あなたの職場ではきちんとした禁煙・分煙環境が整っていますか?
職場での受動喫煙は「スモーク・ハラスメント」とも呼ばれ、毎日いやおうなく吸わされるタバコの煙でつらい思いをしている人がたくさんいます。ほんの一例ですが、実際に職場の煙害に遭い、アクションを起こしたケースを紹介します。



H子さんの場合

喫煙対策なし

化学物質過敏症

対策を要望

受け入れられず

休 職

解 雇

職場のタバコで化学物質過敏症(化学傷害)に

プラスチック人形等を製造する玩具メーカーの企画開発部門に勤務。喫煙対策は全くとられておらず、周囲のタバコ煙にさらされ続けているうちに、鼻水、頭痛、発熱等の症状が現れ始める。
「分煙」の実施を要請したが聞き入れられず、やがて眼球の異常なかゆみ、呼吸困難等を生じるようになった。病院で検査を受けると、
「タバコ煙に含まれる多種類の化学物質に対して過敏に反応する。職場における多様な愁訴の発現は、タバコ煙との関連性を強く示唆するものであり、職場環境の改善を要す」
という診断であった。

〜略〜

会社から6カ月間の休職を命じられ、復職を認められることなく解雇されてしまう。


その後



T子さんの場合

喫煙対策なし

体調不良

対策を要望

受け入れられず

人間関係が悪化

やむなく退職

わかってもらえない、煙を吸わされるつらさ

小さな出版社の正社員として勤務。職場では5名のうち、女性社長を含む3名が喫煙者。オフィスはワンフロアで仕切りもなく、朝から晩まで煙にさらされるため、身体じゅうに臭いが染みつき、気分が悪くなって業務に集中できなくなってしまう。
唯一の非喫煙者だった男性上司に訴えてみたが、いかにも迷惑そうな答えが返ってきた。
「僕は気にならない。雰囲気を悪くしないでくれ。タバコが嫌ならあなたが辞めるしかない。」
部屋の構造上、喫煙所を設けるのは無理なので、窓を開ける、席を離す、パーテーションを高くしてみる、空気清浄機を入れる、煙を吸い込む小型灰皿を配る、扇風機を置く、マスクをする、消臭剤をスプレーする・・・等々、思いつくかぎりの方法を試したが、効果はほとんどなし。そこで大幅な改善案を出してみたが、これも却下。病院で診断書を書いてもらったり、労働基準局に相談しても解決には結びつかなかった。
そんなとき、最寄りの保健所に相談してみると浮遊粉じん量を測ってくれることに・・・。丸1日間、会社に機械を設置して測定した結果は、
「基準値を大幅に超える。原因はタバコ」
保健所では社長に対して指導を行ってくれた。しかし、このことが人間関係をさらに悪化させ、上司からも仕事の指示がなくなったため、居づらくなって退職を余儀なくされる。


その後


E子さんの場合

不完全分煙

対策を要望

有効な措置とられず

気管支喘息

やむなく退職

中途半端な分煙で、気管支喘息に

ハウスメーカー関連子会社の内勤社員として約7年間勤務。入社時はきわめて健康だったが、職場の受動喫煙に耐えながら仕事をするうち、徐々に体調が悪くなり、ついに気管支喘息を発症。

喫煙コーナーの煙が充満
社員は10名ほどで8_9割が喫煙者。入社後2年間は関連会社と広いオフィスを共用しており、喫煙対策はなかった。やがて自社のみで小さい事務所に移転。事務所の隅に低いパーテーションで仕切っただけの喫煙コーナーが設けられたが、煙や臭いは室内に漂っていた。1年後、組織統合で人員が16人に増えたころから、それまであまり気にならなかったタバコの煙にストレスを感じるようになる。

ノンスモーカーの同僚も肺気胸に
4年目に入社してきた内勤の女性Yさんはタバコ煙に敏感な人だったため、上司に対して一緒に喫煙コーナーの改善を訴えた。煙が漏れないような措置を具体的に提案したが、配置変えの時期まで待つように言われる。その間の応急措置としてビニールカーテンで覆うという案は「みっともない」と却下された。代わりに設置された空気清浄機はほとんど効果がなく、目の刺激やのどの痛みに悩まされる。
そのうちYさんは肺気胸になり入院、手術。いったん復帰したが、間もなく退職した。

気管支喘息を発症
再三の訴えもむなしく、配置変えの後も「空間分煙」は実施されなかった。同僚の喫煙者にも理解されず、とうとうライターの点火音にまで怯えるようになる。やがて、風邪も引いていないのにむせるような咳が出始め、呼吸が苦しくなって病院へ。「気管支喘息」と診断され、「これ以上タバコ煙のなかで働くことはできない」と退職。


その後


S男さんの場合

喫煙対策なし

メニエル病息

衛生委員会へ

「禁煙化」決まるが
履行は進まず

やむなく退職


ルールは禁煙でも、「煙害」は置き去りのまま

市役所に勤務。20代後半まで喫煙していたが、結婚を機にやめ、以来20余年間ノンスモーカー。
職場には喫煙規制が全くなく、執務中も会議中も常時タバコの煙にさらされていた。やがて病に倒れ、「メニエル病」、「突発性難聴」と診断される。診断書には「タバコは禁忌すべきもの」と記載された。
健康に生きたいという願いから、職場内での喫煙規制を求める運動を開始。衛生委員会で「段階的に規制を強化し、最終的には全面禁煙とする」と決定したが、当局の都合でなかなか履行されず、煙害はほとんど解消されなかった。
対策の内容は「禁煙タイム」に始まり、「喫煙コーナー」の設置、「空気清浄機」の設置と少しずつ変わっていったが、すべて不完全分煙で効果なし。退職する1年前の時点では、空気清浄機付きの喫煙コーナーが自席のすぐそばにあり、そこから流れてくる煙で常に不快感を覚え、病気の再発を恐れる毎日だった。このような状態で仕事を続けていくことに生命の危険を感じ、また対策が遅々として進まない失望から、定年を前にして退職せざるを得なくなる。
退職願には「タバコによる健康不安」と理由を明記したが、これに対する当局の反応はいっさいなかった。


その後


J子さんの場合

喫煙対策なし

喘息の発作

対策を要望

喫煙者による
「配慮」のみ

やむなく退職

発作を起こし、救急車で運ばれたのに・・・

経理職として小さな化粧品会社に入社。幼い子どもを抱えてやっと見つけた転職先だった。社内の男性はほぼ全員が喫煙者で、同じ部屋で働く直属の上司に毎日タバコ煙を浴びせられた。もともと喘息の症状があったため仕事中に発作を起こして倒れ、救急車で病院に運ばれる。
タバコの害や喘息のことを訴えたところ、社長や工場長は同じ部屋で吸わないようにしてくれたが、それでも上司は室内での喫煙をやめない。社内には空気清浄機が設置されていたが、効果は感じられなかった。化粧品の材料としてパラベンなどの添加物を扱っていたせいか、タバコの害についても知識が乏しいようだった。
4カ月間我慢したが、けっきょく退職せざるを得なくなる。当時は離婚間近でもあり(夫も喘息で喫煙者)、不安とショックが重なってうつ状態になり、しばらく外出できない日が続いた。


その後