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☆東京こどもクラブ

 >> 特集 「東京こどもクラブ」
 

                              ●レコードとお話好きの子ども
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  昨年の12月にCD付きの「ふるさとの民話(全30巻)」の刊行が始ま
 りました。一回目の配本「ゆきむすめ/かさじぞう(中部地方一)」
 を壇ふみさんの語りで聞いていますが、思った以上に、懐かしい気持
 ちでいっぱいになりました。というのも、私は子どもの頃、レコード
 付きのお話を聞くのが大好きだったからです。

  毎月心待ちにしていたのが、「東京こどもクラブ」。レコードとテ
 キスト(お話と歌詞の絵本で4穴の専用のバインダーに閉じるように
 なっています)が、セットになって送られてきます。

  毎月郵便で届く「東京こどもクラブ」を赤い小さなレコードプレー
 ヤーで、飽きることなく歌やお話を聞いていました。今思うと、共働
 きで留守がちだった両親が、何とか子どもの寂しさの埋め合わせをし
 ようとしていたのでしょう。そんな親の思いを知ってか知らずか、
 レコードがぼろぼろにすり切れるまで聞いたものです。歌も楽しかっ
 たけれど、レコードと一緒に送られてきたお話のテキストを読みなが
 ら、まえだのおじさん(前田武彦さん)の素朴であたたかい語りを聞
 くのが大好きでした。
 

                           ●「東京こどもクラブ」とその仲間
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  「東京こどもクラブ」というのは、一種のレコード付き絵本の頒布
 会で、毎月、歌とお話の絵本と、絵本の歌とお話が収録されたレコー
 ドが送られてきます。本の解説によると、「東京こどもクラブ」は、
 幼児を対象とした視聴覚教育プログラムで、2-4才コースと5-7才コー
 スがあり、それぞれ12ヶ月でコースが完了するようになっていました。

  うちには、5-7才コースが届いていましたが、祖母の住んでいる町に
 引っ越した時に、やめてしまいました。レコードを聞かなくても、い
 つでもお話を語ってくれて、楽しい歌を歌ってくれるおばあちゃんが
 側にいるのですから。長いこと「東京こどもクラブ」のお世話になっ
 ていたような記憶とは裏腹に、実際には、5回分しか持っていません。

 ・きんのがちょう/うみ e.t.c.(第1回目)
 ・こぶとり/ゆりかごのうた e.t.c.(第2回目)
 ・ながぐつをはいたねこ/ゆうひ e.t.c.(第3回目)
 ・ふうれんもうろう/こいのぼり e.t.c.(第4回目)
 ・ななつのほし/サッちゃん e.t.c.(第5回目)
    ※「ふうれんもうろう」は、「ふるやのもり」のことです。

  歌は、びんちゃん(楠トシエさん)、お話は、まえだのおじさん
 (前田武彦さん)。絵本を開くと、「こぶとり」以外は、立原えりか
 さんがお話の文章を書います。もちろん当時は、そんなことは知らな
 かったのですが、今思うと、贅沢なことです。

  東京こどもクラブと似たようなレコードブックの頒布会は他にもあ
 り、物置を探すと、「東京子どもクラブ」と一緒に「ドレミファブッ
 ク」(世界文化社)と、レコード絵本<こどものくに>が出てきまし
 た。やはり、「東京子どもクラブ」と同様に、良質で贅沢なものです。
 いわさきちひろさん、武井武雄さん、鈴木義治さんの絵や、脚色が岸
 田衿子さんだったり、おはなしに岸田今日子さん、樫山文恵さん、中
 村メイ子さんと、子どもの本なのに手抜きのない、本物志向だったの
 です。当時は、こういう良心的な知育系のレコード絵本が流行ってい
 たのでしょうか。

 
                            ●「東京こどもクラブ」はどこに?
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  もちろん、現在は「東京こどもクラブ」も「ドレミファブック」も
 絶版になっています。(※「ドレミファブック」は、CD付きの新版が
 あるようです。)

  12月に「東京こどもクラブ」を書評に取り上げて以来、「東京こど
 もクラブ」の情報を求めて、やってくる方が結構いるようです。メー
 ルで問い合わせを受けたこともあります。同じ懐かしさを共有してい
 るのだと思うと、不思議な気持ちです。「東京こどもクラブ」は、私
 の宝物なので、もちろん手放すことはできませんが、オークションサ
 イトでは、ときおり「東京こどもクラブ」や「ドレミファブック」が
 出品されています。

  「東京こどもクラブ」はもう、思い出の中にしかないけれど、私に
 とっては、CD付きの「ふるさとの民話」が、「東京こどもクラブ」の
 大人版(子どもも勿論、楽しめます)のようで、とても楽しみです。
 朗読も壇ふみさん、桂三枝さん、竹下景子さん、風間杜夫さん…と、
 とても贅沢なのです。

  子供にとって、物語は、人の温もりとともに、両親や祖父母などの
 肉声で聞くのが一番いいのでしょうが、「東京こどもクラブ」を経験
 した私にとっては、「おはなし」がそばにある、ということが一番大
 切なように思います。特に民話や昔話は、耳で聞くもの。耳から独特
 のリズムを拾うものだと、そう思います。

  しかも、この「ふるさとの民話」を刊行した世界文化社が、「ドレ
 ミファブック」の発行所だと知り、とても驚きました。いろいろな意
 味で、「ふるさとの民話」は、子ども時代を追体験させてくれます。
 

シィアル , 2003/01  


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