もつれ込むように手塚の部屋に入ると、リョーマの身体が手塚の強い腕に後ろから抱きしめられた。
「リョーマ……」
耳に囁かれる、いつもと違うトーンの手塚の声。
リョーマは手塚の方に身体を向けると手塚の眼鏡をそっと奪う。それから背伸びをして自分から口づけた。
「たまにはアンタの服、脱がせてみたいな」
「…好きにしろ」
手塚は一瞬意外に思ったが、積極的なリョーマも見てみたかったので何も言わないことにした。
シャツのボタンを一つ一つゆっくりと外しているリョーマの顔を手塚はじっと見つめる。
リョーマの長い睫毛が揺れている。ほんのり朱をさした頬が愛しくて手塚はそっと触れてみた。
見上げてくるリョーマの瞳が妖しく揺れ始めていて、手塚はその艶に息を飲む。
そのまま吸い込まれるように、手塚が唇を重ねてゆくと、リョーマがなぜか手塚の身体を押し戻そうとする。
「…待ってよ…まだ全部外してな…………っん」
リョーマの言葉の最後の方は手塚の唇に遮られた。
口づけながら、手塚が素早くリョーマのシャツのボタンを外し、冷たい指先で胸の突起を摘み上げる。
「んんっ!……ずるいっ!」
「おまえのせいだ」
手塚は抗議するリョーマを容易く唇で封じ込めてシャツを取り去り、そのまま軽々と抱き上げてベッドにそっと下ろす。
ベッドを軋ませながら手塚がリョーマに覆い被さっていくと、リョーマの抗議の言葉は次第に甘い喘ぎへと変わっていった。
手塚がリョーマの胸をきつく掴んでぷっくりと立ち上がった突起を強く吸い上げる。リョーマの身体はその強すぎる刺激にびくびくと激しく震えた。
噛みつくように激しく、しかし時には優しく、歯を立てながら突起を嬲り続けると、手塚から逃れたいのかリョーマの身体がうねり始める。
その姿態が手塚の情欲に熱く火を灯すことを、未だにリョーマは気付いていない。
「もうやだ、そこばっか……っ!」
「ならば、どこがいい?」
「………っ」
涙ぐんだ大きな瞳できつく手塚を睨みつけたまま、リョーマは唇を噛み締める。
返答を期待していない手塚はリョーマの胸から手を滑らせて下腹部へ移動させる。
「ん……っ」
ズボンの上から熱い固まりを優しく撫でられて、リョーマが眉を寄せる。
カチャカチャとわざと音をたてながらゆっくりベルトを外し、リョーマの顔を見つめながらファスナーを下ろしてゆく。
きつく手塚を睨んでいた瞳が期待感に切なく揺れ始める。
手塚はこの瞳の変化を見るのが好きだった。
負けず嫌いで情熱家のくせにクールを装う彼が自分だけに見せる表情。誰にも渡さない、と手塚は思う。
この表情を、自分以外の誰かが見ることなど、決して許さないと思った。
全開にしたファスナーの間に冷たい手を差し込みリョーマの熱に直接触れると、きつく噛み締めていたリョーマの唇が「あ」という形に開かれる。声にならなかった空気が、震える唇から熱を持って吐き出された。
すでに固さを持つリョーマ自身を取り出し、緩く握った手を上下に動かす。
「ああ……んっ」
目を閉じて溜息のような声で喘ぎ始めたリョーマは、頬を上気させ喉を反らせて快感に堪える。
その表情を食い入るように見つめていた手塚が、手の動きを止めずにリョーマに口づける。
苦しげに眉をきつく寄せ、それでも必死に手塚に応えようとするリョーマが愛しくて手塚は唇を離してふっと微笑みかけた。
「…なんかさ……」
時折身体を震わせながら、リョーマが手塚の頬に触れてくる。
「アンタのそんな顔……誰にも…見せたくない……っ」
「…?」
「………アンタ、カッコ良すぎ!」
そういいながら、リョーマが手塚に抱きついてくる。
誰にも見せたくないのはお前の方だ…と言いかけて、手塚は口を噤む。
まだ少し迷いがあるのだ。自分のあからさまな独占欲を、この自由奔放な少年に押しつけていいものなのかどうか、と。
それでも、リョーマも自分を独占したいと言ってくれたことが、手塚にはこの上なく嬉しかった。
「…リョーマ…」
愛しくて愛しくて、メチャクチャに愛したくなる衝動を必死に宥めて、手塚はリョーマの細い身体を抱きしめる。
「ねえ、……早く…もっと……」
だが吐息とともに耳元に熱く囁かれて、手塚の鼓動が一気に倍速になる。
手塚は驚くほどの手際の良さでリョーマから全ての衣服を剥ぎ取り、脱がされかけていたシャツを自ら脱ぎ捨てリョーマにのしかかった。
直に触れ合わせる互いの肌は いつだって熱くて、泣きたくなるほど切なくなる。
手塚がリョーマの身体をきつく抱きしめてその甘い唇を激しく貪り始めると、リョーマの腕が手塚の頭を抱え込んだ。
リョーマの片足を大きく広げさせてその奥に手塚の指が触れた途端、固い蕾がさらにきゅっと締まった。だが蕾を中心に指で円を描きながら圧力をかけてゆくと、少しずつ固さがとれてくる。それと同時に微かにリョーマの腰が揺れ始めた。
手塚は身体を起こして潤いになるものを持ってくると、指にとってリョーマの秘蕾に埋め込む。
「ああ、んっ!」
いきなり挿入された指を思い切り締め付けてリョーマが喘ぐ。
その唇を塞いで舌を絡めながら、手塚は長い指をリョーマの中で抉るように動かし徐々に本数を増やしてゆく。
「んんっ、う…んっ!」
室内にリョーマのくぐもった声と、クチャクチャという湿った音が広がる。
3本まで増やした指をその付け根まで捩じ込んで回転させ、ゆっくりと引き抜く。そのまま何度か出し入れを繰り返すとリョーマが手塚の唇から逃れて、喘ぎ散らした。
「…っああっ!や、だ…っ、も…、…っみつっ!」
そんなリョーマのあられもない姿態に、手塚の方もどうにもおさまりがつかなくなってきてしまった。
もう一度深く舌を絡ませながら、手塚が自分のズボンを下着ごと太股のあたりまで押し下げる。
唇をゆっくり離してリョーマの瞳を正面から見つめた。
潤んだ大きな瞳が見つめ返してくる。
「リョーマ…っ」
名前を囁きながらその脚を大きく広げさせ、一気に貫いた。
「うあ………………っ!!あああっ!」
「く……っ」
リョーマが衝撃に身体を固くし、そのせいで手塚を思いきり締め上げることになってしまう。
リョーマの瞳からこぼれ落ちた涙を唇ですくい取りながら、手塚がゆっくりと腰を左右に揺らした。
「はあっ、あ、ん……く…みつっ…」
「リョーマ……ああ…」
甘い締め付けに吐息を漏らす手塚の表情をリョーマが真っ赤な目で見つめる。
「くにみつ…」
言葉にしきれない想いを込めてリョーマは手塚の腰に自分の脚を絡め、腕を首にまわした。
それが合図のように、手塚が腰を打ちつけ始める。
「は、あっ、あっ、ああっ」
リョーマの腰を抱え込むようにして初めはゆっくりと、そして次第に加速させながら熱い内壁を抉る。
手塚はすぐにも達してしまいそうになるのを堪え、深く抉り込んだところで一旦動きを止めて円を描くように腰を回す。
「ひ……っ、う、ん…っ」
内壁を捻られるような感覚にリョーマがきつく目を閉じて息を詰める。
深く自身を突き刺したところで手塚がリョーマに口づけると、リョーマは縋り付くように手塚の首にまわした腕に力を込めた。
手塚はリョーマの額にチュッと音をたてて口づけてから腰の動きを再開させる。
「は、あっ、ああっ、ああ…っ」
突き上げるたびにリョーマの口から喘ぎ声が漏れる。
もっと喘がせたくて、手塚は時折ひどく乱暴に腰を打ちつける。
「やあああっ!や、だぁっ!ああっ、あああっ」
激しく揺さぶられながらリョーマが喘ぎ散らすのを見て、手塚の肉剣がさらに重量を増した。
濃厚な粘着音とベッドの激しい軋みに同調して悲鳴に近いリョーマの嬌声が室内に響く。
「ああっ、も、…っみ…っ!ダメっ……ひああっ!」
何度も何度も抉り込まれて、リョーマが手塚に限界を知らせるが、手塚の動きは止まらなかった。
「あっ、あっ、ダメ、出る……っ、うあ、あああっ!!!」
「リョー…マ……っく、う…っ!」
我慢できずに絶頂を迎えたリョーマに締め上げられて、手塚も呻きながらリョーマの腸壁に熱い体液を叩きつけた。
繋がりあったまま息を整えていると、リョーマの内壁の微妙な蠢きに触発されて、手塚がすぐに固さを取り戻す。
「…足りない…」
「うん…まだ平気……いいよ、くにみつ…」
手塚はリョーマの身体を抱きしめると、そのままいきなり抱き起こして向かい合わせに座る形にする。
自分の体重で手塚を深く飲み込むことになったリョーマが慌てて抗議する。
「あ…っ、こんなの…っ、やだっ!」
だが手塚は黙ったまま腰を突き上げ始める。
「やっ、ああっ、ああっ、い、やぁっ」
言葉とは裏腹に、リョーマの脚はきつく手塚に巻き付けられる。
「リョーマ…」
熱い吐息と共に自分の名を囁かれ、リョーマの身体と心が快感に震えた。
二人で過ごすときの手塚の声は、なぜこんなにも自分の中に染み込んでくるのだろう、とリョーマは頭の片隅で不思議に思う。
部活の時は二人の関係を公に出来ないせいか、『部長と部員』として接しているから言葉も声も固くなる。
だが二人でいるときの手塚の声は、身体中の力が抜けてしまうほどリョーマの感覚を揺さぶってくるのだ。
こんな風に熱く身体を繋げているときは尚更、その声のせいで何度でも熱を取り戻せてしまう気がした。
「ね、え…」
突き上げられながら、リョーマが手塚の肩に顔を埋める。
「もっと…呼んで……名前………オレの、…あうっ」
「……リョーマ…」
「ああ……っ」
うっとりとした様子でしがみついてくるリョーマにさらに愛しさを募らせて、手塚の動きが激しくなる。
「ひ、ああっ!」
手塚は膝立ちになると、勢いをつけてリョーマを突き上げ始める。激しく上下に揺さぶられて、リョーマの身体が鞠のように弾んだ。
喘ぐことすら出来ず、激しい衝撃に歯を食いしばってリョーマが堪える。
ガツガツと鈍い音をたてて二人の肉がぶつかり合う。
「リョーマ…っ」
荒い息づかいに紛れて名前を呼ばれ、リョーマの身体が反応する。
「…っく、あああっ、ああっ、はっ、く…みつっ!」
「リョーマっ」
二人の腹の間で擦られていたリョーマ自身がいつの間にか形を変えている。
「このまま、いけるか…?」
手塚がリョーマの腰骨を掴んで激しく揺さぶりながら尋ねてくる。
リョーマはコクコクと頷くと手塚をきつく締め付けた。
手塚がさらに大きく腰を突き上げ始める。ベッドが壊れそうなほど激しく軋んだ。
「うあっ、ああっ、すご……っ、出る……っ、く………つっ!」
「リョーマ!」
手塚がリョーマの身体をあらん限りの力で抱きしめ、自身を深く捩じ込んだ。
リョーマも手塚の肩に顔を押しつけて絶頂の波を迎える。
二人は身体を激しく痙攣させながら熱い激情を放出する。
自分の内部に吐き出された手塚の熱い体液を感じて、リョーマも長い絶頂の中、手塚の腹に熱い白濁液をぶつけていた。
荒い息を互いの耳元に感じて、二人はきつく抱きしめあう。繋がったまま崩れるようにベッドに横たわると、どちらからともなく唇を寄せ合う。
たっぷりと舌を絡めてから手塚が身を引こうとすると、リョーマがもう少しこのままがいい、と引き留めた。
手塚が苦笑してもう一度口づけてくる。
唇を触れさせたまま、リョーマがクスッと笑ったので、手塚は訝しんでリョーマの顔を覗き込む。
「…アンタ、激しすぎ…オレのこと本気で壊す気?」
「…………すまん…」
「ま、いいけどさ」
激しく求められることがリョーマにとってはひどく嬉しいのだと言うことを、まだ手塚には教えていない。なのに、手塚は日に日に激しさを増してゆく。
それだけ手塚が心から自分を求めているのかと思うと、リョーマは嬉しくてたまらなかった。
「二人で旅行とか行ったら、もしかしてオールナイト?」
「ばか」
リョーマは幸せそうな笑みを浮かべて手塚の肩口に額を擦り寄せた。