている。

5.人知れぬ恨みが「舞姫」のテーマになっていること、その正体を探るために後の部分が書かれていることを確認する。
 c)人知れぬ恨みに悩まされている。
   正体を探究する
     ↓
   「舞姫」執筆動機=「舞姫の」テーマ

6.あらすじを70字以内でまとめさせ、感想を書かせ、提出させる。 (○付き数字と下線はポイント)
 ・@五年前、官命を受けてA洋行したが、Bその帰りの船の中でC人知らぬ恨みのために頭を悩ませていた。そのD概略を文に綴ろうとしている。(60字)

7.まんが「舞姫」を配布する。
 ・20年ほど前、東京の女子高生が書いた漫画。ストーリーに忠実で、理解の援助になる。


生徒の感想

▼なぜ主人公が人知れぬ恨みに悩んでしまったのか、理由が知りたいと思った。 ▼自分の悩みを頭で考えずに、文章にしてみることも、悩みを解決する一つの方法だと思いました。 ▼どんなことか彼をここまで悩ませているのかを知るのが楽しみである。 ▼作者は日記が書けない理由をすでにわかっているのだと思っていたが、その正体をまだはっきりさせてないという場面から始まっていたので、第一段落を読んだだけでも先を読まずにいられないと言う思いになった。
 

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