2001学習会講義資料バックナンバー 10 

 
メンタルヘルス〜心の元気〜を保つために
 
 悩みを持たない人はいないだろう。國分(1996)は,悩みを持った状態でもダウンすることなく心の健康を保つために次の3条件が挙げられると述べている。
T.ヒューマンネットワーク
・身近にパーソナルなヒューマンネットワークを持っている。
 
U.コーピング(対処行動)スキル
・「どうしたの?」と聞くスキル
・自分を開くスキル
・相手の欲求を満たすスキル(生徒をヘルプするスキル)
 
V.イラショナルビリーフの修正
・論理療法を用いて,「自分は今,心の中にどんな文章記述をしているのか」と自問自答する。
 
*参考;教師特有のイラショナルビリーフ(河村の研究より)
@学校は知識を教えるべき場所である A生徒は教師の言うとおりに行動すべきである
B教育は教師だけが行うべきものである C一般大学出身の教師はアマチュアである。
D教師は完全でなければならない E教師は労働者である
 
 本稿では,論理療法に関連する部分に焦点を当てて,「心の健康」を考えたい。
 
1.悩みを作っているのは自分自身
・同じ出来事に遭遇しても,落ち込む人と落ち込まない人がいる。セリエはストレッサーがストレスを生むと捉えたが,エリスはビリーフがストレスを生むと捉えた。これが論理療法(ABC理論)である。「考え方次第で悩みは消える」という理論である。
・リンカーンの次の言葉もエリスの考え方と同様;「私がみたところ,幸福の度合というのは,気持ちの持ちようでほぼ決まってしまうようだ」
・「成功哲学」を著したN・ヒルの言葉;「誰でも問題を持っている。あなたにとって大切なことは,成功・失敗はあなたの態度にかかっている。あなたは自分の考えを支配し,感情をコントロールすることによって,あなたの態度を調整することができる。あなたは自分の態度を積極的なものにするか,消極的なものにするかを選択することができる」
・現実療法(リアリティセラピー)の提唱者,グラッサーの選択理論;「〜によって不幸にさせられた」のではなく,「自分で不幸な道を選んだのだ」
 
2.心の元気を保つために
(1)論理療法では
・ビリーフをチェック,修正することを勧めている。チェックのポイントは,そのビリーフが事実に基づいているか,論理性はあるかの2点である。
・「クラスの全員が反旗を翻している」と相談に来た教師がいる。「40人の生徒の全員が君に反旗を翻しているの?」と確認すると,「10人ぐらいです」と言う。「それじゃ,30人は君に割合いい感じを持っているわけだ」と話を進める。「全員が反旗を翻している」というビリーフは事実ではない。
・「生徒に嫌われている」と悩み,落ち込む教師がいる。話を聞くと,「一人の女生徒とうまくかかわりが持てない」という。「クラスの全員とうまくかかわれない自分は教師としては失格である」というビリーフがあるのではないか。そのビリーフに論理性はない。「クラスの全員とうまくかかわれるにこしたことはない。しかし,もしそうならないとしても自分はダメ教師ではない」というビリーフに修正したら,落ち込みの度合は少なくなるだろう。
 
(2)成功哲学では
・N・ヒルは次のように述べている;「人間の心には二つの部品がある。一つは顕在意識であり,一つは潜在意識である。人が積極的な心構えの開発を行うには,未知で広大な潜在意識の力を利用することである。エミール・クーエが提唱した意識的な自己暗示が,それを可能にする」
・潜在意識とは,読書や思考によって影響されるものである。潜在意識は「隠れた説得者」である。
・日一日と,あらゆる面で,私は日増しに良くなりつつある。(オグ・マンディーノ著,「12番目の天使」にも同じセリフが繰り返し登場する)
・どんな逆境でも,それと同等か,それ以上の利益の種子が込められている。
・問題のうち,深刻なものはそれほど多くない。失敗したことを成功させるには,たった一つのアイディアと行動でよい。
・自分でコントロールできないもののことを心配しても仕方がない。だったら,過去の扉を閉め,二度と開けないことである。
 
 
<参考・引用文献>
・「ポジティブ教師の自己管理術〜教師のメンタルヘルス向上宣言」;國分康孝,図書文化,1996
・「積極的心構えがあなたの人生を変える」;ナポレオン・ヒル&クレメント・ストーン,田中孝顕訳,騎虎書房,1989

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