第3章 こころのグループワーク

 1999年度の3年の選択科目「国語表現」での実践をもとに,開発的教育相談の具体的なグループワークをまとめました。可能な限りワークシートを作り,フツーの教師でも少し関心があれば誰でもできるように工夫しました。そのまま使用してもらっても結構ですが,自分の物にするために改良してもらうとより一層すばらしい物ができると思います。

§1.人を知り私を知るワーク

 年度当初,最初の授業など新しいメンバーが出会う場面で実施するワークです。人と出会うことは,相手を知り,そして自分を知ることです。よく行われるのは自己紹介ですが,より深い出会いを体験するために,インタビューや他己紹介,エゴグラムを使ったいくつかのワークを紹介しました。

もどる





















§2.話し上手になるワーク

 「1.私の社会的スキル」は,これからのワークの出発点になります。社会的スキルの中の対人的スキルにはどのようなものがあって,自分の得手不得手のスキル,身につけたいスキルについて考えます。「スキル」は技術的なものであって「こころ」とは相容れないように考える人もいますが,現代人のこころの問題は対人的スキルの不足が原因しています。
 会話は対人的スキルの基本です。会話は双方通行のコミュニケーションです。これを交流分析のやりとり分析の理論を借りて学習します。
 自己主張は発信者の立場からのコミュニケーションです。現代は自己中心的に自分の事だけを一方的に主張する人,逆に気が弱いために自分の事を全く主張できない人が増えています。アサーションの理論を借りて,相手の主張を受け入れながら自分を主張をすることを学習し体験します。

もどる





















§3.聴き上手になるワーク

 このワークは自己主張とは逆の受信者の立場のコミュニケーション・スキルです。相手の話をじっくり聴いて,相手を理解するワークです。聴き上手な人はいます。よく友達の相談にのってあげる人もいます。それを系統的に学習できる理論に,カウンセリングがあります。よく似たものに相談があります。相談は,解決策をアドバイスします。カウンセリングは,その解決策に相手が気づくのを援助します。といっても,このワークの目的は,カウンセリングについて学習することではなく,相手の話をじっくり聴くスキルを身につけ,実生活に活かすことです。また,実習を通じて実際に話を聴く聴いてもらう体験をすることで,いい気持になることです。
 1〜4は,チェックシートを利用したワークです。5〜8は,ロールプレイなどの体験を中心にしたものです。うまく組み合わせると,さらによいものができると思います。
 カウンセリングについては,第1章で詳しく説明してあるので,そちらの方も参考にしてください。

もどる





















§4.話し合いのワーク

 最近の生徒は話し合いができない。ただ話し合いなさいと言うだけではどうにもならない。そこで,段階的に話し合いができるようなプログラムを考えました。
 第1段階は,メンバーがそれぞれ情報カードを持ち,有効な情報を口頭で提供して課題を解決していきます。自分の持っている情報を話さなければ課題は解決しないので,嫌でも話し合いに参加しなければなりません。
第2段階は,短い物語の登場人物を自分の価値観によって並べ替えるという課題です。物語はよくある恋愛物ですが,心理的な要素も含んでいるので興味を持って話し合いができ,結果についても楽しめます。
 第3段階は,普通の話し合いです。2段階まで積み上げているのでスムーズに展開できるはずです。話し合いの手順や役割分担を示したバズセッション,話し合いの仕方を監察するフィッシュボール,ディベートなど様々な形態があります。
 いずれも,話し合いをした後は,集団での自分の役割を評価し,感想を書かせるようにします。このふりかえりこそ,開発的教育相談たる所以です。

もどる





















§5.ストレスを軽くするワーク

 現代はストレスの多い社会です。生徒も多くのストレスを抱えています。このワークでは,まず,自分のストレスについて気づくことから始めます。そして,イメージワークやリラクセーションや論理療法やブリーフセラピーを利用しながら,からだやこころや考え方を変えることによって,少しでもストレスを軽くしていきます。

もどる





















§6.人生を考えるワーク

 子供から大人になる過渡期であるこの時期は,生い立ちを振り返り,これからの生き方を考えるのに絶好の時期です。過去を確かめることによって,はっきりと未来が開けたり,未来を考えることによって過去の出来事の意味づけや整理ができます。
 最終的には自分史を書かせることになるのですが,それまでに,これから出会う人生のイベントについてアンケートをしたり,人生ゲームをしたりして楽しく疑似体験します。また,具体的に色々な職業について考えたり,過去を内省したりします。そして,社会と関連づけて自分の過去を振り返り,未来の予定を立て,自分史を書く作業につなげます。

もどる