「はい、この前の写真、焼き増ししておいたから」
昼休み。3年1組に顔を出した不二がニコニコ微笑みながら手塚に水色の洋封筒を差し出す。
「どれもうまく撮れたと思うんだけど、見てみて」
「ああ」
手塚は結構枚数のある写真の束を封筒から取り出し、一枚一枚見てゆく。
「これなんか、ほら、英二が後ろで変な顔してておもしろいよね」
「そうだな」
やわらかな表情で写真をめくってゆく手塚を、不二がチラッと横目で見たその時、
「!!!!!?」
手塚の表情が一変した。
「………これはなんだ、不二?」
「どれ?ああそれ?僕の最高傑作かな」
「お前………っ!」
大声を出しそうになって、手塚は辺りを見回した。
幸いまだ、自分たちの様子を不審そうに伺い見る者はいない。
「僕の予想が大当たりしたって感じかな。こういう瞬間が撮れるんじゃないかって、すごく楽しみだったんだ」
心底楽しそうにニコニコ微笑んでいる不二に言う言葉を、手塚には見つけることができなかった。
どうにか平静を装って溜息をつくと、越前には見せたのか、と尋ねてみる。
「ううん。それよりその写真、大きく引き伸ばしてプレゼントしようか?」
「遠慮しておく」
「そう?ポスターにしたら文化祭とかでテニス部の模擬店の客寄せにもできそうだね」
「ネガをよこせ」
手塚の声が一段と低くなる。
「冗談。僕の宝物は、そうそう人には渡さないよ」
「とにかく他の誰にも見せるなよ。菊丸にもだ。いいな」
「うん、いいよ、わかった。ところで手塚、合宿の部屋割りの件なんだけど」
「…個室や二人部屋は無理だと前に……………」
言いかけて手塚は顔をひきつらせた。
不二が切れ長の目をうっすらと開いて、手塚に笑いかけている。
「ふうん、そう?」
「…………大石に相談してみろ。俺の一存では決められない」
「じゃあ、手塚は大石が賛成ならOKなんだね?手塚が乗り気なら大石も文句は言わないね。ありがとう、手塚」
普段のニコニコ顔に戻った不二が「じゃ、また放課後にね」と言い残して自分の教室へ戻ってゆく。
後に残された手塚は額に手を当て、深い溜息を吐き出すしかなかった。
終 劇
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