2.近畿予選〜代表決定編

さて、次はバスに乗せられた。車内で弁当が配られたが、ただただ暑くてあんまり食欲はない・・・その時原くんが「うわ、ペーパーや!」と小声で言った。3段重ねの弁当の1番下にペーパークイズが隠されていたからだ。(彼はこういう事に気付くのが異常に早い)だが、奈良県の車はカメラが回っておらず、また過去の問題傾向から、ペーパーは学校で習うことが数多く出題されるため、いわゆる「受験校」であるウチの学校にはどう考えても有利な形式である。したがって誰も動揺などせず、模試よりずっと気楽に解いた。とはいえ、やはり発表の際は緊張する。まして「奈良県はペーパーの平均点が最も高かった」と聞かされていたので、船頭さんの背中に名前が書いてあっても、「もしかしたらドンデン返しちゃうか?」という疑惑が先にたち(今もあるが、この頃はドンデン返しが特によくあった)全然嬉しそうに映っていない。

保津川下りもまた大変だった。この日はいつもより水の流れが遅く、1時間くらい余計に時間がかかったらしい。おまけに「途中にあるものをしっかり覚えておけ」とだけ言われていたため、船頭さんの観光案内や留さんの何気ない一言まで必死で手分けして覚えた。(結果的には局で用意した仕掛けに関する問題しか出なかったのだが)早押しは各府県1チームだけが参加でき、答えられなければ後ろに下がるという形式。しかし「スワニー川」を押し負け、しかも次の問題で後輩のチームが勝ち抜けるという最悪の展開。少なくともあと2問経たなければチャンスは回ってこないし、その間に奈良県のチームが正解すれば、その時点で終わってしまう。正直負けを覚悟した。しかも2問目の「にしんそば」は、原くんが「俺、好物やのに」と悔しがっており、何とか順番が回ってきた時はほっとした気持ちで一杯だった。さて運命の問題は「渓谷に書かれていた英語のことわざ・・・」この時点では、保津峡駅(当時)の陸橋に掛かっていた、「Romewas not built in day」という垂れ幕のことだ、とは分かったが、僕は「ここからどう変化すんねん・・・?」とばかり考えていた。「・・・ズバリ日本語に訳すと?」ゲッ、そのままやんけ。一瞬押すのが遅れたかと思ったが、大前くんがそれより早く押していた。ああ、助かった・・・。

さあ、いよいよ決勝。ここまで来たら勝ちたい。相手は同じ学校の2年生チーム。さすがに先輩としては負けたらカッコ悪いな〜と思った。まず大覚寺で写経をさせられる。といってもこれも書道の時間でやったばっかりだった。(ちなみに書道の時書いた写経は大仏様の胎内に納めてもらった。特典だ)そしてルールの説明。1問正解するごとに相手チームを一人ずつ写経の席に送り込めるというもの。高校生クイズにしては珍しく「ポイントを取った方が有利になる」形式だ。しかもお手つきは1問休みと比較的軽いので、これはどんどん押すに限る。僕らのチームは写経席に行く順番を最初が原くん、次が僕と決めた。と、1問目でいきなり原くんが「未生流、嵯峨御流、小原流といったら何の流派?」という問題に正解。ちなみに僕らのチームの中では、原くんだけがちょっと得意ジャンルが変わっていて、大前くんと僕はだいたい同じという感じだった。ところが、次の問題で後輩チームが正解し、今正解したばかりの原くんが写経席に追い込まれ早くもイーブンになってしまう。その後何問かの後、「ここからは各県に関する問題を順番に出題します。」との説明があった。「こりゃ、その県のチームが解答権を取る確率が高いから、奈良県の問題は何が何でも押さなアカンな。」と思った。そして奈良県の問題。「柿の葉ずしに使われる魚は何?」このとき、何故か僕の頭には「富山のますのすし」のイメージが頭に思い浮かんでしまった。そして押したものの、出てきた答えがこともあろうに「鮭」と、とんでもないスカタンをかましてしまった。それじゃ単なるおにぎりや。しかし、これで固まっていた指がほぐれたのか、休み明けの問題「キーボードの配列で左上のアルファベットは何?」に正解できた。(今でこそ超べた問題だが、当時はワープロすら珍しい時代。僕は「ポケコン」を持っていたので分かった。あ、そういえば東大寺学園には、あの「グリコ・森永事件」の時使われたのと同じタイプライターがあり、流通台数が少なかったため警察が調査に来たらしい。)これでリーチ。しかしその後なかなか分かる問題が来ない。そうこうしているうちに「しろはえとはどの方角から吹く風?」という問題に後輩チームが正解し、僕も写経席へ送り込まれてしまった。あとは大前くんに任せるしかない。がその途端、「オレンジカード、千円・五千円・一万円とあと1種類は何?」「正倉院の宝物を管理している官庁はどこ?」と、僕が確信を持って正解できたであろう問題が続き、めっちゃ焦った。しかし次の問題、「相手を想定してパンチやフットワークの練習を・・・」を結構早いポイントで大前くんが正解し、どうにか全国大会進出が決定した。まあ、3人で仲良く1問ずつ正解できたからいいか。とりあえず、これで学校名が最低1回はテロップで出る。それが一番嬉しかったように思う。

つづく