2002中央学習会講義資料バックナンバー 2 

「学校で使える(?)暗示・イメージ」
                            担当:あさとも
 
T.「潜在意識」に働きかける教育・指導の研究
@フロイトの「心的決定論」(=無意識が人間の行動に大きく影響する)の考え方から。潜在意識レベルで変化することにより、学習の効果が上がったり、問題行動が消失・軽減する場合がある。
Aプレスコット・レッキーの実験〜自己イメージ心理学者のP・レッキーは、「人格の中心には自己イメージがある」という仮説をたてた。それを検証 する為に、学生の「特定科目への苦手意識と能力」を調べ、「自己イメージの変化(=この科目は自分に合っている)によって、学習能力が変化するか」を実験した。その結果、「自己イメージの変化により、能力(成績) は著しく向上する」という結果を得た。(マルツ,1995)
⇒自己一貫性(self-consistency)〜その時々の状況の条件によって支配されるのでなく、目標に向かって統制された統一のある行動。考えることと行動とが矛盾なく、一致し調和をしていること。レッキーは人格の発達を自己像の発達と見なした。後にロジャーズがこの考え方を再評価し、その人格理論の基礎概念とした。 (外林他,1981)
Aロバート・ローゼンソールの実験〜ピグマリオ効果とも言う。教師の抱く期待が、生徒の学習成績に影響を及ぼすことを明らかにした。一般的に言えば、期待に添うような効果の現れること。
⇒自己充足の予言〜他人に対してある期待を持つと、当人はその期待を自分の姿だと思い込み、そのように行動しやすくなること。 (外林他,1981)
⇒イメージ〜表象・心像。@知覚対象の再生された直感的な心像のこと。刺激対象が目の前にない時に、思い出し、再び表現する意味。A態度・概念 ・期待・印象のような意味(ex.「企業イメージ」etc.) (外林他,1981)
 
U.「意識的努力」と「潜在意識の観念」の関係性(努力逆転の法則)
 A.意識的努力と潜在意識の観念が対立する時、勝利者は後者となる。
 B.意識的努力と潜在意識の観念が対立している時、後者の力量は前者のそれの2乗に及ぶ。
 C.意識的努力と潜在意識の観念が同一方向に強調する時、そこに生じる力量は、両者の和でなく積となる。
 D.潜在意識の観念は、自分によっても他者によっても誘導できる。ただし、次の配慮が大切である。
   ア)さりげなく イ)快く ウ)肯定的表現で エ)反復繰り返す
 ※潜在意識に働きかけるには、「リラックスしていて、穏やかで澄んでいる境地」に導くことが決定的に重要!(山口,2000)
V.アプローチ・その1〜「にこにこカード」
@視覚的な注意の集中により、軽いトランス状態を作り出す。そこで自己啓発の暗示語を与えることで、潜在意識の観念が変化する。(深層心理研究部会 編,2000)
⇒暗示〜言葉やその他の刺激が理性に訴えることなく受け容れられて、個人の観念や信念が変化し、与えられた言葉通りの行動が引き起こされる現象。
⇒トランス〜ふだんの覚醒状態に較べ安静な、心身のリラックスした状態。
 抑圧が弱まり無意識に接近し易くなる、被暗示性が高まる、イメージ活動が高まるなどの特徴がある。(林,1964)
※授業の開始前に施行すると、教室が静かで落ち着いた雰囲気になる....という効果もある。
 
W.アプローチ・その2〜「シュヴリュルの振子」(「観念運動」)
@観念運動とは、ある観念を強く持つと、それに伴って身体運動が生じる現 象をいう。すなわち、心の中でやろうと前向きの姿勢を示すと、身体運動 もそれに伴って起きることがある。
 これを視覚に訴え、かつ、自分も体験して理解させるのがシュヴリュルの振子で、自己啓発に効果がある。
A20〜30cmの糸をつけた重り、半径6〜7cmの円(中心点を通る直 線があるもの)を描いた紙を用意する
A重りの糸の端を、軽く指先でつまむように持つ。肩を少し下げ、肘の力を抜いて、肘を体から離し、手は水平より少し下げておく。
A重りを円の中心の真上5cm位のところに吊り下げ、じーっと見つめている。心が落ち着いてくると、振子がだんだん静止する。止まりが悪い場合は、深呼吸をする。(ゆっくりと息を吐くと、止まっていく)
A重りがだんだん、少しずつ左右に(上下に、円を描いて)動くと考える。
 特別に手を動かさなくても、ボンヤリ考えるだけでその通りに動く。
A終わる際は、重りが中心で止まるようにイメージする。動きが止まったら、重りを紙の上におき、指を離す。(深層心理研究部会 編,2000)
深く集中しているので、そのまま歩き出すのは危険。手や腕の運動をして、 気分をハッキリさせることを忘れずに!!
※用紙の縦横の線上に、「毎日」−「楽しい」、「家でも」−「学習」などの啓発語・暗示語を書き加えると、更に効果がある。
 
 参考文献
・山口彰 『MS技法による深層心理教育セミナーテキスト』 深層心理研究部会
・外林大作・辻正三・島津一夫・能見義博 『誠信心理学事典』 誠信書房  
・マルツ・M 『ガラッと一変あなたの人生』 騎虎書房
・深層心理研究部会 編 『誘導法・暗示語集』 深層心理研究部会 
・林茂男 『催眠入門』 誠信書房

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