学習会講義資料バックナンバー 4−1 

「アサーショントレーニング」について

1.アサーション(自己主張)の定義
・國分(1995)は,アサーション(自己主張)について,「相手の気持ちや権利を考えながら,自分の気持ちや権利を相手に受け入れてもらうコミュニケーションスキルである」と定義している。「気合い負けしない能力」とも述べている。
・自己主張は人間関係を失ってしまう攻撃とは違う。自己主張には,自分も相手も尊重する態度がある。

2.具体的なアサーション
(1)自尊心の主張:非難,差別,強要に対し,自己肯定の自分を打ち出す。「私には私の考えがある」
(2)「NO」の主張:自分の現状,事情を考え,「NO」が言える。
(3)感情の主張:要らぬ自制や攻撃ではなく,人間の正当な感情として表現する。
(4)変更の主張:自分の現状,事情を考え,変更ができる。
(5)依頼の主張:困ったときに,「助けてください」が言える。
(6)情報要求の主張:何かの理由で釈然としないことを尋ねる。

3.アサーションを受け入れてもらう方法
(1)こちらの主張を相手に知ってもらうこと
(2)相手の言動を批判せず自分の感情だけを語る。例:「みんなの前で叱られて私はとても恥ずかしかったです」
(3)「喜びの感情」を伝えてから「ネガティブな感情」を伝える。例:「相談してもらって,頼りにされていることがわかってうれしかった。でもね,電話が夜更けだったので,的確なアドバイスができたか心配なんだ」
(4)相手の立場や事情に共感してから自己主張する。しかし,相手の立場になりすぎると主張できなくなるので注意。
(5)相手の人柄を非難せず,対決的に相手の矛盾をついて自己主張する。例:「事前打ち合わせでは賛成していたと思いますが,会議では反対意見だったのは,どちらが本当のお考えですか」
(6)不快を具体的に伝える。手順は,「相手の言動を具体的に指摘」→「自分の受け た損失を伝える」→「その結果の自分の感情を表明」→「不快な感情を消すにはどう してほしいかを伝える」

4.アサーションとわがままの違い
・わがままというのは「わがままな自己主張」である。では,「わがままな自己主張」とは具体的にはどのようなことか。

(1)権利と責任の範囲外のもの:例「俺さぁ,授業さぼってたから,ノートとってないんだよ。見せてくれないかなぁ」
(2)不可能を求めるもの:例「いつも私を全身全霊で愛してください」
(3)完璧を求めるもの:例「絶対に失敗してはいけませんよ」
(4)相手への配慮不足のもの:例「私が言うとおりにしなくてはいけません」
(5)投影心理(責任転嫁)のあるもの:例「あなたのせいでこうなったのだから責任をとってください」

5.アサーショントレーニングの段階
 アサーショントレーニングは小さな階段を一段一段上るように進めていくと,無理なく成果が上がってくる。一般的には次のような順序で指導を進める。内容も簡単なものから徐々に困難なものへと段階を進めるとよい。
(1)一対一ロールプレイ:例「上手な断り方」 (*片野先生,諸富先生の講義で行ったことをエクササイズとして体験してみる)
(2)一対多ロールプレイ:例「川遊びのプラン」(課題ロールプレイ)
(*スプリングさんが夏のワークショップで体験。感想は?)

<参考>「ロールプレイという方法」
 なぜ,お芝居のようなロールプレイが必要なのか。クライエントとのカウンセリングは言ってみれば「真剣勝負」。だから練習でも「真剣」を使えば一生懸命になるがまかり間違うと死んでしまうから「竹刀」でやるということ。ロールプレイは「竹刀の殴り合い」であり,カウンセリングの一つの練習方法である。 〜 河合隼雄(1998)「カウンセリング入門」(創元社)より抜粋 〜

<参考・引用文献>
・「育てるカウンセリング全書2 サイコエジュケーション」.國分康孝.1998.図書文化
・「エンカウンターで学級が変わる2 中学校編」P176-179.國分康孝.1997.図書文化 

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