愛知県河川工事事務所
五条川出張所
所長 横井 徳政殿
去る、6月23日 愛知県河川工事事務所 五条川出張所よりの質問を受けて、本件について、 関係自治体(西春町)関係住民に対する面会調査、及び現地調査を行い、対策を検討したのでここに報告する。
調査項目
1現況
@被加害樹木の特定
A加害毛虫の特定
B被害実態(被害時期・程度)
2将来予測
3対策
1. 現況:
五条川西春町地内右岸生田橋下流の未改修堤防内の水際に三本の柳(樹高10m以上樹種名コゴメヤナギ・注参照)ここで発生した毛虫(アメリカシロヒトリ幼虫)が秋、落葉とともに越冬地を求め移動、その過程で堤防上の民家(昨年新築6軒)の壁面に達し、一部屋内への侵入がみられた。
この際、乳幼児がこれと接触し、カブレなどの被害を受ける。
また、壁面にとりついた毛虫の数は主に三軒で壁一面に広がり推定数千から数万頭に達すると思われる。
2.将来予測:
今後何らかの対策を施さないとすると、この状況に変化はなく、毎年同じような苦情が繰り返されることは間違いない。
3対策:
住民福祉の観点からは毛虫の発生源である樹木の伐採がもっとも有効であるが、最近の環境保護等を鑑みて賢明とはいえない。
さらに、ここに存在する柳は調査の結果、周辺(尾張地方)では見られなくなった日本固有種であり、これほどの大木は全国的にみても稀であると思われる、よってこの観点からも伐採は避けるべきであると考える。
我々は以上の観点より対策を短・中・長期的対策にまとめた。
T.消毒(短期的対策)
毛虫の習性を考慮し、現在の幼虫が蛹になる前(梅雨明け直後)に一回目の防除を行なう。
本来ならば第2回(8月下旬ヨリ9月上旬)・第3回(10月上旬頃移動開始期と繰り返すことが有効であるが、他への負荷が高いのであまり薦められない。
U.防御壁の構築(短・中期的対策)
毛虫の存在を肯定し、民家への取り付きを防ぐ目的で、民家と木の間に壁を設置し、毛虫を誘引する。そして集合した毛虫をここで一挙に処理する。
従来の分散した毛虫に対するのではなく一ヶ所に集合させて処理するため、薬剤の使用量が減らせ、環境・人体への負荷を減少させることが期待できる。
尚、これに付属して民家側に水路を設定するとより効果的であるが実施面で地形上不利であると考えられる。
V.植樹による拡散化(中・長期的対策)
現状では、毛虫の食草が対象の柳しかなく、ここに集中発生していることが問題発生の一端と考えられる。
よって、周辺または対岸に新たに食草を植樹することで被害を分散化する。
尚これは、現地周辺に藪を設けることで、鳥類を誘引し毛虫の駆除に一役買ってもらおうという効果も期待できる。
W.幹下ろし、及び枝打ち(中・長期的対策)
樹木保護の観点からはあまり積極的に賛成できないが、樹勢保護上問題のないように樹冠部の切りもどし、枝打ちを行い、葉数をおさえて、毛虫の数を減少させる。
これは樹木の枯死を防ぐために、慎重を要する。
X.地面の分離(長期的対策)
毛虫はおもに幹を伝い地面を通って移動すると考えられるので、木の生えている場所と堤防を分離し、間に水路を設定し孤立化する。
急場には間に合わないが、将来の堤防改修時に中州を設定することで可能と思われる。
尚、中州を中心とする公園化を期待したい。
特記
@ 現在電線が樹冠内に取り込まれている。事故防止の為、電線の移設または樹高を下げる必要がある。
これは、中部電力との協議をお願いする。
A 対象の木は現在4本に見えるが内2本は川面に張り出し、根際から2本に分かれた1本である。
この1本(幹径約30cm)は増水時に抵抗となり、堤防を破壊する恐れがあるので除伐するようにしたい。
B 今回の調査により、当該樹が周辺で残された日本固有種であり、稀に見る大木であることを鑑みて保護樹指定に向けて西春町に対し働きかけを行なうことを考慮中である。
同時に周辺住民への認知を得るべく、看板等の設置を求めたい。
我々は、今回の要請を受けて、以上のような回答を用意したが、これは従来の行政対環境団体の図式を変える奇貨とするに足りると考える。
現在我々は、五条川協議会(仮称)の設立を準備中であるが、これは対立を目的としたものではなく行政との協同を目指すものである。
今回の事例をその魁としたい。
尚、本件にあたり、各団体は雑木林・服部を中心に調査・意見の調整を行った。
本件に関わる質問は下記まで連絡されたい。
雑木林 服部徹雄
電話・ファックス(0587)38-2420
附註
@ コゴメヤナギ(小米柳) 日本固有種
分布:東北地方南部〜近畿地方
特徴:葉の裏側が白く、木の大きさに比べ小さい。
樹皮はふるくなると、縦に大きく裂ける。
最大20mにまで成長する、水没に強い。
木質は粗でやわらかく、食害する虫も多いため、大きく成長するのは稀である・
日本の柳類では最大種の1つ。
尾張地方での確認は犬山地内のものについで二例目
(リリオの会 宮田 ・ 雑木林 服部による)
A アメリカシロヒトリ(アメリカ白灯盗)
戦後復興と共に日本に定着、街路樹に多くつき、一時期その食害が問題になった。
年2〜3回の発生が知られ、この発生時には、集団で営巣するため、この時点で駆除すると効果が高い。
幼虫で越冬し、秋になると越冬地を求め集団で移動する。
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