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公開資料 bW「構成的グループエンカウンター」

<構成的グループエンカウンターの骨子>
・構成的グループエンカウンター(SGE)とはカウンセリングの一形態である。何をするのかと言えば,心と心のふれあいを人工的に作ること,ふれあいを通して自己発見,他者発見をするということになる。つまり,「リレーションと自己発見」がキーワードである。それらがなぜ必要かといえば,現代社会は人間関係が希薄であるから,ふれあい作りが求められているからである。慢性の孤独感を持ち,表層的なつきあいをしていると,自分がいったい何者かわからなくなってしまう。すると自分の生き方がわからなくなる,思想がなくなる,何をしていいのかわからなくなってしまう。自分をつかむには嫌なら嫌と言えるように構えをとらないといけないから人工的にその環境を作るのがSGEである。

<二つのエンカウンター>
・エンカウンターには「ベーシックエンカウンター」と「構成的グループエンカウンター」の二つがある。前者はロジャーズ派が行い始めたもので,SGEより少し早めに始まった。前者は「構成」に対比して「非構成」とも呼ばれる。「非構成」はプロのカウンセラーは体験した方がいい。学校現場では,「枠」を設ける「構成法」が使いやすい。心的外傷を招く危険性が少ないということ,教師がマスターしやすいということが主な理由である。

<非構成法・構成法の略史>
・非構成法はロジャーズが1960年代の終わり頃から興味を持ちだして提唱した。ロジャーズはもともと一対一の個別面接による来談者中心療法を行っていたが,歳もとり,集団の力にも重きを置き,思想が変わってきた。徐々に,カウンセラーとクライエントで助ける−助けられるという関係でなく,「パーソン・ドゥ・パーソン」という思想に変わってきた。つまり,自分の役割に固執しすぎるプロフェッショナリズムから足を洗い始めたということが言える。この考え方は「パーソン・センタード・アプローチ」と呼ばれ,1個人としてあるがままの自分を語り合うことの大切さを説いたものである。これがエンカウンターの骨子となっている。
・一方,構成法は1970年代のはじめに起こりだした。カリフォルニアのエスリン研究所のパールズ(ゲシュタルト療法の創始者)が行っていたワークショップはもともと心理療法であり,パーソナリティチェンジが目的であった。(ゲシュタルトが変わるということ)しかしながら,ゲシュタルト療法はエクササイズによる揺さぶりが激しく,一般大衆には向かないということが言われていた。そこで,エクササイズを少しマイルドに修正し,一般大衆にも,そして,教育の一方法として利用しようという考え方が生まれた。
・日本における構成法は1972年に始まったと言ってよい。(この年に國分先生が知ったという) この年に日本で国際心理学会が開催され,上智大学で行われたワークショップの部会に,小林淳一さんを中心に,アメリカから講師を呼んで指導を受けた。このワークショップが今から考えると構成的グループエンカウンターだった。
・1973年にアメリカのフルブライトに留学したとき(國分),エンカウンターがアメリカで大ブームになっていた。ミシガン州立大ではベーシックエンカウンターの講義に対しては単位を出していたが,構成的グループエンカウンターには単位を出していなかった。両方を実際に受けてみたところ,どちらかと言えば構成法に効果を感じた。しかしながら,集団カウンセリングに似ているのか似ていないのか,どうもはっきりしない点も感じていた。
・アメリカで構成法に関する本を買い,日本に帰国して八王子セミナーを使い,「インターカレッジ人間関係ワークショップ」を開催した。この時にはエンカウンターの名称を使わなかった。ワークショップを続けながら,菅沼さん,村瀬さんらと共同でカウンセリング学会で発表を重ねた。1年に5つずつ発表を続け,10年でだいぶ世間に浸透した。
・九州大の野島一彦さんは,グループアプローチの文献集めでは日本一と言われている。その野島さんが著書の中で構成法の研究はまだまだ不十分であると書いた。しかし,以前は全く触れなかったことが,わずか数行とはいえ,触れるようになったという点で,視界に入るようになったのだと思う。世の中の動きを見ていると,構成的グループエンカウンターの影響力は強いと思う。
・これまでは構成法(SGE)の一般原理として「リレーションと自己発見」を唱え続けてきた。しかし,これからの代の人たちは各論の段階に来ている。「授業に生かすSGE」,「自己肯定感を高めるSGE」,「看護の世界におけるSGE」などの研究が進められている。

*この講義の後で,國分先生による構成的グループエンカウンターを実際に行った。(エクササイズは,ブラインドウォーク,新聞紙の使い方など)



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