学習会講義資料バックナンバー 6−1 

「サイコエデュケーション」について

1.サイコエデュケーションとは何か
・「育てるカウンセリング(予防・開発的カウンセリング)」の一形態であり,「心理教育」のことである。知的側面を重視する。

2.サイコエデュケーションの目標
 (1)新しい行動の仕方を学習すること
 (2)新しい思考(認知)を学習すること
 (3)新しい感情を体験すること

3.「育てるカウンセリング」,「サイコエデュケーション」,「SGE」の関係
・「治すカウンセリング」(心理療法:夢分析,箱庭療法他)に対して,「育てるカウンセリング」がある。
・育てるカウンセリングには次のようなものがある。
@サイコエデュケーション
 集団に対して,心理的なものの見方や行動の仕方を教える。そのための方法に次のようなものがある。
 ・人間関係スキルトレーニング(アサーショントレーニング,SST)
 *SGE
ASGE
 感情,思考,行動の修正や拡大をねらったエクササイズ及びシェアリングを介して,自己開示,自己理解,自己受容,他者理解,他者受容,感受性の促進,信頼の体験,役割の遂行をねらった集団体験学習である。集団の中で出会う人と人がホンネで交流することによって,リレーションを形成し,自己発見することが目的であるという言い方もされる。「高級井戸端会議」に例えられる。
Bキャリアガイダンス
 別称「キャリアカウンセリング」。直訳は「職業について案内,ガイドする」というような意味だが,もう少し幅広くとらえ,「人生計画の援助,すなわち,生き方の教育」のこと。 
*SGEを取り入れたキャリアガイダンスの実践も多い。(「究極の進路選択」,「君の人生ハウマッチ」等)
C授業に生きるカウンセリング
 別称「対話のある授業」。
*SGEを取り入れた教科・領域の指導実践も多い。シェアリングの手法を取り入れた授業のまとめ方,道徳,特別活動,総合では特にSGEのエクササイズを取り入れやすい。

<結論>
 カウンセラーでも心理療法家でもない一般の教師が,日常の教育指導の中に取り入れることができるカウンセリングを「育てるカウンセリング」という。予防・開発的カウンセリングのことである。SGEはその一形態であるが,他の形態のいずれにおいても,有効な方法として取り入れられており,その担うところは大きい。類似性の高い,SGEとサイコエデュケーションの関係を見ると,理論的にはサイコエデュケーションの下位概念にSGEが来るべきであるが,現段階では,サイコエデュケーションの実態がまだ不明確な部分があるため,並列表記となっている。今後の整理課題である。
 先日の日本教育カウンセラー協会全国大会において,國分(2000)は,「SGEはサイコエデュケーションの一部である,とかつては言っていたが,現在は次のように考え方を改め,両者を並列に置いている。」と述べていた。
 SGEとは?
・人に教えることはできない。「俺は老人に席を譲りたくない」,「ほう,そうか,俺はしょっちゅう譲ってるけど」。教師は「おまえ,席を譲れ」と教えない。自己開示があればいい。
・美術に似ている。「リンゴは赤で描け」とは言わない。「黄色のリンゴを描く生徒がいてもいい」。一つの物を見て様々な表現方法があっていい。
 サイコエデュケーションとは? 
・人に教えることができる。「老人には席を譲りなさい」と教師は教える。
・思考,行動,感情を教える。感情を教えるのは難しいが,「内観」は有効。
・「リンゴは赤い」ということを教える。


<参考・引用文献>
・「育てるカウンセリング全書2 サイコエデュケーション」.國分康孝編集.1998.図書文化
・「エンカウンターとは何か 教師が学校で生かすために」.國分康孝他.2000.図書文化

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