目次 | 30年 | 31年&元年 | 2年 | 3年 | 4年 | 5年 | 6年 |
※ | 『草食獣 第八篇』以後(「短歌人」2018年1月号より) |
番号 | 作品(平成30年) |
1 | 宴会もたけなわのころキス迫るセクハラ男のようなカワハギ |
2 | 門構えにいろいろ入れて遊びます一でかんぬき木を植えてひま |
3 | ドラえもんはドラ右衛門かも知れないがどこでもドアはいつもの空き地 |
4 | がにまたは蟹よりゴリラ ドラえもんならばガキ大将のジャイアン |
5 | 畦にいた蛙はぴょんこぴょんこして虫偏おとし魚偏となる |
6 | 年賀状は去年でやめたこれからはせいりせいとんエンディングノート |
7 | ありもどきかみきりもどきあゆもどきもどきは蜂起せよがんもどき |
8 | この国に生まれた運とこの国に生まれる不運 この万国旗 |
9 | 涙もろくなってしまった小便もちかくてこまる人生おりふし |
10 | 禾偏でハギと読みます獣偏でオギと読みます よくまちがえる |
11 | 旧姓のことなる妻と母と子が女の孫に話しています |
12 | 母の部屋へ母の部屋へと押してくるごみやしきけいこごみやしきゆみお |
13 | 糸偏に冬はあってもこない春そろそろ就活ならぬ終活 |
14 | YouTubeを赤いランプの終列車すぎゆくままに想い出まくら |
15 | あけがたの冬至冬中冬はじめすがたかくした月形半平太 |
16 | ゆうぐれの冬至冬中冬はじめそらに怪傑ハリマオがいる |
17 | よふかして冬至冬中冬はじめそらには旗本退屈男 |
18 | せんこうはなびがきれい空に咲くはなびがきれい あ 流れ星 |
19 | 星という星よりひかりもれくれば颯とめくってみたい夜の空 |
20 | 歳末のうすくらがりのみちばたに塩化カルシウムが積んである |
21 | 古井戸の声は枯れても怨霊がすがたをかえているお菊虫 |
22 | 吉岡流吉岡染に名を残す吉岡憲法 縁者ではない |
23 | 一乗寺下り松へとあつまったにくまれやくだ 吉岡一門 |
24 | 武蔵から塚原卜伝をたどるとき時空を超えて左卜全 |
25 | 左卜全、本名三ヶ島一郎は三ヶ島葭子の異母弟である |
26 | 優勝をすればするほど墜ちていく肘に怪しいサポーター巻いて |
27 | びよびよと犬鳴き猫はねんねんと聞こえた紫式部の時代 |
28 | 新陰の新が心、神、真となり枝分かれする流派も人も |
29 | 足高くあげて行進するあれは機械仕掛けの兵隊でない |
30 | 進歩して進歩してない 核兵器人工臓器細菌兵器 |
31 | ニュースから一転、料理番組はのどかに泡立て器でかき混ぜる |
32 | 鰹節削り器で削る鰹節けずられながらけずられる音 |
33 | 電子時計日時計振り子時計さへ止まってくれない ムンクの叫び |
34 | 風に舞うさくらはなびらそらにみて今しばらくをゆけ花筏 |
35 | 印むすぶゆびのかたちでおもいだす大蝦蟇に乗った児雷也 |
36 | 「ちかずく」と打てば即座に「ちかづく」の誤りを指摘する一太郎 |
37 | 自信作の歌の一首がワープロに《「の」の連続》と指摘されてる |
38 | 漫画またドラマの舞台にありそうな桜花学園大学である |
39 | ママさんが河童のお店 黄桜をのこして煙と消えてしまった |
40 | 酒の池に裸の女があまたいる酒池肉林のぼくのイメージ |
41 | 還暦のアンクルトリス グラス手に年かさねても中年の顔 |
42 | 鼻高のアンクルトリス 鼻赤くなるまでひさしぶりに飲もうか |
43 | ライヨールのペーパーナイフよ出番です週刊現代の袋とじ |
44 | 袋とじが見たくて買ったわけでない「最新保存版血圧の教科書」 |
45 | 袋とじを開く刹那に動悸して年甲斐もなく見る週刊誌 |
46 | またの名を酒仙、高田渡にはなれそうもない山口達也 |
47 | 「非常口」へ緑の人が走ってる信号機なら進めの青だ |
48 | 畑には緑色野菜がなっている緑がいけないならば青物 |
49 | 白黒をはっきりさせるつまりその成語のような囲碁やオセロだ |
50 | グラサンの豊川悦司みるたびに佐村河内守(さむらごうち まもる)が甦るのだ |
51 | 四度目の結婚しかも父となる清水国明六十七歳 |
52 | 此岸から彼岸へ終活準備する吉岡生夫六十七歳 |
53 | 窓という字の既視感はつるさんはまるまるむしのおもかげに因る |
54 | ひきぬけば葱に髭あるめでたくもその白鬚をしごくしあわせ |
55 | 雨の字に何を託した雨情また斎藤緑雨長谷川時雨 |
56 | 黒板は緑の色をしていますひざしあかるい初夏の教室 |
57 | 字に当てるタイプ離してみるタイプ、最後にメガネルーペを買った |
58 | 菊川怜のおいどに耐えたおまけには与らないがハズキルーペだ |
59 | 照明器具を映すルーペのストレスがなくなった ハズキルーペを掛けて |
60 | むかしむかし御祭村があったこと日本歴史地名大系に知る |
61 | 何をもって正直という福島の正直祭祀遺跡という遺跡 |
62 | 日本昔話ではない 中世を生きた正直村の人たち |
63 | 飛翔殿の階段のぼるご婦人の手に手に葬祭バッグが黒い |
64 | とりわけて夏の暑さを忘れまい六十七歳、平成の末(まつ) |
65 | 熱中症が気になり朝のウオーキングやめにしました今日で四日目 |
66 | 熱帯夜猛暑日つづくゆくすえは人また進化して爬虫類 |
67 | 終活として通販をやめましたしなやかケアにトマト酢生活 |
68 | ぼろぼろの人生ですよ肘を置く合成皮革のようなものだな |
69 | お菊餅お菊煎餅あきないはともあれ足がないお菊さん |
70 | 菊人形といえば枚方きおくにはテーマパークにある異空間 |
71 | 自慢にもならないけれど思い出は阿多福風邪に二度もかかった |
72 | 江戸の世の港のぞけば大型船快風丸が蝦夷地へと発つ |
73 | いかにもの金屏風より座るならシックな銀屏風を背にしたい |
74 | 扇風機二台まわしてクーラーの冷気攪拌する仕事部屋 |
75 | レスリング、ボクシング、さては体操と飽きさせないなあ 造反有理 |
76 | 腐敗したその人たちにものをいう十八、宮川選手がんばれ |
77 | 二十歳の記者会見に始まって崩壊をする権力を見た |
78 | 中学の陸上競技大会の二〇〇〇でテープを切ったことある |
79 | 剣道の腕前よりも絞られて絞られて完走する肺活量 |
80 | 警察の夜の道場 真剣で居合ならった中学のとき |
81 | 福耳の裏側だった矢を放つ弦があたって痛かったこと |
82 | 砕石のごろごろとする造成地で草野球したむかしのむかし |
83 | 結婚しない息子 兄の子 お彼岸の中日に母とくる墓参り |
84 | にわたずみゆくかたしらぬロケットは地球を捨ててゆく富裕層 |
番号 | 作品(平成31年&令和元年) |
85 | 爺ちゃんは爺ちゃんであってそれ以外の何ものでもないまして祖父(おおちち) |
86 | 卓袱台に裸電球おさなくてにゃんにゃんご飯のうまかったこと |
87 | 梅田フードホール 気になるみそかつは名古屋名物矢場とんの店 |
88 | ニンニクの皮むいている血圧によいとテレビでやってた酢漬け |
89 | ピーナッツは無塩で薄皮付きのものこれも酢漬けにした テレビ見て |
90 | タマネギを買った テレビでやっていた血管年齢を若くする方法 |
91 | やれば見る健康番組見ればやる 超簡単レシピに限り |
92 | 「パプリカはピーマンか?」電話してパプリカを買う今日のお使い |
93 | クリスマスで賑わう街と縁のないわたしにも雪が降る こんなにも |
94 | 子の家に飾ってあったクリスマスツリーが嘉するような団欒 |
95 | 団らんの栾は俗字で初こいの戀は旧字で、些末事ながら |
96 | クリスマスイブのうしろの席にいる恋人未満友達以上 |
97 | 小学生の頃はバタークリームのクリスマスケーキに興奮してた |
98 | うまいのは生クリームのクリスマスケーキやという ええとこの子が |
99 | 植木橋にさしかかるころ鉄橋を渡る 七つの光の箱が |
100 | ネクタイを締めた老人あしもとをみればウォーキングシューズはいてる |
101 | ウォーキングシューズで入るスーパーも孤独ではないウォーキングシューズ |
102 | 向かい側の座席の人もおのずから手にするが何をスマホ星人 |
103 | スマホ族の中でしずかにしていたがメールに開くガラケーの音 |
104 | 文盲とかかわりもなく使ってたカ変にサ変ナ変にラ変 |
105 | 乱と変の違いおもえば貴の乱ふるくは加藤の乱もさみしい |
106 | 泡とうまれ泡ときえてくシャボン玉たまたまうまれ輪廻転生 |
107 | 前をゆく中年男女のやくそくの土手も知ってる 夫婦ではない |
108 | この時刻しかも真冬の対岸を先行くおばさん腕振りながら |
109 | 春が来て三人四人で道ふさぎ歩くあのひとたちはきらいだ |
110 | 四時五十四分に出てくらがりに上りの列車を鉄橋に見る |
111 | 犬連れの夫婦を見かけなくなったその挨拶が負担だったが |
112 | 平井車庫の塀に小便する人を見つつ体操 川をへだてて |
113 | ウォーキングジョギング犬の散歩まで入れて十名ほどの常連 |
114 | 辞書に知る初井言栄とわれら知る初井しづ枝にかかわりはない |
115 | 後家雛があってやもめ雛がない ともあれさまにならないわれら |
116 | 雛かざる家ではないが菱餅は食べてみたいな 西友の地下 |
117 | 二三日損したような気分だが明日より花見月夢見月 |
118 | 校門を出ればヒヨコを売っていたランドセル背負った小学時代 |
119 | 開いてもまた開いても一通の迷惑メールさえこない今日 |
120 | マゾヒズムかも知れないとバスに乗る慰安婦像をみつつ思った |
121 | 御詠歌に落首に道歌呪文歌とみそひともじは最強である |
122 | のろいとも読めてまじないとも読める呪の字の不思議の入口に立つ |
123 | まじないの歌を集めていく中で糟屋磯丸の名前を知った |
124 | 迷信として近代が切り捨てるまじない歌にみる幸福論 |
125 | かわむしは毛虫で蝶はかわひらこもし虫めでる姫君いたら |
126 | 辞書にある浅黄斑蝶(あさぎまだら)の蝶の字はひらひらひらとひらひらとひら |
127 | うすかわにあんこがすける、だけでない幕末の金蝶饅頭譚 |
128 | 青年の宮川泰介 忘れない宮川紗江も山口真帆も |
129 | 内田監督塚原夫妻ここにまた吉成社長だ覚えておこう |
130 | 和をもって尊しとなす昭和より平成をへて令和、晩年 |
131 | 人の噂も七十五日 ニュースにもならない上陸以後のヒアリは |
132 | 三人の中ではいちばん親しんだ野口英世ださよならが近い |
133 | こころもち右を向くのは円札の顔の論理だ津田梅子また |
134 | センターのすかしを向くかよそみして左を見るか? 円札の顔 |
135 | 半世紀名無しで渡ってきた橋を神田小橋と知る「工事中」 |
136 | コンビニの先にあるデイサービスのマイクロバスに母 のるところ |
137 | 歩行車とシルバーカーと車椅子の違い、などなど今にして知る |
138 | レンタルはシルバーカーと歩行車のいずれかである ひとり頷く |
139 | 三本の足では進まぬ母のため片腕を貸す 今日は耳鼻科へ |
140 | 栄根だけど構いませんかと断ってタクシーに乗る 六百八十円 |
141 | ありがたいことではあるがいつきても「清掃中」の公衆便所 |
142 | ティッシュまたトイレットペーパー、ちり紙と呼んだ記憶はいつ頃のこと |
143 | おなじみのちり紙交換、そういえばそんな車が走っていたっけ |
144 | 紙相撲紙の飛行機紙芝居かみきりむしは指がともだち |
145 | 新聞の新聞でない情報が二輪ではこばれてきた音がする |
146 | 新聞で唯一役にたっているテレビ番組、わたしの場合 |
147 | 四軒に年寄りがいてそれぞれの施設に通うデイサービス車 |
148 | おふくろが通い始めてみえてきた街の景ですデイサービス車 |
149 | 祖父母の顔を知らない 知っている父の五十回忌は来年だ |
150 | 母方の祖父母の顔も知らないが孫得て祖父母の一人になった |
151 | 国道を走れば右に見えてくる模擬天守という川島城 |
152 | 城ならば上桜城址 川島町桑村にあった山城である |
153 | ありがたいわけでもないがふるさとは大川隆法の生誕地 |
154 | 妄想にかたち与えるものとしてアダルトサイトの年齢認証 |
155 | 妄想にしても近親相姦の多いアダルトサイト わからん |
156 | 磯丸の霊神祠(れいじんし)ある神社まであついあついと蝉がまた鳴く |
157 | ゆかりある石灯籠にちがいない写真と見比べ見比べている |
158 | 椰子の実の記念碑すぎてまだ遠いあつくてあつくて蝉も鳴かない |
159 | 太平洋の波は荒いぞ国道の眼下に日出(ひい)の石門(せきもん)がある |
160 | 削除して削除してまた削除して迷惑メールしかこない日々 |
161 | 知ってさてすぐに忘れることながら石榑千亦の名は辻五郎 |
162 | 買いに出る出ないは別だがこのごろは石焼き芋の声も聞かない |
163 | 不倫する人も住んでる守山市浮気町、さぞ告げがたかろう |
164 | 年鑑の物故歌人の一覧で初めて知った人の死がある |
165 | くろうととおぼしき美人もすわってる砂かぶりその砂になりたい |
166 | 歴史的事実を共にするというときの「事実」がはなから違う |
167 | 就職も結婚もする しなければならいものと疑わず来た |
168 | フリーターのわけならバンド優先で結論は結婚しない 不可解 |
169 | 墓じまいの日など思いて「吉岡家之墓」に彼岸の花を供える |
番号 | 作品(令和2年) |
170 | 楽しみにしていた太田和彦の「ふらり旅 いい酒…」も終わった |
171 | 身銭切って今ある太田和彦の今を見ている居酒屋番組 |
172 | 草履取りの役もしていた呑み鉄の六角精児だ味わいがある |
173 | 酒を飲む場面はないが松重の孤独のグルメに癒やされている |
174 | 如神丸(にょしんがん)安神散(あんじんさん)に六神丸(ろくしんがん)赤玉神教丸(あかだましんきょうがん)も神薬(しんやく) |
175 | 若い頃はなんていっても仕方ないハズキルーペで読む「短歌人」 |
176 | 爺ちゃんの乳首透けてるきらわれるおとこのちくびを笑うユッチャン |
177 | ウォーキング腕立て伏せにスクワット孫抱き上げるみなもとである |
178 | 借金はない方がいい個人でも国でもまして千百兆円と聞けば |
179 | 一人当たり九百万円の借金は太る 人口減少を受けて |
180 | 孫たちの未来を憂う先送り先送りされたつづまりの明日 |
181 | モニターに映る大腸のポリープをみている 横臥で患者衣の僕 |
182 | 肝臓も腎臓も問題ありません誉められている泌尿器科に来て |
183 | 無口にて家にこもれば如何せん呂律が怪しい年寄りである |
184 | 「宿」といえば旅館であること疑わぬ無知が古典にくび突っ込んだ |
185 | 泊まるならビジネスホテル、愛をいうならば浅茅が宿のあのひと |
186 | ユリ・ゲラー今なにしてるスプーンをこすりて指で曲げるあの人 |
187 | あの人もこの人も黒いマスクして白いマスクを見ない香港 |
188 | 朝酒はしないが職をもたぬ身は昼酒夜酒キャベジンのんで |
189 | 幼稚園の運動会で先生に抱っこされ泣いていたっけ タックン |
190 | 友達はひとり 早生まれのタックンをかばう女の子が二、三人 |
191 | 子に残す財のなければ宝くじ十枚を買う西友の前 |
192 | 遠くない生の出口よ子や孫やよしなしごとをおもい寝につく |
193 | 推しはかることもできない 肉体はともあれ「私」のいない世界は |
194 | 考える「私」がいない考える人よ教えてくれ死後のこと |
195 | 肉体をなくした心「わたくし」にうつわを用意した転生論 |
196 | いれものとしての体はほしくない死んだらわかる否わからない |
197 | 平凡な人生ながら望外の富ともおもうわが歌の論 |
198 | 脇の毛は髪といわないすねの毛も髪といわない坊主をめくる |
199 | 焼き御壁は女房の詞とはきくが古女房はいう焼き豆腐 |
200 | 壁登りはヤモリの異名ひとのするボルタリングまたクライミングでない |
201 | 甦るという字に生のあることを考えている夜の白雲 |
202 | 父方の除籍謄本 母方の除籍謄本 家系図つくる |
203 | 入夫婚姻 祖父は次男で長兄は宮崎県に転籍してる |
204 | 城山の詩碑をみている母方の伯父の山口鋳石の字だ |
205 | 父方の祖父の生まれた善入寺島を歩いた 菜の花の頃 |
206 | 母方の祖母の生まれた善入寺島をみている 城山に来て |
207 | 忘れられたような「移転之碑」を読めば「嗚呼」善入寺島民の声 |
208 | 近世はとぼしあぶらを売っていた「売薬商店油屋」の謂い |
209 | 渡し船していたらしい対岸に天満神社のあれば天満屋 |
210 | 父方の祖母と吉岡栄寿堂、二枚の写真をさがしています |
211 | 近世の川島町全図みておれば街道沿いは今と変わらず |
212 | 春がまたやってきたのだタラの芽の天ぷら選ぶ惣菜売り場 |
213 | 木の芽山木ノ芽峠は知らないが木の芽ご飯に舌鼓うつ |
214 | リックンの武勇伝ひとつ記しおく仏壇の前でうんこしたこと |
215 | 寝る前に水のんでいる水飲まぬ年寄りというその年寄りが |
216 | コロナ禍が教えてくれたオンライン授業もできぬIT劣国 |
217 | PCR検査もできずに死んでいくこれがわたしの祖国? NIPPON |
218 | あけている店も店だか列をなすパチンコ依存症のひとたち |
219 | アビガンかレムデシビルか一択というなら僕はイベルメクチン |
220 | 握手するときも決まってニュースにはつまらなそうな顔 習近平 |
221 | 人の上に人をつくらず、とはいうが仌(ひょう)の字がある地の辞典には |
222 | 人の下に人をつくらず、ともいうが从(じゅう)の字がある地の辞典にも |
223 | 囚(しゅう)の字の中にすわっている人は吉田松陰、平賀源内 |
224 | 柿本人麻呂神社へ来ておもう山部赤人大伴旅人 |
225 | 山下に野村北島ゆびおるに忘れてはなるまい人見絹枝を |
226 | 手に取ってカゴに入れたが時節柄やっぱりコロナビールはやめた |
227 | 六甲の小便小僧はふりそそぐひかりのなかをマスクしている |
228 | 鳴き袋のなかのようだよ六月の水田(みずた)の声をききつつ眠る |
229 | 何度となく聞かされてきたレジ袋有料化その七月が明日 |
230 | 読んだような気がする読んでないような気もする田山花袋は |
231 | どぶろくをのんでおもえばなつかしい萩原健一や森進一が |
232 | 六十五で髪はくろぐろふさふさが額を狭くしている総理 |
234 | このあたりで泳いだ記憶たちまちに鶯の森駅を能勢電は発つ |
235 | 江戸っ子だってなあ神田の生れだいそうだってなそんなに何かい石松は強いかい |
236 | 咄家とはつゆ知らなんだ初代の森乃福郎、短命である |
237 | 先斗町御茶屋のせがれさもあらん花ある初代森乃福郎 |
238 | 千葉ロッテ宗接(むねつぐ)捕手は兵庫県宍粟(しそう)市出身、珍名である |
239 | ガラケーには無縁、濃厚接触を知らせてくれる便利なアプリ |
240 | しつこかった「ホットな女の子」ほいほいと仕分けルールで溜まる快感 |
241 | 泌尿器科の女性自身をめくるとき見たくもない顔 小室圭 |
242 | 元皇族の元といえどもそれなりの黒田清子さん守谷絢子さん |
243 | スキャンダルの一つ一つが致命的とおもえる内親王の恋 |
244 | なよたけのかぐや姫なら求婚を退けてかえる満月の夜 |
245 | リベラルか否かは別だ宮邸に従事するのも公人である |
246 | 天皇の義兄となる日あるとすれは皇室制度はなくなってよい |
247 | PSAが上がったことを説明するアクリル板ごしの先生 |
248 | アマゾンからおすすめメールがまた届くパソコンで聴く大沢桃子 |
249 | 実写版「あしたのジョー」でまだ若い伊勢谷友介の力石を見る |
250 | 山Pは謹慎中だが実写版「あしたのジョー」で主役している |
251 | お嬢さん「白木葉子」の役をした香里奈はフライデイに躓く |
252 | なりきって段平、香川照之はさすがだ丹下拳闘クラブ |
253 | 昼のんで夜のんで朝ウォーキング、職業無職いわば余生だ |
254 | 年齢に絶望してる絶望をしても六十の日にもどれない |
番号 | 作品(令和3年) |
255 | 川西市小戸(おおべ)にあるが小戸(おべ)神社、秋の祭りのポスターで知る |
256 | 肝試しに夜の神社の大楠のくびつりえだの下まで行った |
257 | ダイコクで買ったオロナイン軟膏は富山の薬箱に入れとく |
258 | 置き薬の富山が来なくなってからやけに目につくドラッグストア |
259 | キャベジンを飲んでおもえば熊の胆のなんとかいった富山の薬 |
260 | 朝起きてまずすることは母のため日めくりめくる大きなやつを |
261 | 切手はるときにベロにてなめること厳に慎みました コロナ後 |
262 | 城山から伊予街道を望むとき斜めに向かうちちははの家 |
263 | 河港で栄えたという近世の「麻植郡川島町全図」みている |
264 | 油屋が明治になって売薬の𠮷岡栄寿堂をはじめた |
265 | 趣味人の父方の祖父、背景の庭は盆栽の棚で埋まる |
266 | 天満屋の屋号のゆえんや渡し船をしていたとある山口の家 |
267 | 父方の祖父が生まれた母方の祖母も生まれた善入寺島 |
268 | 神の島は極楽坑に投葬し墓なし、藩の『阿波志』は伝う |
269 | 「元校長覚悟の自殺」戦前の記事を実地でたしかめにきた |
270 | 伸びている鼻毛のことが気になるがどうせマスクだ外すことない |
271 | 新聞をとらなくなって唯一の不便といえばテレビみるとき |
272 | 藤浪がもし阪神でなかったら(詮無いことだ)中継ぎである |
273 | まだ暗い道をミニチュアダックスが、あとに大きな影をしたがえ |
274 | ルックスは分岐点ではないらしい声優のこと俳優のこと |
275 | リハビリで書き写すのにちょうどよい長さであった天声人語 |
276 | 落とす呑む殺す尖らす張りあげる絞る曇らす 声のことだよ |
277 | てのひらをみつめてあれば大いなる指紋の渦に呑まれて、夢か |
278 | 親指は御父指(おとゆび)や母指(ぼし)、童話なら親指姫や親指太郎 |
279 | 人差し指は塩なめ指とも云うらしい『俚言集覧』ひらきてみれば |
280 | 中指は背高指あるはまた丈高指ではそのままだ |
281 | 薬指は紅付け指あるはまた名無し指とはさみしいね |
282 | 小指また耳指(じし)とも云った昔から耳を搔くのは小指であった |
283 | 小指また燗差指(かんざしゆび)とも云うらしい但し方言地図ではあるが |
284 | タメ口の理髪師のいる月木を外して金曜、散髪に行く |
285 | 理容師の腰のあたりが触れるので肘をまた引くバーバーガール |
286 | 京都光華女子大学の設立も新しくして昭和十九年 |
287 | 長光が鍛えた刀もポンポンをせねばいつしか赤井錆光 |
288 | B級のグルメとしては懐かしいすいとん汁のすいとんが好き |
289 | 西友で売られていたがあれは何?テンガスーパーフィット・カップ |
290 | パソコンで調べてわかった薬局に置いていたのは大人のオモチャ |
291 | 三十一に二音たりない「春殖」のるるる…草野心平の詩だ |
292 | ひさかたの天草四郎、本名の益田時貞では及ばない |
293 | ねこまんまと聞けばご飯にカツオ節醤油をかけて食べたくなった |
294 | ねこまんまご飯の上に味噌汁をかけていただく昔も今も |
295 | 月曜からはじまる暦と日曜からはじまる暦にもてあそばれた |
296 | 二つ駅あれば二つの駅前でライトアップをしている頃か |
297 | 駅前のイルミネーションみるために遠回りする夕べの散歩 |
298 | 人と人ならば絶交するだろう海を隔てて不愉快な国 |
299 | スコープに狙撃手の目が光ってたソビエト軍の女兵士の |
300 | 狙撃手の一人だローザ・シャーニナもリュドミラ・パヴリチェンコも |
301 | 北向きの家に住んでたそれゆえの北向道陳、千利休の師 |
302 | 道草を食っているのはどこの犬 道草をくう人の子もまた |
303 | ALSで亡くなった瑳川哲朗を孫とみているウルトラマンA |
304 | ウルトラマンに出ていた篠田三郎は絵になるロマンス・グレーの男 |
305 | 「うまずめ」は差別用語だ変換をしない一太郎が教えてくれた |
306 | かな漢字変換ソフトと差別語の、いや差別語も一様でない |
307 | 未来から現在、過去の人となり聴く「星はなんでも知っている」 |
308 | 繁華街も近くて星座早見盤は役に立たないマンションの空 |
309 | 子に勧めた記憶はないがその子とは共有したい『星の王子さま』 |
310 | 混みあえるセンターに来た免許証返納手続きの一角まばら |
311 | 返納後「自動車等の運転はできません」すなわち運転経歴証明書 |
312 | エビデンスに耳慣れたころ耳障りな人流?コビッド・ナインティーン |
313 | 米国にワクチン・スワップなるものを持ち込む国があるという怪 |
314 | 「取り急ぎ御礼を申し上げます」は失礼とある よく書いてきた |
315 | 江戸時代前期の僧侶「急西(きゅうさい)」は生き急ぐ人 西方浄土 |
316 | ツヤ一歳、母ユキ死亡二十一歳 わたしの祖母と曾祖母である |
317 | ツヤ三歳、父忠平も亡くなった二十四歳、青年である |
318 | 杲(あきら)また杲(ひので)と読むかとだえんとする𠮷岡の家に生まれた |
* | 内部から崩壊しゆく皇室をみている 笑ってしまうぜリベラル |
* | 志のちがいは一挙手一投足にあきらかにして今上陛下 |
* | 虫けらと思っているのかいやたぶん思っているのだ人の命を |
* | 美しくない宰相が升をもて乾杯をする桜みる会 |
* | 小室圭の義父になったらお出ましば御免こうむる 一般参賀 |
* | 小室圭の義弟となった天皇にバンザイと手をふるひといない |
* | 後嗣としての才なき父とロイヤルのかけらさえなきばかむすめ譚 |
* | 嫌韓の極まるところベトナムで何をしたかをライダイハンに聞け |
319 | バナナマンの日村もまいう~の石塚もオーバーオール着てよく食べる |
320 | ウエストをおもえば楽だが七十の年考えたオーバーオール |
321 | 体重が減らない、ならばと買ってみたイージーパンツで楽ちんなのだ |
322 | ワクチンを接種後死亡の報告例、どうやら難を逃れたらしい |
323 | 奥出雲酒造の壜にDー269と横にあるのはどぶろくと読む |
324 | キーを打つ指がのろまで目もかすむ時間はあるが老いで帳消し |
325 | マスクして朝一番のポストまで往くに見かける人は数人 |
326 | これがほんとの僕の姿だ肘の汗にフェイクレザーのぼろぼろが付く |
327 | 七十になったら職場を辞めなければ、夢の中ではまだ働いている |
328 | 蛙鳴くうらの田んぼに朝がきて一羽の白い鷺が見えます |
329 | 水谷も伊藤もしないラケットをコートにたたきつけるジョコビッチ |
330 | 熱帯魚ゆきかうバーチャル水槽をみている、呼んでくれるのはまだ |
331 | 魚の棚商店街を往復し「棚」即「店」に納得をした |
332 | 親がつけてくれた宗吉はそれとして田村魚菜は名前が売れた |
333 | 昔昔そのまた昔くろふねのWordに負けた国産ソフト |
334 | ATOK命それでもブラウザはimeで打たされている |
335 | 国さえも排除していく一太郎に身を置く所存いな置いている |
336 | 百二十五パーセントでパソコンを見ているしかも老眼鏡で |
337 | いちばん嫌いな人種だ公道でゴルフスイングしている老年 |
338 | 人のメダルをがぶりとかんでオリンピックにその名を刻む河村だがや |
339 | 時代遅れになってしまった張本は三千八十五本の人 |
340 | ゴキブリをたたくときまた爪を切るときにも重宝をした新聞紙 |
341 | ティッシュもて握り潰した夜の蜘蛛、一昨日(おとち) |
342 | 来(こ)再昨日来(せえちこ)一昨日来再昨日来 |
343 | 象の鳴く声はしないか肝試しに動物園の夜を歩けば |
344 | 居酒屋の壁の魚拓をながめつつ人拓おもう爺さんである |
345 | アーケードのそこだけいつも人のいない回春堂は漢方の店 |
346 | つれづれに妖怪事典ひらくときアマビエならぬ人こそ妖怪 |
347 | 水木しげるの妖怪大全に載っていない首なし馬が走るふるさと |
348 | 杲(あきら)また杲(ひので)と読むか𠮷岡の家に生まれて早死にである |
349 | 細長く先の尖った軍人の墓がむかえてくれる霊園 |
350 | 水子地蔵もきれいに掃除されていて供養するのは本村の人 |
351 | こだわりは「史」に繋がっていたいから𠮷岡の𠮷 𠮷野家の𠮷 |
352 | 書斎への出入り自由な孫たちが占拠しているママゴト、ブロック |
353 | マンションはどこかが消えずに朝がくるこちらも見られている窓ながら |
354 | 父親が棋士で九段と教えられ変に納得した さかなクン |
番号 | 作品(令和4年) |
355 | エロマンガ内海を飛んだ翼竜の「エロ」には触れず朝のテレビは |
356 | キーボードの「さ」「き」を打ちつつ違う字を打たされている思いの頻り |
357 | コロナ禍のせいにしている昼のんで夜またのんで一杯機嫌 |
358 | JRはことのほか長い、遮断機に通せんぼされているその時間 |
359 | 明石海峡大橋わたる僕たちを迎えてくれるよな観覧車 |
360 | 観潮楼の模型におもう鉄幹や左千夫信綱らの集うさま |
361 | 内之浦宇宙空間観測所衛星(ほし)ケ丘展望台偉観 |
362 | 丸坊主の詰め襟だった教科書で山椒魚を読んだ日の爺 |
363 | 「高橋」は高橋英樹で終わるのかテレビに余計なことおもいつつ |
364 | はるな愛の「愛」とは少し違うだろ直江兼続の前立ての「愛」 |
365 | 地に足がついてないのは苦手です伊丹空港展望デッキ |
366 | 十年前いやいやながら乗ったことおもいだしてる機影をみつつ |
367 | 勉強もせずにラジオを聞いていたおらは死んじまっただ天国に行っただ |
368 | 追試験受けて卒業できました今は笑福亭呂鶴もたしか |
369 | 歴史的仮名づかいとは端的にいえば明治の思想であった |
370 | 歴史的という名のもとに圧殺をされた仮名づかい、歌なら定家 |
371 | ユーチューブは愉しいところ明治期の「推量節」も聴かせてくれて |
372 | 逸話ある「比叡おろし」を聴いている安田純生氏の青春の歌 |
373 | 志村けんが見られるわけはないけれど自動ドア押す、アイン薬局 |
374 | 貴乃花の息子は花田優一で父を外せばほぼただの人 |
375 | 桑田真澄の次男のMattのCMを運が悪いと見るはめになる |
376 | 俳人の再賀は別に春来軒、角を曲がった店のようです |
377 | デルタ株オミクロン株とどこやらの会社の株のような錯覚 |
378 | 第五派の山のいただき低く見て伸びております感染者数 |
379 | ワクチンの接種もこわい三回目すでに二人が死んでおります |
380 | アイーンの志村けんから始まった新型コロナ、咎なくて死す |
381 | 三回目のワクチン打ったが何ともないアクリル板ごしの先生 |
382 | 春くれば角を曲がった飯店の円卓かこむ約束がある |
383 | 政治家よりも期待がもてるプーチンに宣戦布告したアノニマス |
384 | シーギリヤロックを上るツーリストはあまねく高所恐怖症でない |
385 | ジャングルのなかにきわだつカッサバの宮殿跡を撮す ドローンは |
386 | 虚無僧笠浪人笠にも窓があるみられずにみる粗い織り目の |
387 | 臆病窓でみて戸をあけたところから『鬼平犯科帳』は始まる |
388 | おばさんでなく羽根でない児でもない、窓口きえていくJR |
389 | 行きたいが行けない五島列島の代わりにかんころ餅を食べてる |
340 | 道端にしゃがんで撮った 花の名をグーグルレンズで知る八重葎 |
341 | 戸主は兄 妻の祖父(おおじ)は弟で以下弟の妻に甥と姪 |
342 | 戸主は甥 妻の祖父(おおじ)は叔父にして以下叔父の妻、従弟と従妹 |
343 | 戸主制度の戸籍に姪とありさらには従妹とある妻の母 |
344 | 鹿児島と河内長野が本籍で「朝鮮」生まれの義父と義母です |
345 | わたくしと妻にかかわる四件の家系図を書いた 歴史に触れた |
346 | 身罷るとあるを身籠もると読んでいた道理で意味が不明なわけだ |
347 | 髭の濃いおとこが来るとみていたが黒いマスクをアゴにしている |
348 | 宙組(そらぐみ)の名に違和感はありながらみる宝塚歌劇の舞台 |
349 | 高齢者と呼ばれてわすれられゆくも 母 一人称の「私」を見舞う |
350 | 嫁の名はでてきて息子の名はでない脳梗塞の母の口から |
351 | 六十年住んでいる町 家々の灯りを三階の窓に見ている |
352 | 老いの住む家の灯りの多くしてあのひと逝ったこのひと逝った |
353 | 「母ちゃん、て」パーテーションはあるものの筒抜けであるリモート面会 |
354 | 庄内の病院バスに揺られつつ森友学園のところも過ぎる |
355 | テレビにはグルメ番組わたくしは味付海苔でメシ食っている |
356 | 海援隊といえばフォークグループで龍馬を思う人のあるなし |
357 | 年寄りは僕のみならず街なかを年寄りがくる年寄りがゆく |
358 | 手にとって店で買いたい年寄りに通販限定というおとしどころ |
359 | 爆発で死傷者多数ウクライナとちごうてアフガニスタンであった |
360 | 軍による拷問殺害プーチンのロシアとちごうてミャンマーであった |
361 | トルストイやツルゲーネフらあこがれのロシアは三等国だプーチン |
362 | ラフマニノフやチャイコフスキーも別格でロシアは三等国だプーチン |
363 | 穀物を奪い他国へ売りにゆくロシアは三等国だプーチン |
364 | 元スパイが国を牛耳るおぞましさおりがるひおりがるひ何人死んだ? |
365 | 忘れな草かたり継がれることだろう卍のヒットラー Zのプーチン |
366 | 海人桶の下にはたらくひとがいる車窓に近づき遠ざかる桶 |
367 | 観潮楼その見晴らしを想いつつ明治の東京に思いを馳せる |
368 | 日めくりをめくり忘れて今日もある母が入院してよりこの方 |
369 | 出生の時刻を聞き漏らしたが今はせんないリモート面会 |
370 | ながながとつづく規約はスルーして同意すなわち利用している |
371 | ポンポン船ポンポン菓子もなつかしいじいじが子供のころの話だば |
372 | じりじりとまたぢりぢりと気の遠くなるようなこの暑さをいえ |
373 | 一太郎で「自づと」打てば「自ずと」と訂正がくる 旧かななのだ |
374 | 水田にカエル鳴く夜のつぎはまたセミの鳴くことうるさい昼だ |
375 | 樹の植わる家にはセミがやかましく樹のない庭はいたって静か |
376 | 三十年来の植木屋さんが母のことを聞く 聞かせてやりたい 母に |
377 | クラスターとは言わないが「𠮷岡さんも陽性でした」と主治医の電話 |
378 | 経鼻経管栄養補給の母にしてコロナ患者だ症状はない |
379 | 介護ミトンに拘束されて眠りいる母をリモート面会に見る |
380 | 四十二の息子のパンツを干している結婚しない大きなパンツ |
381 | 三様のデイサービスの送迎車が華だった、この袋小路に |
382 | 朝御飯昼御飯子は「夜御飯」ちちのみの父は「晩御飯」です |
383 | 「夜御飯」を載せるデジタル大辞泉この勢いはとまらぬようだ |
384 | 外そうとして手をかけたフレームがあれ、眼鏡は卓上にある |
385 | 外しても皮膚感覚として残る老眼鏡だ(キショクガワルイ) |
386 | 花紀京ミヤコ蝶々京唄子あさきゆめみじえいもせず京 |
387 | リポビタンの大村崑をライザップはよみがえらせたかいぶつとして |
388 | 老年期の家族を生きるわたくしに青壮年期の灯だマンションは |
389 | ウィッグを買えばいいのにテレビみる妻の頭頂部がみえている |
390 | 呼び鈴にはいと応えて三階から下りていくのに時間がかかる |
391 | 経鼻経管栄養補給で生きている母の二十四時間がある |
392 | 入院して無人の家の門扉にはなかばはがれた赤十字社のシール |
393 | 年がいくにつれて似てくる頭頂部にウイッグする妻しなかった義母 |
394 | 庄内の病院バスに揺られつつ森友学園のところも過ぎる |
395 | テレビにはグルメ番組わたくしは味付海苔でメシ食っている |
396 | 海援隊といえばフォークグループで龍馬を思う人のあるなし |
397 | 年寄りは僕のみならず街なかを年寄りがくる年寄りがゆく |
398 | 手にとって店で買いたい年寄りに通販限定というおとしどころ |
399 | まみどりのエノコログサに秋がきてまさしく犬の尾のような花穂 |
400 | 年寄りは商売になる なっている 高田純次のミライスピーカー |
401 | ダイコクのレジの隣においてあるエンディングノートいつも目につく |
402 | ハロウィンに縁もゆかりもない手にもハロウィンジャンボミニ宝くじ |
403 | 送られてくる封筒の「白珠」を棟方志功の字と知りました |
番号 | 作品(令和5年) |
404 | サントリーオールド卯歳の干支ラベル飲めば気分も華やいてくる |
405 | 使い捨てカイロの兎は「きりのすけ」その名を桐灰の桐からと知る |
406 | 婆汁(ばあじる)の話などない戦後譚「カチカチ山」のウサギとタヌキ |
407 | ふしづくりの卯は食べないが卵ならその点よりもレシピは多い |
408 | 将軍がうやうやしくも元旦に下賜したとあるウサギの吸い物 |
409 | 垂乳根の母かたわらにたらちねもあらわに服をきがえるところ |
410 | アマゾンで注文していたどぶろくが届いて三人で飲んだ日もある |
411 | 三回目のワクチン接種をした頃のわが家の年寄り三人だった |
412 | 四回目のワクチン接種は妻と二人、母は入院先で接種した |
413 | とし食って何様のつもりドタキャンのジュリーも痩せててかっこよかった |
414 | 泉南市教育委員会は黒塗りでこたえ、なかった開示請求 |
415 | 自殺した子は学校にころされて教育委員会にまたころされる |
416 | タツは食べることができない十二支のあとはジビエの範疇である |
417 | 兎いたここにも菟あっちにもまたこっちにも莵だ兔 |
418 | かの山で追われたウサギの末裔がここにこうして酒のんでいる |
419 | かの川で釣られた鮒の今を問う寿司屋の湯飲みの漢字みながら |
420 | お酒のんだウサギのじじいの赤い顔がキモいとのたまう四歳の孫 |
421 | おめでたいかどうかはともかく六度目の卯年だ七難八苦はいまだ |
422 | スマートフォンで録画していくだんどりの𠮷岡恵子音楽教室 |
423 | 三脚のなければ縦にまた横にゆれいる舞台、孫の演奏 |
424 | 三脚にビデオを据えて婿殿の記録係が撮るコンサート |
425 | 小とばかり思っていたら大だった個室に入る孫に付き合う |
426 | 孫の尻ふいているとき館内に放送される妻の独唱 |
427 | 孫撮った娘も撮った妻のみは撮れずに終わるオータム・コンサート |
428 | ケータイで撮った舞台はラインからラインへ今日も拡散をする |
429 | 令和四年暮れの駅前、解体をされる公衆電話ボックス |
430 | いつのまにか御役御免で財布からどこかに消えたテレホンカード |
431 | 天井があかるい朝だそういえば冬至をすぎて七日目である |
432 | ウィスパー、ライフリーなどおんなものばかりが幅を効かすCM |
433 | ライフリー女もすなる紙おむつ男もはいて出陣である |
434 | 水泳に夜ごとはげんだ壮年のプールでなくした結婚指輪 |
435 | 世の中に置いていかれる実感のこれもひとつだ「で草」の「草」 |
436 | キング・オブ・ブレンダーズのニッカよりどこにでもいるトリスおじさん |
437 | 開高健(けん)もその中にいた壽屋のアンクルトリス生誕会議 |
438 | スーパーもコンビニもまたセルフレジになってしまったコロナ禍の末 |
439 | 2類から5類になっても店員がレジにもどってくることはない |
440 | 志村けんではないアイン薬局は従業員がレジ打っている |
441 | セルフレジに加えて透けるキャッシュレス社会はますます生きづらい世だ |
442 | 滑舌がわるいわるいといわれても話す人ない妻よりほかに |
443 | パタカラとカタパラがありパタカラの妻に逆らうこともあるまい |
444 | 二人のみの入室である心電図モニターが母の死を告げていた |
445 | おふくろの甥姪はじめ十一家二十五人の焼香つづく |
446 | あっけなく逝ってしまったははそはの母は微笑む中陰壇に |
447 | 法名(ほうみよう)は「釋宝鈴(ほうりよう)」、俗名の「鈴(すず)子」の「鈴」を妻が選んだ |
448 | 子らの声響くドラゴンランドですタツノオトシゴに似る川西市 |
449 | 陽性になってしまったなるはずがないコロナだ院内感染 |
450 | 発熱の母をみているリモートのいかにも遠くにいるおふくろよ |
451 | 面会の時間をいえば十分で月に二回だコロナ下の母 |
452 | コロナ禍でなければきっといろいろな場面があった お袋見舞う |
453 | 『私たちの「ファミリーヒストリー」』続編の最後を締めるお袋のこと |
454 | チャックが開いたままのリュックを背負っていたのだ恍惚の人 |
455 | 墓石を動かし納骨するさまを見ている但しユーチューブにて |
456 | 関東とちがって墓も骨袋おさめる西はせまいカロート(納骨室) |
457 | 昔ながらの共同墓地は区画など公営墓地の概念がない |
458 | 看板の「栄根42名共有会」その一名であろうわが家も |
459 | 石材店に渡す書類のために来た駅近で徒歩十分の墓地 |
460 | パワハラやアルハラカラハラカスハラにドクハラシルハラ、余生は長い |
461 | SNSの私を知ってドクハラのあの先生の人が変わった |
462 | 米寿の母に向かって手を合わす九十四の母とは違う |
463 | 認知症を理由に患者を見下してよいはずがないははそはの母よ |
464 | 「いのちの尊厳を言ってるんですよ」思わず声が大きくなった |
465 | 「あんたとは今後一切話せん」ガチャンと切ったドクハラの医師 |
466 | 主治医を替えてもらおう「ドクハラ」の言葉を知って全てが解けた |
467 | 開業医の一一おもうあんな医者に務まるはずない大病院卒 |
468 | まわりに言われたのだろうウェブでもて告発される例もあるぞと |
469 | 阪神のファンではないがオークランド・アスレティックスの藤浪がんばれ |
470 | 鬚はやし米国流だ先輩の菊池もがんばっているではないか |
471 | ライナーの直撃うけて降板の前田健太に初勝利あれ |
472 | 東日本大震災の連想に佐々木朗希の父また祖父母 |
473 | 吉岡里帆はどういう人かと覗いたら水着の写真ばかり出てくる |
474 | ①②③、④のなく⑤へ飛ぶ窓口はアイーンではないアイン薬局 |
475 | キャベジンの蓋をあければ御苦労さん御役御免のビニールなのだ |
476 | 一本を折って香炉に寝かすべしおふくろさんへの朝の挨拶 |
477 | こだわりは鈴(りん)の響きだおふくろにきこえるように涼しく渡れ |
478 | 線香を真宗方式でつかうとき数年先まで消えることない |
479 | 図書館のとあるところで横になり十歳の孫に叱られている |
480 | 自販機前でお金わたせば婆ちゃんが何て言うかとユッチャンが言う |
481 | 婆ちゃんの権威絶大それだけの時間さいてる面倒みてる |
482 | 宇治原やカズレーサーよりめだってる日向坂46の影山優佳だ |
483 | 定番といえば定番、台風のなかをレポートするアナウンサー |
484 | 紙オムツの男性用のCMはさわやかにして松岡修造 |
485 | 「もちろん僕も今はいています」この「僕」はCMのなかの草彅剛 |
486 | もちろんというわけではないが紙オムツ僕もはきますTPOで |
487 | お漏らしをしたことがない紙オムツはいているというこの安心感 |
488 | ウォーキングする人もいる一昔前の私も混じりておるか |
489 | 風呂は朝風呂、うたたねすればたちまちに姓は𠮷岡名は土左衛門 |
490 | 蛙鳴く水田(みずた)よさらば低階層ながらもここにマンションが建つ |
491 | そこかしこにマンションが建つクレーンなど遠望しつつお昼を食べる |
492 | 熱中も熱中時代も熱中家も歓迎するが「症」はいらない |
493 | クーラーかけ扇風機もてかき回しそれでも暑い勾配天井 |
494 | 「ぼうちん」と呼んで六十有余年由来は「坊(ぼう)ちゃん」と推し量るのみ |
495 | 「ボーちゃん」という『クレヨンしんちゃん』のキャラの由来は「坊(ぼう)ちゃん」でない |
* | スピードは禁物にして電卓はひとさしゆびでたしかめて打つ |
* | キーボード打ち損ないの多ければ恥ずかしながら打つ二本指 |
* | 小4と小2の孫がこの爺のために作ったテスト受けいる |
* | コントロールできないものの一つにて涎は落ちる申請用紙 |
* | 門柱の文字に抜け殻とまらせて隣家に夏の日が長けていく |
496 | おふくろをよく知る植竹庭園が供えてくれた線香あげる |
497 | リン台にざぶとんならぬリンフトンさても尊いオリンにまします |
498 | 読経以外は鳴らさぬオリンと聞くものの朝夕鳴らして母を呼び出す |
499 | 真宗ではお供えしないお茶ながら朝朝供えてオリンを鳴らす |
500 | 女たけの歌劇は行った男だけの歌舞伎はナマで見たことがない |
501 | 猿之助中車に團子つづまりは事件が生んだ関心である |
502 | 名を落とす猿之助いて名を上げる中村隼人は代役として |
503 | 南座を横目にみつつ通ってた半世紀前の学生である |
504 | 福祉事務所の職員として十八の麻丘めぐみのショーを見ていた |
505 | 点滴は八日つづくと聞きました母よあなたの亡きのちの僕 |
506 | 左手でめしをくうから丹下左膳もちろん剣をふるときも左 |
507 | 林不忘の名は忘れても館に見る丹下左膳のかためかたうで |
508 | 右手欠損のジム・アボットはMLBで百八敗を残しています |
509 | ジム・アボットのグラブ・スイッチは曲芸を見るような目で見ていたテレビ |
510 | まだ若い水木しげるは腕くんで白黒写真におさまっている |
511 | 腕をくむ武良青年と鬼太郎やゲゲゲの女房の出会い遠い |
512 | 目的の階だがしかし拒まれているようなパーテーションである |
513 | 入棟は拒否しないが脱棟の患者は拒否するパーテーションだ |
514 | 午前二時、しびんに尿をたらすときだれか叫んでおる病棟だ |
515 | 大人しくなったつわものAさんのパジャマはかわいい花柄である |
516 | 右の手でごはんをたべる中ゆびのつまむはなすが今日は不調だ |
517 | 回復期リハビリテーション病棟の空きを待つ身だ十日が過ぎた |
518 | 四人部屋はえんりょがあってリハビリの文字もて近況報告とする |
番号 | 作品(令和6年) |
519 | 病棟に四〇四というはなくとんで四〇五のへやとなる |
520 | 病棟に四〇九というはなくとんで四一〇のへやとなる |
521 | 病棟に四一四というはなくとんで四一五のへやとなる |
522 | 血管のみえない腕にこともなく針をさすひと刺しなおす人 |
523 | 脳梗塞を再発なしではたとせの長嶋茂雄はお手本である |
524 | 郷ひろみ野口五郎と今はもうなまで聴けない西城秀樹 |
525 | スターの死をいうなら赤木圭一郎「,六十一年 二十一歳」 |
526 | コーンバーや椅子に加えてセンサーが監視しているエレベーターの前 |
527 | 川西市立川西小の「由美かおる」は知らなんだけど一学年上 |
528 | 病院の窓より望む市役所はかつての職場、徒歩で通った |
529 | 眼下にはきわだって元県議会議長また同級生の豪邸がある |
530 | 四階の窓に見ている雨空を(カサヲサシテナイ)鳥がまた飛ぶ |
531 | 退院即整形外科の診察を待ってる車椅子のわたくし |
532 | 情けない情けないなどこぼしつつ座骨神経痛のからだうごかす |
533 | 思い出す検便の日の入れ物はあの子もこの子も特選マッチ |
534 | 捲られた絵を間にし「あれあれ」と答えに窮するリハビリである |
535 | いつでもどこでもATOKIのはずがまたしてもMicrosoftが顔を出す |
536 | 杖ついて歩いているが現役の人なら大変だ座骨神経痛 |
537 | 後頭部ころんで打ったまたしても柱で打った座骨神経痛 |
538 | 「すみません内はありませんから内は」受話器に向かうの妻の口舌 |
539 | 見世物のようにも見えるテレビには大家族その喧噪のさま |
540 | マンションの建てばこのさき山際の赤い夕日も拝めなくなる |
541 | 尊厳死いな安楽死のことなどを夜夜におもった院内生活 |
542 | 安楽死のぞんだ人は元医師を裁くつもりはつゆないだろう |
543 | 谷村新司もんたよしのり八代亜紀…ちかしくおもう年齢のゆえ |
544 | 「御座候」が御座候の意味かとも列長ければ考えている |
545 | 赤四つ妻には好みの白二つこうております御座候を |
546 | こんなにも凸凹(でこぼこ)道とは知らなんだ脳梗塞をわずろうて後 |
547 | 四本から二本三本なぞなぞの母よあなたの杖ついている |
548 | 同じところで二回ころんだアチャコなら「滅茶苦茶でごじゃりまするがな」 |
549 | 貸本できおくの少年ものがたる明日なく弊衣蓬髪の老い |
550 | 月光仮面・ナショナルキッド・ハリマオと私を育ててくれたヒーロー |
551 | 漫画家の武内つなよしの名作だ赤胴鈴乃助・少年ジェット |
552 | わが家にもテレビが鎮座する頃だ隠密剣士・琴姫七変化 |
553 | 「桐島聡」はとうに死んだが交番には指名手配の桐島聡 |
554 | オオハハとオオチチがいるその上にオオキミいます必然として |
555 | この人はと思う歌人の歌集にもオオハハがいてがっかりとする |
556 | 平成の世が令和へと移ってもオオチチうたう歌人のいること |
557 | 杖持つに至る経過は知らないが杖族親し老いも若きも |
558 | 櫻坂日向坂また乃木坂と坂道の多い街だ 青春 |
559 | 右のはなかんで左のはなかんでのうみそきえていった感じだ |
560 | たてよこにお面のならぶ露店(みせ)でした(私ノクビモマジルソノ中) |
561 | 前立腺肥大のゆえにまよなかのトイレにかようわたくしがいる |
562 | 起き上がり押し入れ沿いに部屋を出て何度目だろう頻尿である |
563 | 脳梗塞が新たに加わりまよなかのトイレ行(こう)だよこけてたまるか |
564 | 押し入れも少し開いてつかまれるものならなんでもつかまるかくご |
565 | ふしぎだが押し入れのくらいすきまからのぞく上着がみかたしている |
566 | ハンガーにかかるブレザーないはずの五指とふたたびみたびふれあう |
567 | ときとして手を貸すように押し入れでゆらりゆらゆらゆらりゆらゆら |
568 | 酒泉竹軒桃中軒雲右衛門河村瑞軒後藤松軒 |
569 | 軒号のかずあるなかで松軒は江戸の中期を生きた歌人だ |
570 | 木工の水月軒は名手ゆえに出雲の殿様がつけて与えた |
571 | 損軒はのち益軒とあらためた妻は貝原東軒である |
572 | 益軒の兄に楽軒楽軒の子には和軒とにぎやかである |
573 | 道場を江戸にかまえて剣客の是水軒はのちの世まで栄えた |
574 | 軒号のかずあるなかで自由軒はカレーで知られた大阪の味 |
575 | お浜小浜やすしきよしおぎやはぎエンタツアチャコ大歩危小歩危 |
576 | 宇宙人に遭ったという番組はうさんくさくて私は見ない |
577 | 信じないわけではないが未確認飛行物体お化け幽霊 |
578 | 地球外知的生命体と怪獣がたたかうところ円谷プロの |
579 | ウルトラの星はみえるかみえないか望遠鏡を覗く子たちに |
580 | ウルトラマンウルトラセブンタロウレオウルトラの父ウルトラの母 |
581 | 怪獣と対峙するのはほかならぬ堺雅人のCMである |