主 | 春だねぇ |
てっちくん | 春です御隠居! |
主 | 誰が御隠居かい! |
てっちくん | へへ、なんかそんな雰囲気じゃないですか、日溜まりで背中丸めて… |
主 | まあいいか、でも春は山が動き出す季節だね。 |
てっちくん | 大地震でもくるんですか? |
主 | そんなところでボケてないで。 きょうは陽気がいいんで、ちょっとハイになってないかい。 頭の中にも春が来たのかい? |
てっちくん | いやだなぁ、頭の中にはチョウチョはとんでないよ。 |
主 | 山が動き出すっていうのは、木々が芽吹き、花が咲いて虫や小動物が動き出す事を言うんだよ。 北国では、小川が流れ始める事もふくめてね。 |
てっちくん | ふーん、てことはそろそろ山菜の季節だね、たのしみだなぁ。 また今年も連れて行って下さいよ。 |
主 | はいはい。 ところで、山菜はどんな所に生えていたか憶えてる? |
てっちくん | えっ、うーん、タラの芽は他の木が生えていないような土手の様な所だったかな? ワサビは日の良くあたる沢。 ウドもたしか崩れているようなところで明るい所、フキノトウも。 |
主 | よくおぼえていたね。 共通する所はなに? |
てっちくん | 明るくて、日の良くあたる所だ。 |
主 | 山菜は木や草の芽、花の部分を食べるんだけれど大体、明るい開けた所に多いね、しかも、落葉樹の林に多い。 常緑樹や針葉樹の林では林縁ぐらいにしかない。 落葉樹の林でも、木が多い所には少ないんだ。 |
てっちくん | ふーん、てことは、そういう場所を探せばいいんだ。 |
主 | まあね、でも実際にはそんな林は少なくなってきたんだよ。 |
てっちくん | それじゃあ楽しみがなくなっちゃうじゃん。 なんでまたそうなっちゃうの。 |
主 | それは、人が山の手入れをしなくなったからさ。 つまり、「里山」が荒れてしまったんだ。 |
てっちくん | そう言えば、前回そんな話で終わったんだっけ? いままでのは前フリだったのかい? |
主 | まあね。 で、「山」が荒れる事には、2通りある。 1つは、山の木を切りすぎた場合と、もう1つは切らなくなった場合だね。 |
てっちくん | 切りすぎた場合ってのはわかるけど… 切らないとどうして荒れるの |
主 | あれ、前に話したでしょう。 |
てっちくん | あーっと、そう言えば… おもいだした。 手入れをするのが「里山」で手入れをしないのが雑木林だってのだったね。 |
主 | そう、ちゃんと憶えていてよ。 で、日本で大規模に森林が荒らされたのが、明治維新後の混乱期と戦中・戦後の時期、そして今。前2つが切りすぎ、最後が切らない例。 まあ、後の2つは互いに関係しているんだけどね。 |
てっちくん | どういう事 |
主 | まず維新期については、維新によって、山を管理・維持していた幕府や藩がなくなった。そこで人々が自由に木を切ってしまった。それに、建築・産業需要が増加してそれに拍車をかけた。 戦中戦後は、石油の輸入が減って木炭や薪が大量に必要になったことと復興需要だね。これで切りすぎた山が災害を起こした。で、これを補うために、全国植樹祭や造林事業が始まった。 あと、皇室財産だった山林が国有林などに移行したのも影響している。 今は逆に、外国産の林産物の輸入や人手不足で、せっかく造林した森林が木を切るべき時に切られないまま放置されている。加えて、燃料が木炭や薪から、石油やガスに変わって薪炭林としての里山が放置された。 もう一つ、化学肥料によって、堆肥の需要も減った。 |
てっちくん | で、山が放置されて、荒れていくという事か。 |
主 | 「山」が放置されると下生えが育ってきて、地面に日光が差さなくなる。 ということは、地面に生えている植物は消滅する。 生えている木も、日光を求めて上へ上へと伸びる、一種のもやしみたいなものだね。 特に杉や桧の造林地は元々根が浅いうえに、背の高くなった木が増える。 すると…。 |
てっちくん | 頭でっかちになった木は、台風なんかで倒れてしまって…。 |
主 | 根ごと倒れた木によって地面が掘り起こされ雨で表土が流される。 |
てっちくん | それで山が崩れるということか。 |
主 | それにもう一つ、無理な造林も増えている。 急傾斜地の造林地が増えたことも一因だね。 |
てっちくん | ふーん、造林地は適度に間伐を行わなければならない。 てことは、よくわかるけれとど、雑木林の方は、放置してもいいんじゃないの。 |
主 | まあ、自然の推移にに任せておくってのも一つの手だけどね。 でも、これが生物多様性の維持に大きな問題を引き起こしているんだ。。 |
てっちくん | それが次のテーマだね。 |
主 | おいおい、それは私のセリフ・・・ |