Ragtime について

 ラグタイムは今更、言うまでも無く米国特有の音楽である。1800年代の
末期に中西部から南部に至る辺りで誕生したとされているピアノ音楽であ
る。大都会から小さな田舎町まで、酒場や売春宿には大抵ピアノが置いて
あってプレイヤーが客のために演奏をしていた。供される曲は当初はクラシ
ックであったかも知れない。それらにフォークソングやブルースなどの要素
が取り入れられ、徐々にラグタイム奏法が出来上がっていったと思われる。
  1894年に、ラグタイムにも目を向けはじめていた楽譜出版業者が、初
めてのラグ曲の譜面「Mississippi Rag」を出版した。5年の歳月を経て1
899年9月18日、大ヒット「Maple Leaf Rag」が誕生する。Scott Jopli
nはラグタイムの創始者の様に思われがちだが、偉大な才能を持った最初
のヒットメーカーとみるのが正しいと考える。
  「Maple」のヒットは、Joplinと出版業者John Starkの生活を一変させ
てしまった。ミズーリ州の田舎町セダリアから、セントルイスへ、さらにニュー
ヨークへと、まさにアメリカンドリームの道をたどっていった。
  Joplinの曲はあくまで優美で繊細であり、他の追随を許さない。不幸にし
て1917年に梅毒の痴呆症で死んでからは、次第に表舞台からは
忘れ去られていった。しかし愛好家や楽団の間では、
彼の曲は度々演奏され吹き込みも行われた。
70年代に譜面集の発刊が行われ再び世に出た彼の作品は、
映画「Sting」のサウンドトラックに使われ、映画のヒットと共に世界的な流行の波に乗
った。いわゆる70年代のJoplinリバイバルである。
クラシック、ジャズ、その他様々なジャンルのミュージシャンが、
ラグタイムのレコーディングを行った。

  Joplinリバイバルからすでに30年を経た今日、日本では余り省みられな
くなってしまったが、米国では後継者が育ち、次世代のラグタイムの担い手
には事欠かない状況である事は喜ばしい。
  各地で頻繁に開かれるラグタイム・フェスティバルは、年々活況を呈して
おり、聖地セダリアで毎年6月に開催されるScott Joplin Ragtime Fes
tivalの、2002年開催案内が届いた。