平成12年9月8日 中日新聞尾張版

話題を追って
毛虫が大量発生 西春の五条川
貴重種ヤナギ残った!
行政と環境NPOスクラム
伐採危機の2本移植へ

 西青町徳重大山の五条川に立つ四本のコゴメヤナギの木が、毛虫の大量発生の原因になっているとして今夏、伐採の危機に直面した。しかし、相談を持ちかけられた地元環境NP○(民問非営利団体)の調査で、木は樹齢五十年以上とみられる国内でも珍しいヤナギということが判明。NPOが仲介役となり、住民と行政を交えた協議の末、毛虫被害の対策を取りながら、ヤナギの木を残すことになった。

コゴメヤナギが植えられているのは、西春町と岩倉市の境界を流れる五条川の
堤防。周辺は建設省所有の河川用地で更地約四百五十平方mが広がり、高さ約二mの木製の囲いで囲われている。
ことの発端は今年六月下旬。コゴメヤナギは、この更地の最も川沿いにある
が、発生したアメリカシロヒ卜リの幼虫数万匹が、この木製の囲いを伝って、隣接する民家に侵入。「料理を作っていたら、フライパンに毛虫が次々と落ちてきた」というほどの被害をもたらし、住民が町を通じて県河川工事事務所五条川出張所に対策を求めた。
これを受けた同事務所は、五条川のメダ力保存運動などを展開している岩倉
市の環境NP○「雑木林」を主宰する服部徹雄さん(三八)に、伐採などの防止策について相談。服部さんは、同市の別の環境NPO「リリオの会」に協力を求めながら、住民と事務所の仲介役を引き受け、現地調査や住民から被害の聞き取り調査を行った。この結果、ヤナギが県内には現在、ほとんど存在しないコゴメヤナギであることが分かった。
 四本のコゴメヤナギは、高さ十五m、幹回り約二mで、樹齢は五十年以上。既に伐採されている古い切り株から枝分かれしており、百年以上前に植えられたと推定される。西春町史によると、町の境界の目印にヤナギなどを植える慣例があり、コゴメヤナギも同様の趣旨で植えられたらしい。
 このため服部さんらは、貴重種を保存する方針を固める一方、幼虫が民家に伝って来ないよう”毛虫ハイウエー”となっている囲いの一部を取り外して毛虫を別の方向に誘導する工事を行うことにした。
 ただ、コゴメヤナギ四本のうち二本は、川の流面に接しており、増水した場合にごみが引っかかって、四本とも流される危険性もあることから、他へ移すことに。移植先は、大口町で、町内企業から無償提供された土地と寄付金をも
とに広場や雑木林づくりなどが進められている「夢キャンバス20O1」と決まった。
 四日には服部さんらや、河川工事事務所職員、業者らが現地で打ち合わせく会議を開き、六日に移植作業をした。
 服部さんは「貴車なヤナギを保存するため、ヤナギの世話をするボランティア団体が西春にできれば」と話している。毛虫の誘導路を造るための工事を十月一日に行うが、資材が不足しており、無償提供してくれる人を求めている。問い合わせは、服部さんー電O587(**)****へ。

 コゴメヤナギ(小米柳)
東北地方南部から近畿地方に分布する日本固有種で、日本に自生するヤナギ
の中では最大種。葉は小さく裏側が白い。樹皮は古くなると縦に裂ける。樹高は二十mになるがまれで、若い枝には多量の樹液が出るため、昆虫が多く集まる。尾張地方では犬山市内の一力所で見つかってるが、現在では珍しい種になっているという。

記者の目
「住民と行政の仲介を環境NPOが務めることを通じ、ややもすると対立しが
ちな行政と環境NPOが、協調して問題解決できたのは貴重だった」と服部さんは言う。全国的に公共事業の見直しが進められているなか、規模の違いがあり単純には言い切れないが、今回の服部さんや河川上事事務所などの取り紺みは、行政がNPOを含めた住民との対話を人切にし、意見を反映させた好例として評価できるのではないか。
(江南通信部・原 誠司)
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