人生の途上にて
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「徳山村のこと」 TOKUYAMA, GIFU 

 写真を撮るようになってから数年がたった。あちこち応募しているうちに、末賞といいながらもいくつかのコンテストで賞をいただけるようになったのはアマチュアのカメラおじさん(?)にとっては大きな励みになっている。
 『サライ』という雑誌があるが、こちらのほうにも先日応募してみた。この雑誌は購読者の年齢層が高く、よって応募者も自然と高くなるようだ。写真は奇異を狙ったものではなく、人生の年輪を感じるような作品が多く、見ているといろいろと参考になることが多い。

 以前勢いで買ってしまった「モー娘。」のものは別として(笑)、手元にある写真集で断然いいと思うものが1冊ある。それは増山たづ子氏の『徳山村 写真全記録』である。61歳からピッカリコニカを手に、村を撮り続け、現在はもう80歳を越える年齢に達してしまった。そんな増山氏の視線から捉えられた村の表情がすばらしい。

 舞台の徳山村は今はもう地図上には存在しない。ダム建設工事によって、やがて水面下に沈んでいく村で、すでに誰も住むことがなくなったためである。岐阜県徳山村は地図上から消滅してしまった。
 増山氏はそんな村を一枚一枚カメラに収めて、沈む前の村を撮り続けた。その数7万枚。その中から抜粋したのがこの写真集である。

 どのページにも共通するのは日本の田舎の素朴な風景である。四季の美しさと人々の笑顔。雪深い山村の暮らしのなかで人々がどのように暮らしてきたか、その様子がさりげなくつづられている。写真を撮るヒトの視線やまなざしがやさしい分、撮られる側も自然な表情が表れている。
 写真集の後半にはブルドーザーが入り、咲き誇った桜の大木が切り倒されようとするシーンがある。かつては多くのヒトが行き交った橋も、荒れ放題になり草が生い茂っている。だれもいなくなった村にダンプとブルドーザーの音だけがこだましている。

 しかしこの写真集を通して、自然の大切さと村の存在はいつまでも永遠にかつてここに住んだ人、そしてこの写真集を手にする人のこころに残り続けていくことだろうと思う。
2002.06.01

「名前」 WHAT'S IN A NAME 

2002.06.17
 カーペンターズの曲のなかに『遥かなる影』という曲がある。3週間ほど前にTVでドキュメンタリーをやっていたが、兄リチャードがもっとも好きな曲として『愛のプレデュード』とこの『遥かなる影』を挙げていた。日本では圧倒的に人気のあるのではと思っていた『イエスタディ・ワンスモア』ではなかったのは意外だったが、単純ながらも美しい歌詞とメロディーラインからなるほどとも思える。それにしても原題の『CLOSE TO YOU』が何故、邦題では『遥かなる影』となるのだろうか。実際のところ、それらしい歌詞はひとつも出てこない。

     なぜかしら あなたが近くにいると 鳥たちが急に姿を見せるの 
        きっと私と同じね 小鳥たちもあなたのそばにいたいの

  『遥かなる影』のタイトルだとどちらかというと、暗いイメージを連想してしまうので、もっと別のタイトルにすれば、違った売れ方をしたのではないか、そんな風にも感じてしまう。

 同じようなことは、たとえば映画のタイトルや本にもいえるだろう。最近読んだ本のなかで、『うまくいっている人の考え方』というのを読んだが、この原題は『52 things you can do to raise your self-esteem』だった。確かにこの邦題でもカバーできなくもないのだが、個人的にはもっと他のタイトルをつけたほうが良かったのではないかと思えてくる。

 名前を何にするか、ただそれだけで、手にとったり、見ようという意識が違ってくるので、最初のイメージ・印象を決定づける名前を何にするかというのは重要なことである。
「第一印象」 FIRST IMPRESSION 
2002.06.19
 サービス産業で顧客サービスについてバイブル的存在の本がある。SASスカンジナビア航空の成功をテーマにした『真実の瞬間』である。すでに10年以上も前に出版されたにもかかわらず、いまもその戦略や理念、考え方は多くの読者に共感を与えている。そのストーリーの中に、最初の30秒だったか、3分が重要な意味を持つと書いてあったことを思い出す。わずかな時間、しかしその瞬間を使って、顧客の意識にしっかりといいサービス、いい企業イメージを提供できるかが重要な戦略になるということだったと記憶している。顧客との対話、視線、応対...すべて、そのわずかな間の出来事である。

 いわれてみればなるほど、たとえばヒトに道を尋ねるにしても、このヒトなら!と短時間のあいだに瞬時に選別している。スーパーでレジに並ぶにしても、きれいなお姉さんのほうへと目をさっと動かす...(笑)。しかし高額になり、思い入れが深くなるモノを買うとなると、なによりもいい応対でかつ仕事好き(プロ)と思われる人のほうに、何よりも信頼を持って頼むことが出来る。そう思われる人をわずかな印象のうちに選び取っていく。

 同様なことは音楽についてもいえるだろう。わずか10秒ほど聞いただけで、さらにもっと聞いてみたい曲なのか、自分の趣味とは違ったものなのかがわかる。逆にわずか数秒だとしても、ほんの一瞬耳にしただけで、こころに残る歌声や曲というのも確かに存在する。イギリスBBCのニュースの冒頭の音楽は、時間にしてほんの5秒にも満たないものだったが、その曲のインパクトがあまりに大きかったため、問い合わせの数が数百を越え、さらに海外からの熱いメッセージが届いたりして、当初BBCもかなり驚いていたようである。

 ほとんどの場合、ニュースの冒頭に流される曲は短く、その番組のためにのみ書き上げられたもので、コマーシャルを目的としていない。しかし、その曲の第一印象(イメージ)があまりにも強かったため、ついにリリースされることとなった。曲のタイトルは『WORLD CONNECTION (ワールドコネクション)』、作曲はDavid Loweである。残念ながら日本からだとBBCに直接郵送でリクエストして送ってもらうしかないのだが、それでもこの曲をあらためてオリジナルで聞くことができるのは大いに魅力である。



「15分間スピーチ」 15-minute speech 
 毎年、夏の時期に職場で研修会を親睦も兼ねて行っている。今年は瀬戸内海の小豆島が舞台だった。

 ホテルのロビーを抜けると、おだやかな瀬戸内海が窓一面、左右に大きく拡がっているのが見える。このすばらしいロケーションゆえに、夕陽がすばらしくきれいなことでも知られている。今回、その期待を裏切られることなく、感動的な夕陽を見ることができたことは、研修会の1シーンとしてこころに深く刻まれた。

 研修の内容とは別に、朝食前にスピーチのようなものをするのだが、久しぶりに順番が周ってきた。あれこれ考えていたのだが、あえて原稿を持たずに頭の中の構成だけで臨んでみることにした。スピーチをする機会がある毎に思うのだが、原稿を持っていると、こちらは安心するのだが、そのためか気持ちが原稿に頼って十分に思いが伝わらない経験があったことへの反省からだった。

 話の内容は、まずは知り合いの家庭の病気の話しから入り、本で読んだNASAの研究員が盲目であるにもかかわらずディレクターとして、ハンディを「小さなこと」と考えていることのエピソード。そして人生の幸不幸は、決して出来事そのものにあるのではなく、物事の見方、すなわち解釈によるもの......とつないだ。その解釈法として、人生に起こってくる試練に対してどのような言葉を使って(しまう)いるか、「大変なことが起こってしまった」と「いや、大丈夫」と捉える考え方の違い。すべては一連の流れの結果ではなく、スタートとしてとらえようと結んだ。例としてUSJと参天製薬の事故を出し、あとおまけとして、潜在意識について少々。

 最後に過去の単なる延長線上に将来があるのではなく、これから先、道を選びつけていくのは自らの足である...と。
原稿がなかった分、不安も大きかったが、適度な緊張感をもって、熱く語ることが出来たのは、実は個人的にはこの上なく大きな収穫であった。感謝。

2002.07.30