検証−1 伊賀越えは,家康の予定の行動か?
佳代:先生,そろそろ,新シリーズをやりたいと思います。

藤原:そうだね。だいぶ休んでしまったから。

佳代:ただ,かなり難しい内容なので,一気に議論されても,わたしにはわかりません。そこで,少しずつ検証していくという形を取りたいと思います。

藤原:なるほど,確かにね。ある程度分っている人には分っても,本能寺の変に興味を持ったばかりの人もいるし,詳しいことはよく分らない人がもたくさんいるわけだからね。

佳代:はい,このページは,分りやすいのがウリですから,中学生でも分かるように,一つ一つ検証していきたいと思います。

藤原:いいと思うよ。

佳代:これまでは,○○についてという感じだったので,いろいろな意見が出てきたのですが,一つ一つを具体的に絞って議論してもらおうと思っています。

藤原:そうだね。歴戦の勇者たちが手ぐすね引いて待っているから,すぐに集まると思うよ。

佳代:そうですね。第1回は,伊賀越えについてやりたいと思います。

藤原:タイトルのとおりだね。

佳代:ハイ。

藤原:佳代ちゃんは,家康犯人説だから当然,予定の行動だと思っているんだね。

佳代:もちろんです。でも,絶対的な自信があるわけではありません。そこで,この行動を検証すれば,少なくとも家康が本能寺の変の関係者かどうかが分ると思います。

藤原:そのとおりだね。家康が言うように,突発的な事件により命からがら逃げたのだとしたら家康は無関係な公算が強いからね。

佳代:ハイ,まず,ここから攻めたいと思います。

藤原:それじゃあ,読者の方と一緒にがんばろう。

というわけで,検証シリーズの第1回として,『伊賀越えは,家康の予定の行動だったのか?』について議論いたします。これまでどおり,メールでもいいし,掲示板に書き込んでいただいても結構です。よろしくお願いいたします。
検証−1のまとめ
佳代:先生,そろそろ検証-1のまとめをしたいんですけど。

藤原:そうだね。だいぶ意見も出揃ったから,とりあえずまとめてみようか。

佳代:ハイ,お願いします。

藤原:まずは,今回のテーマである『伊賀越えは,家康の予定の行動か』ということに絞って考えてみよう。

佳代:ハイ,掲示板では,本能寺の変との関係はともあれ,予定の行動であるという意見が多かったですね。

藤原:うん,そうだったね。検証のところでも話したように,家康が本当に突発的な事件により命からがら逃げたのなら,本能寺の変に無関係であることがある程度証明されると思うけど,そうでないということになると,家康が本能寺の変に関係していなかったとは言えないわけだ。

佳代:逆に関係していたともいえないわけですね。

藤原:うん,その辺は,いろいろな人が意見を述べてくれていたね。どちらにしても,ここで,一応,結論を出しておこう。

★ 伊賀越えは,家康の予定の行動だった。ただし,必ずしも本能寺の変と関連があるとは限らない。

佳代:とりあえず,予定の行動だったことは間違いないようですね。

藤原:うん,理由はともあれ,予定の行動だったと見ていいだろう。家康は,もともと少人数で信長に会いに行ったわけだし,当然,身の危険を感じていた。だから,退路を用意していたことは驚くに値しないことだね。

佳代:ハイ,掲示板にカキコしてくれた人の大半がそういう意見でした。ただ,佳代が考えているようにアリバイ作りという点については,あまり賛同を得られませんでした。

藤原:難しいところだね。ただ,大難と称して大袈裟に逃げている理由を考えると,佳代ちゃんの意見も無視することはできないよ。

佳代:そうですか。でも,大難は家康の演出効果を狙ったものだという意見もありました。

藤原:それも,頷けるね。確かに,家康には,そういう話が多い。今川義元での人質時代などもそうだ。必要以上に苦労した話が伝わっている。

佳代:でも,大方の意見は,何かあったら逃げられるように十分準備していたということです。当時の家康の立場を考えれば,確かにその方が自然ですね。

藤原:そうだね。当方の最大の敵である武田が滅んだのだから,これまで同盟関係にあった家康の立場は微妙だ。信長にとっては,もはや用済みで,逆に,邪魔なだけの存在かもしれない。それだけに,家康としても何か行動しなければならない必要性に迫られたとも考えられる。

佳代:その行動が本能寺の変ということですか?

藤原:そうとは言わないけれども,その可能性もあるということだ。家康が,信長に必要以上にこびへつらっているという意見もあったけど,あの時点ではどうだろう?すごく微妙な気がする。

佳代:そうですね。よくは分かりませんが,家康が信長にとって必要ならば,恭順していれば自分を守れるけれども,用済みとなった段階では危険かもしれません。

藤原:この問題は,まだ,結論を出すのは危険だから,疑いありということで,継続審議にしよう。

佳代:分かりました。視点を変えて,また討論に持ち込みます。

藤原:次に,今回かなり多く討議された『穴山梅雪の死』についてまとめてみよう。

佳代:まずは,殺害したのは誰?ということですね。

藤原:うん,常識的に考えれば,家康であろう。実際,そう考えている人が多かったね。

佳代:ハイ,伝えられているように,夜盗に殺されたなどというのを信じている人はいません。

藤原:最後の方に,天陽さんから画期的な意見が出たわけだけれども,それにしても,殺したのは家康ということだから,

★ 穴山梅雪を殺したのは家康である。

と決定づけてもいいだろう。

佳代:そうですね。

藤原:ただ,問題は,理由だ。

佳代:理由はただ一つではないですか?

藤原:というと?

佳代:つまり,家康にとって梅雪は邪魔だったということです。

藤原:なるほど,単純明快でいいね。そのとおりだ。では,何故邪魔だったのかというと?

佳代:やはり,殺す時点では,すでに本能寺の変を確認しているわけですから,当然,家康は,甲信を攻め取ることを考えています。

藤原:うんうん,まあ,佳代ちゃんは,家康を犯人と確信しているわけだから当然だよね。

佳代:ええ,ただ,その場合,掲示板でもさかんに論議されていた河尻秀隆の問題があります。もし,信長が死んだからと言って,すぐに秀隆を攻めれば,家康の野望が明らかになってしまいます。

藤原:すると,佳代ちゃんは,河尻秀隆が一揆によって殺されたのも家康の差し金だと考えているんだね。

佳代:もちろんです。ただ,一揆によって殺されたのは,単に家康の幸運だったのかもしれません。どちらにしても,梅雪を殺したように,どさくさにまぎれて亡き者にしようとを考えていたと思います。

藤原:なるほどね。一応は筋が通っているみたいだ。家康は,本能寺の変と甲信進出をセットと考えて計画を練っていたということだね。

佳代:と思います。

藤原:分かった。とりあえずは,聞いておこう。読者の方の反論もほしいしね。では,最後に,天陽さんから出された,梅雪の野望説は?

佳代:ええ,はじめて聞いたときはビックリしました。そういう考え方もあるのかと。

藤原:そうだね。まったく考えていなかったことだから。でも,先生は,今ひとつ納得できないんだ。

佳代:どうしてですか?

藤原:その着眼点の鋭さには敬意を表するけれども,歴史を書いたのは徳川だ。もし,梅雪が,徳川を襲い,その結果殺されたのなら,それが残らないとは考えられない。

佳代:そうですね。尾ひれをつけて残ると考えた方が自然ですね。

藤原:伊賀越え自体が,必要以上に大難を装って残っているわけだから,もし,梅雪に殺されそうになったという事実があったのならば,当然,大袈裟にしてでも事実として残るはず。だから,納得できないんだ。でも,すばらしい着眼だと思うから,天陽さんには,もっと説を展開していただきたいと思っている。

佳代:そうですね。期待したいと思います。そう言えば,天陽さんの本が発売になるんですね。

藤原:うん,4月24日に発売される。タイトルは『翔竜 政宗戦記』だ。伊達政宗を題材にした小説だね。学習研究社の歴群新書より発行される。こちらも楽しみだね。

佳代:ハイ,このページでも,大々的に紹介します。いつもお世話になっていますから。

藤原:そうだね。これからも,お世話になると思うから,できるだけ派手にネ(笑)

佳代:もちろんです。

藤原:それでは,検証-1のまとめはこれぐらいにして行こう。

佳代:分かりました。読者の皆さん,不明な点や反論があったら,掲示板に書いてくださいね。
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