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教材観


転校生の私の希望は、退屈な平和である。私の努力によって、同級生は私を受け入れ、上々のスタートを切る。吉沢先生、姉、アッコ、主要人物も登場する。
転校生として紹介される小学校五年の私。
先生が黒板に名前を書くことで私という存在を踏みにじられ、学校のものになっていく。学校での生活が一番長くなり学校を人生とするようになる。
前に立っている間、耳が聞こえなくなる。緊張などしておらず、田舎者の同級生を冷静に観察している。彼らを一言「鳥獣戯画」と表現している。鳥や獣が雑然と集まっているというイメージである。田舎臭い彼らを軽蔑していないが、素朴で暖かいと受け入れる気もない。
私には大勢の中から友達を選べるが、彼らは私を受け入れるか拒否するかの選択しかない。しかし、それは私にとって非常に危険なことでもある。彼らに好かれるのは面倒くさいが、嫌われるのはもっと嫌である。私の望みは退屈な平和、水のような人生、つまり学校生活がうまく運ぶことである。言葉が人間の印象を決めることは知っているから用心しなくてとは思う。
教壇から降りた途端に耳が聞こえるようになる。彼らとの会話の中で互いに違いを認識しあっている。彼らは団体で私は一人である、そういう自分の強さに我ながら感心する。マニュキュアなどを見せながら大サービスをし、嫉妬することなど思いも寄らない田舎臭い女の子や、行動が容易に予測できる男の子を虜にしてしまい、当分の間の安息を確保する。
そこに、いじめの理由になる吉沢先生が登場する。格好よくて教育熱心で面白い吉沢先生は生徒に人気がある。私もいいなぁと思う。しかし、彼は私の姉にいちころにまいってしまうタイプであるが、姉は相手にしないタイプである。姉は高校生二年の不良少女だが、誰にも反抗しないので親も好感を持っていたし、私も大好きである。ここで、私、吉沢先生、姉の主要人物三人が登場する。後は恵美子だけである。
私は、学校で退屈な平和を満喫していた。遅れている授業、目に映るものだけに反応する友達、物欲しそうだが卑しくない目で私を見る女の子、好意を隠しながらからかう男の子、愛すべき先生方。私は人間には大人と子供という分け方があると思い、さかんに分類する。友達には子供が多く、先生も子供が多い。しかし、アッコと呼ばれる男の子だけは、おふざけを含ませることなく真っ直ぐ見つめることの出来る大人である。


いじめがはじまる。恵美子の存在といじめの様子をまとめる。
私は気持ちのよい人生を送っていたが、このまま安定しないだろうという不安が的中した。原因は吉沢先生の露骨な贔屓で、口火を切ったのは学級委員長の恵美子であった。陰惨な空気は以前から燻り始めていたが、恵美子の「いい気になっちゃってさ」という一言で空気は一変した。それは彼女の最初の「泣き声」であった。恵美子は自己主張が上手で成績もよくクラスの中心である。そして、吉沢先生が好きであった。私も野暮な彼女を馬鹿にしていたふしもある。原因は吉沢先生の贔屓にあるのだが、嫌悪感は快活な先生ではなく、私に向けられる。吉沢先生はずるいと感じる。
翌日からクラスの様子も大きく変わる。さらに、私の余計な一言で、悪気のあるおふざけから険悪なものへ変わる。


クラスの女の子が私をいじめる理由。ある種の宗教であるいじめのシステム。先生の対応。そして、私の気持ちを考える。
恵美子の吉沢先生への執着心がクラス全員を動かすようになった。先生に憧れている女の子は、恵美子なら許せるが私は許せない。都会人である私に吉沢先生をとられると、田舎者である自分たち全員が否定されることになる。しかし、恵美子なら同じ田舎者同士なのでいいという理屈である。
教室の中には私をいじめることを信仰の証とした宗教がはびこる。宗教というのは、理屈はなく、救済されたいという不安に支えられた情念である。みんな原因は分からないが何となく痒いような気がする。それを誰かが引っ掻くと、本当の痒さが生まれる。だからまた引っ掻く。すると、たまらなくなって一斉に引っ掻かなくてはいけないという強迫観念にかられ、憑かれたように指を動かさざるをえなくなる。私は、自尊心に支えられて平静を装う。それが、みんなにまだまだやれるという目安になる。
私は不良になるには若過ぎるし、登校拒否になるには家族が大人過ぎて心配してくれない。
先生には期待していない。子供は無責任だから自分で決定するより先生に決めてもらう方が楽だと考えて変わっていく。それを「先生の教え」という美名で飾るのは大人だけで、子供はやり口をわきまえた打算で動いている。さらに、この痒みは先生にも伝染する。担任の先生も、水のような安楽な生活を望んでいるので、子供に迎合した方が楽であると悟り、ことあるごとに私を叱り始める。先生は、私にも心があるということを忘れてしまう。私は、絶望に陥る。感情が抜け、体がだるくなり、何も見えなくすることで精一杯であった。


エスカレートするいじめの狂気に死を考え始める私の気持ちを考える。
ある日、吉沢先生に手紙を書いている恵美子の横を通りかかる時、自分の事で笑ってしまったのを誤解される。田舎臭い女の子たちは、人が人に魅せられるのに順番があると思っている。恵美子は私を悪者にしたいためだけに泣き始める。女の子の行動はエスカレートし、「死んじまえ」と言いながら私を足蹴にするまでになった。狂気のはりついた野獣と化した彼女らは、道徳も常識も感情も存在しなくなり、獣としての習性をまっとうさせる欲望だけで動いている。
私は、叫び声をあげることもせず、体に触れてほしくないとだけ思っていた。漠然と私が死ぬことを本当に願っているのかと感じていた。私は本気の殺意を感じていたので抵抗しなかった。私は息をしていたいと思った。
そこに吉沢先生が飛び込んできて怒鳴る。その言葉が私を救うことにならないことに気づかないことに情けなくなって私は泣きだす。しかし、不本意ながらこの場から逃れるために吉沢先生に肩を抱かれて出るしかない。すると、吉沢先生の励ましの声に再び悲しくなって涙が出てくる。
保健室で横になりながら、世の中はなぜこんな愚かしいことで成り立っているのか、私と子供の世界に合わないのではないか、年令によって住む世界が決められていることは差別ではないかと思う。私は人生に疲れ、人生はいらないと思い始める。


復讐のために遺書を書く私と、家族の愛情に死ねない自分の「責任」を強く感じる私、その甘い哀しみについて考える。
その夜、私は遺書を書く。死ぬことによって復讐をしようと考える。誰がどんなことをしたかを克明に書き、一生ぬぐい去れない恥をかかせる、子供染みた考えだが、私は真剣である。
首を吊るための縄を探しに下に降りた時、呑気な母と姉の会話が耳にはいる。その中の姉の言葉の、いじめっ子連中を心の中で殺していったという大事な言葉は聞き流してしまっている。
私のためにシュークリームを作ってやろうという愛情を感じて、私は愕然とする。家族の日常は流れている。私も日常に組み込まれている。その私が突然欠けてしまえば日常は成立しなくなる。誰かが日常を故意に乱すことは最も嫌悪することで、クラスが私にしたことを、私は家族にしようとしている。これでは死ねない。自分が死ぬことは怖くないが、残された家族のことを考えると怖くなる。この時初めて「責任」という足枷に気がつく。私は幸せな奴隷だった。死ぬと決心した時より、生きなければならないと思った時の方が泣ける。世の中の悲しいものが流れていくような泣き方だった。その甘い悲しみは死ぬことをやめさせて私を眠りに誘い込もうとする。


代行の先生の言葉と昨夜の姉の言葉で、軽蔑することによっていじめを克服する。風葬の墓地のある私の心象風景について考える。
翌日、生きる気力をなくしたまま登校する。担任の代行の先生が蚊の話をする。自分の血を吸う蚊をじっくり監察していて、腹一杯になって満足に飛べなくなってから一気に叩きつぶす。同じ痒いなら殺しやすい方を選ぶ。これが、昨夜の姉の話とオーバーラップする。
すると、涙が出るが、昨夜の涙とは違う。それは出口を見つけた嬉し涙であった。いじめさせるだけいじめさせておいて、一気に殺す。今度は逆に笑みがこぼれてきた。すると、アッコの足に触れたいという「欲望」が生まれる。「欲望」は生きていることの証である。私は人間であったと実感する。
私は「ブス」と言う恵美子に「どっちが」と返す。その言葉には、「軽蔑」が含まれている。それが私の生み出した人の殺し方だった。自分を人間だと思っている彼女をまず動物にまでおとしめて、じわじわと殺していく。いつでも殺人を犯せる能力を持っているということは、生き方を変える。わざと吉沢先生の気を引いて、それに反応する女の子たちの顔を見るのを楽しむ。それは周りの女の子には出来ない。そういう軽蔑をくれてやることで一人一人殺していく。最近沈みがちな死にゆく恵美子を微笑みながら見ている。
死んだ人を野ざらしにしておくことを風葬というが、それは当然の報いであって残酷なことではない。私の心の中には墓地があり、風葬にされた女の子の死骸が散乱している。


展開

1)第六段までのプリントを配布する。
2)教師が音読する。
3)読後、最も気になった箇所を指摘し、その理由や自分の意見があれば書く。

1.登場人物について

1)主な登場人物を挙げさせる。
・本宮杏、吉沢先生、姉、アッコ、恵美子
2)主な特徴を指摘させる。
  1)本宮杏(私)
・小学校五年
    ・女の子
・都会からの転校生
    ★都会からの転校生であることが重要である。
  2)吉沢先生
・体育の先生。
    ・若くて女の子の間で人気がある。
・やんちゃで、少し不真面目で。
    ・姿が良い。
・真剣で、教育熱心。
    ・冗談も面白い。
 ↑
    ・私もいいなぁと思っている。
★女の子に人気があるポイントを考える。
  3)姉
・高校二年。
    ・誰に反抗するでもない不良少女。
・暴力をふるったり、人に迷惑をかけるのでなく、煙草を吸ったり、セックスしたりする。
      ↑
・父や母も好感を持っている。
    ・私も大好き。
  4)アッコ
・大人の子供
  5)恵美子
・学級委員
    ・吉沢先生が好き
・自分を主張するのが上手
    ・成績もよい
・クラスのお友だちを引きつける
      ↑
・私は、野暮な所を馬鹿にしていた。

2.私と学校について

●第1段「鳥獣戯画という〜と思い途方に暮れるのです。」

1)「私の名前がはくぼくに踏みにじられる」の意味を考える。
  ・私の名前=私という個人
  ・踏みにじられる=否定される
  ・私という個人が否定され、集団の一員になる始まり
2)「学校を人生にする」の意味を考える。
  ・人生=一番時間をかけていること
  ・学校=眠るより長い時間生活をする所
  ・学校が生活の大部分を占める。
3)「学校のものになる」ことが「途方に暮れる」ことになるのはなぜか。
  ・私という個人を殺して生活しなければならないから。


3.私とクラスの友だちとの関係について

●第1段「鳥獣戯画という〜と思い途方に暮れるのです。」

1)教壇の上から見下ろすと耳が聞こえなくなるのはなぜか。
  ・自分の世界に入って観察している。
2)私と皆の立場の違いは何か。
  ・私には大勢の中から友だちを選ぶことができる。
  ・皆には私を受け入れるか拒否するかの2つしかない。
  ★結局、二つの内、拒否を選ばれることになる。
3)教壇を降りると耳が聞こえるようになったのはなぜか。
  ・学校のものになったから。
4)冒頭の「鳥獣戯画」の意味は。
  ・同級生が鳥や獣に見えた。
  ・私が紹介された時に皆がお腹をすかせた雛鳥のように見えたり、私をいじめる同級生が獣になったりする。


4.私の望む人生について

●第1段「鳥獣戯画という〜と思い途方に暮れるのです。」

1)どんな人生かを探させる。
  ・水のような人生
  ・退屈な平和
2)どうすれば水のような人生が送れるかを考える。
  ・好かれるのは面倒くさい。
  ・嫌われるのはもっと嫌。
    ↓
   ・嫌われなければいい。
  ★人間関係に煩わされない生活。


5.私の皆に対する気持ちについて

●第1段「休み時間に、最初、〜転校生を迎えた経験もあまりないのです。」

1)言葉に対してどう思ったかをまとめる。
  ・田舎臭い。
  ・軽蔑はしてないが、受け入れもしない。
  ・言葉が人間を決めるのだから用心しなければと思う。
  ★後で失言がいじめの決定打になる。
2)女の子に対して、マニュキュアをみせびらかすのはなぜか。
  ・憧れる女の子を田舎臭さを計算していたから。
  ・嫉妬など思いもよらない純朴さに感謝する。
3)男の子に対して、女臭さを認めて笑わせるのはなぜか。
  ・行動は容易に予測がつくから。
  ・人生経験が足りない。


6.私の先生への接し方について

●第1段「その愛すべきものたちのひとつに〜苦笑せずに入られませんでした。」

1)先生の私への言動と私の先生への対応を順を追って抜き出す。
  1)先生は、私に好かれたがっていた。
  2)先生は、意識して、他の子供の前では私に厳しくする。
  3)私は、先生にだけ解るように睫毛を震わせる。
  4)先生は、廊下で合った時に慈愛に満ちた表情を浮かべる。
  5)私は、天真爛漫な笑顔を浮かべて許してあげる。
2)先生が私に厳しくした意味は。
  ・私を特別扱いしていないことを示す。
3)私が睫毛を震わせた意味は。
  ・しおらしく反省しているフリをして良心を刺激する。
  ・良心の呵責が気持ちよいことを知っていた。
  ・人が気持ちよくなることは自分も気持ちよくなるという法則を練習した。
4)先生の慈愛に満ちた表情の意味は。
  ・厳しくしたことへの自己弁護。
  ・私に好かれたい。
5)私が笑顔を浮かべた意味は。
  ・先生を、暗い気持ちから脱出させてあげる。
  ・私は、先生というのも素朴なものだと感じる。


7.大人と子供の分け方について

●第1段「私は人間には〜私はとても驚きました。」

1)大人と子供の分け方の基準は何か。
  ・実際の年齢ではない。
  ・精神的な成長の度合い。
  ・クラスの友だちは子供が多い。
  ・先生にも子供が多い。


8.いじめのはじまりについて

●第2段「私は彼が授業の最中〜子供のすることは予測がつかないからです。」
●第3段「それにしても、今さらのように〜欲望を満たそうとしているのです。」

1)女の子の間で、陰惨な空気が充分に流れて出口を見つけているような感じがあったことを確認する。
2)「陰惨な空気」とは何か。
  ・みんな吉沢先生が好きである。
  ・恵美子なら許せるが私では許せない。
3)私では許せない理由は。
  ・恵美子は、自分たち同じ田舎の子供である。
  ・私は、都会の子供である。
  ・私に吉沢先生をとられることは、田舎者である自分たちも否定されたことになる。
  ・「彼女たち全員の存在価値が崩れてしまう」
4)きっかけになったのは何か。
  ・恵美子の「いい気になっちゃってさ」という言葉。
  ・最初の反逆の言葉。
  ・最初の泣き声。
5)「泣き声」と表現されている意味は。
  ・泣き声は、弱い者が強い者に発する。
  ・いじめとすると、私が恵美子に対して発することになる。
  ・しかし、ここでは、恵美子が私に発しているのはなぜか。
  ・田舎者である恵美子の都会人である私に対する劣等感。
  ★テキストでは、恵美子がクラスの女の子の母親の死に対して「泣き女」になった部分をカットしてあるので、正しい読み かわからない。


9.いじめの構造について

●第3段「私は自分が生贄にありつつある〜指を動かされるを得なくなるのです。」

1)いじめを一種の宗教と言い換えていること、痒さに譬えていることを確認する。
2)いじめが発生する過程の比喩についてまとめる。
  a)ただ痒いような気がする。
  b)誰かが引っ掻く。
  c)本当の痒さが生まれる。
  d)また引っ掻く。
  e)掻かなくてはいけないという強迫観念に駆り立てられる。
  f)憑かれたように指を動かされるを得なくなる。
3)いじめに置き換える。
  a)何となく嫌悪感を感じる。
  b)恵美子の一言。
  c)いじめる理由が生まれる。
  d)またいじめる。
  e)いじめなくてはならない。
  f)訳も分からずいじめる。
4)どの部分が宗教になるのか。
  ・強迫観念
  ・憑かれたように
  ・理性では判断できないものによって、集団としての一体感を味わうために、多くの人が同じ行動をする。


10.私の対応について

●第3段「掻きむしられた私に〜何も見ないようにするだけで精一杯です。」

1)不良になるには年令が若すぎる。
2)登校拒否になるには家族が大人過ぎる。
  ・私に干渉しないので無関心である。
3)平静を装う。
  1)( )に入る私の持ち前は何か。
    ・自尊心
  2)みんなの受け取り方は。
    ・まだまだやれると思ってさらにいじめる。
  3)先生も気がつかない。
    ・先生の教えがあれば解決する。
    ・子供は無責任だから、自分で決定するより先生にゆだねた方が楽である。
  4)先生までいじめに加担する。
  5)私の陥った感情を( )内に入れる。
    ・絶望


11.エスカレートするいじめについて

1)狂気の張りついた獣のような瞳とはどんなものか。
  ・道徳も常識も感情も存在しない。
  ・習性をまっとうしようとする欲望
2)私の反応ばどうか。
  ・叫び声をあげることはしなかった。
  ・私の体には触れてほしくない。
  ・本物の殺気を感じていたから抵抗しなかった。
3)冒頭の「鳥獣戯画」との関係を考える。


12.遺書について

●第5段「ママ、パパ〜縄の代わりになるようなものを見つけてこようと思いました。」

1)遺書を書く目的は何か。
  ・死ぬからには誰かが損をしなければならない。
  ・私が死んだ後で、恵美子を初めとするクラス全員が後悔を引きずって生きる。
  ・恵美子やクラスの友だちが、私に許されることなく一生を終える。
  ・彼らに一生かかっても拭いさることのできない恥を残す。
  ★しかし、私が死んでも、彼らは損をしたり恥を残すことにならない。私の幼さの表れである。
2)何を書くとメモしたか、それはなぜか。
  1)いじめた人の名前
    ・恵美子、女の子全員の名前、男の子の全員の名前
    ・私が死ぬからには誰かが損しなくてはならない。
  2)どういうふうにいじめたか。
    ・世間をあっと言わせる。
  3)いじめた理由。
    ・理由なし。
    ・吉沢先生を悪者にしたくない。
  4)終わりの言葉。
    ×一生恨んでやる。
      ・遺書が読まれる時には死んでしまっているので文脈がおかしい。
    ×一生たたられるだろう。
      ・怪奇映画のようである。
    ○死んだ後も許さないでしょう。
    ○泣いてすむと思わないでください。
      ・許されることなく一生を終えることほど恐ろしいものはない。
3)メモを書き終えて私はどんな気持ちか。
  ・短い一生を終えるのは嫌。
  ・死ぬ気になってできることなど一つもない。
  ・死んでしまった方がやり遂げられることもある。


13.母と姉の話を聞く。

●第5段「寝室からの父の声に〜とうとう出来ませんでした。」

1)私が死ぬというのに私のためにシュークリームを焼く相談をしていることを確認する。
2)なぜ母と姉の話を聞いて愕然としたのか。
  1)家族の日常は流れている。
  2)私も家族の日常に組み込まれている。
  3)私が突然欠ければ、家族の日常が成り立たない。
  4)クラスの友だちは、私の日常を乱した。
  5)日常生活を乱されることは、私が最も嫌悪すべきことである。
  6)私が自殺すれば、家族の日常を乱すことになる。
  7)私は家族に対して最も嫌悪すべきことを行おうとしている。
3)( )内に死ねない理由を表す言葉を入れる。
  ・責任
  ・家族に対する責任
4)「幸せな奴隷」とはどういう意味か。
  ・奴隷=足枷がかけられ拘束され自由がない。
  ・幸福=家族に愛されていることに対する責任という幸せな足枷である。
  ・家族の愛情という足枷をかけられ、死ぬという自由を奪われた。
5)私が泣いた理由は。
  ・死ぬと決心した時は、いじめに対して何もできない悔しさの為に泣いた。
  ・生きなくてはいけないのだと気づいた時は、家族に愛されている嬉しさの為に泣いた。
  ・甘い悲しみ。
6)眠ってはいけないと思った理由は。
  ・自殺しなければならないから。
  ・しかし、家族の愛に報いるという生きる責任の方が強かった。


14.いじめを超える私の論理について

●第6段「何が可哀相なもんか。〜心ん中で殺していったのよ。」

1)先生の話の内容をまとめる。
  1)自分に止まっている蚊を観察する。(私をいじめるクラスの友だちを観察する)
  2)蚊はいい気になって血を吸う。(友だちはいい気になって私をいじめる)
  3)蚊は腹一杯になって腕から離れる。(友だちは私をいじめて満足する)
  4)蚊は腹一杯だから満足に飛べない。(満足してうまく動けない?)
  5)そこを一気に叩きつぶす。
2)私の場合と重ねる。
  ・1)の( )内。
3)姉の話とは何か。
  1)いじめっ子をひとりひとり殺していった。
  2)自分の心の中で殺していった。

●第6段「その授業が終わり〜じわじわと殺していくのです。」

4)私の生み出した殺し方とは何か。
  ・( )に殺し方の二文字を入れる。
    ・軽蔑
  ・自分を人間だと思っている愚かな友だちを動物までおとしめる。
  ・じわじわと殺していく。
  ★冒頭の「鳥獣戯画」と重なる。

●第6段「私は、目頭が熱くなるのを〜トイレに行こうと立ち上がりました。」

5)目頭が熱くなった理由は。
  ・いじめを超える方法を発見した喜び。
  ・気持よくさせた相手をつぶしてもう一段上の快楽を手にする。
  ・残酷な喜び。
  ★昨夜の涙は、家族に愛されるいる幸せな喜びであった。
6)人間として生きている証とは何か。
  ・欲望
7)食べることや寝ることでなく、なぜアッコの汚れた上履きに触れたい欲望に駆られたのか。
  ・生死にかかわる本能的な生物的な欲望ではなく、もっと高次元の人間的な欲望。
  ・マスローの欲求階層
     ・生理的欲求→安全の欲求→所属と愛情の欲求→自尊の欲求→自己実現の欲求


15.私の心象風景

●第6段「いつでも殺人を犯せる〜若いただの生きものなのです。」

1)私の心の中の墓地とは何か。
  ・私が殺した友だちの死骸が野ざらし(=風葬)にされている。
2)それをどのように思っているのか。
  ・残酷だとは思わない。
  ・いじめた友だちは当然の報いがあるべきだから。
3)草や木は何を表しているか。
  ・クラスの友だち。

●第1段「夏休みの間に私と私の家族は〜秋が始まりつつあるのを嘆くのです。」

4)この部分の草や木の意味について考える。
  ・あまりにも若く逆に私に殺されてしまったただの生きもの。
    ↑
  ・草や木は私をちっぽけなものだと思っている。
  ・自分よりも草や木の方が生きている、強いと思っている。
  ・草や木に殺されている。
5)最後の部分の変化は何を表しているか。
  ・杏の変化=成長を象徴する場面として、さらに「いじめ克服」という具象的・個別的な事象をより抽象化する装置。
  ・自分という生命を取り巻く他の生命の力の前で立ち尽くしていた杏が、自分の生命の力を信ずることが出来るようになった、という変化。


16.私の変化を論理療法的にとらえる。

1)私の出来事と結果と思い込みをまとめる。
  1)いじめ    →(自尊心)→絶望
  2)いじめ(絶望)→(復 讐)→自殺
  3)いじめ    →(軽 蔑)→一段上の快楽
2)出来事がすぐに結果に結びつくのでなく、その間に思い込みがあり、その思い込みを変えることによって結果も変わる。
3)「思い込み度チェック」をする。


17.「風葬の教室」を読み返して、適当な題をつけて文章を書く。
  ・全体の感想ではなく、あるテーマに絞り込む。
  ・できれば、感想文ではなく意見文を書く。



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