徒然草


 鎌倉時代、後嵯峨院は嵐山の亀山の麓に、離宮を造営した。当時としては大規模な事業であった。大井川の水を離宮に引き込む工事を、土民にさせたが、多大な費用と日数をかけたが、いっこうに回らなかった。そこで、古くから水車の名所であった宇治の里人を呼び寄せて工事させたところ、やすやすと組み立て、素晴らしい出来ばえであった。何事においても、専門家は尊いものである。

 まず、状況を補足説明して把握させることが必要である。そのことによって主語が明らかになる。注意すべき語句については、「つくる」と「こしらふ」、「まわる」と「めぐる」の類義語に注意することと、敬語の意味を重点的にする。訳は、主語を補うこと、助動詞に注意することも大切であるが、敬意表現が多くあるので、敬意の主体や対象は後日の学習に譲るとして、訳だけは意識しながらする。内容は、大井の土民と宇治の里人の違いを補足説明しながら、対比的な部分に注意する。そして、この段で言いたかった、専門家の尊さを読解する。


展開

1.「学習プリント」を配布し、学習の準備を宿題にする。
 ・本文写し、古語調べ、できれば訳も。
 
2.教師が音読する。
 
3.生徒が音読する。
 
4.単語に区切って読ませ、訳させる。
 1)省略されている主語を補わせる。
  ・第一文の主語が「後嵯峨院」であることを説明する。
  ・「多くの銭を〜いたづらに立てりけり」「さて、宇治の里人〜めでたかりけり」の   主語の変化に注意する。
 2)助動詞(使役「す」、尊敬「らる」)に注意する。
 3)接続助詞(順接「ば」「が」、逆接「に」「ども」、打消接続「で」)に注意する。
 4)難解古語を意味を確認する。
  仰す=人に言葉を負わせるところから、命じる。命じるのは一般に上位者であることから尊敬の意味を伴う。さらに上位者上位者の言葉を命令のような気持ちで聞くところから言うの意味にも用いられる。
      1)命令する。2)おっしゃる。
  造る=類材料に手を加えて、新たに目的のものを作成する。
      1)制作する。2)耕す。3)料理する。4)書く。5)似せる。6)整える。7)なす。
  廻る=類周囲に沿ってまるく一巡する。
      1)円を描くように回転する。2)巡回する。3)周りを取り囲む。4)行って元の所に戻る。5)転生する。
  とかく=相対する二つのもの。
      1)いろいろと。2)とにかく。3)ともすれば。
  回る=類平面上を大きく旋回する。
      1)回転する。物の周囲に沿ってぐるりと動く。2)遠回りする。3)隅々まで周り歩く。4)十分に行き渡る。
 5)金が運用されて利益を生む。
  いたづら=価値や努力に見合った結果が得られないで、無駄である、役に立たない、かいがない、むなしいと感じるさま。
      1)役に立たない 。2)甲斐がない。3)何もない。4)暇である。
  召す=見るの尊敬語でご覧になる。
      1)ご覧になる。2)お治めになる。3)お呼び寄せになく。4)お取り寄せになる。5)召し上がる。お召しになる。6)お乗りになる。
  こしらふ=類既にできている構図におさまるようにする。調整する。
      1)構える。作る。2)用意する。3)計画する。
  やすらか=1)心配がなく気楽な様子。2)わざとらしくなく落ち着きがある。3)簡単なさま。
  参らす=人を介して差し上げる、という為手と受け手の間に距離をおいた表現が、受け手に対する話し手の高い敬意表現として用いられるようになった。
      1)差し上げる。2)お〜申し上げる
  めでたし=「めづ」(=賞賛する)に「いたし」(=はなはだしい)がついた。
      1)すばらしい。2)喜ばしい。
  やんごとなし=そのまま止めておけない、捨てておけないの意味。捨てておけないような、重々しく扱うべきもの、大切なもの。
      1)捨てておけない。2)大切だ。3)家柄や身分が高貴だ。4)学識や世評が高い。5)並々でない。
 4)敬語の訳に注意する。
 
5.内容を考える。
 1)亀山殿の工事について
  ・鎌倉中期の一大事業であった。
 2)大井川について説明する。
  ・上流は保津川、嵐山付近は大井川、下流は桂川。
 3)多くの銭について説明する。
  ・世間に広く使われて足のように歩き回ることから、金銭の異名。
  ・貨幣経済が軌道に乗った時代。
 4)大井の土民と宇治の里人の対比するの部分を抜き出す。

大井の土民
宇治の里人             
・数日に営み出して、掛けたりけるに・おほかた廻らざりければ
・いたづらに立てりけり
・やすらかに結ひて参らせたりけるが ・思ふやうに廻りて
・水を汲み入るること、めでたかりけり

 5)大井の土民と宇治の里人の違いついて説明する。
  ・大井の土民=灌漑用水をためておく堰を作る技術に長けていた。
  ・宇治の里人=急流の宇治川は古くから水車の名所で、水車を作る技術に長けていた。
 6)この章段の作者の主題は。
  ・何事につけても専門家の知恵と技術は尊いものである。
  ★大井の土民と宇治の里人の優劣ではない。
 
8.文中の動詞の基本形・行・活用の種類・活用形を考える。
 
9.形容詞と形容動詞について説明し、活用の種類・活用形を考える。

 

国語教育
ほ〜む

  

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