※「九遠寺涼子の白い花」 注釈




  ※「九遠寺涼子の白い花」注釈  


(1)
久遠寺医院に植えられていたダチュラは、南米産の3メートルにもなる
「キダチチョウセンアサガオ」(木立ち朝鮮朝顔)でしょう。夕方に白い芳
香のある花を下向きに開きます。
東京でしたら庭でも冬を越せるそうですが、大きいものは観光用の温室にも
よくあるので見て下さい。



(2)
「NHK趣味の園芸」で育て方をやってました。



(3)
ウンベルト・エーコ、イタリア・ボローニャ大学の記号学者。



(4)
山上の孤立した僧院、古い「知識」に見立てたかのような連続殺人、最後
に炎上する建物。
といえばお解りでしょう。「薔薇の名前」のテーマは「宗教の異端」、
「鉄鼠の檻」のテーマは「禅」。
映画は情景がよく解って良かった。老コネリーも好きだけど、「バスカヴィ
ルのウィリアム」はどー読んでも痩身のホームズさんのイメージだからなぁ
麻薬もやるし。



(5)
近年、一番有名になったのは「第三の天使のラッパ」。
燃え盛る星が川の上流に落ち、川の水が苦くなって多くの人が死んだ、その
星の名は「ニガヨモギ」。
ニガヨモギは悪酒アブサンや、ジュリエットの乳母の話にも出てくるような、
西欧ではなじみ深い
ハーブですが、これが恐ろしい予言とされました。ロシアではニガヨモギを
「チェルノブイリ」と言うそうで。



(6)
1メートルばかりの草ですが、アメリカ大陸に渡って来た移民を、多数殺し
た猛毒のヨウシュチョウセンアサガオは、日本にも帰化して郊外の野原に自生
しているそうです。



(7)
美しい星形の青い花をつけます(京極堂の紋所の形!)。葉はきゅうりのよ
うな味がして食用に。



(8)
ナス科なので、小さなトマトのような(トマトもナス科)、トゲトゲだらけ
の実がつきます。絶対食べないように。



(9)
生命の糸を断ち切る三人の女神の一人、アトロポスより。



(10)
主なものにコカイン、モルヒネ、ニコチン、カフェイン。
いやいずれおとらぬアブナい化合物。植物ってすごいねぇ。
(アルカロイドは植物性塩基化合物)



(11)
小さな人間の形をした根をして、ひきぬくと悲鳴をあげ、その声を聞いた者
は死ぬ…なんて植物はなくて、ベラドンナの仲間です。
和名「曼陀羅華」(まんだらげ)。



(12)
魔女の変身薬、ホレ薬。確かに幻覚・催淫作用がある。



(13)
魔女も使うし、鎮痛・鎮?剤としてもポピュラー。



(14)
日本の山の斜面等に自生しています。草丈30センチ程。
(10)、(12)、(13)、(14)及び(1)はいずれもナス科。南米産の有用植物、
ジャガイモやトマトが外国で気味悪がられてしばらく食べられ
なかったのは、おなじみの有毒植物に似ていたからかも。



(15)
bella-donna、「donna」は「lady」、女性の尊称ですね。
「ドンナ・アンナ」(ドン・ジョバンニのヒロイン)のように。
ディズニー映画「美女と野獣」のヒロイン、ベルの名は
“It's no wonder that her name means beauty.”
と町の人が言うように「美人」という意味(ベルはフランス人)。
おお。すると「妖怪人間」の「ベラ」も美女、という事か。
(ベムは目が小さいのになぜBEM/Big Eyes Monsterなの?)



(16)
そういえばマンガやアニメの美少女キャラって、眼が大きくて色が濃い
ですね。近よりがたいキャラにする時は、瞳の色を薄くして、白目を多く
する。夜の猫は昼の猫より黒めがちで愛敬がある。



(17)
瞳孔が開いているのは、興味あるものを見ている時、つまりあなたに好
意を持っている…と感じさせるから魅力的に見える…という事もあります
が、西欧社交界では淑女はベラドンナの目薬をさして“化粧”したとか。



(18)
日光にあたるとあまりの辛さにもがき苦しんでしまう。
「うわぁぁぁ…体が砂になるぅ…」ならないけど。
“まぶしい”って、こんなに苦しい事なんだなぁ。



(19)
アメリカで取った私の自動車運転免許証には“eyes:brown”と記載
されました。



(20)
TVアニメ「サイレント・メビウス」の「原画」のクレジットにこの名が
あったが…。
そーか「イラストを描いたりして」ってこの事か−。ってまさか。



(21)
ダチュラの鎮静効果とは逆に、こちらは暴れるそうです。
これらの強い症状が去っても、瞳孔散大はしばらく続くので、関口君は
寮の部屋から明るい戸外に出ることが出来ず、友人の中禅寺は代返をし
てやるハメになってしまった…とか。


1998年07月



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