阿部謹也


第一段(世間と社会の違い)
 世間という言葉は誰もが使っているが、何かをきちんと答えられる人はいない。社会とは違う。世間は明治以降文章から消えたが会話の中ではしばしば使われ具体的である。他方、社会は明治以降文章では使われるが抽象的である。
 西欧では、社会は尊厳を持った個人が集まったものと見なされている。日本では個人の尊厳は認められず、世間は個人の意思によって作られたものでなく所与と見なされる。
 私たちは世間という枠組の中で生きているにもかかわらず、世間を分析した人はいない。

第二段(日本人は世間に依存している)
 世間がなくなれば、日本人は世間を基準に生きていて、世間も個人の位置に気を配ってきたので、行動の指針を失って困惑するだろう。世間の中では長幼の序が支配していて競争が排除されているので、有能でない人も世間の掟を守っていれば排除されないが、有能な人がそれなりの地位を得るわけではない。
 私たちが人間関係を選べても、相手がどのような世間に属しているか(出身校・出身地・会社・地位)を問題にして、気心の知れない人とは付き合わない。
 日本人は、競争社会で個性がせめぎ合う関係の中で生きるより、与えられた位置を保ち心安らかに生きたいと思いながらも、周囲を気にする。
 日本人は、自分以外の権威としての世間に依存して生きている。皆と共に行動する時は皆と合わせようとするし、意見を聞かれた時は他人の意見を聞きながら自分の意見をそれに合わせたりする。

第三段(贈与と互酬)
 
世間を構成する原理として贈与と互酬がある。互酬の具体例として、借金を返せないと世間から排除されるのではないかという恐怖や贈答儀礼がある。
 逆に、宝くじが当たったりした時に名前を公表しないのも、世間の中で世間の評価を気にすることから起こる事態である。
 世間の中での個人の位置は、十分な形で個性を伸ばすことができなかった。

第四段(「坊ちゃん」の中の世間)
 「坊ちゃん」は西欧の個人の位置を見た漱石が日本の個人の問題を学校という世間の中で描こうとした作品である。学校という世間のしきたりに従えという赤シャツの忠告に対して、世間は人が悪くなることを奨励し、正直手純粋な人を軽蔑すると反論する。
 読者は坊ちゃんに肩入れするが、自分が赤シャツのように世間の中で生きていることを感じている。

第五段(世間を分析する必要性)
 世間を分析した人がいないことは、わが国の学問が日常会話の言葉を無視してきた結果である。
 「非言語系の知」の集積である世間を顕在化し対象化すれば、世間の持つ負の側面と正の側面が見えて来、新しい社会関係を生み出す可能性がある。
 明治の中頃に社会や個人という訳語が通用する以前は、社会や個人という言葉も概念もなかったが、世間という言葉が社会に近い意味で用いられていた。
 社会という言葉が通用するようになってから、社会という言葉が持っていた概念とわが国の実状の乖離が無視されてきた。
 わが国で欧米の意味での個人が生まれていないのに社会はという言葉が通用するようになって、欧米流の社会があるかのような幻想が生まれ、わが国の社会の未成熟や特異性が隠されるという事態になった。しかし、一般の人は日常会話の中で社会より世間という言葉を使い続けた。

第六段(世間の曖昧さ)
 日本の個人は、世間との関係の中で形成される。しかし、世間は人間関係の世界なので曖昧なものであり、したがって、その曖昧な世間との間で形成される日本の個人は曖昧なものである。人権が守られないのも世間の枠の中で許容されてきたからである。


第一段 (詳読=一文ずつ丁寧に読解していく授業展開)     板書

1.学習プリントを配布し、学習の準備を宿題にする。
2.漢字の読みを確認する。
3.語句の意味を確認する。
 1世間=人が集まり、生活している場。自分がそこで日常生活を送っている社会。世の中。人々との交わり。また、その交わりの範囲。
  社会=人間の共同生活の総称。また、広く、人間の集団としての営みや組織的な営みをいう。
     人々が生活している、現実の世の中。世間。ある共通項によってくくられ、他から区別される人々の集まり。
     また、仲間意識をもって、みずからを他と区別する人々の集まり。
  頻度=物事が繰り返して起こる度合い。
 2尊厳=とうとくおごそかなこと。気高く犯しがたいこと。
  意思=何かをしようとするときの元となる心持ち。(意志=あることを行いたい、または行いたくないという考え。)
  所与=他から与えられること。
4.「世間」を使った次の文章の意味を考える。
 ・渡る世間に鬼はなしと思って、世間にでるが、世間の風は冷たい。
 ・世間は広いようで狭く、世間は黙ってはいてくれず、世間話の花が咲く。
 ・世間知らずは、世間ばなれしていると言う。
 ・世間を知り過ぎていると、世間ズレしていると言う。
 ・世間をさわがせて、世間沙汰になれば、世間は許してくれず、世間に顔向けができない。
 ・世間体をつくろって、世間の目を気にして、世間なみに生きることが一番だ。
5.「世間」と「社会」の違いを考える。
 ★いろいろな意見を挙げさせる。
6.世間と社会の辞書的な意味を考える。
 ・世間=人が集まり、生活している場。自分がそこで日常生活を送っている社会。世の中。人々との交わり。また、その交わりの範囲。
 ・社会=人間の共同生活の総称。また、広く、人間の集団としての営みや組織的な営みをいう。
     人々が生活している、現実の世の中。世間。ある共通項によってくくられ、他から区別される人々の集まり。
     また、仲間意識をもって、みずからを他と区別する人々の集まり。
 ・類語=世、世の中、天下、世上、世俗、俗世、人世、人間、俗間、民間、巷間、巷市井、浮き世、娑婆、塵界、世界
7.音読する。
8.世間と社会について(1)
 1)世間とはどのようなものか。
  ・誰もが知っている。
  ・知らない大人は一人もいない。
  ・何かと聞けばきちんと答えられる人はいない。
  ・研究した人もほとんどいない。
  ★誰もが知っているが、誰も研究した人はいない。
 2)aそれ(662)の指示内容は。
  ・世間を知らない大人は一人もいない
 3)接続詞「しかし」「他方」の接続は。
  ・しかし=世間を社会と同じものと考えている人もいるらしい。⇔世間は社会とは違う。
  ・他方で=明治以降世間という言葉は〜+社会という言葉は明治以降〜
 4)社会と世間という言葉の、文章と会話の中での違いは。
  ・世間=明治以降、文章から消えたが、会話の中ではよく使われ⇔ている。
  ・社会=明治以降、文章では使われているが、抽象的である。
 5)社会と言う言葉を文章の中で使うのは誰か。
  ・学者,ジャーナリスト、教師。
  ・知識人。インテリ。
 6)bその意味(668)の指示内容は。
  ・社会という言葉
 7)社会が抽象的とすれば、世間は。
  ・具体的。
  ・身内や仲間など、顔が見えたり実際につきあいがある。
  ・家族、親戚、同級生、同窓会、同郷、クラブ、サークル。

9.西欧の社会と日本の世間について(23)
 1)西洋の社会は何を前提にしているか。
  ・個人。
 2)個人はどのように定義されているか。
  ・譲り渡すことのできない尊厳を持っている。
 3)社会はどのようにしてできるか。
  ・個人の意思に基づいて社会の在り方が決まる。
 4)cその個人(671)の指示内容は。
  ・譲り渡すことのできない尊厳を持っている
 5)「従って」の接続は。
  ・「個人が集まって〜見なされている」⇒「個人の意思に〜決まる」
 6)日本の場合、個人はどのように認識されているか。
  ・尊厳があるとは認められていない。
 7)「しかも」接続は。
  ・「日本ではいまだ〜わけではない。」+「世間は個人の意思によって〜考えられていない。」
  ・個人のことに、世間のことを添加している。
 8)それでは、世間はどのように認識されているか。
  ・所与。
  ・他から与えられるもの。
  ・議論の余地のないもの。
  ・議論の余地がないから研究もされない。
  ★「社会は個人が作るもの」という定義と大きく異なる。
 9)「しかし」の接続は。
  ・「家庭の中で〜多くはないだろう。」+「そんなことでは〜しばしばあるだろ
   う。」
 10)そんなこと(678)の指示内容は。
  ・世間を気にせずに自分勝手に振る舞っていること。
  ・文中にない。
 11)「渡る世間に鬼はなし」「世間の口に戸はたてられぬ」の意味を説明する。
  ・世の中には無慈悲な人ばかりでなく、情け深い人もいるものだ。
  ・世間の人のうわさは防ぎ止めることができない。
 12)諺を引用した意図は。
  ・日常会話の中で「世間」という言葉が生きていることを示す。
 13)eそれどころ(6711)の指示内容は。
  ・日常生活の中では、「世間」という言葉は今でも十分生きている。
 14)「いわば」の接続は。
  ・「私たちは世間という枠組みに〜生きているのである。」=「世間は〜状況なのである。」
 15)言い換えを確認する。
  ・私たちは世間を意識しながら生きている。
  ・私たちは世間という枠組の中で生きている。
  ・世間は日本人の生活の枠組となっている。(主語が「世間」になった)
 16)fその世間(6713)の指示内容は。
  ・日本人の生活の枠組となっている

10.世間チェックをする。
 ・個人と世間の、良い点と悪い点をチェックする。


第一段 (把読=大枠をつかんでいく授業展開)     板書

1.学習プリントを配布し、学習の準備を宿題にする。
2.漢字の読みを確認する。
3.語句の意味を確認する。
 1世間=人が集まり、生活している場。自分がそこで日常生活を送っている社会。世の中。人々との交わり。また、その交わりの範囲。
  社会=人間の共同生活の総称。また、広く、人間の集団としての営みや組織的な営みをいう。
     人々が生活している、現実の世の中。世間。ある共通項によってくくられ、他から区別される人々の集まり。
     また、仲間意識をもって、みずからを他と区別する人々の集まり。
  頻度=物事が繰り返して起こる度合い。
 2尊厳=とうとくおごそかなこと。気高く犯しがたいこと。
  意思=何かをしようとするときの元となる心持ち。(意志=あることを行いたい、または行いたくないという考え。)
  所与=他から与えられること。

4.「世間」を使った次の文章の意味を考える。
 ・渡る世間に鬼はなしと思って、世間にでるが、世間の風は冷たい。
 ・世間は広いようで狭く、世間は黙ってはいてくれず、世間話の花が咲く。
 ・世間知らずは、世間ばなれしていると言う。
 ・世間を知り過ぎていると、世間ズレしていると言う。
 ・世間をさわがせて、世間沙汰になれば、世間は許してくれず、世間に顔向けができない。
 ・世間体をつくろって、世間の目を気にして、世間なみに生きることが一番だ。
5.「世間」と「社会」の違いを考える。
 ★いろいろな意見を挙げさせる。
6.世間と社会の辞書的な意味を考える。
 ・世間=人が集まり、生活している場。自分がそこで日常生活を送っている社会。世の中。人々との交わり。また、その交わりの範囲。           
 ・社会=人間の共同生活の総称。また、広く、人間の集団としての営みや組織的な営みをいう。
     人々が生活している、現実の世の中。世間。ある共通項によってくくられ、他から区別される人々の集まり。
     また、仲間意識をもって、みずからを他と区別する人々の集まり。
 ・類語=世、世の中、天下、世上、世俗、俗世、人世、人間、俗間、民間、巷間、巷、市井、浮き世、娑婆、塵界、世界
7.音読する。
8.世間と社会について(1)
 1)世間とはどのようなものか。
  ・誰もが知っている。
  ・知らない大人は一人もいない。
    ↓↑
  ・何かと聞けばきちんと答えられる人はいない。
  ・研究した人もほとんどいない。
  ★誰もが知っているが、誰も研究した人はいない。
 2)社会と世間の違いは。
  ・世間=会話の中でよく使われている。
      具体的。
  ・社会=文章で使われている。
      抽象的。
 3)社会と言う言葉を文章の中で使うのは誰か。
  ・学者,ジャーナリスト、教師。
  ・知識人。インテリ。
 4)aそれ(662)の指示内容は。
  ・世間を知らない大人は一人もいない
 5)「しかし」の接続は。
  ・しかし=「世間を社会と〜いるらしい」⇔「世間は社会とは違う。」
 6)「他方で」の接続は。
  ・他方で=「明治以降〜使用頻度が高い」+「社会という〜欠けている」
 6)bその意味(668)の指示内容は。
  ・社会という言葉
9.西欧の社会と日本の世間について(23)
 1)社会の成立の仕方は。
  ・個人が集まって社会を作る。
  ・個人の意思に基づいて社会の在り方が決まる。
 2)個人の特性は。
  ・譲り渡すことのできない尊厳を持っている。
 3)世間の成り立ちは。
  ・尊厳があるとは認められていない。
  ・所与と見なされている。
 4)日本人と世間の関係は。
  ・私たちは世間を意識しながら生きている。
  ・私たちは世間という枠組の中で生きている。
  ・世間は日本人の生活の枠組となっている。
 5)cその個人(671)の指示内容は。
  ・譲り渡すことのできない尊厳を持っている
 6)「従って」の接続は。
  ・「個人が集まって〜見なされている」⇒「個人の意思に〜決まる」
 7)「しかも」接続は。
  ・「日本ではいまだ〜わけではない。」+「世間は個人の意思によって〜考えられていない。」
  ・個人のことに、世間のことを添加している。
 8)「しかし」の接続は。
  ・「家庭の中で〜多くはないだろう。」+「そんなことでは〜しばしばあるだろう。」
 9)そんなこと(678)の指示内容は。
  ・世間を気にせずに自分勝手に振る舞っていること。
  ・文中にない。
 10)「渡る世間に鬼はなし」「世間の口に戸はたてられぬ」の意味を説明する。
  ・世の中には無慈悲な人ばかりでなく、情け深い人もいるものだ。
  ・世間の人のうわさは防ぎ止めることができない。
 11)諺を引用した意図は。
  ・日常会話の中で「世間」という言葉が生きていることを示す。
 12)eそれどころ(6711)の指示内容は。
  ・日常生活の中では、「世間」という言葉は今でも十分生きている。
 13)「いわば」の接続は。
  ・「私たちは世間という枠組みに〜生きているのである。」=「世間は〜状況なのである。」
 14)fその世間(6713)の指示内容は。
  ・日本人の生活の枠組となっている
10.世間チェックをする。
 ・個人と世間の、良い点と悪い点をチェックする。


第二段 (詳読)     板書

1.学習プリントを配布し、学習の準備を宿題にする。
2.漢字の読みを確認する。
3.語句の意味を確認する。
 4指針=物事を進めるうえでたよりとなるもの。参考となる基本的な方針。手引き。 
  窓際族=会社で第一線のポストからはずされ、閑職に追いやられた中高年サラリーマン。
  長幼の序=年長者と年少者の間にある一定の秩序。
 5気心=その人が本来もっている性質や考え方。
  闊達=度量が広く、小事にこだわらないさま。
 7権威主義=権威を絶対的なものとして重視する考え方。権威をたてにとって思考・行動したり、権威に対して盲目的に服従したりする態度。
  没個性=個性がないこと。
4.世間調査をする。
5.「自由からの逃走」について説明する。
 ・近代的自由の一面には、個人の孤独化と無力化があり、それから逃避するために権威  主義、破壊性、機械的画一性などが現れ、こうした危機から脱するには「〜への自由」という積極的自由を獲得するための努力が必要である。
6.もし世間がなくなったら?(4)
 1)どうなるか。
  ・行動の指針を失って困惑する。
 2)その理由は。
  ・日本人は長い間世間を基準として生きてきたから。
  ・世間も個人の位置に気を配ってきたから。
 3)どういう点で気を配っているのか。
  ・世間の内部では競争を排除している。
 4)その利点は。
  ・有能といえない人でも、世間のおきてを守っている限り排除されない。
 5)「従って」の接続は。
  ・「世間の内部では〜排除されている。」⇒「あまり有能〜排除されることはない」
 6)aそこ(687)の指示内容は。
  ・世間。
 7)利点を裏から見ると。
  ・有能な人がそれなりの位置を得るわけではない。
 8)bこれ(688)の指示内容は。
  ・有能といえない人でも、世間のおきてを守っている限り排除されないこと。
 9)窓際族でも会社にいられるのはこのためである。
 10)世間を仕組みを一言で言うと。
  ・長幼の序。
 11)「従って」の接続は。
  ・「世間の中では長幼の序が支配している」⇒「能力のある者がそれなりの評価を受ける保証はない」
 12)「しかし」の接続は。
  ・「能力のある者〜保証はない」⇔「世間のおきてを〜保てるのである」
 13)こうした年功序列や終身雇用の制度と、能力主義とどちらがいいか生徒の意見を聞く。
7.人間関係の在り方が自由に選べるとしたら?(5)
 1)「また」の接続は。
  ・「世間がなくなってしまったら」+「人間関係を自由に選べるとしたら」
 2)海外旅行で日本人同士で集まる理由は。
  ・気心の知れない人と付き合いたくないから。
 3)cその国(693)の指示内容は。
  ・(海外旅行で行った)
 4)dそれ(698)の指示内容は。
  ・性格。
 5)その理由は。
  ・どういう世間に属している人なのかが問題だから。
  ★本人の資質ではなく、所属を重視する。
 6)所属には何があるか。
  ・出身校、出身地、会社、地位。
 7)するとどういうことが起こるか。
  ・世間が違いするぎると親しくなる可能性が低くなる。
8.日本人の生き方について(6)
 1)日本人のライフスタイルは。
  ×競争社会の中で個性がせめぎ合う関係の中を生きる。
  ○与えられた地位を保ち心安らかに生きる。
 2)「しかし」の接続は。
  ・「周囲と〜生きやすいのである」⇔「個人同士が〜ことになってしまう」
 3)eこのような(6915)の指示内容は。
  ・周囲と折り合って生きてゆける限りで世間の中で生きる。
 4)そういう生き方の欠点は。
  ・周囲を気にして、闊達とは言えない雰囲気を持っている。
  ★競争する相手として他人を意識しないけれども、基準となる相手としての他人を意識する。
 5)欧米人が日本人を評する権威主義とは。
  ・自分以外の権威に依存して生きている。
 6)その権威とは何か。
  ・世間。
 7)権威主義的であることの肯定的、否定的に言うと。
  ・協調的。
  ・没個性。
 8)fそのこと(702)、gその権威(706)、hそれは(705)、iそれが(705)、jそれに(708)の指示内容は。
  f 個人同士が付き合う時でも周囲を気にし、闊達とは言えない。
  g 自分以外に依存して生きている。
  hi できるだけ皆と合わせようとすること。
  j 他の人の意見。


第二段 (把読)     板書

1.学習プリントを配布し、学習の準備を宿題にする。
2.漢字の読みを確認する。
3.語句の意味を確認する。
 4指針=物事を進めるうえでたよりとなるもの。参考となる基本的な方針。手引き。 
  窓際族=会社で第一線のポストからはずされ、閑職に追いやられた中高年サラリーマン。
  長幼の序=年長者と年少者の間にある一定の秩序。
 5気心=その人が本来もっている性質や考え方。
  闊達=度量が広く、小事にこだわらないさま。
 7権威主義=権威を絶対的なものとして重視する考え方。権威をたてにとって思考・行動したり、権威に対して盲目的に服従したりする態度。
  没個性=個性がないこと。
4.世間調査をする。
5.「自由からの逃走」について説明する。
 ・近代的自由の一面には、個人の孤独化と無力化があり、それから逃避するために権威主義、破壊性、機械的画一性などが現れ、こうした危機から脱するには「〜への自由」という積極的自由を獲得するための努力が必要である。
6.もし世間がなくなったら?(4)
 1)どうなるか。
  ・行動の指針を失って困惑する。
 2)その理由は。
  ・日本人は長い間世間を基準として生きてきたから。
  ・世間も個人の位置に気を配ってきたから。
 3)どういう点で気を配っているのか。
  ・世間の内部では競争を排除している。
 4)その利点は。
  ・有能といえない人でも、世間のおきてを守っている限り排除されない。
  ・窓際族でも会社にいられる。
 5)欠点は。
  ・有能な人がそれなりの位置を得るわけではない。
 6)このような世間を仕組みを一言で言うと。
  ・長幼の序。
 7)こうした年功序列や終身雇用の制度と、能力主義とどちらがいいか生徒の意見を聞く。
 8)「従って」の接続は。
  ・「世間の内部では〜排除されている。」⇒「あまり有能〜排除されることはない」
 9)aそこ(687)の指示内容は。
  ・世間。
 10)bこれ(688)の指示内容は。
  ・有能といえない人でも、世間のおきてを守っている限り排除されないこと。
 11)「従って」の接続は。
  ・「世間の中では長幼の序が支配している」⇒「能力のある者がそれなりの評価を受ける保証はない」
 12)「しかし」の接続は。
  ・「能力のある者〜保証はない」⇔「世間のおきてを〜保てるのである」
7.人間関係の在り方が自由に選べるとしたら?(5)
 1)海外旅行で日本人同士で集まる理由は。
  ・気心の知れない人と付き合いたくないから。
 2)その理由は。
  ・どういう世間に属している人なのかが問題だから。
  ★本人の資質ではなく、所属を重視する。
 3)所属には何があるか。
  ・出身校、出身地、会社、地位。
 4)するとどういうことが起こるか。
  ・世間が違いするぎると親しくなる可能性が低くなる。
 5)「また」の接続は。
  ・「世間がなくなってしまったら」+「人間関係を自由に選べるとしたら」
 6)cその国(693)の指示内容は。
  ・(海外旅行で行った)
 7)dそれ(698)の指示内容は。
  ・性格。
8.日本人の生き方について(6)
 1)日本人のライフスタイルは。
  ×競争社会の中で個性がせめぎ合う関係の中を生きる。
  ○与えられた地位を保ち心安らかに生きる。
  ○周囲と折り合ってゆける限りで世間の中で生きる。
 2)この生き方の欠点は。
  ・周囲を気にして、闊達とは言えない雰囲気を持っている。
  ★競争する相手として他人を意識しないけれども、基準となる相手としての他人を意識する。
 3)欧米人が日本人を評する権威主義とは。
  ・自分以外の権威に依存して生きている。
 4)その権威とは何か。
  ・世間。
 5)権威主義的であることの肯定的、否定的に言うと。
  ・協調的。
  ・没個性。
 6)「しかし」の接続は。
  ・「周囲と〜生きやすいのである」⇔「個人同士が〜ことになってしまう」
 7)eこのような(6915)の指示内容は。
  ・周囲と折り合って生きてゆける限りで世間の中で生きる。
 8)fそのこと(702)、gその権威(706)、hそれは(705)、iそれが(705)、  jそれに(708)の指示内容は。
  f 個人同士が付き合う時でも周囲を気にし、闊達とは言えない。
  g 自分以外に依存して生きている。
  hi できるだけ皆と合わせようとすること。
  j 他の人の意見。


第三段 (詳読)     板書

1.学習プリントを配布し、学習の準備を宿題にする。
2.漢字の読みを確認する。
3.語句の意味を確認する。
 8贈与=金品を人に贈ること。
  互酬=受けた贈り物などに対して、義務として非等価の贈与を行うこと。お返し。
 9無心=人に金品をねだること。
 11情実=個人的な利害・感情がからんで公平な取扱いができない関係や状態。
  書生=学問を身につけるために勉強をしている人。勉学中の若者。学生。
  難癖を付ける=ささいな欠点を見つけて大げさにとがめる。
 12肩入れ=ひいきすること。力を貸すこと。
  快哉=ああ愉快だと思うこと。胸がすくこと。
4.世間を構成する原理について(89)
 1)それは何か。
  ・贈与、互酬
 2)具体例は。
  ・強盗事件を起こしてまで借金を返そうとする。
  ・贈答儀礼
 3)贈答儀礼の例は。
  ・中元、歳暮
  ・結婚、出産、新築。
  ・葬儀、法事、病気、災害。
  ・お土産、誕生日、クリスマス、正月、バレンタインデー(義理チョコ)。
 4)その理由は。
  ・世間という集団の中で無事に生きていくため。
  ・世間では、借りたものは返すというのが義務である。
  ・世間では、ものの贈答によって関係性を確認する。
  ・それが守られない場合は、世間から排除される。
 5)aこうした(7013)の指示内容は。
  ・サラ金などから〜強盗事件を起こす
 6)bこのような(711)の指示内容は。
  ・世間という集団の中で〜大切な義務になっている。
 7)逆の例は。
  ・宝くじの当籤者。
  ・一億円の拾得者。
   ・昭和五九年銀座を走っていたトラック運転手が道路脇に置いてあった一億円を包んだ風呂敷包みを発見し、落とし主が現れず、六カ月後に拾い主のものになった。
 6)大金を手に入れたにもかかわらず、名前を公表しなかったり、隠れるようにする理由は。
  ・親族や世間を構成する人々や、何の関係もない人からも金の無心が相次ぐから。
  ・親族や世間を構成する人々は、自分もおこぼれにあずかるる権利があると思うから。
  ・働かないで得たあぶく銭である。
  ・一人だけがいい思いをするのは許されない。
 7)「従って」の接続は。
  ・「当籤者の〜思っているのである」⇒「かつて一億円〜繰り返されるだろう」
 8)「ところが」の接続は。
  ・「日本人の場合は〜繰り返されるだろう」⇔「アメリカなどでは〜語っているのである」
 9)アメリカではどうか。
  ・当選者の顔写真が新聞に出て、使い道などを語る。
 10)日本とアメリカの違いは。
  ・日本人が世間の中で世間の評価を気にしているから。
  ・個人が身内や仲間内との関係でとらえられ、個人の利益は同時に世間を構成する人々の利益でもある。
 11)cこれ(7111)の指示内容は。
  ・かつて、一億円〜受け取りに行った
5.世間の中の個人の位置について(10)
 1)dこのように(7114)の指示内容は。
  ・89
 2)eこのような(7115)の指示内容は。
  ・世間の中での個人の位置はどのようなものかという
 3)問いに答える方法は。
  ・我が国における個人の位置を歴史的に観察する。
 4)結論は。
  ・明治以来長い間個性的に生きたいと望みながら、十分な形で個性を伸ばすことができなかった。
 5)fそのこと(724)の指示内容は。
  ・明治以来〜伸ばすことができなかった。
6.「坊ちゃん」について(1112)
 1)「坊ちゃん」について説明する。
  ・漱石が松山中学に勤めた経験に基づいて書いた小説。
  ・「親譲りの無鉄砲で子供の時から損ばかりしている」
  ・校長は狸(薄髭のある、色の黒い、目の大きな狸のような男。やにもったいぶっている)、教頭は赤シャツ(文学士、赤は体に良いから赤シャツを着ている)、英語の教師はうらなり(古賀、顔色が悪く蒼く膨れている)、数学は山嵐(堀田、毬栗坊主で叡山の悪僧という面構え)、画学はのだいこ(吉川、芸人風で江戸っ子と言っている。)
  ・天婦羅を食ったことをからかわれた、宿直で布団の中にバッタを入れられた、床板を踏み荒されうるさくされたなど生徒のいたずらの話。
  ・下宿のおばさんから遠藤家の娘(マドンナ)がうらなりと結婚する予定だったが、赤シャツが横取りしようとしていると聞き義憤を感じる。
  ・赤シャツからうらなりが本人の希望で九州に転任になるから、君の給料を揚げてやれるかもしれないと聞かされる。しかし、下宿のおばさんから実は赤シャツ等のさしがねで追い出されるのだという話を聞き、昇給を強引に辞退する。
  ・うらなりの送別会で赤シャツやのだいこが偽善に満ちた挨拶を送るが、山嵐と意気投合し、あいつらをなぐってやろうと語り合う。
  ・日露戦争祝勝会で、わが中学と師範学校の生徒が大喧嘩、翌日の新聞で山嵐と坊っちゃんの責任のような書きぶり、そしてしばらくすると山嵐は辞表をだせ、と言われたと言う。どうやら赤シャツの陰謀と気づいた。赤シャツがのだいこと芸者小屋にはいるところを目撃した。出てきたところを待ち伏せ、袂にあった卵をぶつけ、ポカリ、ポカリと殴り付けてやった。辞表は郵送で送り、坊ちゃんは清のいる東京へ戻ることになった。
 2)どんな作品か。
  ・イギリスでヨーロッパにおける個人の位置をしてしまった漱石が、
   我が国における個人の問題を
   学校という世間の中で描き出そうとした。
 3)赤シャツの立場と主張は。
  ・年上。教頭。
  ・学校という世間の中で生きている。
  ・世間での人間関係について諭している。
  ・淡白とは、杓子定規に一つの理屈や理論で測ってしまう考え方。
 4)坊ちゃんの立場と主張は。
  ・新米教師。
  ・世間が軽蔑する、正直な純粋な人。
  ・世間は、悪くなることを奨励していると主張する。
 5)読者の立場は。
  ・坊ちゃんに肩入れしている。
  ・赤シャツの仲間であることをうすうす感じ取っている。
  ・世間に対する無力感のために、作品の中で坊ちゃんに快哉している。


第四段     板書

1.学習プリントを配布し、学習の準備を宿題にする。
2.漢字の読みを確認する。
 14 顕在 16 乖離 17 覆い
3.語句の意味を確認する。
 14顕在=はっきりと形にあらわれて存在すること。
 16乖離=そむきはなれること。結びつきがはなれること。
4.世間と社会について(1314)
 1)社会についてまとめる。
  ・学校教育の中で学ぶ。
  ・文章をつづる。
  ・学問を論じる。
  ・社会科学として発展してきた。
 2)世間についてまとめる。
  ・日常会話で使う。
  ・会話と行動で意識する。
  ・学問が無視してきた。
 3)aこのように(7310)、bその言葉(7312)、cここ(7314)の指示内容は。
  a(「坊ちゃん」)
  b西欧。
  c世間という言葉を分析した人はほとんどいない。
 4)「しかし」の接続は。
  ・「私たちは〜論じてきた」⇔「文章の中〜意識してきた」
 5)世間を学者の言葉で言うと。
  ・「非言語系の知」の集積。
 6)「非言語系」とは。
  ・しぐさや行為、習慣化された事柄についての知識。
  ・言語手段によらない意思や情報の伝達。
 7)世間を論じた人がいない理由は。
  ・「非言語系の知」を顕在化する必要がなかったから。
 8)必要を感じていないのは誰か。
  ・学者。
 9)学者はなぜ必要を感じなかったのか。
  ・学者も世間の中で生きている。
  ・自分がどっぷりつかっているものを対象にすると自己矛盾が生じるので避けてきた。
 10)一般人である私たちにとってはどうか。
  ・顕在化し、対象化しなければならない段階に来ている。
 11)「非言語系の知」を顕在化することの利点は。
  ・世間の持つ負の側面と正の側面の両方が見えてくる。
  ・新しい社会関係を生み出す可能性がある。
 12)世間の持つ負の側面と正の側面とは。
  ・正の側面は、困った時に身内や知り合いから助けてもらえる。
  ・負の側面は、本当に言いたいことしたいことができない。
 13)筆者はどちらを重視しているか。
  ・正の側面。
  ・負の側面→正の側面の順に表現していて、後を重視している。
 14)新しい社会関係とは。
  ・身内だけでなく、見知らぬ人との関係を構築する。
  ・世間の枠組みにとらわれず、個人と個人の人間関係をと結ぶ。
 15)「しかし」の接続は。
  ・「「非言語系の知」を〜なかったからである」⇔「今私たちは〜段階に来ている」 16)dそこ(744)の指示内容は。
  ・「非言語系の知」を顕在化し対象化(すること)
5.「社会」「個人」の言葉と概念について(15〜16)
 1)「社会」と「個人」の訳語を確認する。
 2)「社会」や「個人」という言葉がない時は、概念もなかったことを確認する。
  ・言葉があって概念がある。
  ・「『名付け』の精神史」と同じ。
 3)「社会」という言葉ができる以前は「世間」という言葉があった。
  ・世間という言葉に見合う現象はあった。
 4)「ということは」の接続は。
  ・「それ以前には〜なかったのである」⇒「我が国には〜意味している」
 5)「では」の接続は。
  ・「それ以前には〜なかったのである」→「現在の〜なかったのか」
  ・「社会」「個人」という言葉そのものと、「社会」に当たる言葉の違い。
  ・観点を少しずらす。
 6)eそう(7411)の指示内容は。
  ・現在の社会に当たる言葉はなかった
 7)fそのため(7415)、gその概念(7415)の指示内容は。
  f本来欧米で作られたこの言葉を使って我が国の現象を説明する
  g社会
 8)「社会」という言葉ができてからはどうなったか。
  ・「社会」の意味と、我が国の実状との間に乖離ができる。
  ・「世間」に見合う現象を、「社会」という言葉で呼ぶようになった。
  ・その乖離を無視した。
 8)欧米の「社会」の意味は。
  ・個人が作る。
  ・個人が前提。
 9)「しかし」の接続は。
  ・「欧米の社会〜前提であった」⇔「その内容は〜似つかないものであった」
 10)hその内容(753)の指示内容は。
 11)我が国の実状は。
  ・似ても似つかないもの。
  ・個人が生まれていない。
 12)大学や新聞などのマスコミが「社会」と言う言葉を使った結果は。
  ・社会があるような幻想が生まれた。
  ・社会の未成熟や特異な在り方が覆い隠される。
 13)「未成熟」と「特異な在り方」の違いは。
  ・未成熟=欧米の社会を基準にした現状。
  ・特異な在り方=日本独自の現状。
 14)「しかし」の接続は。
  ・「特に大学や〜用いられる」⇔「一般の〜鈍感ではなかった」
 15)学者や新聞人でない、一般の人は。
  ・鈍感でなかった。
  ・日常会話では世間という言葉を使いつづけた。
  ・日常の中で地に足を付けて生活していた。
  ・我が国(の)個人という概念。


第五段     板書
  
1.日本人の個人について
 1)形成は。
  ・世間向きの顔や発言と自分の内面の思いを区別して振る舞う。
  ・個人の外面と内面が形成される。
  ★本音と建前
 2)言い換えると。
  ・個人は世間との関係の中で生まれる。
 3)「いわば」の接続は。
  ・「日本の個人は〜形成されているのである」=「個人は〜生まれているのである」
 4)特徴は。
  ・世間はあいまいである。
  ・個人もあいまいになる。
 5)欧米の個人は。
  ・絶対的な神との関係の中で自己を形成する。
  ・絶対的なものとの関係であるから、あいまいではない。
 6)人権とは何か。
  ・人間が本来持ち、守られなければならないとされる生存、自由、平等などの権利。
 7)我が国では真の意味の人権が守られているとはいかない理由は。
  ・個人の尊厳を認めていないから。
 8)iここ(761)の指示内容は。
  ・そのあいまいなものとの関係の中で自己を形成せざるを得ない(こと)
 9)jその実(763)、kこうした(764)の指示内容は。
  j人権という言葉
  k個々人の真の意味の人権が守られているとは到底言えない



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「世間」とは何か 第一段 学習プリント    点検日  月  日
                  組  番 氏名
学習の準備
1.読み方を書きなさい。
 1 頻度 2 尊厳  所与  長幼の序
2.語句の意味を調べなさい。
 1世間 社会 頻度 2尊厳 意思 所与
3.次の問題の答えにあたる部分に線を引き、番号をつけなさい。
  ○接続詞を□で囲め。
  ○次の指示語の指示内容を( )が囲み、アルファベットの記号を書け。
   aそれ(662) bその意味(668) cその個人(671) dそんなこと(678) eそれどころ(6711) fその世間(6713)
 11)世間という言葉は、どこでどのように使われているか。
  2)社会という言葉は、どこでどのように使われているか。
 23)西欧では社会は何を前提にしているか。
  4)個人は何を持っているか。
  5)社会の在り方は何によって決まるか。
  6)日本では世間は何と見なされているか。
 37)日本人は何の中で生きているか。

学習のポイント
1.世間という言葉と社会という言葉の違いを理解する。
2.西欧の社会の成り立ちを理解する。
3.日本の世間の成り立ちを理解する。
4.「世間」を使った慣用句とその意味を理解する。
           

「世間」とは何か 第二段 学習プリント        点検日  月  日
                  組  番 氏名
学習の準備
1.読み方を書きなさい。
 6 闊達
2.語句の意味を調べなさい。
 4指針 窓際族 長幼の序 5気心 6闊達 7権威主義 没個性
3.次の問題の答えにあたる部分に線を引き、番号をつけなさい。
  ○接続詞を□で囲め。
  ○次の指示語の指示内容を( )が囲み、アルファベットの記号を書け。
   aそこ(687) bこれ(688) cその国(693) dそれ(698)  eこのような(6915) fそのこと(702) gその権威(706)  hそれは(705) iそれが(705) jそれに(70
 41)もし突然世間がなくなったらどうなるか。
  2)その理由は何か。2つ。
  3)世間の内部はどうなっているか。
  4)その結果、どんなことが起こるか。
  5)それを裏から見るとどうなるか。
  6)世間の中では何が支配しているか。
 57)私たちが人間関係の在り方を自由に選べるとしたら、どんな気持ちが強くなるか。
  8)人間関係では何が問題になるのか。
  9)世間の例は何か。
 610)日本人は競争社会の中でどのように生きたいと思っているか。
  11)その場合の外国人から見た問題点は。
 712)権威主義的とはどういうことか。
  13)日本人が皆と行動する時の肯定的な表現と否定的な表現は。
  14)日本人の意見を聞かれた時の権威的な行動は。

学習のポイント
1.世間がなくなれば行動の指針を失う理由を理解する。
2.世間の内部の特徴を理解する。
3.日本人の人間関係の在り方を決めるものを理解する。
4.日本人の人間関係の中での生き方を理解する。
5.日本人が権威主義的であるとうどういうことかを理解する。
           

世間」とは何か 第三段 学習プリント     点検日  月  日
                  組  番 氏名
学習の準備
1.読み方を書きなさい。
 8 贈与  互酬 9 当籤 11 情実  淡泊  奨励  難癖 12 快哉
2.語句の意味を調べなさい。
 8贈与 互酬 9無心 11情実 書生 難癖を付ける 2肩入れ 快哉 
3.次の問題の答えにあたる部分に線を引き、番号をつけなさい。
 ○接続詞を□で囲め。
 ○次の指示語の指示内容を( )が囲み、アルファベットの記号を書け。
  aこうした(7013) bこのような(711) cこれも(7111) dこのように(714) eこのような(7115) fそのこと(724)
 81)世間を構成する原理は何か。
  2)強盗事件を起こしてまで借金を返そうとする理由は何か。
  3)世間を生きる人間にとって何よりも大切な義務は何か。
 94)宝くじの当籤者や一億円拾った人が公表されないのはどんな事態が起こっているからか。
 105)日本人が明治以来できなかったことは何か。
 116)「坊ちゃん」はどのような意図を持った作品か。
 127)読者はどのような気持ちで「坊ちゃん」を読んでいるか。

学習のポイント
1.世間を構成する原理である贈与と互酬を様々な角度から理解する。
2.世間の中での個人の位置を理解する。
3.「坊ちゃん」の赤シャツの考え方を理解する。
4.「坊ちゃん」の坊ちゃんの考え方を理解する。
5.読者の「坊ちゃん」の読み方を理解する。
           

「世間」とは何か 第四・五段 学習プリント     点検日  月  日
                  組  番 氏名
学習の準備
1.読み方を書きなさい。
 14 顕在 16 乖離 17 覆い
2.語句の意味を調べなさい。
 14顕在 6乖離
3.次の問題の答えにあたる部分に線を引き、番号をつけなさい。
 ○接続詞を□で囲め。
 ○次の指示語の指示内容を( )が囲み、アルファベットの記号を書け。
  aこのように(7310) bその言葉(7312) cここ(7314) dそこ(744) eそう(7411) fそのため(7415) gその概念(7415) hその内容(753)  iここ(761) jその実(763) kこうした(764)
 131)我が国で世間という言葉を分析した人がいないことは何の結果か。
 142)世間を学者の言葉で言えば何と言うか。
  3)「非言語系の知」を顕在化し対象化すると何が見えてくるはずか。
 154)以前に社会や個人という言葉がなかったことは何を意味しているか。
 165)社会という言葉が通用するようになってからどんな傾向が出てきたか。
 176)欧米の意味での個人が生まれていないのに社会という言葉が通用するようになってから何が生まれたか。
  7)マスコミにおいて社会という言葉が通用するようになってどんな事態が起こったか。
 188)日本の個人は何の中で生まれるのか。
  9)日本の個人は欧米人からどのように見えるのか。
  10)ヨーロッパの個人は何の中で形成されるのか。

学習のポイント
1.我が国で世間という言葉を分析した人がいない理由を理解する。
2.世間を顕在化することによる効果を理解する。
3.社会や個人という言葉と我が国の実状の関係を理解する。
4.学者や新聞と一般の人の、社会や世間という言葉の用い方の違いを理解する。
5.日本と欧米の個人の形成の過程の違いを理解する。
6.日本では人権が守られていない理由を理解する。
           






















第一段
世間                 社会
・誰もが使っているが、誰も分析した人はいない。
・会話の中でよく使われる。
・具体的
・個人=尊厳は認められない。
  ↓
・所与のもの=議論する余地がない
        ↓
       分析する必要がない。
・私たちは世間を意識しながら生きている。
  ‖
・私たちは世間という枠組の中で生きている。
  ‖
・世間は日本人の生活の枠組となっている。
・文章で使われる。
 学者、ジャーナリスト、教師
・抽象的
・個人=譲り渡すことができない尊厳
  ↓意思
 在り方が決まる


第二段

1.もし世間がなくなったら?
 ・行動の指針を失って困惑する。
   ↑理由
 ・日本人は長い間世間を基準として生きてきたから。
 ・世間も個人の位置に気を配ってきたから。
  ・世間の内部では競争を排除している。
    ↓利点
  ・有能といえない人でも、世間のおきてを守っている限り排除されない。
    ↓↑
  ・有能な人がそれなりの位置を得るわけではない。
    ‖
  ・長幼の序
   ・年功序列、終身雇用
     ↓↑
   ・能力主義
2.人間関係の在り方が自由に選べるとしたら?
 ・海外旅行で日本人同士で集まる理由は。
   ↑理由
 ・気心の知れない人と付き合いたくないから。
   ↑理由
 ・どういう世間に属している人なのかが問題だから。
  出身校、出身地、会社、地位。
   ↓
 ・世間が違いするぎると親しくなる可能性が低くなる。
3.日本人の生き方
 ×競争社会の中で個性がせめぎ合う関係の中を生きる。
 ○与えられた地位を保ち心安らかに生きる。
   ↓欠点
 ・周囲を気にして、闊達とは言えない雰囲気を持っている。
   ‖欧米人
 ・権威主義
  ・自分以外の権威に依存して生きている。
        世間。
  ○協調的。
  ×没個性。


第三段

1.世間を構成する原理
 ・贈与、互酬
 具体例
  1)強盗事件を起こしてまで借金を返そうとする。
   ・借金をを返せないと世間から排除される。
  2)贈答儀礼
   ・人間関係を確認する。
   ↓↑
  3)宝くじの当籤者や一億円の拾得者の匿名。
   ・世間を構成する人々からも金の無心が相次ぐ。
    自分もおこぼれにあずかる権利があると思う。
   ↓
 ・日本人は世間の中で世間の評価を気にしている。
2.世間の中の個人の位置
 具体例
 ・『坊ちゃん』
   個人の問題−学校という世間の中で描き出そうとした。
  ・赤シャツ=学校という世間の中で生きている。
  ・坊ちゃん=世間を気にしない正直な純粋な人。
    ↓
  ・読者=坊ちゃんに肩入れしている。
       ↓↑世間に対する無力感
      赤シャツの仲間であることをうすうす感じ取っている。


第四段

・社会−学校教育で文章をつづる−社会科学として発展
・世間−日常で会話と行動で意識する−学問が無視
 「非言語系の知」の集積。
   ↓
 ・学者=顕在化する必要がない
   ↓↑
 ・一般人=顕在化し、対象化する
   ↓
 ・世間の持つ負の側面と正の側面

・「社会」という言葉がない→「社会」という概念もなかった
・「世間」という言葉がある→「世間」に見合う現象はあった
  ↓
・「社会」という言葉ができる⇔「世間」という現象は残る
  個人が作る       乖離  個人が生まれていない
                        ↓大学や新聞などのマスコミ
                    幻想が生まれた。
                    社会の未成熟や特異な在り方が覆い隠される。
                        欧米中心 日本独自
 
第五段
・日本の個人=世間との関係の中で生まれる。
  あいまい←あいまい
・欧米の個人=絶対的な神との関係の中で自己を形成する。
   ↓
 日本では人権が守られていない
  ・個人の尊厳を認めていないから。