4.全国大会〜A富士山五合目編

さて、一行はバスで富士山の五合目まで移動し、さっそく次のクイズへ。「運動しやすい服装で来るように。」と言われていたうえ、クイズを行う場所が広々としている。これはもう、バラマキが濃厚。しかし、何故か背後には巨大なあみだくじがあり、しかも早押し機が2チーム分置いてある。もしかしてバラマキではないのか?と考えていると、「それではまず、敗者復活・決勝戦!」とのこと。いきなりここで、膳所と大分女子のどっちかが落っこちてしまうようだ。そして出された問題が「考える時間無制限一本勝負!『あんまりだ』『みじめだ』『だめだ』『悔しい』『地獄だ』これらの敗者の叫びの頭文字をつなげてできる言葉は何?」僕もあまり真剣に問題を聞いていなかったので何のこっちゃよく分からなかったのだが、膳所が「あみだくじ!」と正解を叫び、それに対して留さんが間髪を入れず「正解!おめでとう膳所高校、君たちには先にあみだくじを引く権利を与えよう!」と返したところで全ての事情を理解した。(放送では、この後あみだくじを引いて膳所が「当たり」を引くところまではカットされている。確かにテレビ的にはここで大分女子が「当たり」を引いた方がおもしろかったと思うが。ま、そもそもカラオケで決まった敗者復活だから仕方ないのかも知れない。放送をよく見るといつの間にか後ろのくす玉が割れているのは、このためである)そして発表された形式は「富士山おじゃま無視バラマキクイズ」。僕はこのタイトルを聞いただけでほぼ形式が分かった。要するに持ってきた問題は常に膳所と1対1で早押し対決をするってことだ。一瞬、これは膳所が有利では?と思った。何せ他のチームは走って問題を取ってくるうえ、正解できる問題を引けるとは限らない。実際バラマキをやってみれば分かるが、走ってきて問題が読まれ、それに答えようとするのは、一発勝負というプレッシャーもあって想像以上に頭が働かない。それに対してずっと早押し機の前にいられるのは、ある種「リズム」があって絶対有利だ。ただ、僕らが2ポイントで勝ち抜けに対して膳所は7ポイント取らないと勝ち抜けられない。しかも問題によっては膳所に解答権がないし、ここでの勝ち抜けはたった4チーム。うーん、微妙な「ハンデ」だ。まあそれでも、個人的には早押しがたくさんできるからそっちの方がいいかな、なんて考えているうちにスタート。だいたいバラマキという形式は、余程解答席での回転が早くない限り後ろのチームに順番を抜かされることはないので、最初の順番によって有利・不利がある程度決まってしまう。走る必要があるのは例えば「ハズレ」を引いてしまいすぐ走り出して前のチームを追い越せそうな時と、後ろのチームに抜かされそうな時ぐらいだ。まして早押しをするのであれば、なおさら回転は遅いはず。と頭では分かっていたのだが、肝心のスタートダッシュに失敗してしまい、後ろから数えた方が早い順番になってしまった。ようやく順番が回ってきて出された問題は「最近ブームの『ログ・キャビン』っていったい何のこと?」ログが丸太だというのはすぐ分かった。このころ学校ではスクラブルという英語のゲームがはやっており、こういう短い単語はよく調べていたからだ。丸太・・・とくれば丸太小屋しか思い浮かばなかったが、他に何かあるのかなあ・・・と思っていたら大前くんが正解してくれた。とりあえずリーチだ。そして2回目のフリスビーを取って戻り、列に並んでいるとまたまた原くんが小声で言った。「専用問題や!」これは、1巡目に他の高校の様子を見ているとき「膳所高校解答権なし」という問題の封筒に、ライオンとクイズラのイラストが描かれた丸いワッペンが貼られていたのを見ており、彼はフリスビーを日に透かしてみたところ丸い影があったということらしい。透かしてみると確かに丸い影が見える。でも僕は「そんなミエミエなことするか〜?ダミーかも知れんで。」と一応慎重な構えも見せながら順番を待った。幸い「ハズレ」が出たり膳所に取られたりで、ストレートで2問取った高校はここまでなかった。そして留さんが封筒を開けて一言。「お、これは東大寺専用問題だ。」僕らはここで3人とも思わず笑いがこぼれてしまった。放送で必要以上に笑って見えるのはそのせいである。しかも問題が「共通一次試験(現:センター試験)に出題される教科はいくつ?」という、仮にも受験校に対しては易し過ぎる問題だった。実はこの年から出題科目が「5教科7科目」から「5教科5科目」に変更されており、この「5教科5科目」という単語はもうイヤというほど耳慣れた単語だったからだ。特に僕は英数国に比べて理社が苦手な人間にとっては朗報だった。(・・・考えてみると、前述のように高校生クイズが県別の代表制になって勝ち抜けの可能性がアップしたり、受験制度が改革になって前期・後期制になり東大と京大を両方受けられるようになったり、つくづく人生の節目でツイているなあと思う。)が、3人ともほっとしたのか、誰も答えようとしないのでちょっとアセった。答えなくてはと思った瞬間、教科の数を聞いているのか科目の数を聞いているのかど忘れしてしまったが、とりあえず「5教科5科目」と答えておけば間違いにはできまい、と思い、マイクをつかんで答えた。「正解!」やった!何と1抜け。バラマキでほとんど汗もかかずに、しかもこの時点でベスト4。おいしすぎる。改めて原くんの「引きの強さ」に感心した。僕らはこの後、勝者に用意されたかき氷を食べながら、みんながハアハア言いながら戦う姿をすぐ横で悠然と見ていた。僕らと対照的に高知や泉陽は「ハズレ」を引いたり難しい問題だったり、見事なまでにハマっている。ちょうどこの時野球部が甲子園に出場中の米子東に専用問題で高校野球の問題が出たり(いわゆるクイズ用語でいうところの「サシコミ」?)もしたが、予想通り徐々に膳所が調子を上げてくる。大門が抜けあと1チームとなったが、ついに膳所も6ポイントになってリーチ。次の順番はこれもリーチの田辺。先に抜けている僕らからすれば田辺は「何でこんなこと知ってんねん?」というような問題に強く、しぶとい印象があった。ゆえに何となく膳所を心の中では応援していたのだが、「オマツといえばどんな松の種類?」に田辺が正解し、最後の席にすべりこんだ。それにしても本当、何でこんなこと知ってんねんやろ。

つづく