評論

加藤周一


 東京では、ジーンズをはいていると若いといわれるが、ニーヨークでは言われない。これは日本とアメリカの違いかもしれないが、日本では事物と年齢を関係づけるが、アメリカでは関係づけない。その他日本では、結婚、自動車、喫茶店、週刊誌、著者、話題、挿絵、言葉づかいなど、「若者向け」の商売が存在する。ジーンズは今や老人でもはいているので時代がアメリカナイズされたといわれるが、テレビ番組と子ども向けだけでなく若者向け番組が氾濫している。(結婚適齢期や週刊誌やTV番組などアンケートや新聞などを使って調べてみるのも面白い。)

 しかし、文化を狭義に「人間が理想の実現のために果たしてきた精神的な活動とその所産の総称」と定義すると、「文化」が商品になること=すべての商品が文化ではない。(このあたり論理的に考えてみよう。)若者向けの消費財(これは文化ではない)はあるが若者向けの文化などあるのか。例えば、二次方程式の解法、癌の治療法、核兵器反対運動、民法、クラッシック音楽や絵画、宗教には、若者向け老人向けの区別はない。これらは文化の重要な部分、つまり狭義の文化であるが、先にあげた例は広義の文化でつまらぬ部分である。(これらの例のあげ方が妥当なのかを検証する必要がある。自分の論を証明するために都合のよい例を採用し、都合の悪い例は除外することがある。当てはまらないものを探して反論を試みてみる。)

 それならば、なぜ日本社会では「若者向け」文化があるような振舞いをするのだろうか。

一つ目には、商業主義があることは第一段落で見てきた。二つ目は、経済階層や民族に応じての文化の差がないことが挙げられる。比較的同質の文化を分節化しようとするなら、年齢別か性別になる。三つ目に、文化を分節する、文化を特定の集団に当てはめて特殊化する欲求が強かった。廓言葉やヤクザ言葉や若者言葉などの例が考えられる。さらに集団を大きくすると、日本社会全体が、日本文化の特殊性を強調していることに思い当たる。フランス人は、自国の文化はどんな外国人にもわかるはずだと誇りに思っているが、日本人は、自国の文化をどな外国人にもわかるはずがないと貴ぶのである。(日本特有の若者文化の理由を考えている論の部分である。検証が必要であろう。三つ目の理由は、日本文化全体に言及しているので重要である。)

 文化とは、個人間や集団相互に話を通じさせる工夫である。


板書


全体把握


1.学習プリントを配布し、漢字と語句の意味を確認する。
2.「若者アンケート」をする。
 ・事前に、ジーンズをはける年齢、結婚適齢期、それに付随して結婚についても条件や利益や不利益なども、読んでいる雑誌や、見ているテレビ番組などをアンケートする。

3.評論は「問題提起」「例」「論」から成り立っていることを説明し、各形式段落がどれに当たるか分けることを指示しておく。

4.形式段落ごとに番号を付けさせる。

5.全文を音読する。

6.各形式段落を「問題提起」「例」「論」に分ける。
 1)例と論
 2)例
 3)例と論
 4)問題提起
 5)例
 6)論 
 7)例
 8)問題提起
 9)論
 10)論
 11)例
 12)論

7.問題提起をもとにして、大段落に分けさせる。
 第一段 1)〜3)
 第二段 4)〜7)
 第三段 8)〜12)

8.全体の結論はどの形式段落にあるか。
 ・12)

第一段

1.音読させる。

2.東京とニューヨークでのジーンズに対する反応の違いをまとめる。
 a)東京では「お若いですね」と言われる。=ジーンズは若者向けである。
 b)ニューヨークでは何も言われない。=ジーンズは万人向けである。

3.このことから、何を言おうとしているか。
 ・東京では、事物と年齢を関係づけたがる。

4.この違いを、自分がすべての知っているわけではないので、日本とアメリカの違いであると主張しない筆者の姿勢に注意する。

5.ジーンズについての「若者アンケート」の結果を発表する。
 ・22歳=1人、26歳=4人、30歳=2人、35歳=8人、40歳=3人、関係ない=46人、はかない=6人
 ・ほとんどの人が年齢に関係ないと答えている。
 ・十五年前とは状況が変わっていて、アメリカ型になっている。

6.それでは、結婚適齢期についての「若者アンケート」の結果を発表する。
 1)男子生徒
  ・22歳=3人、26歳=10人、30歳=14人、35歳=3人、40歳=2人、関係ない=8人、  しない=2人
 2)女子生徒
  ・22歳=5人、26歳=15人、30歳=8人、35歳=1人、40歳=0人、関係ない=16人、  しない=1人

7.結婚の条件としての年齢の順位についての「若者アンケート」の結果を発表する。
 1)男子生徒
  ・1位(3)2位(1)3位(3)4位(8)5位(8)6位(7)7位(7)
 2)女子生徒
  ・1位(1)2位(3)3位(0)4位(6)5位(9)6位(6)7位(8)

8.この数字から何が言えるか。
 ・女子は早くしたい人と関係ないと考えている人に分かれる。
 ・男子は30歳までと考えている人が多い。
 ・結婚に関しては男子の方が年齢と関係あると考えている。
 ・ジーンズに比べて年齢と関係づけている人が多い。

9.結婚の利益についての「若者アンケート」の結果を発表する。
 1)男子生徒
  1)精神的な安らぎの場が得られる(26) 2)生活上便利になる(9) 3)人間的に成長できる(8)
 2)女子生徒
  1)精神的な安らぎの場が得られる(24) 2)人間として成長できる(17) 3)一人前の人間として認められる(7) 4)経済的に余裕が持てる(6)

10.結婚の不利益についての「若者アンケート」の結果を発表する。
 1)男子生徒
  1)やりたいことの実現が制約される(17) 2)自由に使えるお金が減る(13) 2)家事や育児の負担が増える(13) 
 2)女子生徒
  1)やりたいことの実現が制約される(16) 1)家事や育児の負担が増える(16)  3)自由に使えるお金が減る(9)

11.結婚の条件についての「若者アンケート」の結果を発表する。
 1)男子生徒(一位の数)
  1)愛情(15) 2)人柄(11) 3)健康(5) 4)容姿・年齢(3)
 2)女子生徒(一位の数)
  1)愛情(17) 2)人柄(14) 3)健康・年齢(1)

12.ジーンズや結婚の例から何が言えるか。
 ・日本では「若者向け」の商売が繁盛する。

13.他に挙げられている若者向け商品は。
 ・自動車、喫茶店、週刊誌

14.週刊誌についての「若者アンケート」の結果を発表する。
 1)男子生徒
  1)少年ジャンプ(20) 2)少年マガジン(18) 3)少年サンデー(9) 4)少年チャンピオン(7) 5)Jack(4) 6)カジカジ・COOL(3)
 2)女子生徒
  1)nonno(9) 2)JUNIE(7) 3)Zipper・セブンティーン(4) 5)プチセブン・Cawaii・CUTIE(3)

15.テレビ番組についての「若者アンケート」の結果を発表する。
 1)男子生徒
  1)めちゃイケ(6) 2)うたばん(5) 3)ヘイヘイヘイ・世界まるみえ(3)
 2)女子生徒
  1)人に優しく(10) 2)マジっすか(7) 3)ロングラブレター(6) 4)めちゃイケ(5) 5)うたばん・学校へ行こう・Mステーション・吉本超合金(4) 9)ロンドンハーツ・スマスマ・堂本兄弟・恋するトップレディ・初体験(3)

16.第一段を35字以内で要約させる。
 ・日本では事物と年齢を関係づけたがり、「若者向け」の商売が繁盛する。(33字)

第二段

1.音読させる。

2.「『文化』が商品になりうるということは、すべての商品が『文化』だということではない」から、文化と商品の違いを考える。
 ・商品は文化の一部分である。

3.第二段の問題提起は何か。
 ・「若者向け」の文化はあるのだろうか。

4.「若者向け」があるものを確認する。
 ・ジーンズ、結婚、自動車、喫茶店、週刊誌、著者、話題、挿絵、言葉づかい、

5.「若者向け」「老人向け」の区別のない物は何か。
 ・二次方程式の解法、癌の治療法、核兵器反対運動、民法、クラッシック音楽や絵画、宗教

6.用紙を配布して、「若者向け」がないものと、あるものを書き出させる。

7.これらの物を何と定義しているか。
 ・文化の重要な部分。
 ・「若者向け」があるのは、文化のつまらない部分。

8.このことから何が言えるか。
 ・文化の重要な部分は年齢性別と関係ない。

9.第二段を35字以内で要約をさせる。
 ・文化の重要な部分は年齢性別と関係なく、「若者向け」の文化はない。(32字)

第三段

1.音読させる。

2.問題提起を確認する。
 ・今日の日本社会が、あたかも「若者向け」の文化があるかのように振る舞う理由は何か。

3.その理由の一つ目は何か。
 ・商業主義
 ★箇条書き気風になっていることによって論が明確になっていることを確認する。

4.二つ目の理由について、論理的展開を確認する。
 1)日本文化の特徴は。
  ・経済階層に応じて文化の違いがない。
  ・多数の少数民族の固有の文化が共存することもない。
 2)まとめると。
  ・比較的同質の大衆文化
 3)同質なものが分節化するとするとその基準は。
  ・年齢か、性別か。
 4)つまり、日本文化は同質であるので、年齢によって分節化する傾向がある。

5.三つ目の理由について考える。
 1)日本では、文化を分節化や特殊化する欲求が強かった。
 2)文化の分節化を詳しく言い換えると。
  ・文化を特定の集団に割り当てる。
 3)その割り当ての一つが「若者」である。
 4)他にどんな割り当てがあるか。
  ・出身地、出身大学、職業
 5)特定の集団にしか通じない隠語について考える。

6.このことは、日本社会全体が日本文化の特殊性を強調することに普遍化できる。

7.日本人とフランス人の違いを説明する。
 ・フランス人=自国の文化はどんな外国人にもわかるはずだと誇りに思っている。
 ・日本人=自国の文化をどな外国人にもわかるはずがないと貴ぶ。

8.文化とは何か。
 ・個人間、集団相互に話を通じさせる工夫。

まとめ

1.全体を二四〇字〜二八〇字で要約させる。
 1)第一段の要約
 2)適切な接続詞でつなぐ。
 3)第二段の要約
 4)適切な接続詞でつなぐ。
 5)第三段の要約
  1)問題提起
  2)第一の理由
  3)第二の理由
  4)第三の理由
  5)第三の理由の発展
  6)文化の定義

1)日本では年齢と関係のない事物との年齢を関係づけたがり、「若者向け」の商売が繁盛する。2)しかし、3)文化の重要な部分は年齢性別と関係なく、「若者向け」の文化はない。4)にもかかわらず、5)1)日本社会が、「若者向け」の文化があるかのように振る舞う理由は何か。2)第一は、商業主義である。3)第二は、同質の大衆文化を年齢によって分節化するからである。4)第三は、文化を分節化する欲求が強く、若者という特定の集団を特殊化するからである。5)これは、日本社会全体が日本文化の特殊性を強調することにつながる。6)このことから、文化とは、個人間に、集団相互に話を通じさせる工夫であると言える。(二七一字)



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