2001学習会講義資料バックナンバー 11-3 

 
個別面接(カウンセリング)の進め方
 
1.場面を構成するということ;演習1に対して
・カウンセリングは何か教えてくれるところと思い込んで来るクライエントがいる。その時にどうしたらいいのか? カウンセリングとは「共同研究者」,「二人で暗い洞窟を手に手を携えて歩いていく」のだということ,解決を一緒に探していこうという導入が大切である。そのようにしないと,「カウンセラーは人の話を聴くだけだ」と不満を持ったり,「カウンセラーは当たり前のことしか言ってくれない」と思うようになる。「共同研究者」ということを伝えることが大切である。
・クライエントから「私はどうしたらいいんですか?」と迫られた時,「それはあなたの決断次第です」と突き放すのもいけない。相手の依存性も認めて,その決断をするためには,話を聴いて「一緒に考えましょう。最終決断はあなたがするのだけどね」と伝えること大切である。
・場面構成では,「5w1h」を質問しながら面接を進めていくと明確になるだろう。
・クライエントが「先生のいったとおりにやってうまくいかない時はどうするの?」と聞くこともある。その時の対応としては二つのことが考えられる。一つには,「あなたは私にどういう期待をしているかわからないけど,うまくいかない時はまた一緒に考えようと私は思っているけど」という対応。もう一つは,「あなたは答えはほしいし,責任もとってほしいわけなの?」とクライエントの幼児性をつく対応が考えられる。「選択の迷い」は人生の生き方,生きる意味について考えることと一緒でカウンセリングのテーマになるものである。
・「選択の迷い」を決定へと導くために役立つのが,「論理的帰結」の考え方である。ある行動をとった場合,その行動がどういう結果になるか,損得計算をさせてみるなど。母について行った場合の損得,父について行った場合の損得について,語らせてみたり,書かせてみたり,面接の中で時間のない時は課題にして家でやってきてもらったりなど。いろいろと考えてみたものを下敷きにしていって一緒に考えていけるとよい。
・「選択の迷い」を決定へと導くために,キーパーソンの存在も大事である。ぜひ,カウンセリングを学ぶ多くの人が,悩める人のキーパーソンになって支えてほしい。
 
*<質疑応答1>
Q;クライエントから「先生が両親に会って話を聞いてほしい」と言われた場合,カウンセラーはどうしたらいいのか?
A;両親に会うのは本人が納得しているなら問題はない。情報を得るためにはいいだろう。状況によっては本人の同席を促してもいい。
 
*<質疑応答2>
Q;クライエントが「時間がないの。私はどっちについて行けばいいの? どうすればいい? 早く教えて」と迫ってきた場合,どうすればいいのか?
 
A;カウンセリングでは人生の生き方を共に考えていくのだろう。小手先で何かをするというよりは,この人についていけばいろいろいいことがあるのではないか,一緒に考えてくれるんじゃないか,と思うだけでクライエントはだいぶ変わるだろう。最終的にはこの先生はよく聴いてくれるんだなと思うような対応が一つには考えられる。
 
2.抵抗の処理;演習2に対して
・言語的抵抗(話が抽象的,人の話に終始など),非言語的抵抗(遅刻,キャンセル連続,沈黙など)が表れたときにどうしたらいいか。
 
(1)抵抗を指摘する
・「何か,機嫌が悪そうだけど,頭に来るようなことがあるの?」などと抵抗を指摘してみる。その後は,共感的に聴くということが大切である。「そういう時,嫌な感じになるよね」など。
 
(2)抵抗を解釈する(どんな抵抗なのか)
 精神分析による考え方から抵抗は次の3種類が考えられる。
・エス抵抗(快楽原則による抵抗)〜楽をしたい,怠けたい等
・エゴ抵抗(現実原則による抵抗)〜損をするのが嫌,人に秘密が漏れそうで嫌等
・スーパーエゴ抵抗〜恥ずかしい,家族に迷惑をかけて申し訳ない,プライドが傷つく等
 
・クライエントにどういう抵抗かを言う必要はないが,カウンセラーはそれがわかっているといい。
 
(3)支持をする
・カウンセラーは味方になる,弁護士になる,ということをクライエントに示すことが大切である。「私にできることは何かある?」と声をかけてみることもよい。しかし,「わからず屋の担任に会ってほしい」とクライエントが話した時に,「ああ,あの担任はダメだよね」と同調するような支持はよくない。「何だ,この先生は,人の話にポンポン乗ってきた」と軽い人間と思われる。「私はあなたの弁護士になるつもりだよ。それで,あなたのことをもっと知りたいから担任の先生に会ってみるね。あなたを弁護する材料がいっぱい見つかるかもしれないからね」というような言い方はどうだろうか。
 
(4)リレーションを作る
 
(5)役割交換のロールプレイをやってみる
・抵抗を示すクライエントの気持ちを理解するためには,技法として役割交換法(エンプティチェア)も効果的である。例えば,子どもとの関係で煮詰まっている人など,一人二役でやってみると相手の気持ちがわかりやすい。
 
*<質疑応答3>
Q;観察者から「受容がうまい」と褒められたが,教師という立場で受容だけをするは難しいと感じた。教師は言わなきゃいけないこともある。教師とカウンセラーの区別の仕方をどうしたらいいのか。
A;教師としての役割にとらわれすぎると子どもとのかかわりが難しいだろう。「この子にとって大事なことだ」とわかったら,役割にとらわれずに,違う自分(カウンセラーの役割)で接することも必要だろう。いつでもどこでも同じ役割の裃を着ていては子どもとのかかわりが不自由になる。裃の脱ぎ着が自由にできるといい。
 
3.対抗感情転移の処理;演習3に対して
・クライエントに対して,ネガティブ(立腹,不快など),ポジティブ(惚れ込みなど)な感情転移が表れたときにどうしたらいいか。
 
(1)カウンセラーはクライエントに対する自分の感情に気づくこと。
・カウンセラーは自分の感情をごまかさない方がよい。「自分は腹を立てているんだなぁ」というありのままの自分に気づくことがまずは大切である。怒りの感情なのか,罪障感の感情なのか,喜びの感情なのか等。
・自分自身イライラしている時に,クライエントに笑顔で接してもダメだろう。カウンセラーが自己開示して,「私もちょっとイライラしているのよ」とアイメッセージを送ってみる。「私はあなたが理屈っぽく感じたのよ」,その時に感じたネガティブな感情を語ってみることも一つ。
 
(2)感情の背後にあるビリーフをチェックする。
・「母親ならもっと愛情を持つべきだ」というビリーフを,「愛情だけでは治らないこともあるだろう」と修正するによって,クライエントへの感情が変わる場合もある。
・「カウンセラーはクライエントを好きにならねばならない」というビリーフもラショナルではない。
 
(3)ストラテジーの再検討
*おかしいなと思う時には,ストラテジーの検討に1時間かけることも大切。
@リレーションのチェック
 
A目標が一致していたかのチェック
・ゴールが違うとちぐはぐになる。
 
B方法のチェック
・傾聴に徹していたが,クライエントは行動療法で課題を与えてほしかったとかいう思いがあったかもしれない,というチェック。
 
C価値観は一致していたかのチェック
・クライエントが「神を信じない人は頼りない」と思っていたら,そこでもう面接は進まないだろう。極端な人は,例えばキリスト教の信仰を持つカウンセラーにリファーする必要もあり。
 
*<質疑応答4>
Q;ストラテジーの検討をしていくと,カウンセラーがしゃべりすぎると感じたがどうなのか? 
A;ストラテジーの検討といっても,全ての項目を検討するのではない。
 
 
<参考・引用文献>
・日本教育カウンセラー協会アドバンストコース講座資料,「カウンセリング技法」,國分久子,2002

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