『草食獣・曳杖篇』(草稿)


草食獣・曳杖篇
 目次   30年   31年&元年   2年   3年   4年   5年  6年 

 『草食獣 第八篇』以後(「短歌人」2018年1月号より)
 番号 作品(平成30年) 
 1 宴会もたけなわのころキス迫るセクハラ男のようなカワハギ 
 2 門構えにいろいろ入れて遊びます一でかんぬき木を植えてひま 
 3 ドラえもんはドラ右衛門かも知れないがどこでもドアはいつもの空き地 
 4 がにまたは蟹よりゴリラ ドラえもんならばガキ大将のジャイアン
 5 畦にいた蛙はぴょんこぴょんこして虫偏おとし魚偏となる  
 6 年賀状は去年でやめたこれからはせいりせいとんエンディングノート 
 7 ありもどきかみきりもどきあゆもどきもどきは蜂起せよがんもどき 
 8 この国に生まれた運とこの国に生まれる不運 この万国旗 
 9 涙もろくなってしまった小便もちかくてこまる人生おりふし 
 10 禾偏でハギと読みます獣偏でオギと読みます よくまちがえる 
 11 旧姓のことなる妻と母と子が女の孫に話しています 
 12 母の部屋へ母の部屋へと押してくるごみやしきけいこごみやしきゆみお
 13 糸偏に冬はあってもこない春そろそろ就活ならぬ終活  
 14 YouTubeを赤いランプの終列車すぎゆくままに想い出まくら 
 15 あけがたの冬至冬中冬はじめすがたかくした月形半平太 
 16 ゆうぐれの冬至冬中冬はじめそらに怪傑ハリマオがいる
 17 よふかして冬至冬中冬はじめそらには旗本退屈男 
 18 せんこうはなびがきれい空に咲くはなびがきれい あ 流れ星 
 19 星という星よりひかりもれくれば颯とめくってみたい夜の空
 20 歳末のうすくらがりのみちばたに塩化カルシウムが積んである  
 21 古井戸の声は枯れても怨霊がすがたをかえているお菊虫 
22 吉岡流吉岡染に名を残す吉岡憲法 縁者ではない 
 23 一乗寺下り松へとあつまったにくまれやくだ 吉岡一門 
 24 武蔵から塚原卜伝をたどるとき時空を超えて左卜全
 25 左卜全、本名三ヶ島一郎は三ヶ島葭子の異母弟である  
 26 優勝をすればするほど墜ちていく肘に怪しいサポーター巻いて 
 27 びよびよと犬鳴き猫はねんねんと聞こえた紫式部の時代
 28 新陰の新が心、神、真となり枝分かれする流派も人も  
 29 足高くあげて行進するあれは機械仕掛けの兵隊でない 
 30 進歩して進歩してない 核兵器人工臓器細菌兵器
 31 ニュースから一転、料理番組はのどかに泡立て器でかき混ぜる  
 32 鰹節削り器で削る鰹節けずられながらけずられる音
 33 電子時計日時計振り子時計さへ止まってくれない ムンクの叫び 
 34 風に舞うさくらはなびらそらにみて今しばらくをゆけ花筏
 35 印むすぶゆびのかたちでおもいだす大蝦蟇に乗った児雷也   
 36 「ちかずく」と打てば即座に「ちかづく」の誤りを指摘する一太郎 
 37 自信作の歌の一首がワープロに《「の」の連続》と指摘されてる
 38 漫画またドラマの舞台にありそうな桜花学園大学である  
 39 ママさんが河童のお店 黄桜をのこして煙と消えてしまった
 40 酒の池に裸の女があまたいる酒池肉林のぼくのイメージ  
 41 還暦のアンクルトリス グラス手に年かさねても中年の顔
 42 鼻高のアンクルトリス 鼻赤くなるまでひさしぶりに飲もうか  
 43 ライヨールのペーパーナイフよ出番です週刊現代の袋とじ
 44 袋とじが見たくて買ったわけでない「最新保存版血圧の教科書」
 45 袋とじを開く刹那に動悸して年甲斐もなく見る週刊誌   
 46 またの名を酒仙、高田渡にはなれそうもない山口達也
 47 「非常口」へ緑の人が走ってる信号機なら進めの青だ 
 48 畑には緑色野菜がなっている緑がいけないならば青物
 49 白黒をはっきりさせるつまりその成語のような囲碁やオセロだ   
 50 グラサンの豊川悦司みるたびに佐村河内守(さむらごうち まもる)が甦るのだ
 51 四度目の結婚しかも父となる清水国明六十七歳
 52 此岸から彼岸へ終活準備する吉岡生夫六十七歳   
 53 窓という字の既視感はつるさんはまるまるむしのおもかげに因る
 54 ひきぬけば葱に髭あるめでたくもその白鬚をしごくしあわせ 
 55 雨の字に何を託した雨情また斎藤緑雨長谷川時雨  
 56 黒板は緑の色をしていますひざしあかるい初夏の教室 
 57 字に当てるタイプ離してみるタイプ、最後にメガネルーペを買った
 58 菊川怜のおいどに耐えたおまけには与らないがハズキルーペだ  
 59 照明器具を映すルーペのストレスがなくなった ハズキルーペを掛けて
 60 むかしむかし御祭村があったこと日本歴史地名大系に知る
 61 何をもって正直という福島の正直祭祀遺跡という遺跡   
 62 日本昔話ではない 中世を生きた正直村の人たち
 63 飛翔殿の階段のぼるご婦人の手に手に葬祭バッグが黒い  
 64 とりわけて夏の暑さを忘れまい六十七歳、平成の末(まつ) 
 65 熱中症が気になり朝のウオーキングやめにしました今日で四日目
 66 熱帯夜猛暑日つづくゆくすえは人また進化して爬虫類
 67 終活として通販をやめましたしなやかケアにトマト酢生活
 68 ぼろぼろの人生ですよ肘を置く合成皮革のようなものだな    
 69 お菊餅お菊煎餅あきないはともあれ足がないお菊さん
 70 菊人形といえば枚方きおくにはテーマパークにある異空間  
 71 自慢にもならないけれど思い出は阿多福風邪に二度もかかった
 72 江戸の世の港のぞけば大型船快風丸が蝦夷地へと発つ
 73 いかにもの金屏風より座るならシックな銀屏風を背にしたい
 74 扇風機二台まわしてクーラーの冷気攪拌する仕事部屋  
 75 レスリング、ボクシング、さては体操と飽きさせないなあ 造反有理
 76 腐敗したその人たちにものをいう十八、宮川選手がんばれ   
 77 二十歳の記者会見に始まって崩壊をする権力を見た  
 78 中学の陸上競技大会の二〇〇〇でテープを切ったことある
 79 剣道の腕前よりも絞られて絞られて完走する肺活量
 80 警察の夜の道場 真剣で居合ならった中学のとき
 81 福耳の裏側だった矢を放つ弦があたって痛かったこと 
 82 砕石のごろごろとする造成地で草野球したむかしのむかし   
 83 結婚しない息子 兄の子 お彼岸の中日に母とくる墓参り  
 84 にわたずみゆくかたしらぬロケットは地球を捨ててゆく富裕層 
番号  作品(平成31年&令和元年) 
 85 爺ちゃんは爺ちゃんであってそれ以外の何ものでもないまして祖父(おおちち) 
 86 卓袱台に裸電球おさなくてにゃんにゃんご飯のうまかったこと
 87 梅田フードホール 気になるみそかつは名古屋名物矢場とんの店
 88 ニンニクの皮むいている血圧によいとテレビでやってた酢漬け
 89 ピーナッツは無塩で薄皮付きのものこれも酢漬けにした テレビ見て    
 90 タマネギを買った テレビでやっていた血管年齢を若くする方法
 91 やれば見る健康番組見ればやる 超簡単レシピに限り  
 92 「パプリカはピーマンか?」電話してパプリカを買う今日のお使い
 93 クリスマスで賑わう街と縁のないわたしにも雪が降る こんなにも
 94 子の家に飾ってあったクリスマスツリーが嘉するような団欒  
 95 団らんの栾は俗字で初こいの戀は旧字で、些末事ながら 
 96 クリスマスイブのうしろの席にいる恋人未満友達以上
 97 小学生の頃はバタークリームのクリスマスケーキに興奮してた   
 98 うまいのは生クリームのクリスマスケーキやという ええとこの子が 
 99 植木橋にさしかかるころ鉄橋を渡る 七つの光の箱が 
 100 ネクタイを締めた老人あしもとをみればウォーキングシューズはいてる 
 101 ウォーキングシューズで入るスーパーも孤独ではないウォーキングシューズ
 102 向かい側の座席の人もおのずから手にするが何をスマホ星人
 103 スマホ族の中でしずかにしていたがメールに開くガラケーの音   
 104 文盲とかかわりもなく使ってたカ変にサ変ナ変にラ変
 105 乱と変の違いおもえば貴の乱ふるくは加藤の乱もさみしい  
 106 泡とうまれ泡ときえてくシャボン玉たまたまうまれ輪廻転生 
 107 前をゆく中年男女のやくそくの土手も知ってる 夫婦ではない
 108 この時刻しかも真冬の対岸を先行くおばさん腕振りながら
 109 春が来て三人四人で道ふさぎ歩くあのひとたちはきらいだ 
 110 四時五十四分に出てくらがりに上りの列車を鉄橋に見る   
 111 犬連れの夫婦を見かけなくなったその挨拶が負担だったが 
 112 平井車庫の塀に小便する人を見つつ体操 川をへだてて
 113 ウォーキングジョギング犬の散歩まで入れて十名ほどの常連  
 114 辞書に知る初井言栄とわれら知る初井しづ枝にかかわりはない
 115 後家雛があってやもめ雛がない ともあれさまにならないわれら  
 116 雛かざる家ではないが菱餅は食べてみたいな 西友の地下
 117 二三日損したような気分だが明日より花見月夢見月
 118 校門を出ればヒヨコを売っていたランドセル背負った小学時代
 119 開いてもまた開いても一通の迷惑メールさえこない今日    
 120 マゾヒズムかも知れないとバスに乗る慰安婦像をみつつ思った 
 121 御詠歌に落首に道歌呪文歌とみそひともじは最強である
 122 のろいとも読めてまじないとも読める呪の字の不思議の入口に立つ 
 123 まじないの歌を集めていく中で糟屋磯丸の名前を知った
 124 迷信として近代が切り捨てるまじない歌にみる幸福論
 125 かわむしは毛虫で蝶はかわひらこもし虫めでる姫君いたら   
 126 辞書にある浅黄斑蝶(あさぎまだら)の蝶の字はひらひらひらとひらひらとひら  
 127 うすかわにあんこがすける、だけでない幕末の金蝶饅頭譚 
 128 青年の宮川泰介 忘れない宮川紗江も山口真帆も
 129 内田監督塚原夫妻ここにまた吉成社長だ覚えておこう  
 130 和をもって尊しとなす昭和より平成をへて令和、晩年
 131 人の噂も七十五日 ニュースにもならない上陸以後のヒアリは
 132 三人の中ではいちばん親しんだ野口英世ださよならが近い   
 133 こころもち右を向くのは円札の顔の論理だ津田梅子また
 134 センターのすかしを向くかよそみして左を見るか? 円札の顔  
 135 半世紀名無しで渡ってきた橋を神田小橋と知る「工事中」
 136 コンビニの先にあるデイサービスのマイクロバスに母 のるところ
 137 歩行車とシルバーカーと車椅子の違い、などなど今にして知る  
 138 レンタルはシルバーカーと歩行車のいずれかである ひとり頷く  
 139 三本の足では進まぬ母のため片腕を貸す 今日は耳鼻科へ
 140 栄根だけど構いませんかと断ってタクシーに乗る 六百八十円  
 141 ありがたいことではあるがいつきても「清掃中」の公衆便所 
142 ティッシュまたトイレットペーパー、ちり紙と呼んだ記憶はいつ頃のこと
 143 おなじみのちり紙交換、そういえばそんな車が走っていたっけ
 144 紙相撲紙の飛行機紙芝居かみきりむしは指がともだち
 145 新聞の新聞でない情報が二輪ではこばれてきた音がする
 146 新聞で唯一役にたっているテレビ番組、わたしの場合
 147 四軒に年寄りがいてそれぞれの施設に通うデイサービス車
 148 おふくろが通い始めてみえてきた街の景ですデイサービス車 
 149  祖父母の顔を知らない 知っている父の五十回忌は来年だ
 150  母方の祖父母の顔も知らないが孫得て祖父母の一人になった
 151  国道を走れば右に見えてくる模擬天守という川島城
 152  城ならば上桜城址 川島町桑村にあった山城である
 153  ありがたいわけでもないがふるさとは大川隆法の生誕地
 154  妄想にかたち与えるものとしてアダルトサイトの年齢認証
 155  妄想にしても近親相姦の多いアダルトサイト わからん
 156 磯丸の霊神祠(れいじんし)ある神社まであついあついと蝉がまた鳴く 
 157  ゆかりある石灯籠にちがいない写真と見比べ見比べている
 158  椰子の実の記念碑すぎてまだ遠いあつくてあつくて蝉も鳴かない
 159  太平洋の波は荒いぞ国道の眼下に日出(ひい)の石門(せきもん)がある
 160  削除して削除してまた削除して迷惑メールしかこない日々
 161  知ってさてすぐに忘れることながら石榑千亦の名は辻五郎
 162  買いに出る出ないは別だがこのごろは石焼き芋の声も聞かない
 163  不倫する人も住んでる守山市浮気町、さぞ告げがたかろう
 164  年鑑の物故歌人の一覧で初めて知った人の死がある
 165  くろうととおぼしき美人もすわってる砂かぶりその砂になりたい
 166  歴史的事実を共にするというときの「事実」がはなから違う
 167  就職も結婚もする しなければならいものと疑わず来た
 168  フリーターのわけならバンド優先で結論は結婚しない 不可解
 169  墓じまいの日など思いて「吉岡家之墓」に彼岸の花を供える
 番号 作品(令和2年) 
 170  楽しみにしていた太田和彦の「ふらり旅 いい酒…」も終わった
 171  身銭切って今ある太田和彦の今を見ている居酒屋番組
 172  草履取りの役もしていた呑み鉄の六角精児だ味わいがある
 173 酒を飲む場面はないが松重の孤独のグルメに癒やされている 
 174  如神丸(にょしんがん)安神散(あんじんさん)に六神丸(ろくしんがん)赤玉神教丸(あかだましんきょうがん)も神薬(しんやく) 
 175  若い頃はなんていっても仕方ないハズキルーペで読む「短歌人」
 176  爺ちゃんの乳首透けてるきらわれるおとこのちくびを笑うユッチャン
 177  ウォーキング腕立て伏せにスクワット孫抱き上げるみなもとである
 178  借金はない方がいい個人でも国でもまして千百兆円と聞けば
 179  一人当たり九百万円の借金は太る 人口減少を受けて
 180  孫たちの未来を憂う先送り先送りされたつづまりの明日
 181  モニターに映る大腸のポリープをみている 横臥で患者衣の僕
 182 肝臓も腎臓も問題ありません誉められている泌尿器科に来て
 183 無口にて家にこもれば如何せん呂律が怪しい年寄りである
 184 「宿」といえば旅館であること疑わぬ無知が古典にくび突っ込んだ
 185 泊まるならビジネスホテル、愛をいうならば浅茅が宿のあのひと
 186 ユリ・ゲラー今なにしてるスプーンをこすりて指で曲げるあの人
 187 あの人もこの人も黒いマスクして白いマスクを見ない香港
 188  朝酒はしないが職をもたぬ身は昼酒夜酒キャベジンのんで
 189  幼稚園の運動会で先生に抱っこされ泣いていたっけ タックン
 190  友達はひとり 早生まれのタックンをかばう女の子が二、三人
 191  子に残す財のなければ宝くじ十枚を買う西友の前
 192  遠くない生の出口よ子や孫やよしなしごとをおもい寝につく
 193  推しはかることもできない 肉体はともあれ「私」のいない世界は
 194  考える「私」がいない考える人よ教えてくれ死後のこと
 195  肉体をなくした心「わたくし」にうつわを用意した転生論
 196  いれものとしての体はほしくない死んだらわかる否わからない
 197  平凡な人生ながら望外の富ともおもうわが歌の論
 198  脇の毛は髪といわないすねの毛も髪といわない坊主をめくる
 199  焼き御壁は女房の詞とはきくが古女房はいう焼き豆腐
 200  壁登りはヤモリの異名ひとのするボルタリングまたクライミングでない
 201  甦るという字に生のあることを考えている夜の白雲
 202  父方の除籍謄本 母方の除籍謄本 家系図つくる
 203  入夫婚姻 祖父は次男で長兄は宮崎県に転籍してる
 204  城山の詩碑をみている母方の伯父の山口鋳石の字だ
 205  父方の祖父の生まれた善入寺島を歩いた 菜の花の頃
 206  母方の祖母の生まれた善入寺島をみている 城山に来て
 207  忘れられたような「移転之碑」を読めば「嗚呼」善入寺島民の声
 208  近世はとぼしあぶらを売っていた「売薬商店油屋」の謂い
 209  渡し船していたらしい対岸に天満神社のあれば天満屋
 210  父方の祖母と吉岡栄寿堂、二枚の写真をさがしています
 211  近世の川島町全図みておれば街道沿いは今と変わらず
 212  春がまたやってきたのだタラの芽の天ぷら選ぶ惣菜売り場
 213  木の芽山木ノ芽峠は知らないが木の芽ご飯に舌鼓うつ
 214  リックンの武勇伝ひとつ記しおく仏壇の前でうんこしたこと
 215  寝る前に水のんでいる水飲まぬ年寄りというその年寄りが
 216  コロナ禍が教えてくれたオンライン授業もできぬIT劣国
 217  PCR検査もできずに死んでいくこれがわたしの祖国? NIPPON
 218  あけている店も店だか列をなすパチンコ依存症のひとたち
 219  アビガンかレムデシビルか一択というなら僕はイベルメクチン
 220  握手するときも決まってニュースにはつまらなそうな顔 習近平
 221  人の上に人をつくらず、とはいうが仌(ひょう)の字がある地の辞典には
 222  人の下に人をつくらず、ともいうが从(じゅう)の字がある地の辞典にも
 223  囚(しゅう)の字の中にすわっている人は吉田松陰、平賀源内
 224  柿本人麻呂神社へ来ておもう山部赤人大伴旅人
225  山下に野村北島ゆびおるに忘れてはなるまい人見絹枝を
 226  手に取ってカゴに入れたが時節柄やっぱりコロナビールはやめた
 227  六甲の小便小僧はふりそそぐひかりのなかをマスクしている
 228  鳴き袋のなかのようだよ六月の水田(みずた)の声をききつつ眠る
 229  何度となく聞かされてきたレジ袋有料化その七月が明日
 230  読んだような気がする読んでないような気もする田山花袋は
 231  どぶろくをのんでおもえばなつかしい萩原健一や森進一が
 232  六十五で髪はくろぐろふさふさが額を狭くしている総理
 234  このあたりで泳いだ記憶たちまちに鶯の森駅を能勢電は発つ
 235  江戸っ子だってなあ神田の生れだいそうだってなそんなに何かい石松は強いかい
 236  咄家とはつゆ知らなんだ初代の森乃福郎、短命である
 237  先斗町御茶屋のせがれさもあらん花ある初代森乃福郎
 238  千葉ロッテ宗接(むねつぐ)捕手は兵庫県宍粟(しそう)市出身、珍名である
 239  ガラケーには無縁、濃厚接触を知らせてくれる便利なアプリ
 240  しつこかった「ホットな女の子」ほいほいと仕分けルールで溜まる快感
 241  泌尿器科の女性自身をめくるとき見たくもない顔 小室圭
 242  元皇族の元といえどもそれなりの黒田清子さん守谷絢子さん
 243  スキャンダルの一つ一つが致命的とおもえる内親王の恋
 244  なよたけのかぐや姫なら求婚を退けてかえる満月の夜
 245  リベラルか否かは別だ宮邸に従事するのも公人である
 246  天皇の義兄となる日あるとすれは皇室制度はなくなってよい
 247  PSAが上がったことを説明するアクリル板ごしの先生
 248  アマゾンからおすすめメールがまた届くパソコンで聴く大沢桃子
 249  実写版「あしたのジョー」でまだ若い伊勢谷友介の力石を見る
 250  山Pは謹慎中だが実写版「あしたのジョー」で主役している
 251  お嬢さん「白木葉子」の役をした香里奈はフライデイに躓く
 252  なりきって段平、香川照之はさすがだ丹下拳闘クラブ
 253  昼のんで夜のんで朝ウォーキング、職業無職いわば余生だ
 254  年齢に絶望してる絶望をしても六十の日にもどれない
 番号 作品(令和3年) 
 255  川西市小戸(おおべ)にあるが小戸(おべ)神社、秋の祭りのポスターで知る
 256  肝試しに夜の神社の大楠のくびつりえだの下まで行った
 257  ダイコクで買ったオロナイン軟膏は富山の薬箱に入れとく
 258  置き薬の富山が来なくなってからやけに目につくドラッグストア
 259  キャベジンを飲んでおもえば熊の胆のなんとかいった富山の薬
 260  朝起きてまずすることは母のため日めくりめくる大きなやつを
 261  切手はるときにベロにてなめること厳に慎みました コロナ後
 262  城山から伊予街道を望むとき斜めに向かうちちははの家
 263  河港で栄えたという近世の「麻植郡川島町全図」みている
 264  油屋が明治になって売薬の𠮷岡栄寿堂をはじめた
 265  趣味人の父方の祖父、背景の庭は盆栽の棚で埋まる
 266  天満屋の屋号のゆえんや渡し船をしていたとある山口の家
 267  父方の祖父が生まれた母方の祖母も生まれた善入寺島
 268  神の島は極楽坑に投葬し墓なし、藩の『阿波志』は伝う
 269  「元校長覚悟の自殺」戦前の記事を実地でたしかめにきた
 270  伸びている鼻毛のことが気になるがどうせマスクだ外すことない
 271  新聞をとらなくなって唯一の不便といえばテレビみるとき
 272  藤浪がもし阪神でなかったら(詮無いことだ)中継ぎである
 273  まだ暗い道をミニチュアダックスが、あとに大きな影をしたがえ
 274  ルックスは分岐点ではないらしい声優のこと俳優のこと
 275  リハビリで書き写すのにちょうどよい長さであった天声人語
 276  落とす呑む殺す尖らす張りあげる絞る曇らす 声のことだよ
 277  てのひらをみつめてあれば大いなる指紋の渦に呑まれて、夢か
 278  親指は御父指(おとゆび)や母指(ぼし)、童話なら親指姫や親指太郎
 279  人差し指は塩なめ指とも云うらしい『俚言集覧』ひらきてみれば
 280  中指は背高指あるはまた丈高指ではそのままだ
 281  薬指は紅付け指あるはまた名無し指とはさみしいね
 282  小指また耳指(じし)とも云った昔から耳を搔くのは小指であった
 283  小指また燗差指(かんざしゆび)とも云うらしい但し方言地図ではあるが
 284  タメ口の理髪師のいる月木を外して金曜、散髪に行く
 285  理容師の腰のあたりが触れるので肘をまた引くバーバーガール
 286  京都光華女子大学の設立も新しくして昭和十九年
 287  長光が鍛えた刀もポンポンをせねばいつしか赤井錆光
 288  B級のグルメとしては懐かしいすいとん汁のすいとんが好き
 289  西友で売られていたがあれは何?テンガスーパーフィット・カップ
 290  パソコンで調べてわかった薬局に置いていたのは大人のオモチャ
 291  三十一に二音たりない「春殖」のるるる…草野心平の詩だ
 292  ひさかたの天草四郎、本名の益田時貞では及ばない
 293  ねこまんまと聞けばご飯にカツオ節醤油をかけて食べたくなった
 294  ねこまんまご飯の上に味噌汁をかけていただく昔も今も
 295  月曜からはじまる暦と日曜からはじまる暦にもてあそばれた
 296  二つ駅あれば二つの駅前でライトアップをしている頃か
 297  駅前のイルミネーションみるために遠回りする夕べの散歩
 298  人と人ならば絶交するだろう海を隔てて不愉快な国
 299  スコープに狙撃手の目が光ってたソビエト軍の女兵士の
 300  狙撃手の一人だローザ・シャーニナもリュドミラ・パヴリチェンコも
 301  北向きの家に住んでたそれゆえの北向道陳、千利休の師
 302  道草を食っているのはどこの犬 道草をくう人の子もまた
 303  ALSで亡くなった瑳川哲朗を孫とみているウルトラマンA
 304  ウルトラマンに出ていた篠田三郎は絵になるロマンス・グレーの男
 305  「うまずめ」は差別用語だ変換をしない一太郎が教えてくれた
 306  かな漢字変換ソフトと差別語の、いや差別語も一様でない
 307  未来から現在、過去の人となり聴く「星はなんでも知っている」
 308  繁華街も近くて星座早見盤は役に立たないマンションの空
 309  子に勧めた記憶はないがその子とは共有したい『星の王子さま』
 310  混みあえるセンターに来た免許証返納手続きの一角まばら
 311  返納後「自動車等の運転はできません」すなわち運転経歴証明書
 312  エビデンスに耳慣れたころ耳障りな人流?コビッド・ナインティーン
 313  米国にワクチン・スワップなるものを持ち込む国があるという怪
 314  「取り急ぎ御礼を申し上げます」は失礼とある よく書いてきた
 315  江戸時代前期の僧侶「急西(きゅうさい)」は生き急ぐ人 西方浄土
 316  ツヤ一歳、母ユキ死亡二十一歳 わたしの祖母と曾祖母である
 317  ツヤ三歳、父忠平も亡くなった二十四歳、青年である
 318  杲(あきら)また杲(ひので)と読むかとだえんとする𠮷岡の家に生まれた
 *  内部から崩壊しゆく皇室をみている 笑ってしまうぜリベラル
 *  志のちがいは一挙手一投足にあきらかにして今上陛下
 *  虫けらと思っているのかいやたぶん思っているのだ人の命を
 *  美しくない宰相が升をもて乾杯をする桜みる会
 *  小室圭の義父になったらお出ましば御免こうむる 一般参賀
小室圭の義弟となった天皇にバンザイと手をふるひといない
 *  後嗣としての才なき父とロイヤルのかけらさえなきばかむすめ譚
 *  嫌韓の極まるところベトナムで何をしたかをライダイハンに聞け
 319  バナナマンの日村もまいう~の石塚もオーバーオール着てよく食べる
 320  ウエストをおもえば楽だが七十の年考えたオーバーオール
 321  体重が減らない、ならばと買ってみたイージーパンツで楽ちんなのだ
 322  ワクチンを接種後死亡の報告例、どうやら難を逃れたらしい
 323  奥出雲酒造の壜にDー269と横にあるのはどぶろくと読む
 324  キーを打つ指がのろまで目もかすむ時間はあるが老いで帳消し
 325  マスクして朝一番のポストまで往くに見かける人は数人
 326  これがほんとの僕の姿だ肘の汗にフェイクレザーのぼろぼろが付く
 327  七十になったら職場を辞めなければ、夢の中ではまだ働いている
 328  蛙鳴くうらの田んぼに朝がきて一羽の白い鷺が見えます
 329  水谷も伊藤もしないラケットをコートにたたきつけるジョコビッチ
 330  熱帯魚ゆきかうバーチャル水槽をみている、呼んでくれるのはまだ
 331  魚の棚商店街を往復し「棚」即「店」に納得をした
 332  親がつけてくれた宗吉はそれとして田村魚菜は名前が売れた
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 342  戸主は甥 妻の祖父(おおじ)は叔父にして以下叔父の妻、従弟と従妹
 343  戸主制度の戸籍に姪とありさらには従妹とある妻の母
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 398  手にとって店で買いたい年寄りに通販限定というおとしどころ
 399  まみどりのエノコログサに秋がきてまさしく犬の尾のような花穂
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 401  ダイコクのレジの隣においてあるエンディングノートいつも目につく
 402  ハロウィンに縁もゆかりもない手にもハロウィンジャンボミニ宝くじ
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 番号  作品(令和5年)
 404  サントリーオールド卯歳の干支ラベル飲めば気分も華やいてくる
 405  使い捨てカイロの兎は「きりのすけ」その名を桐灰の桐からと知る
 406  婆汁(ばあじる)の話などない戦後譚「カチカチ山」のウサギとタヌキ
 407  ふしづくりの卯は食べないが卵ならその点よりもレシピは多い
 408  将軍がうやうやしくも元旦に下賜したとあるウサギの吸い物
 409  垂乳根の母かたわらにたらちねもあらわに服をきがえるところ
 410  アマゾンで注文していたどぶろくが届いて三人で飲んだ日もある
 411  三回目のワクチン接種をした頃のわが家の年寄り三人だった
 412  四回目のワクチン接種は妻と二人、母は入院先で接種した
 413  とし食って何様のつもりドタキャンのジュリーも痩せててかっこよかった
 414  泉南市教育委員会は黒塗りでこたえ、なかった開示請求
 415  自殺した子は学校にころされて教育委員会にまたころされる
 416  タツは食べることができない十二支のあとはジビエの範疇である
 417  兎いたここにも菟あっちにもまたこっちにも莵だ兔
 418  かの山で追われたウサギの末裔がここにこうして酒のんでいる
 419  かの川で釣られた鮒の今を問う寿司屋の湯飲みの漢字みながら
 420  お酒のんだウサギのじじいの赤い顔がキモいとのたまう四歳の孫
 421  おめでたいかどうかはともかく六度目の卯年だ七難八苦はいまだ
 422  スマートフォンで録画していくだんどりの𠮷岡恵子音楽教室
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 430  いつのまにか御役御免で財布からどこかに消えたテレホンカード
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 469 阪神のファンではないがオークランド・アスレティックスの藤浪がんばれ
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 471 ライナーの直撃うけて降板の前田健太に初勝利あれ
 472 東日本大震災の連想に佐々木朗希の父また祖父母
 473 吉岡里帆はどういう人かと覗いたら水着の写真ばかり出てくる
 474 ①②③、④のなく⑤へ飛ぶ窓口はアイーンではないアイン薬局
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 476  一本を折って香炉に寝かすべしおふくろさんへの朝の挨拶
 477 こだわりは鈴(りん)の響きだおふくろにきこえるように涼しく渡れ
 478 線香を真宗方式でつかうとき数年先まで消えることない
 479 図書館のとあるところで横になり十歳の孫に叱られている
 480 自販機前でお金わたせば婆ちゃんが何て言うかとユッチャンが言う
 481 婆ちゃんの権威絶大それだけの時間さいてる面倒みてる
 482 宇治原やカズレーサーよりめだってる日向坂46の影山優佳だ
 483 定番といえば定番、台風のなかをレポートするアナウンサー
 484 紙オムツの男性用のCMはさわやかにして松岡修造 
 485 「もちろん僕も今はいています」この「僕」はCMのなかの草彅剛 
 486  もちろんというわけではないが紙オムツ僕もはきますTPOで
 487  お漏らしをしたことがない紙オムツはいているというこの安心感
 488  ウォーキングする人もいる一昔前の私も混じりておるか
489   風呂は朝風呂、うたたねすればたちまちに姓は𠮷岡名は土左衛門
 490  蛙鳴く水田(みずた)よさらば低階層ながらもここにマンションが建つ
 491  そこかしこにマンションが建つクレーンなど遠望しつつお昼を食べる
 492  熱中も熱中時代も熱中家も歓迎するが「症」はいらない
 493  クーラーかけ扇風機もてかき回しそれでも暑い勾配天井
 494  「ぼうちん」と呼んで六十有余年由来は「坊(ぼう)ちゃん」と推し量るのみ
 495  「ボーちゃん」という『クレヨンしんちゃん』のキャラの由来は「坊(ぼう)ちゃん」でない
 *  スピードは禁物にして電卓はひとさしゆびでたしかめて打つ
 *  キーボード打ち損ないの多ければ恥ずかしながら打つ二本指
 *  小4と小2の孫がこの爺のために作ったテスト受けいる
 *  コントロールできないものの一つにて涎は落ちる申請用紙
 *  門柱の文字に抜け殻とまらせて隣家に夏の日が長けていく
 496  おふくろをよく知る植竹庭園が供えてくれた線香あげる
 497  リン台にざぶとんならぬリンフトンさても尊いオリンにまします
 498  読経以外は鳴らさぬオリンと聞くものの朝夕鳴らして母を呼び出す
 499  真宗ではお供えしないお茶ながら朝朝供えてオリンを鳴らす
 500  女たけの歌劇は行った男だけの歌舞伎はナマで見たことがない
 501  猿之助中車に團子つづまりは事件が生んだ関心である
 502  名を落とす猿之助いて名を上げる中村隼人は代役として
 503  南座を横目にみつつ通ってた半世紀前の学生である
 504  福祉事務所の職員として十八の麻丘めぐみのショーを見ていた
 505  点滴は八日つづくと聞きました母よあなたの亡きのちの僕
 506  左手でめしをくうから丹下左膳もちろん剣をふるときも左
 507  林不忘の名は忘れても館に見る丹下左膳のかためかたうで
 508  右手欠損のジム・アボットはMLBで百八敗を残しています
 509  ジム・アボットのグラブ・スイッチは曲芸を見るような目で見ていたテレビ
 510  まだ若い水木しげるは腕くんで白黒写真におさまっている
 511  腕をくむ武良青年と鬼太郎やゲゲゲの女房の出会い遠い
 512  目的の階だがしかし拒まれているようなパーテーションである
 513  入棟は拒否しないが脱棟の患者は拒否するパーテーションだ
 514  午前二時、しびんに尿をたらすときだれか叫んでおる病棟だ
 515  大人しくなったつわものAさんのパジャマはかわいい花柄である
 516  右の手でごはんをたべる中ゆびのつまむはなすが今日は不調だ
 517  回復期リハビリテーション病棟の空きを待つ身だ十日が過ぎた
 518  四人部屋はえんりょがあってリハビリの文字もて近況報告とする
 番号 作品(令和6年) 
 519  病棟に四〇四というはなくとんで四〇五のへやとなる
 520  病棟に四〇九というはなくとんで四一〇のへやとなる
 521  病棟に四一四というはなくとんで四一五のへやとなる
 522  血管のみえない腕にこともなく針をさすひと刺しなおす人
 523  脳梗塞を再発なしではたとせの長嶋茂雄はお手本である
 524  郷ひろみ野口五郎と今はもうなまで聴けない西城秀樹
 525  スターの死をいうなら赤木圭一郎「,六十一年 二十一歳」
 526  コーンバーや椅子に加えてセンサーが監視しているエレベーターの前
 527  川西市立川西小の「由美かおる」は知らなんだけど一学年上
 528  病院の窓より望む市役所はかつての職場、徒歩で通った
 529  眼下にはきわだって元県議会議長また同級生の豪邸がある
 530  四階の窓に見ている雨空を(カサヲサシテナイ)鳥がまた飛ぶ
 531  退院即整形外科の診察を待ってる車椅子のわたくし
 532  情けない情けないなどこぼしつつ座骨神経痛のからだうごかす
 533  思い出す検便の日の入れ物はあの子もこの子も特選マッチ
 534  捲られた絵を間にし「あれあれ」と答えに窮するリハビリである
 535  いつでもどこでもATOKIのはずがまたしてもMicrosoftが顔を出す
 536  杖ついて歩いているが現役の人なら大変だ座骨神経痛
 537  後頭部ころんで打ったまたしても柱で打った座骨神経痛
 538  「すみません内はありませんから内は」受話器に向かうの妻の口舌
 539  見世物のようにも見えるテレビには大家族その喧噪のさま
 540  マンションの建てばこのさき山際の赤い夕日も拝めなくなる
 541  尊厳死いな安楽死のことなどを夜夜におもった院内生活
 542  安楽死のぞんだ人は元医師を裁くつもりはつゆないだろう
 543  谷村新司もんたよしのり八代亜紀…ちかしくおもう年齢のゆえ
 544  「御座候」が御座候の意味かとも列長ければ考えている
 545  赤四つ妻には好みの白二つこうております御座候を
 546  こんなにも凸凹(でこぼこ)道とは知らなんだ脳梗塞をわずろうて後
 547  四本から二本三本なぞなぞの母よあなたの杖ついている
 548  同じところで二回ころんだアチャコなら「滅茶苦茶でごじゃりまするがな」
 549  貸本できおくの少年ものがたる明日なく弊衣蓬髪の老い
 550  月光仮面・ナショナルキッド・ハリマオと私を育ててくれたヒーロー
 551  漫画家の武内つなよしの名作だ赤胴鈴乃助・少年ジェット
 552  わが家にもテレビが鎮座する頃だ隠密剣士・琴姫七変化
 553  「桐島聡」はとうに死んだが交番には指名手配の桐島聡
 554  オオハハとオオチチがいるその上にオオキミいます必然として
 555  この人はと思う歌人の歌集にもオオハハがいてがっかりとする
 556  平成の世が令和へと移ってもオオチチうたう歌人のいること
 557  杖持つに至る経過は知らないが杖族親し老いも若きも
 558  櫻坂日向坂また乃木坂と坂道の多い街だ 青春
 559  右のはなかんで左のはなかんでのうみそきえていった感じだ
 560  たてよこにお面のならぶ露店(みせ)でした(私ノクビモマジルソノ中)
 561  前立腺肥大のゆえにまよなかのトイレにかようわたくしがいる
 562  起き上がり押し入れ沿いに部屋を出て何度目だろう頻尿である
 563  脳梗塞が新たに加わりまよなかのトイレ行(こう)だよこけてたまるか
 564  押し入れも少し開いてつかまれるものならなんでもつかまるかくご
 565  ふしぎだが押し入れのくらいすきまからのぞく上着がみかたしている
 566  ハンガーにかかるブレザーないはずの五指とふたたびみたびふれあう
 567  ときとして手を貸すように押し入れでゆらりゆらゆらゆらりゆらゆら
 568  酒泉竹軒桃中軒雲右衛門河村瑞軒後藤松軒
 569  軒号のかずあるなかで松軒は江戸の中期を生きた歌人だ
 570  木工の水月軒は名手ゆえに出雲の殿様がつけて与えた
 571  損軒はのち益軒とあらためた妻は貝原東軒である
 572  益軒の兄に楽軒楽軒の子には和軒とにぎやかである
 573  道場を江戸にかまえて剣客の是水軒はのちの世まで栄えた
 574  軒号のかずあるなかで自由軒はカレーで知られた大阪の味
 575  お浜小浜やすしきよしおぎやはぎエンタツアチャコ大歩危小歩危
 576  宇宙人に遭ったという番組はうさんくさくて私は見ない
 577  信じないわけではないが未確認飛行物体お化け幽霊
 578  地球外知的生命体と怪獣がたたかうところ円谷プロの
 579  ウルトラの星はみえるかみえないか望遠鏡を覗く子たちに
 580  ウルトラマンウルトラセブンタロウレオウルトラの父ウルトラの母
 581  怪獣と対峙するのはほかならぬ堺雅人のCMである
   
   
   
   
   
   
   
   

 

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