浴室の前で、リョーマは静かに下ろされた。
強がってはみたものの、やはりあちこち身体が軋んできている。
早く湯船に浸かりたくて、リョーマは羽織っていたシャツをさっさと脱ぎにかかる。と、また『あの感触』が内股を伝い落ちた。
「あ…っ」
「どうした?」
「…アンタのが……」
そのまま真っ赤になって俯いてしまったリョーマを見て、手塚もその言葉の続きに気が付いた。
脱ぎかけだったシャツをリョーマから取り去り、自分も全てを脱いでから再びリョーマの身体を抱き上げる。
「え、あ、危ないっスよ」
「大丈夫だ」
直に触れ合う肌が、先ほどまでの熱を再び呼び起こすのを手塚は感じた。
適温のシャワーをリョーマの身体に当ててやりながら、自分が施した『情事の名残』を目の当たりにして、手塚の鼓動は再び加速し始めていた。
「自分でやるっスよ」
恥ずかしそうにリョーマが見上げる。
その表情に理性が崩れ始めていく。堪らなくなって手塚はリョーマに口づけた。
肩を掴む手にリョーマのしっとりとした肌の感触が伝わる。
「中のを……出しておいた方がいいだろうな」
「あっ…やっ」
手塚はリョーマの腰を抱き寄せると、いきなり後孔に指を差し込んでぐるりと掻き回した。すると、ドロリとした白い液が大量に手塚の指を伝い落ちてくる。
「やだ…っ」
「我慢しろ」
自分の欲情を悟られないために、手塚は少し強引に指を動かして中のものを掻き出そうとする。
「……………っ、あ、んっ」
だんだんと、リョーマの息づかいが妖しくなってくる。発せられる声が艶を含み始めた。
「ああ……や、あ…っ」
「ばか……そんな声を出すな…」
「だ…って…ああ……やっん」
手塚は、甘い声を漏らし始めたリョーマの唇を自分の唇でもう一度塞いでしまった。
そのまま深く舌を絡め取る。
リョーマの後孔に差し込んでいる指は、次第に別の意図を持って蠢き始めた。
その指の動きに合わせて、リョーマの腰が緩く揺れ始め、手塚に押しつけるような動きになってくる。
「あ…はぁ……も…してよ…っ!」
「………」
手塚はリョーマの身体を一旦離してしまうと、落ち着いた様子でシャワーのコックをひねって水流を止めた。
「くにみつ…っ」
「責任はとる」
手塚はリョーマの身体を抱き上げ、ゆっくりと湯船の中に入っていく。
向かい合う形で湯の中に浸かると、何度目かの口づけをどちらからともなく交わす。口づけながら手塚がリョーマの身体を浮かせた。
「できるか…?」
唇を触れさせながら手塚が低い声で囁く。リョーマは頷いて手塚のものを自分の秘蕾にあてがった。
充分にほぐれているリョーマの秘蕾は貪欲に手塚のものを呑み込んでいく。
「ああ、あ……あ、くにみつ……っ」
「…リョーマ……熱いな……」
手塚はリョーマの腰に手をかけて、一気に引き落とす。
「ひあぁっ!」
「く……うっ」
いきなり奥深くまで貫かれてリョーマが身体を硬直させる。手塚もきつく締め上げられて、低く呻き声を漏らした。
「あ……は…っ」
手塚の肩に乗せていた手をそのままずらして首に巻き付ける。身体を密着させると互いの鼓動が伝わってきて心地よい安心感が生まれた。
しかし、宥めるようにリョーマの背中をさすっていた手塚の手が、また腰骨を掴むように固定されると、リョーマはこれからもたらされるであろう衝撃に期待と不安を抱いてうっすらと目を開いた。
「リョーマ…」
手塚の掠れた声がリョーマの耳に囁かれると、リョーマはあまりの艶にゾクリと身体を震わせた。
「あ、あ……っ」
手塚の手が、リョーマの腰を掴んだままゆっくりと前後に動かされる。
深く銜え込まされた状態のまま動かされて、リョーマはジワジワと広がる快感に身悶えた。
「あっ、あ…はぁ、んんっ!」
前後に動かされていた腰が時折思いもかけなく左右に揺らされ、リョーマが喘ぐ。
湯船に緩い波紋が広がった。
「ねえ…っ、気持ち、…いい?」
リョーマが手塚の瞳を覗き込んで尋ねる。手塚は目を細めると「ああ」と答えた。
リョーマは微笑むと、自分の脚を手塚にしっかりと巻き付け、手塚の肩口に顔を埋めると再び感覚の世界へ舞い戻る。
ゆっくりと前後左右に動かされていたリョーマの腰が、次第に円を描くように動かされる。
「ああ、んっ、んん…っ」
「………」
手塚が熱い吐息を漏らした、と思った途端にリョーマは下から大きく突き上げられた。
「ひあっ!!」
水中の浮力を利用してリョーマの腰に円を描かせながら、自分に引き寄せる際に腰を突き上げる。
何度も突き上げるうちに、だんだんと加速し始め突き上げ方も鋭く激しさを増してゆく。
「あっ、ああっ、ん、やぁっ、あっ」
「う……あ…リョーマ…っ」
バシャンバシャンと、湯船が大きく波立ち、湯が零れて洗い場のタイルに撒き散らされた。
激しい水音にリョーマの甲高い嬌声が混じる。
「ああっ、ああっ、あうっ、ひあっ!」
リョーマの身体が浴槽の中で大きく跳ね続ける。
先ほどまでの情事で感じやすくなっている身体がさらなる熱を求めて自らも腰を振り始めた。
「んっ、ああっ、く…にみ…っうあっ!」
「リョ……マっ!」
きつく捩じ込んだまま前後左右に腰を動かされ、そのたびにリョーマはビクビクと身体を痙攣させ激しく喘ぐ。
あまりの快感にリョーマの嬌声が泣き声に近くなり始めると、手塚は突き上げ方をリョーマの内部の一点に集中させる。
「ひああっ、ああぁっ、うあっ!」
スイートスポットを集中攻撃され、リョーマは頂点へ向けて一気に駈け昇り始める。それに連れて締め上げのきつくなったリョーマの内部で手塚の肉剣も限界まで固く膨れ上がり、解放の瞬間を目指す。
「いくぞ…っ」
手塚が呻くようにリョーマを促す。
「うあっ、あああぁっ!」
熱く固い凶器をリョーマの内部へ深く捩じ込んでからその一点を狙ってさらに数回大きく突き上げると、ついにリョーマが堪えきれずに精を解き放った。
リョーマのイク瞬間のリキみで手塚もきつく締め上げられ、熱い体液をリョーマの腸壁に叩きつける。奥へ、さらにその奥へと数回にわたって呻きながら精を注ぎ終わると、手塚は深く息を吐いた。
ぐったりと身体を預けるリョーマの背中を優しく撫でさする。
「ねえ……どこに…こんな体力、残ってたの…?」
荒い息の下、リョーマが呆れたような、感心したような声で呟く。
「まだ余力はあるが…?」
「……オレを殺す気?」
クスクス笑いながらリョーマが手塚の首に腕を回す。
「…このまま寝ちゃいたい……気持ちいい…くにみつのも…まだすごく熱くて……」
「…寝るなよ」
「うん…でももーだめ、動けない」
「…また襲うぞ」
リョーマは身体が悲鳴を上げているにもかかわらず、心の方はもっと手塚に求められたいと願っていた。
だがこれ以上連続して身体を酷使するのは、やはりやめておいた方がいいだろうとも思う。
「このままやったら、その時は本当に動けなくなるよ?」
嫌だ、とは言わないが、それとなく手塚に『中断』のサインを送る。
「まだ夜は長いっスよ」
「………そうだったな」
手塚はそう言ってリョーマの身体を優しく抱きしめた。
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