2002学習会講義資料バックナンバー 1-3  

サイコエデュケ−ション;パブリックスピーチのスキル
 
1.パブリックスピーチの原理
・パブリックスピーチ(人前で話すこと)の能力は、大人であれ、子供であれ、これからの時代には欠かせない。パブリックスピーチの一般原理は次の四つである。
(1)聴き手と対話しているつもりで話すこと
(2)人の心を動かす(説得する)つもりで語ること
(3)自己開示の勇気を秘めて臨むこと(他人事の話では人は動かせない)
(4)聴き手の知っている言葉で語ること
*上記の一般原理を生かした話し方をするために、原稿ではなく、「スピーチプラン」があるとよい。
 
2.パブリックスピーチの種類
・すべてのスピーチは人の心を動かすためのもの。つまり、「説得」がねらいである。ただし、次の4種類がある。
(1)説得的スピーチ;選挙演説
(2)説明的スピーチ;料理学校の先生
(3)情報提供的スピーチ;駅の構内放送
(4)娯楽的スピーチ;漫才
 
3.スピーチプランの作り方
・スピーチプランとは、話の流れや内容がちぐはぐにならないように自分をガイドするためのメモのこと。中には、題目、要旨、話の柱、柱を支える資料(調査結果、人の意見、自分の体験など)、結論、導入の仕方などを各一行程度書いておく。本の目次のようなものである。
(1)トピック(テーマ)の選定
・人の心を動かすには、次の4条件のいずれかを満たすトピックを選ぶとよい。
@自分がよく知っているもの
A自分に興味のあるもの
B聴衆にも興味のあるもの
C聴衆の役に立つもの;「役に立つ」とは、(ア)新しい考え方を作る刺激や見本になる、(イ)新しい行動を起こす刺激や見本になる、(ウ)ある感情が刺激されて生への意欲が出てくる
 
(2)要旨の設定
・要旨とは、「自分は何をいいたいのか」ということ。その要旨をワンセンテンスで表現する。ワンセンテンスでいえないということは、要旨の絞り方が足りない。
例;支店長への感謝を表明したい
 
(3)筋立ての設定
・要旨を伝える手順を設定することが必要。3分スピーチなら、柱は3本くらいが適当。
例;「着任当初の不安・孤独感」、「支店長の配慮」、「私の変化」
 
(4)資料の追加
・一つ一つの筋(柱)に資料を加えていく(肉付けをしていく)。
例;「私は人のいなくなった頃を見計らって社員食堂の片隅でいつもカレーライスを食べていた」
・肉付けは、個人体験、他人の体験報告、統計資料、権威者の意見、たとえ話など、バラエティに富む方が聴衆が飽きない。
・留意点は、「資料を多くしすぎないこと」、「筋を指示するもの,しないものの両方を用意すること(対照的なものを用意すると,争点がはっきりしやすい)」
 
(5)結論の設定
・結論は目的地。要旨は一般的だが,結論は具体的。
例;「今まで語ってきたことを一言でいうと,恋愛は子どもでもできるが,結婚は心が大人でないとできないということである。つまり,私の結論は,恋愛はハートだけで成り立つ人間関係だが,結婚はヘッドを要する人間関係。
 
4.パブリックスピーチの導入法
(1)質疑応答からの導入;「このテーマに関心のある人は挙手」
(2)個人的体験からの導入
(3)聴衆に対する印象を語ることから
(4)聴衆が意識していないエクササイズの導入から。
 
*下手な導入
例;「私は話が下手ですので」など,自分の商品にけちを付ける導入はよくない。
 
5.パブリックスピーチの留意点
・暗記しない程度に練習する。立て板に水のようなスピーチは情感がこもらない。
・会話風にインフォーマルな話し方を用いること。対話の雰囲気のある方が心が伝わりやすい。
・全員に聞こえる声で話す。マイクを使うときには,「後ろの人,聞こえますか?」と尋ねるとよい。
・定刻(与えられた時間通り)に終えること。
 
6.特別な場面におけるスピーチ
(1)講師紹介
・2,3分を越えないこと。
・原稿を読み上げるのはその講師を知らないといっているに等しい。聴衆に語りかけるようにすると効果的。著書を読んだり,教え子から取材したりして,紹介用のスピーチプランを作るとよい。
・紹介スピーチの要旨は,「この人物はこのトピックについて語りうる最適任者の一人である」ということ。
・講師の自由を奪う発言を控えるように。「○○の観点からお話をうかがえると楽しみにしています」,「お話の上手な方ですから」等の発言には注意が必要。
・講師が人前でオープンにされたくないことは語らない。「○○先生は,昔,私とよく授業をさぼったものですが」等。
 
(2)突然のスピーチ
・「突然の指名ですので,何を話していいかわかりませんが」などの弁明はスマートではない。次のように即席のトピックを設定するとよい。
@そのグループの目的に対する自分の感情を語ること
Aそのグループと他のグループを対比させて自分の感情を語ること
Bスピーチ会場で目に入ったものを素材にして自分を語ること
Cそのグループの過去と現在を比較するか,現在から未来を予想して語ること
*「何でもよいので話してください」は,枠がないから逆に話しにくい。だから,自分で枠を決めて語ればよい。
 
 
☆演習;3分間スピーチ(40分)
1.3,4人組を作る。
2.各自,スピーチプランを作成する。(15分)
3.順番に3分間スピーチを行う。振り返り用紙(評価表)に記入(1分)してもらう。
4.全員終了したら,グループ内シェアリングを行う。「気づいたこと,感じたこと」を語り合う。(5分)
 
例;「私(KAZU)の場合;電子メールの薦め」
○要旨;電子メールは便利で,これからの時代に必要である。
○筋立て;「便利なところ」,「不便なところ」,「便利なことが断然多いので,お薦め」
○肉付け;引きこもりの子どもが担任と唯一,メールだけでつながり,元気を少しずつ回復した話
○結論;一度覚えると手軽。相手の時間もとらず,自分も時間もとられない。院内学級では,他校との情報交換にも威力を発揮。是非,みなさんも使ってみてください。
○導入;実際にノートパソコンのメールを見せる。「みなさんは,メールを利用していますか?」と質問する。 
 
<引用文献>
・「心を伝える技術」,國分康孝,2001,PHP研究所 

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