研究論文 4 

みんな集まれ!!「朝の会」
〜絵本の読み聞かせを取り入れて〜

曽山和彦
(秋田大学教育文化学部附属養護学校)

●はじめに
 朝の光景の中で,「集まって!! 朝の会をはじめるよ」,「いやだ,もっと遊びたい」というやり取りがみなさんの学級ではありませんか。昨年度,私が担任したのは小学部3・4年生7名からなる学級でした。毎朝,子どもたちを教室に集めるのに四苦八苦だった4月当初。「何とか自分から教室に集まれないかな」と担任二人でいろいろと頭を悩ませて考えたのが,絵本の読み聞かせを取り入れるということでした。
 朝の自由遊びから,一日の最初の学級活動である「朝の会」にスムーズに気持ちを切り替えていくためのクッションのような役割を果たしてくれた絵本の読み聞かせについて,平成○年度の実践から簡単に紹介します。
 
 
  朝の活動の流れ  
〇登校・着替え〜登校後,カバン等を片づけてから体育着に着替える。
〇自由遊び〜体育館等で自由に遊ぶ。バス
ケットシュートや鬼ごっこ等。
絵本の読み聞かせ〜先生が読む絵本のお話を聞く。
「朝の会」〜「当番」,「カレンダー」,「呼名」など,係の活動をがんばる。 
  
●実践について
1 教材教具
(1) 台車「おはなしのとびら」の製作
 私の頭に浮かぶ楽しい紙芝居のイメージは,自転車に紙芝居を載せたおじさんが鐘を鳴らしながら「紙芝居が始まるよ」と子どもたちを集めるというものでした。そこで,そのイメージを子どもたちが使えるように工夫したのが,台車「おはなしのとびら」です。キャスターを取り付けた板の上に,扉付きの紙芝居の台を据え付けた教具です。台車には綱と鐘を付けて,子どもたちが引っ張りながら鐘を鳴らせるようにしました。

(2) 絵本の選定
 楽しく絵本の読み聞かせをするためには,絵本選びも重要なポイントです。絵本選びの観点としては,話があまり長くないこと,繰り返しの言葉が多いこと,動作化しやすい場面があること等を考慮しました。そして,取り上げたのが「しろくまちゃんのホットケーキ」(こぐま社),「ぞうくんのさんぽ」,「ぐりとぐら」,「てぶくろ」(以上,福音館書店),「かいじゅうたちのいるところ」 (冨山房)等の絵本です。
 
2.指導の実際
(1) 集合〜「おはなしのとびらが始まるよ」
 8時50分に始業のベルが鳴ります。登校後の着替えを終え,好きな場所で遊んでいた子どもたちも何人かは教室に集まってきます。担任が「誰か,○○さんを呼んできてよ」と言葉をかけると,子どもたちは台車「おはなしのとびら」を引っ張って鐘を鳴らしながら友だちを呼びに行ってくれます。始業のベルが鳴っても遊びをなかなかやめずに集まることのできなかった子どもが,台車を引っ張りたい,鐘を鳴らしたいということで,1番に教室に集まるようになりました。

(2) 絵本の読み聞かせ〜「おはなしのとびら,はじまり,はじまり」
 なかなか教室に集まることのできない子どもには,「○○さん,絵本をみんなに読んであげてね」と係をお願いすることも一つの有効な手だてでした。子どもの読みに合わせて教師が適宜言葉を補い,楽しい雰囲気での読み聞かせができるように工夫しました。(例えば,絵本のテーマ曲を作ったり,実際に動作をする場面を取り入れたりするなど)

●おわりに
 一日の学校生活の中で,学級の全員が最初に顔をそろえる活動が「朝の会」です。子どもたちには「今日はどんな勉強があるのかな?」と見通しや期待感を持ってほしいと願っています。そうした大切な意味を持つ「朝の会」が,子どもたちの笑顔でスタートできるように工夫した一つの例,それが今回紹介した台車「おはなしのとびら」を活用した絵本の読み聞かせです。 子どもが台車を引っ張りながら,鐘を鳴らし「おはなしのとびらが始まるよ」と,遊んでいる友だちに呼びかけている光景,そして,好きな遊びを終わりにして台車を押したり,一緒に引っ張ったりする光景は何ともうれしく,微笑ましいものでした。絵本の読み聞かせは,本学級の子どもたちにとって,「朝の会」につながるクッションとして,十分に興味関心のある活動だったと思います。
 以上は昨年度の実践紹介でしたが,今年度は,絵本に加えて,詩も取り上げています。谷川俊太郎さんの「あ」の詩や「みんみん」の詩,「きのみ」の詩(「子どもたちに詩をいっぱい」,労働旬報社)が子どもたちに大好評の我が学級です。

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