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NHKオンデマンドで愉しむ「大富豪同心」~じれったい、しかし手に汗握る美鈴と卯之吉の恋とその行方~

(1)  「見習い同心誕生!」   (2)  「鬼姫の初恋!」   (3)  「天狗の神隠し!」  
(4)  「遊里の旋風(かぜ)!」   (5)  「地獄の沙汰も金次第!」   (6)  「卯之吉子守唄!」 
(7)  「一万両の長屋!」   (8)  「仇討免除!」    (9)  「刺客と揚羽蝶(あげはちょう)!」
(10)  「あいつは、たたの同心?」   


大富豪同心2 大富豪同心3


大富豪同心 (1)  「見習い同心誕生!」  (脚本:小松江里子)  幡大介の原作を読む
あらすじ
 江戸一番の札差三国屋の主人・徳右衛門(竜雷太)は、何もやっても長続きせず放とうのかぎりを尽くす孫・卯之吉(中村隼人)の将来を心配し南町奉行所の同心に就職させる。しかし、その徳右衛門の思惑とは裏腹に、卯之吉は、周りの一風変わった人々に引き寄せられていく。そして、太鼓持ちの銀八(石井正則)や、江戸のきょう客親分・荒海ノ三右衛門(渡辺いっけい)らが、卯之吉に魅了されて仲間になっていく。 ○小説で美鈴が登場するのは4巻の『御前試合』(既刊『八巻卯之吉放蕩 大富豪同心』『天狗小僧』『一万両の長屋』)である。但し、取り扱われる事件は基本的に『八巻卯之吉放蕩 大富豪同心』の内容である。

○脚本は原作に忠実でない。むしろその逆をいっているように見える。脚本とは何か。また脚本は美鈴と卯之吉の恋に特化した物語である。

○吉原の菊野大夫は深川芸者菊野として登場している。
00分01秒~


10分35秒~



21分50秒~











29分45秒~













38分50秒~




39分57秒~
ナレーション「江戸中期、江戸の人口は100万人を超え、世界屈指の大都市となっておりました。しかも、長い平和が続き、表向きは、侍か威張っておりましたが、その実は、とんでもないお金を握る、商人(あきんど)が力をを持つ、世の中となりつつありました」

名披露目会(歓迎会ではなく、新参者負担で開くものであるらしい。深川の料亭「檜屋」)
金の力で同心になり、金の力で老中に隣席させるる酒宴であった。
(ナレーション) 一番偉いのは祖父の徳江門、卯之吉とっては、それ以外は老中だろうが、誰であろうが皆一緒なのでございます。

(ナレーション)「この卯之吉、剣はダメ、走るの苦手、お化けが怖いと、三拍子そろっております」
卯之吉、2名の辻斬りに狙われるが、三国屋が宇卯之吉の用心棒として雇った水谷によって斬られる。水谷は姿を消すが、成り行きで卯之吉が斬ったことになる。剣豪同心の誕生である。
その瓦版を買ったのが美鈴。そこでスリを見つける。
財布を握る右手を捻る、スリ「あっ、痛え」
美鈴「その財布、どうする?」
スリ「離せ、この野郎!」
美鈴「もっと懲らしめないと、いけないか?」と両手をとって背負い投げ風に投げる。
ナレーション「この若侍姿の腕の立つ娘。卯之吉との出会いによって、その人生が変わってくるのでござけいます」
美鈴「それでも男か」

黒雲の親分と座長の犯人一党と対決する。こちらは荒海一家と影の用心棒・水谷である。
ナレーション「まさか、突っ立ったまま気絶しているとは、誰も思ってはおりません」
銀八「しっかりしてくださいよ! ねえ」
卯之吉「どっ…、とうなった?」
銀八「ご覧のとおりです。浪人は、あの浪人が。黒雲の一家は、荒海の親分さんたちが、片づけてくれました」
卯之吉「よかった~」
御用だ! 御用だ、御用だ…!」
(略)
荒海「さ~て、八巻の旦那、一世一代の大捕り物でい! 琴之丞殺しの一味を、召し捕った~!」
銀八「いよっ、日本一! さあ、さあ、皆さんも…、『日本一』!」
一同「日本一!」
銀八「ハハハ…!」
卯之吉「まあ…、いっか」

檜屋
菊野「卯之さんには、本人も、まだ気付いていない、何かがあるんです」
徳右衛門「ほれた男を、そう思いたい気持ちは分かるがね、フッ…。だがね、あの子の心には、大きな穴が、ぽっかり開いてるんだよ。深~い穴がね」

豆茯の投身した橋で
卯之吉「ねえ。命懸けで見る夢ってのは、とんなんだい? 私には、と~んと分からないんたよ」

 大富豪同心 (2)  「鬼姫の初恋!」  (脚本:小松江里子) 幡大介の原作を読む 
あらすじ  美鈴(新川優愛)の実家である溝口左門(山口馬木也)の道場が襲われ、家宝である宝刀・豊後行平が盗まれてしまう。卯之吉(中村隼人)は、溝口左門の弟子で大名の三男坊・梅本源之丞(石黒英雄)と共に、美鈴を救うために立ち上がる。卯之吉の子分を自負する荒海ノ三右衛門(渡辺いっけい)の調べで、徐々に奪われた刀の秘密が見えてくる。  ○テレビ=「鬼姫」、原作=「鬼娘」(第4巻『大富豪同心 御前試合』15頁)  

○美鈴が父の恩返しに同心屋敷で働くという場面を原作から引用する。300頁~305頁。

「わ、若旦那! 大変でげすよ!」
 留守番をしていたはずの銀八が、血相を変えて走り寄ってきた。
「どしたえ? ははぁ、さては長右衛門一家の残党が仕返しにきたのかえ」
「そんな話じゃねぇでげすよ! お、お屋敷を占領されちまいました!」
 相も変わらず要領を得ない物言いだ。卯之吉は首を傾(かし)げながら、自分の屋敷の玄関に向かった。
「ごめんなさいよ」
 自分の屋敷なのに、挨拶の声をかける。なにしろ占領されているという話だ。誰か別人の家になっている可能性もある。
 すると……。
「はーい」
鈴の鳴るような愛らしい返事が聞こえて、女物の小袖に襷掛けをした美鈴が飛び出してきた。若侍ふうの総髪を白い手拭いで隠している。
「おや」
 卯之吉は、驚きを顔に出す様子もなかったが、内診でかなり驚いた。
「美鈴様ではございませぬか、どうしてあたしの家に?」
 美鈴は式台に膝をついて、丁寧に頭を下げた。
「はい。ち、父の窮地をお救いいただいた御礼をと、思いまして……」
「はあ」
 美鈴は顔を真っ赤にして、俯いている。
「なにか、八巻様のお役に立てることはないか、と考えまして、それで。その、下働きに使っていただけないものかと……」
 道場では天井を突き破るような気合いの声を張りあげて、足音も荒々しく竹刀で打ち込んでいく娘なのに、まるで蚊の鳴くような声でそう言った。
「はぁ、いえ、間に合ってますよ」
 銀八に袖を引っ張られた。
「そのお返事じゃあんまりでげすよ」
 耳元で囁かれたが、なにがそんなにあんまりなのか、卯之吉にはいまいち理解できない。
「それに、このお方はただの娘さんじゃあございませんから。怒らせたりしたら大変なことになりやす。ここは、しばらくの間、お好きなようにさせて差し上げるより他にねぇでげす」
「そうかえ」
 卯之吉は美鈴に視線を戻した。
「そういうことなら、気が済むまで働いてください」
 美鈴はホッとした表情で微笑んで、低頭し直した。
「よろしくお願い申し上げます」
 卯之吉が式台に上がる。美鈴は刀を受け取ろうと両手を差し出したのだが、武家の行儀を知らない卯之吉に無視されてしまった。
 卯之吉が奥へ入って行ったところで銀八が美鈴の袖をツンツンと引いた。
「これは、良いご思案とはとは申せませんぜ、美鈴様」
 美鈴は不思議そうな顔で首を傾げた。
「どうして?」
 銀八はいっそう、声をひそめる。
「だって、若旦那はああ見えて色事の達人でげすからね。吉原の大夫や深川の芸者衆からも、熱い眼差しを向けられているようなお人てげす。美鈴様みたいなウブな武家娘様など、例えるなら、蜘蛛の巣にかかった蝶も同じでげすよ!」
「まぁ。いやな銀八さん!」
 あけすけな物言いに動揺した美鈴、おもいっきり、金八を突き飛ばして屋敷奥に向かった。銀八は玄関前でひっくり返って、背中から一回転する羽目になった。
「ふう……」
 ガラにもなく溜め息などついた卯之吉は、座敷に座り、火鉢に炭をてんこ盛りにすると、煙管を取り出して一服つけた。
 そこへ、ドタドタと荒々しい足音が近づいてきた。
「八巻! 八巻氏!」
 勢い良く障子が開けられる。漆黒の巨体が踏み込んできた。
「おや、水谷(みずたに)先生じゃござんせんか」
 水谷弥五郎(やごろう)は、何故か、激しく立腹している。
「八巻! わしは、そなたを見損なった!」
手には大きな鯉を吊している。鯉の鰓に通した荒縄を握った手で、涙に咽ぶ目元を擦った。
「どうしたんですね。その鯉は」
 立腹していることよりも、鯉のほうに関心を引かれて、卯之吉は訊ねた。
「釣ってきた。身の引き締まった寒鯉だ。世話になっているそなたに、食べてもらおうと思って持参したのだ!」
「それはそれは、有り難いお志です。でも、それならば台所に……」
「台所には、行ったわ!」
 水谷は怒髪天を突く勢いで吠えた。
「そうしたら、娘が…… 八巻! あの娘はなんた! いや、なんだっていい。あんなものを家に入れてはいかん!」
「ど、どうしてですね」
「女は魔物だ! 魔性の生き物なのだ! 女などに関わっては、お主の崇高な魂が汚れる! いかんいかん、絶対にいかん!」
 いったい、女がらみでどんな酷い目に遭わされてきたのか、水谷は決死の形相で迫ってた。
(ああ、困りましたねぇ)
 さして困った様子でもなく、薄笑いまで浮かべつつ、卯之吉は紫煙をフーッと吐いた。

02分10秒~





05分08秒~























14分25秒~




































32分45秒~








39分15秒~


卯之吉「娘さん、あんたも、よっぽど火事が好きなんだね。そんな格好でやって来るなんて…」
(賊を取り逃がした美鈴は裸足である)
美鈴「はあ…?」
卯之吉「まあ、よく燃えてるからねえ…」
美鈴「嫌なやつ…」

(翌日)
庭で門下生1「南町の八巻…」
門下生2「あの辻斬りを返り討ちした、すご腕の剣士ではないか」
美鈴「いくら腕が良くとも、人の気持ちが分からぬようでは、真に強い男とは言うえぬ」
座敷
卯之吉「油をまかれ、火をつけられたのではないんですかい?」
美鈴「失礼します」(お茶を持って来る)
源之丞「おお、美鈴殿、久しぶりだな。まだ、剣術、続けていたのか?」
美鈴「当たり前です。私が、この道場を継ぐのでいから」
源之丞「さすが、鬼姫…」
卯之吉「鬼姫?」
源之丞「こいつの、あだ名だよ。自分に勝った男のもとにしか、嫁には行かぬと。でも、まだ、ここにいるってことは、まだお前に勝つ者は現れてないってことだな」
美鈴「はい。近頃の男は、かよわすぎて、話にもなりませぬ」
源之丞「ハハハハ…!」
左門「男手一つで育てた娘にございます。剣を学ばせたことで、女としての幸せを奪ってしまいました」
美鈴「私は、剣の腕を磨くのが生きがいなのでけす」
源之丞「相変わらず勇ましいのう。やはり、女を捨てた剣士は違うな」
卯之吉、三右衛門の報告ょ受けるために席を外す。再び入室の際、部屋を出る美鈴とすれ違う。
卯之吉「ゆうべの…鬼姫さんだったんだね」
左門に卯之吉「さて、ここからは、正直にお話しください。一体、何を盗まれたんですかい?」
源之丞「豊後行平ですが?」

左門「刀を悪党に奪われたのは、一生の不覚。そのことが知られ、面目を失うより、死を選ぶのは侍として当然のこと」
美鈴「父上…」
左門「心残りは、我が流派を後世に伝えることが、できなんだこと。お前が男であったならと、これまで何度も思うたが、今日ほど身にしみたことはなかった」
美鈴「私こそ、男に生まれてこずに、申し訳ございませぬ。かくなるうえは、男らしく、介錯つかまつります」
左門「頼むぞ」
卯之吉「ごめんくださ~い」三国屋徳右衛門から借りた豊後行平を持参。

卯之吉、左門に「豊後行平でございます」
左門「あの行平? では、盗賊を召し捕られたか?」
卯之吉「残念ながら、その行平ではなく、ちょっと、お借りしてきたもので」
美鈴「どなたからです?」
卯之吉「とある大名様の持ち物なのですが、先方の恥にもなるのて、詮索はしないていただきたいのです。御前試合が終わったら、返していただけれぱ」
左門「では…これをお貸しくださると?」
卯之吉「はい」
左門「ありがたい!」(両手をついて頭を下げる)
美鈴「これで、父の面目も潰れずに済みます!」(親子で頭を下げる)
卯之吉「面目も大事ですが、これで腹を切らずに済みますね」
左門「八巻殿…」(再び頭を下げる。美鈴、卯之吉を、溢れるおもいで見とれている)
門前、卯之吉と銀八を送ったあと
左門「恩着せがましいことは、何一つ、口にしなかった。町方にとどめておくのには、実に惜しい」
美鈴「父上のおっしゃるとおりでございます。私も、あの方を誤解しておりました」
室内で美鈴、卯之吉の瓦版(見習ひ御同心大手柄之顚末)を見て「まさに、真の男」胸に抱く。

銀八「人助けしましたね、旦那」
卯之吉「どんな大事な刀であっても、無駄に死んではいけません。娘の美鈴さんの心に、一生消えない傷として残ります」
(略)
卯之吉「この一件、何としても収めないといけませんね」

御前試合に勝って豊後行平を披露
加治川七右衛門「お待ちくださりませ。恐れながら、それは偽物にございます」
美鈴「何?」
卯之吉「なぜ、偽物だと言い張ることが、できるのでございますか?」
加治川七右衛門「無礼な…。貴様は一体、何者だ?」

加治川道場。左門の豊後行平を盗んだのは七右衛門だった。
美鈴「許せませぬ!」
七右衛門「ふん…。こうなった以上、生かして帰すわけにはいかぬ。者ども、かかれ~!」
左門側勝利。
三右衛門「それより、気配で身を隠すとは、やはり、旦那は、カマイタチだ!」
美鈴「ん?」
卯之吉「ああ、驚いた。こんなとこに石があるなんて…」
銀八「もう、しっかりしてくださいよ、旦那…」

同心屋敷
源之丞「卯之さんやい! ハハハ…。どうだい? 今から」
卯之吉「いいね。じゃあ、着替えてきますから」
台所で音がする。
卯之吉「おや? 誰だい?」
美鈴「美鈴でございます」
日本髪、赤味がかった橙の着物、下駄と若侍の格好とは対極にある女性らしさである。
卯之吉「鬼姫さん…」
美鈴「父の窮地をお救いくだされた八巻様に、お礼をしたいのです。なので、ここで働かせていただきたく」

卯之吉「てすが…」
美鈴「もう決めました」
銀八「旦那…。何しろ、すご腕ですからね。怒らせたら怖いですよ?」
卯之吉「分かりました。じゃあ、気のすむまで働いてください」 
美鈴「ありがとうございます」
源之丞「よう、何やってんだ?」
銀八「ああ…、美鈴さんですよ。かわいいでげしょ?」
源之丞「美鈴?」
美鈴、頭を下げる。
銀八「お顔が赤くなってますが?」
源之丞「うるさい!」
卯之吉「私は、前の若侍姿のほうが好きですけどね、凜々しくて」
美鈴「えっ…」
大富豪同心 (3)  「天狗の神隠し!」  (脚本:小松江里子)  幡大介の原作を読む  
 あらすじ 油問屋・廣國屋の一人息子・七之助が高尾山の天狗(てんぐ)にさらわれるという事件が起こる。見習い同心の卯之吉(中村隼人)は筆頭同心・村田(池内博之)から探索を命じられるが捜査は難航。美鈴(新川優愛)が自ら志願し、廣國屋の女中として潜入捜査に乗り出すことに。その中で、七之助は、廣國屋夫婦の間に生まれた子ではなく、実は女盗賊・お弓(原田佳奈)の子であることが判明、裕福な商家に隠された秘密に卯之吉が迫る!  ○話は2巻『大富豪同心 天狗小僧』による。
○原作に美鈴は登場しない。
○テレビは「廣國屋」、原作は「白滝屋」  

○テレビで美鈴が柄杓で卯之吉の頭を打つシーンを原作では次のとおりである。4巻『大富豪同心 御前試合』の137頁~140頁。溝口左門に代わりの豊後行平を貸した帰りである。

 夜空の月を見上げたその時ーー。
「八巻様」
 背後から声をかけられた。
「はい?」
 何気なく振り返った卯之吉の目の前に、ビュンッと、うなりを立てて木剣が振り下ろされてきた。
 卯之吉は身動きもできない。というより、なにが起こったのか、さっぱりわからない。
 木剣の先が眉間にぴったりと押し当てられた。卯之吉の視線は、木剣に沿って動いて、木剣を握る者の姿を見つめた。
「美鈴さんじゃあないですかえ」
 木剣を指先で摘んで、無造作にヒョイと横にのけた。
「これはなんですね?……ああ、そうか、災難除けのお呪(まじな)いですね」
 美鈴は木剣を握ったまま、無言で、卯之吉を見つめている。
「あたしが子供の頃、成田山にお参りにいった時の話ですが、偉いお坊さんが魔よけだと仰って、エイエイッと、仁王様の剣を振り回していましてねぇ……。あたしの番になったのですがね、子供心は恐ろしくってねぇ。泣いて嫌がったものですよ」
 娘はスッと木剣を引いた。
「これが災難除けになれば良いのですが……」
 細身だが背の高い娘で、卯之吉と背丈はほとんど変わらない。
 娘は腰を折って頭を下げた。
「本日は、本当に、ありがとうございました」
「いや、いいんですよ。あっ、見送りに出てきてくれたのですか。大丈夫てす。日光街道に出さえすれば、町家も建ち並んでいますから」
 卯之吉は手で押しとどめるような仕草をして、
「それじゃあ、あたしはこれで」
 娘に背を向けて歩き出した。

 美鈴は呆然として、卯之吉の背中を見送った。
「……やっぱり。武芸の心得なんか、まるでない」
 それなのに、どうして剣客同心などと呼ばれているのであろうか。不思議でならない。
「武芸はからきし駄目だけど……。海のようにお心の広い御方」
 なんだろう、と美鈴は胸をそっと押さえた。胸がつまって息苦しい。男を想ってこんな気分になるのは初めてだ。



○テレビでは、両親に捨てられたことになっている(しかも間もなく死亡)。原作では第2巻『大富豪同心 天狗小僧』の258頁に「ところが卯之吉の二親は健在である。それどころか養子先の親までいる」ことになっている。
11分58秒~











































15分10秒~























26分00秒~












33分20秒~

























38分45秒~
 
荒海「その七之助さん、何か、隠したいことがあるんじゃないですかね」
銀八「神隠しにあったことと、つながってるんですかね」
卯之吉「そうですねえ…」
美鈴「失礼します」 と、お茶を持ってくる。
美鈴「どうぞ」
荒海「えっ? 誰だと思ったら、鬼姫さんじゃありやせんか!」
美鈴「美鈴です」
銀八「旦那の家で、お女中として、働いてなさるんですよ。ねっ?」
美鈴「はい。八巻様に、父上をお助けいただいたお礼に、私ができることを、何かさせていただきたくて」
銀八「けど、また若侍に戻っちゃって。旦那のせいでげすよ。『前の姿のがいい』って、言うもんだから」
回想「美鈴でございます」「私は、前の若侍姿のほうが好きですけどね。りりしくて」
美鈴(ため息)
銀八「あっ、源之丞様」
源之丞「ああ…。近くを透りかかったものだから」
荒海「へえ~! 御大名の三男坊が、この近くをね? 一体、何の用で?」
源之丞「うるさいわ、黙ってろ」
荒海「気に入らねえな」
源之丞「美鈴殿は、元気か?」
美鈴「あっ…、はい」
剣の丞「それは何よりじゃ。ハハハ…!」
ナレーション「この源之丞、美鈴に、ほれているのでございます」
荒海「それで、どうしゃす? 手下を廣國屋に潜り込ませようかとも、思ってるんですが」
卯之吉「そうですね」
美鈴「そのお役目、私に、お任せいただけませんか? 私が、小僧に化けて探ります」
卯之吉「小僧?」
屋敷前
荒海「じゃあ、手配してくるとするか」
銀八「へえ」
荒海「けど…、小僧とは」
銀八「そんなに、男のほうがいいんでげすかね?」
室内
卯之吉、縁側におりて猫に「さあ、お帰り」、放す。
美鈴「八巻様」(改まった姿勢である)
卯之吉「はい」
柄杓の先で頭を三回うつ。
三回目、柄杓の柄を握って卯之吉「何かのおまじないですか?」
美鈴「あっ…、まあ」
卯之吉「ああ、そうですか」と部屋の奥にもどる。
美鈴「やはり、おかしい」
ナレーション「この美鈴、卯之吉が、世間で言われているような、剣の達人ではないのではないかと、思っております」

廣國屋
美鈴、小僧ではなく、女中の格好で「はあ、このような格好をさせられるとは…」
店主「」新しく入った女中だね」
美鈴「はい、クマと申します」
略、神社で卯之吉に報告
卯之吉「じゃあ、母親も神隠しにあっていたと?」
銀八「けど、だったら、子は、一体、どこから生まれてきたんです?」
美鈴「お内儀が神隠しから戻られたときには、もう、その腕に、赤ん坊の七之助を抱いていたと。なので、当時の奉公人たちは『もしかして、七之助様は、旦那さまとお内儀様の子ではないのではないか』と、うわさしていたらしいのです。『天狗の子を授かってきたのでは』と」
卯之吉「天狗の子?」
銀八「そういえば、言い伝えを、聞いたことがありやすよ。『天狗は願いをかなえてやるのと、引き換えに、自分の子を授けて育てさせる。その子が大きくなったら、さらいにくる』」
卯之吉「またそんな、恐ろしいことを」
(鳥の鳴き声)
銀八「高尾の御山から、天狗が飛んできたのかも!」
卯之吉、美鈴の背中に隠れる。背中に手をやっている。美鈴の満足げな表情。女中姿が勇ましい。
美鈴「何者?」、柔術か、左手で前構える。*刀を持った7「一万両の長屋!」(31分30秒)が思われる。右手を斜めに上げて後ろの卯之吉を守り、敵と向かうシーンょ連想させる。

水谷「恥も顧みず、頼みにまいった」
離れたところで話をしたいる。
美鈴「大丈夫なのですか?」
銀八「へえ、知り合いのお侍さんでげす」

七之助「おっtさん、何の用だい?」
お弓母「はっ…! 七之助、逃げるんだよ」
七之助「えっ?」
お弓「このままじゃ、あの同心に捕まっちまう」
荒海「いよいよ、今夜だな。それで、お前が引き込み役ってわけか」、と美鈴と二人登場。美鈴は若侍姿。
七之助「引き込みって?」
美鈴「大店に潜り込んで、中から盗人(ぬすっと)を手引きする悪党のことです」
七之助「おっかさん、まさか、廣國屋を…」
お弓「金がいるんたよ。お前と一緒に逃げる!」、そこに店主と卯之吉、銀八登場。
店主「お前、そんなことをたくらんで…」
卯之吉「もう、お芝居も幕引きです。お内儀のおトキさんではありませんね。お弓さん」
和室で卯之吉の左に美鈴、右に荒海、銀八。対する主人と七之助、後ろにお弓。真相判明。

(足音)
荒海「おめえたち、一人残らず、とっ捕まえろ!」
(子分たち)「へえ!」
美鈴も刀を抜いて応戦する。
盗賊に向かおうとする卯之吉に銀八「ちょっと…、旦那!」
周囲から「覚悟しやがれ!」
卯之吉に斬りかかった盗賊の腕に小柄が飛んでくる「うっ!
気絶している卯之吉の前に美鈴出て来る、左手に短刀の鞘を持っている。今度は両手で刀を持って応戦する。敵なし。
銀八「旦那…、旦那!」
荒海「旦那、こっちは、終わりやしたぜ!」
卯之吉の前を見て荒海「さすが、八巻の旦那! こんな、こそ泥は、あっという間でしたね! ハハハハハ…!」
銀八「旦那…、起きてくださいよ、旦那! ほら!」
正気付いた卯之吉「どうなった?」
銀八「いつものように、無事、片づいております」
銀八、廊下の奥に隠れている美鈴の側に寄って「美鈴様、あの…」と、に応えて
美鈴「分かっております。卯之吉様は、剣豪などではありません。私が守って差し上けねば」

銀八、強く頷き、出て来ると「今回も、お見事!」。
庭先に降りて「剣客同心、八巻卯之吉、ここにありでございます~!」
荒海「よっ、日本一!」(首を傾げる卯之吉)
(子分たち)「日本一!」
銀八「日本一でございますよ!」
荒海と銀八「ハハハハ…!」
銀八「日本一でございますよ!」(美鈴、廊下の奥で微笑んでいる)

深川、檜屋。
菊野「卯之さんは、天狗の話、信じてたんですか?」
卯之吉「まだ、天狗にさらわれたほうがよかった。
菊野「えっ?」
卯之吉「私はね、捨てられたんですよ、幼いころ」
菊野「卯之さん…」
大富豪同心 (4)  「遊里の旋風(かぜ)!」  (脚本:伊藤靖朗)   幡大介の原作を読む 
あらすじ  ひそかに吉原遊びを楽しんでいた内与力・沢田彦太郎(小沢仁志)が遊女殺しに巻き込まれ吉原に監禁状態となる。沢田の窮地を救うため卯之吉(中村隼人)たちは集まるが、吉原では卯之吉は三国屋の若旦那として顔が通り過ぎているため、同心として乗り込むことができない。そこで卯之吉が、売れない役者・由利之丞(柳下大)をニセ同心・八巻卯之吉にしたて吉原に潜入。はたして卯之吉たちは沢田を助け出せるのか…。  原作は第5巻『大富豪同心 遊里の旋風(かぜ)』である。

テレビの40分07秒以降を連想させる場面を引用する(109~110頁)

 見世物小屋を出て、しばらく美鈴の買い物につきあった卯之吉は、そろそろ遊蕩の気分に誘われたのか、急にソワソワとしはじめた。
「そりじゃあ、あたしは、もうちょっとばかり北のほうまで足を伸ばしますが」
 江戸の男であれば、浅草まできて吉原を覗かずに帰ることはできない。江戸っ子の沽券にかかわるというものだ。
 卯之吉としては、、一刻も早く登楼して、芯まで冷えた身体を炬燵と酒で温めたいのである。
 しかし、目の前の男に吉原に行くなどと言い出されて、気分を害さない女はいない。美鈴は唇を尖らせた。
 これはいけない。抜き打ちにされたら大変だ、と思った銀八は、急いで美鈴に釈明した。
「こっ、これが若旦那のお役目でげすから! 若旦那は吉原面番所の同心様なんでげすよ!」
 美鈴は口惜しそうな顔で俯いた。
「どうぞ、ご無事のお勤めを」
 ふてくされた顔つきで、クルリと踵を返すと、袖を振り回しながら走り去っていった。
「……なんだろうね、あれは」
 卯之吉はポカンとした顔つきで見送っている。銀八は、このお人は本当に何もわかっていないのだろうかねと訝しげに卯之吉の顔を覗きこんだ。、

*但し、これ以降、テレビで吉原が舞台となることはない。深川芸者・菊野のいる檜屋が取って変わる。原作との大きな違いである。
00秒01秒~






















17分58秒~



























31分40秒~



























35分08秒~
























40分07秒~



浅草、寛窓寺
美鈴「あの、銀八さん…」
銀八「へい」
美鈴「卯之吉様は、こたびも、隠密の、お務めなのですか?」
銀八「はっ? あっ…、もちろんでございます。町人になりすまして、お調べなさってるんで、はい。ヘヘヘ…」
銀八「旦那…」
卯之吉「うん?」
銀八「あれは、何を納めているんで?」
卯之吉「ああ、見せ物小屋のあがりだよ。寺の蔵には、毎年、数千両も、ため込まれると聞くよ」
銀八「数千両!? そんな金があったら おいら、一生、遊んで暮らせますよ。ハハハハ…」
菊野「あら、卯之さん!」
卯之吉「菊野さん、これから、お座敷かい?」
菊野「いいえ、近頃、呼んでくださらないから、観音様に願掛けに」
卯之吉「それはすまないねえ…」
菊野「フッ…、冗談ですよ。こちらさんは?」
卯之吉「ああ、こちらは…」
美鈴「溝口美鈴と申します。八巻様のお屋敷に、住み込みで、お仕えしております」
菊野「まあ…、住み込みで? かわいらしいお方じゃありませんか。卯之さん、今度、お座敷に連れて来てくださいな」
卯之吉「そうだ…、そうだね」
美鈴「結構です! あの…、夕餉の支度がありますので、お先に失礼いたします」
銀八「あれ? 美鈴様、 お参りは?」


同心屋敷
美鈴「今日は市中のの見回りに行くと、言っておりましたが」
村田「あの青びょうたん、勝手なまねしやがって」
尾上「人斬り同心の評判をを取って、調子に乗ってやがるんですよ」
玉木「案外、あの芸者の菊野ってのと、しけ込んでいたりして」
村田「こら…」
玉木「すみません」
村田「まあ、とにかく、戻ったら南の猟犬、村田が『詰め所に顔を出せと言ってた』と伝えてくれ」
美鈴「はい」
三人が出ていったあと。
荒海「吉原のことは、ないしょだぜ」
寅三「へい」と言いながらやってくる。
荒海「美鈴さん、旦那は戻ったかい?」
美鈴「いえ…」
荒海「そうでやすか…」
美鈴「三右衛門さん、どこへ行かれたか<ご存知なのですか?」
荒海「実は、内与力の沢田様が、吉原で、遊女殺しの罪を着せられ、捕らわれの身となっておりやす」
美鈴「そんな…」
荒海「で、旦那は、本当の下手人を見つけるために、町人に化けて、源之丞さんや菊野たちと、吉原に入ったんでさあ」
美鈴「菊野さんも?」
荒海「左様で。俺もお供したかったが、あっしら、やくざもんには縄張りがありましてね、吉原の中には入れません」
美鈴「私、吉原に行きます」
荒海「ちょっ…、ちょっとお待ちくだせえ! お武家の娘さんが、遊郭なんざ、行っちゃいけねえ」
美鈴「卯之吉様は、私がいなくては駄目なんです。口出しは無用!」
荒海「分かりやした。吉原まで、この三右衛門、お供いたしやす」




荒海「あれが吉原の大門。吉原と外をつなぐ唯一の出入り口です」
(火男ノ禄太郎とすれ違う)
荒海「あいつ…」
沢田「お~い! 閉門だ! 閉門! お~い閉門しろ!」
美鈴「卯之吉様!」
番所の役人「何だ? 町人風情が!」
沢田「はか者! この顔を忘れたか? わしは、南奉行所、内与力、沢田彦太郎であるぞ!」
役人「『さわ』…? あ~! ひい…! さ…、沢田様、これは、ごごご…、ご無礼を! しかし、その格好は…」
沢田「いいから、早く閉門しろ! この吉原が燃えてもよいのか?」
荒海「燃える?」
役人「閉門! 閉門!」
荒海「もし! 沢田様! 旦那!」
卯之吉「親分さん!」
沢田「ちょっと待て!」
荒海「今、出て行った男、火男ノ禄太郎って悪党でさあ!」
沢田「火男ノ? 火付け盗賊か?」
荒海「へい!」
卯之吉「ここから南…。寛窓寺! やつらの狙いは銭ですね」
銀八「銭?」
卯之吉「吉原が火事になれば、寺から、ばく大な銭が運び出される」
沢田「よし! 寛窓寺へ走れ!」
卯之吉「はい!」美鈴も走る。
荒海「腕が鳴るねえ! 寅三!」
寅三「へい!」

火男「くそ! まだか?」
子分「八巻が、嗅ぎつけっちまったんじゃねえですかい?」
火男ノ禄太郎「ばか野郎! 油まいて、火つけるぐれえ、犬にでもできる!」
荒船「おいおい、この寒い冬のさなかに、火付けってのが、どれだけ重罪か分かってんのか?」
火男「だ…、誰だ!?」
荒海「俺、は荒海ノ三右衛門。同心、八巻卯之吉様の子分だよ」
火男「何? まさか…」
荒海「何でも見抜いてしまう、それが八巻の旦那さ。覚悟しな!」
火男「おい! やっちめえ!」
子分ども「へい!」
美鈴、駆けつけてくる。
駕籠の卯之吉「遅くに、すまなかったね」
銀八「支払いなんて、後! 後!」
卯之吉「釣りは、いらないよ」
駕籠かき「こりゃどうも…」
寅三「旦那~! こいつをお使いくだせえ!」と、短刀を投げて寄こす。
火男に、卯之吉「好き合っていた2人を踏みにじって、私は悲しいよ」
火男「うるせえ! 黙れ! 安太郎は、女に、たくらみを、漏らしやがった。当然の報いだ!」
卯之吉「とはいえ、�吉原に火はつかないし、火の粉が飛んで来なければ、寺から銭は運び出されない。もう、およしよ」
火男「しゃらくせえ! 誰だ? 貴様」
荒海「八巻の旦那と気付かねえとは、焼きか回ったな」
火男「何だと?」(斬られる妄想「ああっ…!」)そして自分の短刀を投げ出した。

同心屋敷
美鈴「あの…、こたびの勝手なふるまい、申し訳ございませんでした」
卯之吉「えっ…、そんなことありません。美鈴さんがいてくれると、私は安心ですよ」
美鈴「えっ? 本当ですか?」
卯之吉「ええ。これで、今後は心置きなく吉原で…」
(せき払い)銀八「なんか喉が…。(小声で)違うでしょ? 『助けてくれてありがてとう』とか『一緒にいてくれて、うれしい』とか…」
卯之吉「あっ…、そうだね。世話になったね、ありがとう」
美鈴「ああ…、いえ…。ごはんの支度をします」
卯之吉「じきにでかけるんだけどね、吉原に…」
銀八「ブフゥ…!(せきこみ)」
卯之吉「大丈夫かい?」
  大富豪同心 (5)  「地獄の沙汰も金次第!」  (脚本:小松江里子)    幡大介の原作を読む 
あらすじ  霞ノ小源太一党が江戸で暗躍する。与力の沢田(小沢仁志)は、老中や町奉行から早く捕縛せよとプレッシャーをかけられ泥酔し倒れる。卯之吉(中村隼人)は、沢田の治療のため、友人の医者・白雲軒(葛山信吾)の所に連れていく。そこで、白雲軒から貧しい人々にただ同然で医療を提供する爛堂(山田純大)という医者が居ることを聞き興味を持つ。しかし、この欄堂には別の顔が…。  ○第2巻『大富豪同心 天狗小僧』による。したがって原作には美鈴は出てこない。

○白滝屋の「お弓」(店では偽「おトキ」)は霞ノ小源太の一党である。

○白滝屋を襲う理由について爛堂は(243頁)で
「これまでのような、診療代金の取り立てとはわけが違うぞ。今度の討ち入りはお弓が受けた恥辱の意趣返しだ」 
としている。

また(244~245頁)、以下はテレビも踏襲している。→27分30秒、爛堂の診療所2。

「これで霞ノ小源太一党も幕引きだ。この仕事が終わったら赤の他人。そういうことでいいだろう」
 爛堂は決然とつぶやいた。
「盗人稼業からは足を洗いなさるんで?」
 丑蔵が訊いた。
「そのつもりだ」
「もったいねえなあ。それだけの盗人の腕がおありなさるのに」
「わしにもったいないものがあるとすれば。それは医術の腕のほうだ。わしはもっと、大勢の人たちを救いたい」
 爛堂は遠くを見た。卯之吉のことを思い出している。
「あの若い医工には思い知らされたよ。さすがは松井春峰の弟子、たいした腕だ。これからは蘭学だな。わしも長崎に行って、修行をやり直すことにする」
 配下の盗人、否。、医術の弟子たちが一斉に身を乗り出した。
「先生! わたくしもお供を!」
「わたくしも、是非!」
 爛堂は目を細めて頷き返した。
「ああ、皆て長崎で修行しよう。白滝屋の蔵には、それぐらいの金は十分にあるはずだ」



03分05秒~


























18分40秒~



























20分59秒~















25分30秒~






















27分30秒~

28分30秒~











40分22秒~







 
同心屋敷
卯之吉「では、行ってきます」
美鈴「八巻様、こよいは、どちらへ? また、深川でございますか?」
卯之吉「はい」
美鈴「けれど、ああいう所は、お金もかかるのでは…?」 
卯之吉「大丈夫です。美鈴さんは心配しなくていいですよ。それと、私のことは『卯之吉』でいいですから」
美鈴、満足げな表情。


料亭、檜屋
銀八「ほれてやんすね、美鈴様は旦那に」
卯之吉「さあてね…」
菊野「嫌いなお人の所に、押しかけてきてまで、女中になる女などいまんよ」
銀八「ですよね」
菊野「そんな純で、かわいいお人に、好かれるなんて…、憎らしい」卯之吉の腿を抓る。
卯之吉「いたたたたた…!」
銀八「はあ~…! モテモテでやんすね、旦那は。けど、やけに静かでがんすね。ほかにお客さまは、いらっしゃらないんですか?」
菊野「ええ…。大店(おおだな)の旦那衆も近頃は、お遊びを控えてらっとゃるようで」
卯之吉「あれですか? 霞ノ小源太一党」
菊野「はい。早く捕まえてくださいな。このままじゃ、私たちも、商売上がったりでございます」
卯之吉「ですが、私は、捕り物に呼ばれもしなくてね。けど…、別のことでなら」と、どんちゃん騒ぎで店に貢献をする。
菊野「えっ?」(→どんちゃん騒ぎで店に貢献をするこどあった)

酔っ払った沢田を蘭方医の龍山白雲軒(松井春峰の同門)に診てもらう。そこで漢方医・爛堂の治療代安くて繁昌していることを知らされる。興味を持った卯之吉は爛堂に会いにいく。材木商・和泉屋が怪我をした人足を連れてくる。爛堂は人よりも材木を大切とする番頭に激怒するが、卯之吉に治療の優先を提案される。また卯之吉の縫合手術を目の当たりにする。

同心屋敷(霞ノ小源太が襲った商家を書き込んだ地図を広げている)
卯之吉「う~ん…」
美鈴「お休みなのに、何をしておいでなのです?」
卯之吉「いやね、この一連の盗み、何だか変なところがあるんだよね」
銀八「この日時と場所に、霞ノ一党が押し入ったんでがすよ」
卯之吉「一定の間を置いて、盗みを重ねてるんです」
美鈴「なぜ、間を空けるんでしょう?」
銀八「そりゃ、次の仕事にかかる支度か、さもなくば、盗んだ金を使い果たすまでの、日数(ひかず)でがしょ」
荒海「それなんでさあ!」
卯之吉「荒海の親分さん」
荒海「いやね、あっしも、この一連の盗み、ちょいと、おかしいと思いやしてね。八巻の旦那のお役に立つかもと、調べたんですよ。盗んだ金を、とこで使っているのかとね」
銀八「さすがでがす! 荒海の親分の張った網に、かかってこないわけがありません!」
荒海「おうともさ! けれど、今度ばかりは、それが…」
卯之吉「ないんですかい?」
荒海「へい…。吉原や岡場所で、派手な遊びをしたとの話もなけりゃ、呉服屋で散財したってな話もねえんでえ」
卯之吉「おかしいですね」
荒海「それと、もう一つ、おかしなことが。お聞きになってるかもわかりませんが、押し入った金蔵に千両箱が何個積んであっても、盗むのは、そのうちの何十両かだけ。義賊気取りなのかもしれやせんがね」
卯之吉「そこが分かれば、この一件、片づくような気がするんですけどね」
美鈴「なら、この私が…」
銀八「えっ、まさか、江戸市中を探索するとでも、言うんじゃないでがしょうね?」
美鈴「いけませぬか? 八巻…。卯之吉様のお役に立つためなら、何でもいたします」
荒海「いいねえ! その心意気!」
卯之吉「美鈴さんは関わらなくていいですよ。それより、今日も、そろそろ…」

同心屋敷に源之丞が美鈴を訪ねてくる。告白のつもりである。場所を蕎麦屋に移すが空回り。
その夜、卯之吉と銀八が歩いていると爛堂の弟子の左右吉と会う。急な使いで小石川に行く途中だという。そのとき呼子笛が鳴る。霞ノ小源太である。押し入ったのは和泉屋である。和泉屋と爛堂。「左右吉さん、ちょっと、お聞きしたいことが…」
同時刻。美鈴たち店を出る。捕り物の声「こっちに一人、逃げたぞ、捜せ!」
美鈴「もしや、霞ノ一党では?」
源之丞「おい! 美鈴殿!」
銀八「」どこへ行くんで?」
卯之吉「ちょっと気になることがあるんだよ」
黒装束の一人。
美鈴「霞ノ一党か?」と対面する。男、反対側へ走る。
そこへ町人姿の卯之吉が、こちらに走ってくる。
美鈴「危ない!」と男の前に出て卯之吉に被さるようにして身を庇う。左手を切られる。
源之丞「美鈴殿!」
卯之吉「美鈴さん」


(爛堂の診療所)
爛堂「よし、これでいいだろう。深い傷ではない」
銀八「ありがとうございやす」
卯之吉「遅くに申し訳ありません」
爛堂「気にするな、よくあることだ」
(物音)
源之丞「ん? 誰かいるのか?」
爛堂「ああ…、いや。病人が何人も寝ておりましてな」

(深川、檜屋)
菊野「じゃあ、卯之さんは、その爛堂先生が霞ノ小源太とでも?」
卯之吉「…かもしれないということです」
銀八「そういえば、旦那、確かめてましたね、左右吉さんに大店の名を。確か、柴井町の仏具屋の大和屋、新肴町の小間物問屋の精香堂。それに、村松町の上菓子屋の但馬屋」
卯之吉「みんな、お金があるにもかかわらず、けがをしたり、病気になった店の者を、爛堂先生の所に、放り込みに来たお店の方たちばかりでした。和泉屋さんも、そうだった…」
美鈴「じゃあ、盗まれる小判は、その治療代や薬代、お金のない患者にかかった費用…」
卯之吉「そして、一定の日にちを空けて、繰り返される犯行は、薬が尽きて、金が入り用になったころ。盗みに押し入った日は、通いである左右吉さんは、いつも、遠くまで、使いに出されていたそうなんです
菊野「何だか、いろんなことが、一筋につながっていくようですね」
卯之吉「ええ…」

爛堂の診療所2(略)

源之錠「あの医者の家が隠れ家だったとは…。見つからないはずだ」
美鈴「すぐに捕まえねば」
銀八「けど、証拠がござんせん」
卯之吉「次に狙う大店は、もう分かってます。あのあと、今度は、松枝町の、松前屋の奉公人が投げ込まれたと、左右吉さんが言ってました」
菊野「卯之さん…! すっかり頼もしくなって…」(美鈴が、怒ったような表情で菊野を見ている。菊野も、それに気づいて「言っちゃったかしら」とあ感じをしている)

卯之吉は、押し入る店と日の情報を、沢田に伝えて霞ノ小源太は捕まる。卯之吉は見習い同心から同心になるが、患者を大切にした爛堂に共鳴するものが残った。


同心屋敷(美鈴、洗濯物を干している)
卯之吉「美鈴さん。すみませんでした。私のために、けがまでさせて…」
美鈴「ああ…、いいえ、もう大丈夫ですから」
卯之吉「ですが…、もう二度と、危ないまねはしちゃいけませんよ。」
美鈴「えっ?」
卯之吉「美鈴さんは女なんですから」

美鈴、卯之吉に「女」と認められたことが嬉しいのだろう。二人の関係が新しい段階になったことでもあろう。覚悟と喜びを味わうような表情である(武芸者としての美鈴はとうなるのか?)。



   大富豪同心 (6)  「卯之吉子守唄!」  (脚本:小松江里子)    幡大介の原作を読む  
あらすじ  「この子は、同心の八巻様のお子…」と荒海ノ三右衛門(渡辺いっけい)の家に、置手紙といっしょに謎の赤ん坊が届けられた。誰の子なのか分からないまま子守で右往左往する卯之吉(中村隼人)と美鈴(新川優愛)。実はその赤子は盗賊・神竜一家の亡き親分・権太夫と兼(雛形あきこ)との間に生まれた子であることが判明。子どもをまっとうに育てたいと望む母の思いから卯之吉を頼ったのだ。   
00分14秒~






















































07分05秒~













11分42秒~



























14分28秒~





19分05秒~




















































24分15秒~


























































































35分48秒~


















 
同心屋敷、朝食である。
卯之吉、芋を口にして「ん…?」
銀八「半煮えでやんすか?」
卯之吉、味噌汁を口するが無言。
銀八「辛いんでがすね?」 
さらに大根を食べようとするが一枚一枚が切れずに繋がっている。
銀八「美鈴様、剣の腕は、ピカイチなんでがすがねえ…」
美鈴、台所で(ため息)

源之丞「よう!」
卯之吉「あっ、源さん」
銀八「おはようございます」
卯之吉「どうしたんですかい? こんな朝に」
源之丞「祝いにきたんだよ。見習いから昇進したと聞いてな。ほれ!」
銀八「うわ~…!」
美鈴「源之丞様、おはようございます」
源之丞「あっ、美鈴殿…。おはよう」
ナレーション「この源之丞、美鈴に惚れているのですが、その美鈴が、卯之吉のことを、好いていると気付いております」
美鈴「料理が下手なばかりに、ご迷惑をおかけていたします」
卯之吉「食べられないほどしゃないですよ」
銀八「口の肥えた旦那が、そんなこと言うなんて。もしや、旦那…」

卯之吉「え…私に、その気はありませんよ」(台所の美鈴、ガックリとした感じ)
源之丞「まことか? もし、そのようなことならば…!」
(赤ん坊の泣き声)
銀八「赤ん坊でげすね」
荒海「八巻の旦那、大変ですぜ!」と。赤ん坊を抱いて現れる。
卯之吉「元気そうに泣いていますね。どこの子です?」
荒海「何を言ってるんです…。旦那のお子ですよ!」
卯之吉(せき込み)「えっ?」
置き手紙を見る卯之吉、隣から美鈴も見ている。
荒海「身に覚え、ないんですかい?」
卯之吉「う~ん…」
銀八「でも、どうして、親分さんの所に…」
荒海「俺と八巻の旦那の仲は、それだけ、天下に知れ渡ってるってことだよ」
卯之吉「まあ…、私の子かどうかは、さておき、私を名指ししてきたんです。ここは、預かるしかないでしょう」
荒海「ですがね旦那…」
(泣き声)
荒海「苦手なんだよ! 子どもは!」
銀八「「え~?」
荒海「銀八!」
銀八「えっ…! ちょっと、いやいや…! あっしも苦手なんですよ! ちょっと、美鈴様…!」
美鈴「うっ? えっ? いやいや…! 私も苦手です! 源之丞様」
源之丞「いや! いや…! えっ?」(泣き声)「おおっ…! 俺もだよ! 卯之さん!」
卯之吉「私? いや、ちょっと待って…。おっと…!
(赤ん坊の笑い声)
荒海「旦那のお子だ」
(出勤途上の卯之吉と銀八)
卯之吉「困ったねえ…」
銀八「本当に心当たりがないんなら、引き受けなけりゃ、いいんでがんすよ」
卯之吉「だって、かいそうじゃないか」
銀八「かわいそうなのは美鈴さんでがすよ! 旦那に相手にされないばかりか、あの子の世話まで押し付けられて」
卯之吉「荒海の親分さんが、すぐに乳母を探してきてくれますよ」

その頃の同心屋敷。源之小が赤ん坊抱っこしている。(赤ん坊の泣き声)
源之丞「ずっと泣きっぱなしとは…。さすがの俺もかなわん」
美鈴「申し訳ございません。源之丞様にまで手伝わせてしまって」
源之丞「いや…、俺のことはいい。だが、卯之さんの子なら、もっと、聞き分けが良さそうなものなのになあ。なあ? この目元、卯之さんに、よく似ておると思わぬか?」
美鈴「そのようなことはないと思います」
源之丞「あいつは、いいやつだ。だが、名うての遊び人よ。吉原や深川で、卯之さんを知らない女はおらぬ。そんな男は女を不幸にする。だが、俺は違う。惚れたら最後、その女に一途になる。もし、よかったら、美鈴殿、いずれ、この俺と…」(赤ん坊の泣き声)
美鈴「親分さん、まだかしら? ちょっと、お願いします」
源之丞「いや…、まだ、話が…! 美鈴殿!」
美鈴、外へでる。
荒海「おお! 遅れてすまなかったな! 近所でいい人を見つけてきたよ!」

お仲「夜中、おなかすかせて泣いたら、米のとぎ汁、飲ませるんだよ」
美鈴「はい」
お仲「それじゃ、そろそろ、私は…」
美鈴「えっ? もう帰るのですか?」
お仲「うちにも子どもがいるんだよ。また明日、来るからさ」
家の前で卯之吉、お仲とすれ違う。
卯之吉「じゃあ、あのお方が、荒海の親分さんが、連れてきてくれた、乳母さんですかい?」
美鈴「はい。お仲さんです。お乳を頂いたら、すぐに泣きやんで」
卯之吉「さあ…。こっちおいで。よいしょ。ああ…、あ~! いい子だねえ。かわいいねえ。え~っと…、お前の名前は…」
美鈴「新吉です」
銀八「あっ、じゃあ、新坊だ!」
卯之吉「そうか。新坊か。笑ったね。ハハハ」
美鈴「かわいいですねえ」
卯之吉「うん?」
美鈴「どうされたのです?」
卯之吉「何か、なま暖かいんだよ…。ああっ…!」
美鈴「ああっ…!」
銀八「ちょっ…! あららららら! 大変だ」
翌日
銀八「今日は聞き込みですか?」
卯之吉「はい。村田様に、男の身元を調べよと、言われてますからね」(あくび)
銀八「眠れなかったようでげすね」
卯之吉「ああ…、夜泣きが、すごくてね。じゃあ、あとは頼みましたよ」(後ろでは美鈴が赤ん坊を抱いて座っている)
美鈴「ですが、自信はありません…」
卯之吉「似合ってますよ、赤ん坊を抱く姿。いってきます」(美鈴はうれしそうな表情である)

(同心屋敷、泣き声)
美鈴「いい子だね、新坊は。だから泣かないでね、もうすぐ、お仲さんが、お乳を飲ませに来てくれますよ~!」(ため息)回想、卯之吉「似合ってますよ、赤ん坊を抱く姿」、元気を取りもどす。
お仲「お待ち遠!」
美鈴「あっ…!」


同心屋敷
銀八「ただいま戻りました」
美鈴「おかえりなさいませ」
卯之吉「ただいま。元気にしてたかい? 新坊」
神竜一家のもの「あのガキ…!」
銀八「さすが器用でがんすね、おしめまで縫えるとは」
卯之吉「医術の腕が、こんなところに役に立つとはね」
美鈴「でも、赤ん坊とは、いいものですね。無心で笑いかけてくれると、思わず、こちらも、ほほえんでしまいます」
銀八「美鈴さんも、少しの間に、扱いに慣れたようでがすね」
美鈴「はい。卯之吉様も、子どものころは、この子のような、かわいい笑顔を、見せていたんじゃないですか?」
卯之吉「さあ…」
銀八を送るため、美鈴、外に出て。
銀八「あっしも、よくは知らないんでげすが、旦那には、何か、人には言いたくない過去が、あるようなんですよ。じゃあ、おやすみなさい」
美鈴「おやすみなさい」

ナレーション「そして、その翌日、美鈴が、菊野に会いにやってまいりました」
菊野「美鈴さんが、こうして来てくれるなんて! 赤ん坊は?」
美鈴「えっ? あっ…、乳母さんに預けてきました」
菊野「そう。けど、卯之さんも、本当は心当たりがあるのかないのか、今度、問い詰めて、とっちめてやんないとね」
美鈴「そのことも気になってはいますが、今日、伺ったのは、卯之吉様ご自身のことです。卯之吉様は、時折、ふと、悲しそうなお顔を、お見せになることがあるのです。菊野さんなら、その訳を、知っているんじゃないかと思って…。何かご存じなら、教えていただけませんか?」
菊野「いや…、私も、よくは…」

その頃、同心屋敷
水谷弥五郎「由利之丞が、いつも、世話になっておるからのう。釣れた鯉でも、たまには持っていかぬとな」
由利之丞「挨拶は欠かせないからね。卯之吉さんが、衣装代までお金を出してくれるから、そこそこ、いい役にも、ありつけるようにもなったんだし!」
水谷、屋敷に入って鮒の泳ぐ手桶を下ろす。「ふん! ああっ…! 頼もう!」
お仲「はいはい! 何だい?」
お仲にたしろぐ水谷へ由利之丞「どうしたんだい?」
水谷「似ているのだ、元妻に…」
由利之丞「弥五さんが女嫌いになった、もとだっていうの?」
水谷「あっ…! まさか…!」
(新吉の泣き声)
水谷「何故…? そなたと卯之吉殿との子ではあるまいな?」
お仲「えっ? やだよ!」
美鈴「水谷様? 源之丞様も」
水谷「あっ、あっ、あっ…! あの、あの…、こっ、こっ、これ、これ、これは…!」
お仲「そりゃ、八巻様のお子なら、産んでやってもいいけどね。ハハハハハハ…!」
水谷「いやはや…、そうてござったか。これは、とんだ早とちりでござったな」
美鈴「はい」
お仲「おなかもいっぱいになっただろうから、私は、これで! 夕方、また来るからね!」
美鈴「ご苦労さまです」
お仲「はいはい~!」
美鈴「では、私は、これから買い出しに。その間、この子を見ていただいても、よろしいでしょうか?」
水谷「あっ、ああ…」、美鈴でかけた後「お前の母は、どこに行ったのしゃ。こんな、かわいい子を置いて」


神龍一家の2人が窺っている。
由利之丞「弥五さん、ちょっと!」
水谷「うん?」
由利之丞「どうだい? おいらの、この姿。同心、八巻に化けたときから、気に入ってたんだよ!」
水谷に睨まれて「ふざけて着ただけじゃないか」
水谷「しっ…!」縁側の赤ん坊に寄る2人に「貴様ら! 何故、同心の家に、忍んでまいった?」
そこへ同心姿の由利之丞が顔を出すと「八巻だ! やっぱり、千里眼だ」
水谷が抜刀して迫る、二人「うわっ…!」
卯之吉「ねらいは恐らく、新坊だろえね。何か、ほかに、気付いたことはなかったですか?」
水谷「その曲者、腕に竜の彫り物があった」
銀八「あの殺された男と同じでがすね」
卯之吉「上州の神龍一家の者たちだ」
美鈴「けれど、どうして、この子を?」
荒海「旦那~!」
卯之吉「荒海の親分さん!」
銀八「腕の傷は、いかがでがすか?」
荒海「このとおり! 旦那の手当か良かったんで、何ともありゃしませんよ! それで、お礼に伺ったんですが、それより、女を見つけました」
卯之吉「えっ?」
荒海「おい!」
寅三「へい!」
荒海「前に旦那からの言伝を、伝えに来た女ですよ。中の様子をうかがっておりやした」
卯之吉「初めて見る顔ですが…」
(新吉の泣き声)
お兼「新吉…!」
卯之吉「もしや、この子の、おっかさんでは?」
お兼「はい…」部屋に上げて貰う「私が、あの子の、新吉の母親の、兼でございます」
卯之吉「…だとしたら、どうして、私なんかに、大事な子を預けたりしたんですかい?」
お兼「すべては子を思う一心で、したこと! どうぞ、お許しを…!」と低頭する。
銀八「じゃあ、お兼さんも、神龍一家で?」
お兼「はい。前の親分だった権太夫に、力ずくで情婦にされました。新吉は、その権大夫と私の間に生まれた子どもです」
卯之吉「事情を話していただけますか?」
お兼「兼大夫が死んだあと、跡目を継いだ十三郎は、一旗揚げようと、上州から、この江戸へ、一家の者たちを連れて、やって来たのです。けれど、新吉だけは、悪の道に染まらぬように育てたいと…。それで、仲間の武蔵と足抜けを…。(略)。武蔵には『新吉の産着に、隠し金の在りかが縫いつけてある』と、嘘を言って、味方につけたのです。ですが、悪党の掟は厳しいもの。私の嘘のせいで、武蔵は殺されました。きっと、子どもだって容赦しません」
荒海「だから、八巻の旦那に預けようと俺の所に」
お兼「はい。八巻様のお噂は、上州にも聞こえております。きっと、神龍一家も、むやみに、手は出せないと…。八巻様、このとおりでございます! 私は、打ち首覚悟でございます! ですが、新吉だけは、どうか、お守りください! 私は、お恥ずかしい話、悪事を悪事とさえも、思わなくなっておりました。ですが、あの子を産んで、人の親になって、あの子の笑顔を見ているうちに、どこかに忘れていた、温かい何かが、胸に流れ込んできたのです。私は、どうなってもいい! ですが、新吉だけは、どうか、お助けを!」
水谷「わしからも頼む。何とか、この女子(おなご)と赤ん坊を、助けてやってはくれまいか? この女の話、よく分かる。子の笑顔ほど、温かい気持ちにしてくれるものしない。実は、このわしにも、子がおったのだ。かわいくて、かわいくてな…。だが、浪人になったわしに、甲斐性がなかったせいで、女房に逃げられてしもうた。その女房に未練はない。だが、今でも、その子の笑顔を思い出すと…。今の自分の生業(なりわい)が、嫌になることがある。金のため、人を斬る父を、どう思うかとな」
由利之丞「弥五さん」
水谷「わしにできることは何でもする。だから…。このとおりだ。(低頭する)」

お兼、隣の部屋で新吉に乳をやっている。
銀八「武蔵は殺される前に、産着のことをしゃべったんでしょうね。神龍一家の者たちに」
美鈴「隠し金そのものが嘘だっていうのに」
水谷「…だとすると、やつらは、まだ、そのことを信じていて、新吉を、何としても、さらおうとするはず」
荒海「あいつら、どこまでも追いかけて来ますぜ。どうします?」
卯之吉「助けないわけにはいきませんよ。新坊のためにも」

(神龍一家)
太吉「大変です! お兼が赤ん坊を連れて、逃げようとしていやす!」
十三郎「ああっ?」
太吉「旅支度をして街道のほうへと!」

(街道)
十三郎「あの男は?」
子分「八巻の子分です。町外れまでの付き添いでしょう」
十三郎「八巻さえいなければ、こっちのもんだ。行け」
子分「へい」
十三郎「やい! お兼! 待ちやがれ! その赤ん坊を、こっちに、よこしな」
お兼に扮した美鈴「『嫌だ』と言ったら?」銀八、赤子と思しき包みを預かる。美鈴、笠をを取る。
十三郎「だましやがったな!」
神龍一家の後ろより、荒海「だまされやかったな? ヘヘヘ! この辺りで襲ってくると、にらんでたとおりだ! 観念しな」
十三郎「どうせ捕まったら、獄門首よ! みんな、まとめて、やっちまえ!」
子分「へえ!」
美鈴は杖で応戦、水谷は鞘に入った刀で倒していく。
神龍一家の子分「待て、待て、待て…!」の声に、荒海「おら~!」
銀八「旦那~! またですかい!」その卯之吉に吹き矢吹こうとする子分に美鈴が杖を投げて、的中、守る。
寅三、男を倒し、「鬼姫さん!」と美鈴に刀を投げる。空中で受けた刀で十三郎を打つ。但し、抜刀していない。

十三郎「こうなったら、八巻と差し違えよ!
お兼「危ない!」
水谷「許さん!」、水谷が庇った前に立ち、倒す。十三郎「うっ…!」。但し、抜刀しないのは生け捕りが目的か。
お兼「さすが、八巻様…。一歩たりとも退こうとしない」
荒海「ああ! これが本物の男の中の男、八巻の旦那だよ!」
銀八、小声で「旦那、起きてくださいよ」
卯之吉「ん? もう終わったかい?」
銀八「へい」
荒海「神龍一家は、残らす成敗しやした!」
卯之吉「よかった。これて、お兼さんも新坊も、枕を高くして寝られるね」
お兼「それもこれも、八巻様のおかげでございます…!」
卯之吉「いや…、見てのとおり、私は何もしちゃいませんよ」
荒海「旦那~! そいつは、こ謙遜が過ぎるってもんてすぜ!」(笑い声)

同心屋敷
銀八「寛大なお裁きで出て、よかったでがすね! まあ、もともとは、お兼さんも、無理やり、一家に引き入れられた身の上。それに、こたびの捕り物も、お兼さんの助けがあってこそでげすから」
美鈴「これから、どうされるのですか?」
お兼「はい。いままでの罪を償うためにも、どこかのお寺にお仕えして、この子と2人で、暮らしていきたいと思っています。本当に、八巻様には、何とお礼を申し上げたらよいか…」
卯之吉「いいんですよ、そんなことは。自分の命を懸けてまで、我が子が悪の道に進まないようにとの、強い思いの賜物です」
お兼「新吉は、しっかり育てます。八巻様のように、人様のお役に立てる人間になるように」
一礼、去る。銀八・卯之吉・美鈴と続き見送る。
美鈴「行ってしまいましたね」
卯之吉「もう、あの泣き声を聞けないと思うと、好くし、さみしい気もしますがね」
銀八「あっ! いけねえ! せっかく、旦那が夜なべして塗ったおしめ、渡すの忘れちゃいやしたよ! ちょっと、お兼さ~ん!」
美鈴、卯之吉「ハハハハ…!」
銀八「おーい!」
(後日、菊野来同新宅)
菊野「赤ん坊は、母親が連れて行ったそうね」
美鈴「はい。卯之吉様のお子ではありませんでした」
菊野「美鈴さん、おなた、卯之さんのことが、本当に好きなのね」
美鈴「えっ? ああ…」
菊野「前に聞いたでしょ? 卯之さんのこと。卯之さんは時折、悲しげな顔を見せる。私なら、その訳を、知ってるんじゃないかって」
美鈴「はい…」
菊野「卯之さんはね、捨てられたの、親に」
美鈴「えっ?」
菊野「そのことが、卯之さんの心に、ぽっかりと、大きな穴を開けてるの。」

三国屋
徳右衛門「それを…、言ってしまったのかい?」
菊野「はい。勝手をして、すみません。でも美鈴さんなら、卯之さんの心の穴を、塞いでくれそうな気がして」
徳右衛門「そんなこと、その娘に、できるのかねえ…」
菊野「今度の騒ぎは、悪に染まり、心を閉ざしていた女が、母親になり、子の笑顔で、人の心を取り戻したことが始まりです」
徳右衛門「だから、卯之吉もと?」
菊野「今まで人を寄せ付けなかった卯之さんが、初めて、そばに人を置いた。それが美鈴さんなんです。卯之さんは、人に心を見せるのを怖がってる。けれど…、あの子なら」

同心屋敷
卯之吉「じゃあ、今夜も行ってきます。美鈴さん」
美鈴「はい」
卯之吉「お兼さんの身代わりになって、すみませんでした。そのうえ、神龍一家と戦わせ、危ない目にばかり遭わせてしましいました。」
美鈴「いいえ。私にできることは、それぐらいですので」
卯之吉「ですが、私は、美鈴さんに対して、何のお返しもできません。これ以上、私のそばにいるのは、良くないでしょう。そろそろ、父上の所に戻られたほうが、いいち思います」
美鈴「それだけは、できません」
卯之吉「えっ?」
美鈴「私は、卯之吉様のおそばにいたいのです。どうか、ここにいさせてください」(涙がたまり、頬を流れる)


○原作は第9巻『大富豪同心 卯之吉子守唄』による。

○テレビの美鈴は料理下手になっているが、原作では卯之吉の評価も含めて真逆といっといいだろう。第5巻『大富豪同心 遊里の旋風(かぜ)』の8~11頁である。

 台所へ歩いていくと、問題の、コンコンという音がさらに大きく聞こえてきた。卯之吉は杉戸の陰からヌウッと顔たけ突き出してみた。
「ああ、美鈴様でしたか」
 竈(へっつい)の横にまな板を置いて、美鈴が朝御飯の用意をしている。コンコンと連続する音は、包丁で野菜を切り刻む音だったのだ。
「あっ、旦那様……」
 美鈴は卯之吉に気がつくと、片襷をそっと解いて手の中でクシャクシャに丸め、さも恥ずかしそうに肩をすぼめて一礼した。
(略)
「ああ、これは、お見事な腕前でございますねぇ」
 と、まな板の上で千切りになった大根を見つめて嘆声を漏らした。
 ためつすがめつ、まな板の大根を凝視している。
 普通、竈に近づいたら、どんな料理が作られているのか、そっちのほうに関心を示すものではないのだろうか。しかし卯之吉が異常な関心を示しているのは千切り大根である。
「これほどの腕前は、料亭の板前さんだって、そうそう持っていやしませんよ」
 妙なところに食いつかれて、感心されてしまったわけだが、褒められれば嬉しくないはずもない。
 美鈴は早くに母親を失くしている。それからは父の食事を作るのも、道場に通ってくる門弟たちの食事の世話をするのも、美鈴の仕事であったのだ。
 女であるから、好いた男に家事の腕を褒められるのは嬉しい。美鈴は、
「まぁ、そんな……」
 などと、か細い声を漏らして、前掛けなどを指でイジイジといじったりした。
「〝一芸は多芸に通ず〟という謂(いい)がございますが、なるほど、お刀も包丁も刃物のうち。お刀の扱いに慣れた美鈴様にとっては包丁など、ものの数にも入らないのでございましょうねぇむ」


○ストーリー等、テレビと原作の違いは多々あるが、最後の部分を引用する。
301頁。

「お兼へのお仕置きは、どうなりましたかねぇ」
「権大夫の情婦だったとか申す女狐か」
「はい」
 沢田は机の上の帳面を捲って、目を通してから答えた、
「おぬしの話では改悛の情も甚だしいようだし、元々は攫われて無理やり一味に引き入れられた者じゃ。この度の捕り物も、お兼の尽力がなくては首尾よく運ばなかったであろう」
「はい」
「かつては大悪党の情婦で、上州の悪党どもの顔と名に通じておるという。その見識も捨てがたい。よって、町奉行所の密偵となることに同意するのであれば、罪を減じてやらぬでもない--との、お奉行のお言葉であった。」
「ははっ。有り難き幸せ」
 卯之吉は芝居を真似て物々しく低頭した。


302頁~305頁

卯之吉の屋敷の生け垣の、片開きの扉が開いて、藤吉を背負ったお兼が表道に出てきた見送りに出た卯之吉と銀八、美鈴に向き直って深々と低頭した。
「八巻様には、なんとお礼を申し上げたらよいか……」
「ああ、いいよ、そんな挨拶は」
「いえ、母子ともども命を助けられました。神竜一家を召し捕っていただき、これからは安心して暮らせます」
「うん。そいつもみんな、、あんたの手柄さ」
 お兼は涙を拭った。
「八巻様のご尽力で罪まで許され……。これで藤吉は肩身の狭い思いをせずに生きていくことができましう」
「それだけどね」
 卯之吉は訊ねた。
「これからどうするおつもりかねぇ。密偵になると言っても、奉行所のお手当なんか雀の涙さ。他に生計(たつき)がなくちゃいけない」
「はい。それでしたら、田端のあたりの地蔵堂を借りて、尼僧になるつもりでおります」
「えっ」と目を丸くさせたのは銀八だ。
「その若さで尼さんになるんでげすか? そいつぁもったいねぇ」
 銀八は美鈴に肘で小突かれた。
 お兼は固い決意を秘めた顔つきで低頭した。
「今度の一件では富蔵という男を死なせてしまいました。それに神竜一家だって、手前が獄門台に送る手助けをいたしました。さらに申せば、手前は神竜一家の女悪党として、悪事を重ねた身でございます」
 吞気者の卯之吉でさえ、お兼の苦しみと自責の念が理解できる。
 お兼はきっはりと顔を上げた。
「仏門に帰依して、死んでいった者たちを、生涯かけて供養してまいりたいと思います」
「うん。そう決意したのなら、それが一番いいことだね」
「街道に立つ地蔵堂の堂守であれば、お奉行所より命じられた密偵の仕事も務まりましょう。上州から江戸に忍び込む悪党どもは、一人たりとも見逃しはいたしませぬ」
「うん、そういうことなら朔太郎さんに頼んであげよう」
「朔太郎さん?」
「あ、いや、ちっとばかりお寺さんと親しくしていなさるお人がいるのさ」
 卯之吉は藤吉に目を向けた。
「尼寺に入るとなれば、子供とは離れなくちゃなるまいね」
「手前のように、肌身に悪念、怨念の染みた女に育てられたら、いろいろと障りもありましょうから」
「子のためを思って、母子の縁を切るってのかい」
 卯之吉は突然の涙に襲われて、グスッと鼻を鳴らした。
「あい、わかったよ。藤吉坊は、ちゃんと身の立つようにしよう」
 三国屋の財力があれば、子供一人を養い育てるぐらいわけもない。店では何十人もの丁稚小僧の寝食を面倒みているのだ。
「ただし、乳離れするまでは、尼寺行きを辛抱してくれなくちゃ困るよ」
 貰い乳の苦労を思い出して卯之吉が笑うと、釣られてお兼も笑みを返した。
 荒海一家の寅三が迎えにやってきた。しばらくは荒海一家に紹介された長屋で生活するのだ。


















  大富豪同心 (7)  「一万両の長屋!」  (脚本:伊藤靖朗)     幡大介の原作を読む 
あらすじ   五年前、一万両にものぼる大金を盗み江戸から逃げた大盗賊・夜霧ノ治郎兵衞一党が舞い戻る。村田(池内博之)ら南町奉行所の同心たちは血眼で捜索を開始するが、卯之吉(中村隼人)だけは1人、荒物屋の和泉屋太吉が殺された事件の担当に。そんな中、殺された太吉が盗賊・夜霧ノ治郎兵衞一味で、長屋の地下に一万両を隠していたことがわかる。一万両を巡り、夜霧ノ一党と卯之吉がぶつかる。   
00分00秒~









16分25秒~



























20分37秒~
 










31分32秒~


















ナレーション「春は心乱れる季節といいますが、一人前の同心となった卯之吉の心にも、つむじ風が起こりつつありました」
卯之吉「夜になるとまたまだ寒いね」
銀八「さいでげすな。で、旦那、美鈴さんのことは、どうするんです?」
卯之吉「どうするって?」
銀八「何、まさか忘れたとは言わせねえでげすよ」
回想、美鈴「どうかここにいさせてください」
銀八「旦那がその気がないといっても、おそばにとどまるって、けなげじゃないですか」
卯之吉「でも、人なんて、いつかは、いなくなるもんだよ」


同心屋敷
美鈴「あの…」
卯之吉「はい? 何ですか?」
美鈴「少し殺風景だと思って、花を生けてみました。いかがでしょう?」
卯之吉「ふ~ん…」
美鈴「お好みに合いませんか?」
卯之吉「これはねえ…」
美鈴「はい」
卯之吉「うん。ここまで野暮なものは、生まれてこの方、見たことがないですよ」
美鈴「そんな~…」
卯之吉「銀八の芸も、これにはおよばないねえ。ハハハ…」
銀八、美鈴「そんな!」
卯之吉「誠に、美鈴さんらしいですね」
美鈴「あの、どうすればよかったのでしょう?」
卯之吉「普通に生けるなら、花は多すぎてはいけません。どれを大事にして、どれを捨てるか、はっきりすることで、選んだものを、より可憐に際立たせることができる。そのほうが、花も幸せです」
美鈴「選んだもの…、際立たせる…」と、卯之吉から捨てる花を受け取る際、指が触れる。
卯之吉「やはり、一つ、立ち役になる花がなきゃいけないですね」
美鈴「主役の花…。あの、どんな花が?」
卯之吉「凜としてたたずむ、力強い花ですかね?」
美鈴「凜としてたたずむ…」
銀八「旦那、そろそろ、調べに」
卯之吉「ああ…。美鈴さん。美鈴さんは、もう危ない所へは、来ないでください」
美鈴「あの…。ですが…」
卯之吉「私の言うことを聞いてください」

菊野「あの卯之さんが、そう、おっしゃったの?」
美鈴「はい。ここまで野暮なものは、生まれてこの方、見たことがないって」
菊野「まあ…。それでその、凜として、たたずむ花を?」
美鈴「そうなのです。どれを選べばいいのか、全く分からず…」
菊野「例えば、花と言ったって、色や形が違うじゃない?」
美鈴「ええ」
菊野「美鈴さんには、美鈴さんにしかないものがある」
美鈴「私にしかないもの?」
菊野「そう。花で言ったら…。これね。これなら、きっと、群れずに凜と立ち、本物となって、咲いてくれるわ」
美鈴「本物?」
菊野「すてきでしょ?」

長屋
お峰「死ね!」卯之吉危うしく」
美鈴登場。卯之吉を後に庇い、左手を斜め上に挙げて、ここよりは先へは何人も通さぬ意思を表す。カッコいい!
卯之吉「美鈴さん」
美鈴、応えず。クールな剣客の顔である。お峰、歯が立たず、座り込んでしまう。
卯之吉「美鈴さん! どうして来たんですか?」
美鈴「卯之吉様…。」(吉岡代返「私が来なければ、あなた死んでいましたよ」)
卯之吉、お峰に「太吉さんを殺したのは、あんただね?」
お峰「えっ?」
卯之吉「その匕首の使い方で分かるよ」
荒海「おめえが? 女盗賊のお峰か! 道理で厄介(やっかい)なわけだ」
お峰「さあ…、好きにしな」
荒海「夜霧ノ一党、ここに召し捕ったり~!」











 
大富豪同心 (8)  「仇討免除!」  (脚本:小松江里子)      幡大介の原作を読 む 
あらすじ  南町奉行所同心・八巻卯之吉(中村隼人)の名を騙(かた)り、武芸達者な侍を斬り殺す事件が頻発。嫌疑をかけられた卯之吉は閉門ちっ居を言いわたされ、遊びもできず困惑する。そんな中、卯之吉のことを敵と思い込みあだ討ちのため吉永新二郎(山口翔悟)がやって来る。一度は命を狙われるが、源之丞(石黒英雄)の登場で難を逃れる。下手人の狙いは何か?裏で操るものがいるのか?卯之吉をわなに嵌(は)めようとする敵の正体は?    
   
 大富豪同心 (9)  「刺客と揚羽蝶(あげはちょう)!」  (脚本:小松江里子) 幡大介の原作を読 む  
あらすじ  南町奉行所同心・八巻卯之吉(中村隼人)の命を狙い失敗し、捕縛された元女盗賊のお峰(青山倫子)が火事騒動の中、牢(ろう)から脱走、江戸中の闇渡世から賞金が出て、刺客たちが卯之吉の命を狙う。そんな中、孤高の刺客・佐吉(合田雅史)が卯之吉の命を狙い八巻家を襲う。応戦する美鈴(新川優愛)に危機が迫るその時、卯之吉が身をていして美鈴を守る。そんな佐吉の過去に、菊野(稲森いずみ)が関係していた…。    
   
 大富豪同心 (10)  「あいつは、たたの同心?」  (脚本:小松江里子)  幡大介の原作を読 む 
 あらすじ 八巻卯之吉(中村隼人)の殺害に向け刺客として吉兵衛(宮川一朗太)が登場。吉兵衛は、偽卯之吉が由利之丞(柳下大)と知らずわなを仕掛ける。そんな中、卯之吉は徳右衛門(竜雷太)から両親の死の真実、宿敵・天満屋(柴俊夫)との関係を告げられる。一方、卯之吉に化けた由利之丞は、美鈴(新川優愛)と共にわなにかかり、絶体絶命に…。その時、卯之吉たちが現れ一網打尽に。その騒動の中で美鈴が傷つく。   該当個所なし。
お峰と天満屋の最後(16巻『大富豪同心 天下覆滅』の第6章「ふるべゆらゆら」286頁から抜粋)
 
   


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