仕事か？　恋愛か？

　明治の中期、日本は富国強兵をスローガンに、外国に追いつくために優秀な青年を留学させ、西洋文化を吸収させることに国の運命をかけていた。
　そんな青年の１人にＴがいた。Ｔは幼い頃に父を亡くし、母の手一つで育てられたが、よく勉強し東京帝国大学をトップで卒業した超エリートだった。Ｔは出世して母の恩に報いるため、年老いた母を残してドイツに留学する。しかし、３年後、自分の人生に疑問を抱き始める。
　ある日の夕暮れ、街角で泣いているドイツ人の超美少女の踊り子Ｅに出会う。父を亡くし明日までにまとまった金を作らなければ、身を売らなければならなかった。Ｔは自分でもなぜだかわからないまま、Ｅに金を貸して助けてやる。それが縁でニ人の清らかな交際が始まった。
　だが、それが原因で、留学生仲間や上司の反感を買い、クビになってしまう。出世の道は閉ざされ、ドイツに残るか日本に帰るか、究極の選択を迫られる。しかし、Ｅや日本にいる親友のＡの援助で、貧しいながらも楽しい生活を営むことができた。
　ある日、親友のＡが大臣の秘書としてドイツにやってくる。Ａは超エリートだったＴの才能を惜しみ、大臣に紹介しもう一度出世のチャンスを与えようとする。しかし、その条件として、Ｅと別れるように迫る。卑しい職業のＥと付き合っているというスキャンダルは出世の妨げになるからである。ところが、その時、ＥはＴの子どもを身ごもっていたのだった。
　Ｅへの愛のためにドイツに残れば、外国人であるＴにはいい仕事がなく、親子３人暮らしていけるかわからない。また、母の待つ日本に帰ることも出世のチャンスも二度となくなってしまう。かといって、母や出世のために日本に帰れば、自分の子どもを宿し自分を信じてくれているＥを裏切ることになる。また、日本に帰って出世をしてからＥを日本に呼ぶというほど当時の日本は甘くなかった。
　仕事を選ぶか、恋愛を選ぶか、決断を迫られたＴは大いに悩んだ。

仕事派　４１人
★理由は仕事か恋愛かでなく恋人か母親で決めた。自分を育ててくれた母に恩を返したいなら日本に帰るべきだと思う。女手ひとつで育てでくれたからこそ、親孝行をしなければならないと思う。親孝行したい時に親はいないということもあるのだから。留学のために行った国で恋愛するということがそれなりのリスクがあるのは分かっていたはずなのにこういう風になってしまったのは自分が原因や。だから、それぐらいの覚悟は必要やと思う。
★せっかく東京帝国大学をトップで卒業し、超エリートになったのだから、出世していった方がいいと思う。
★恋愛を選んでも幸せにはなれへんと思う。国際結婚ってお互いの文化の違いがあるから難しい。結婚って恋愛の方じゃなくって、生活の方の延長線にあるものやから、苦労することが目に見えている結婚はすべきじゃない。
★貧しい生活が続くとどうしても離婚したくなると思うし、それらのことを言いに話せば、きっと分かってくれると思うし、運命だと思ってあきらめるしかないと思う。
★最初の留学の目的は、富国強兵のためのものであったのだから、日本へと帰るべきである。日本で待っている母は仕事で息子を送りだしただけであるのに、それを裏切ることになる。それに、子供が生まれてしまうと、Ｅと子供の両方に情が生まれてしまうと思う。それならば、子供を身ごもっているとはいえ、Ｅと別れることができると思う。
★もし、Ｅと子供をとれば、Ａの誘いを断ってしまうことになるわけです。ということは、Ａの援助がなくなる可能性があるわけです。そうなってしまうと、ますます貧しくなってしまう。それに子供も、生まれてくるのにお金が必要です。お金がなければ、子供すら生めるかわからないのです。もし生めたとしても、今の状態では、一家３人、生きていけるでしょうか。はっきり言ってまず無理でしょう。それに母を捨てることをなんてできません。Ｅを愛していた時間より母を愛していた時間の方が、はるかに長いわけです。
★自分にとって、何が心を埋めてくれるのか？何が欲求を満たしてくれるのか？を見極めることが大切だ。私にとって、それは仕事である。しかも、この場合、自分には、才能、知識、経験、チャンスがあるのだ。恋人というものは、いたらいたで幸せであるが、いなくても生きてはいける。それに、人間には必ず飽きというものがやってくる。相手との相性にもよるが、将来、恋愛を選んだこと後悔するようになる可能性は高いのだ。しかし、仕事は人間を裏切らないし、高い収入、名誉をまでくれるのだ。
★大体エリートというのは、出世のためなら何でもするような人が多いので、きっとＥを裏切って日本に帰ってゆくだろう。
★Ｔが母親に育てられ援助を受けて留学生に選ばれた人だったんだから、そのことは絶対守るべきだと思います。母は年老いているのだし恩に報いるために頑張ってきたのだから、それに反するのは違うことだと思います。
★外国の女に手を出さなくても、日本にもいっぱい女がいるからＥに絞る必要はない。日本に帰れば母親とともに暮らせるし、出世すれば親孝行もできる。だからＥなんか捨てて、自分に戻り、出世して金持ちになって、いい奥さんとともに生きてゆくのがいいだろう。また、定職につくことも大切だから、自立するということも将来的に考えると、そっちの方が良いので、日本に帰って仕事をするべきだ。
★別れるためにＥに冷たく振る舞い嫌いにさせるしかない。仕方のないことだ。それが現実なんだから、生きるためには手段を選んではいけない。人間にとっての１番の幸せは生きていることなのだから。
★現代の話だったらひどい選択だけど、明治なら仕事を取って当たり前だと思う。今まで頑張ってきて、超エリートになって出世しをした人がただの踊り子のために人生棒に振るなんてばかげていると思う。Ｅだって身分もわきまえずに恋したわけだし、仕方がないと思ってあきらめてください。
★恋愛を選んだ場合、相手のことが嫌になったときどうしようもないしなぁ。お金ないのに都市に住んだら、どうせ悲惨な目に遭うと思うけど。大体仕事か恋愛か、と聞かれたときに、どっちを選らぼうと思った時点で、その恋愛は仕事と同じ程度やったんやから、絶対とは言わへんけど後悔するんじゃないかな。
★ＡはクビになったＴにチャンスをくれたけど、今回は、Ａが仕掛けてきたことだから、Ｔが恋愛を選んだら、きっとＴを見放すだろう。出世したいから別れるじゃないけど、別れたらＴは出世できるかもしれない。Ｅは外国人と付き合っていることによって、回りの人から白い目で見られていたのと思う（当時は差別がとてもあったと思うから）。

恋愛派　６２人
★自分を信じてくれる人を裏切るのは一生後悔することになるから、日本に帰ってエリートになってお金目当てで近づいてくる女とつきあうんだったら、ドイツで自分を信じてくれる人と親子３人で暮らして行く方が確実に幸せになれるだろう。Ｔは母子家庭で育ってきたのだから子供にとって父親がそばにいることが大切だとよく知っているはずだし、Ｔは恋愛を選ぶと思う。
★この悩みは仕事か恋愛かでなくってお金か愛する人かの選択になると思う。★超エリートの才能を持っていても、どんなすごい人でも、一人の女性を守ることができない人は男じゃないと思う。
★Ｔは自分の人生に疑問を抱き始めていたのではなかったのか。超エリートコースを歩んで来たＴ。きっとＴは、自分はいったい何のために生きているのか分からなくなってたのじゃないかと思う。だったら愛するＥとその子供のために親子３人で暮らすという道を選べばどうだろうか。
★日本にいる母のことは気になるけど、母はもう年をとっていて、先が短いから。自分の子供はこれからの子だし、父なし子にはできないからです。子供は自分の血を引いているんだから頭がいいかもしれないし、ドイツで成功できるかもしれません。
★母のためにというのも、世話になったからといって一生を母に捧げるのもどうかと思う。自分の人生なんだから。
★ここで私が考えたいのは、「本当の幸せ」ということです。幸せにも人それぞれいろいろな種類の幸せがあると思います。仕事か恋愛かと言われたらどちらにも「幸せ」というものがついてくると思います。例えば、仕事をとったなら金銭的にも地位や名誉もおまけに付いてきて生活は「楽」といういう文字や「華」という文字でまとめられるだろう。しかし、心の安心が仕事をとったときとは違うと思う。家族との精神的な関心が本当の幸せというくれるんだから。
★今ここでＴが日本に帰れば、Ｅは母と同じように苦労すると思う。苦労している母を見て育ったのでＥを同じ目にあわしたくない。
★多分どっちを取ったにしても１度は自分の選択を後悔するだろう。でも男としてのけじめはつけるべきだし、出世して金で解決しようなんていう冷めた人間にならないでほしい。恋愛はお金では買えないし、もしかしたら、こんな運命的な出合いはもうないかもしれない。だからＴは恋愛を選ぶべきだと思う。
★ラブ・イズ・オールだから。確かに金はたいていの問題を処理できる。金で女も買えるし人の心も動かせる。だけど、Ｅとの間にできた子供は１度手放したら二度と取り戻せないだろう。だから愛。Ｅを信じて自分の未来を信じてひたすら愛を貫きとしましょう。相手の心変わりを不安に思ったりするのは恋愛においてはルール違反なので、あくまでＥを信じることを忘れずに。
★僕はお金（仕事）より愛が大切だと信じています。生活が苦しいのは仕方ないと僕は割り切れます。貧しくても毎日、仕事の量からすると割の合わない安い給料の仕事をして疲れて帰ってきても、自分の１番愛している人が子供と迎え入れてくれたらどんなに幸せでしょうか。
★仕事か恋愛のどちらかを選ぶということは本来はできないことだと思う。仕事と恋愛は全く別のもので、比べられるのではないからだ。しかし、現実にこのような状況がありうる。女の人が男の人に、「私と仕事のどっちが大切なの」とかいう場面をドラマなどで見かけるが、そんなことを言っても仕方ないことだと思う。しかし比べられないものを比べて、どちらにするかを決めなければならないのが現実である。この場合、どちらにするか決める際に１番決定的となったことは、Ｅが妊娠していることだ。母親は１人でも回りに誰か気遣ってくれる人がいるかもしれないが、Ｅは一人になってしまうと本当にそう一人きりだ。妊娠していれば働くこともできなくなる。そんなＥを残していくなんて、できるはずがないと思う。Ｔが守ってあげなければならない。お金がなくても、愛があればよい、とは言い切れないかもしれないか、それでも愛は必要だと思う。
★東京帝国大学出のエリートかもしれないが、その人生に疑問を抱いている。ということはこれまで必死に勉強などしてきたが、それが正しいとは思えていない。ならば今正しいと思う道を進むべきだ。たとえ貧しくても、愛すべき人がいればそれでいいと思う。　　　　　　　　　　　　　　　

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