はじめに


教材観

 母子家庭でありながら英才教育を受けて大きくなった豊太郎が、ドイツに留学して、自我に目覚め、反抗をしているうちに免官の危機に陥る。
 そんな時に出会ったエリスと深い仲になり、貧しいながらも楽しい刹那的な生活をおくる。
 しかし、エリスが妊娠し、豊太郎は慌てる。
 そんな時に、友人の相沢が大臣を紹介してくれる。優柔不断は豊太郎は相沢にはエリスと別れると約束しながら再びエリートへの道が開けた自分の立場に気がついていない。
 そして、大臣に付いて日本に返ることを約束した豊太郎は、そのことをエリスに説明できずに病に倒れる。その間に相沢が処理をしてくれて、エリスは発狂するが、豊太郎は日本に返ることになる。
 豊太郎には一点の相沢を憎む心があって、帰途の船中で日記の筆が進まない。


指導のポイント

人生相談「仕事か?恋愛か?」によって、楽しく導入


展開

1.「仕事か恋愛か」と原稿用紙を配布する。

2.補足しながら読み、仕事か恋愛か、どちら選択するかアドバイスすることを指示する。
 ・自分ならどうするかでなく、超エリートであるTならどうするべきかを考える。
 ・明治という時代も念頭に置いて考えさせる。

3.それぞれの場合の問題点を簡単に指摘し、思考を深めさせる。
 ・仕事を選ぶ場合、Eやお腹の中の子供を捨てなければならない。
 ・Eをこっそり連れて帰るのは、制度的にも金銭的にも不可能である。
 ・日本で出世して迎えに行くとして、そこまで愛情が続くか、日本で結婚しないのか。
 ・恋愛を選ぶ場合、当時の日本人はドイツでの地位は低く、留学生でなくなれば簡単に仕事に就くことはできないので、経済的に苦しくなる。
 ・日本でTの帰りを待っている母をどうするのか。母の願いはTの出世であり、家を立派に継いでくれることであり、ドイツに残ってEと暮らすことは許さない。

4.原稿用紙に、仕事か恋愛かを明記させ、その理由を書かせる。
 ・机間巡視しながら、早く書けた生徒のものを読んで、ツッコミを入れる。
 ・また、近所の生徒同士で話をさせながら書かせる。

5.教科書を開かせ、「仕事か恋愛か」が「舞姫」の前半のあらすじであることを説明する。
 ・「舞姫」は擬古文で書かれていて読みにくいが、内容的には現代的なテーマを取り上げている。
 ・ただ、現代とは状況が違うので、みんなが考えているようには展開しない。
 ・仕事か恋愛かを考えると同時に、明治の日本や日本人が何を考えていたかを学習することを目的に、授業を進めることを予告する。

6.次の時間に、仕事派と恋愛派の人数と主な意見をまとめたプリントを配布する。

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