幸せいっぱい腹いっぱい
~洋食篇~

朝顔や食いはぐれたる飯の数  中原道夫
坪内稔典選著『一億人のための辞世の句 Ⅰ』(蝸牛社)


和食 寿司 洋食 中華 雨風食堂 野菜 くだもの お菓子 飲み物 食材 道具
勝手にコラボレーション
妻にいうことははばかることながらカツカレーを買う府立図書館
うすくってさらさらカレーはウスターを欠かせぬうまさ市立図書館

大いなるスプーンにカレーを掬ふとも松山容子はもどることなし
ここにしも時間とまりてほほゑめる松山容子は松山のひと
ボンカレーのとなりは眼鏡おとしたる大村崑の元気ハツラツ
構内のカレーショップの止まり木に至福のときは過ぎてゆきたり
こだはりはエスカレーターなら右立ちぞヒレカツならばヘレカツと呼ぶ
千切りのキャベツは嫌ひブロッコリートマトも嫌ひ豚カツが好き
食べたくもない大目玉いただくとすればお目玉なき目玉焼き
きみこひし白磁の皿を前にして犬の舌なしターンオーバー
耕して闘はされて食べられて申すほかなしこの世は憂しと
焼き加減を聞かれるやうなレストランの記憶すくなしビーフステーキ
焼き方はレアかミディアムウェルダン?聞かれて乏しきふところのこと
オムライスの卵の量の今昔をおもひ鳥インフルエンザをおもひ
掘り出したばかりのやうにパエリアのざつくざつくと黄金なす餐
厨房に取り分けらるる山分けの宝の山のやうなパエリア
パエリアの金銀財宝それを敷くお焦げは洋を問はぬ御馳走
曲がっていた腰さへのびて爺さんやのう婆さんや海老フライです
懸けまくもあやに畏しかけたきはタルタルソース、エビフライには

ころもきて大きくみえしエビフライの海老を責むるにあらねどくやし
しあはせをのぞくごとくにながめゐしローストチキン、子供の頃の
殺処分さるる鶏舎のとりおもひチキンフラワーを手につかみたり
味噌汁と御飯に塩鮭なまたまご海苔に仕上げの沢庵もある
このごろはシャケとはいはずこのごろは鮭ともいはずサーモンと呼ぶ
お好みはコテで食べますタコ焼きは楊枝、ピザならつまめる熱さ
冷凍のピッツアがあれば昼とせむ昼とせむとぞ悩むカロリー
口にするジャガイモグラタン口にするマカロニグラタン一人の夕べ
嫌ひかときかれてうなづくことはなし年より若き舌にグラタン
音するを嫌はれてをり皿にまだのこしてコンソメスープお終ひ
引き出しに賞味期限をまだ残すコンソメスープの素がありたり
舌出してまつかつかつか氷ならいちごスパゲッティならナポリタン
Aランチお子さまランチのり平の江戸むらさきよりナポリタン
なつかしのガンマンみればナポリタンはたまたミートソーススパゲッティ
ナポリタンよりも簡単レトルトのカレーをかけて今日の昼食
食卓もさまがはりして昔日のミートソーススパゲッティ何処
晩酌のあてにはすこし似合はないクリームシチューをかたはらに置く
大きめのタマネギニンジンジャガイモのクリームシチューぞ腹九分目
スパゲッティマカロニラザーニャラビオリと今日の立食パーティーたのし
板状のラザニアの食感おもしろしお菓子のやうでお菓子でなくて
肉食のビーフシチューと菜食のクリームシチューのやうな濡れ衣
かにかくにビーフシチューのはかなけれ主役の御飯のまだ添はぬゆゑ
食べられるサンドイッチの声聞けばおしくらまんじゅう押されて泣くな
サンドイッチ食べつつおもう嬲るまた嫐るもあれば嫐られたきを

サブマリン・サンドイッチはをみなごの皿にとられてあとかたもなし
ぬばたまの夜またあかねさす昼もサンドイッチマンの立つ天王寺
うふふんと鼻を鳴らしてゐたるかなコーンポタージュスープ最高
粒たつぷりのクリームコーンと牛乳をよくかき混ぜたところで火を止む
インスタントのコーンスープに言ひ訳のやうに黄色の粒がありたり
病院を思ふことあり大匙で南瓜のポタージュスープをすくひ
揚げたてのカキフライよし生牡蠣も酢牡蠣もあぶらの海わたり来よ
冬の夜は酢牡蛎うましと食通の父はほがらに酔ひにけらしも
揚げたてのカキフライよし食通にあらざるわれは生食をせず
鳥たべてマグロをたべて牛たべてそろそろ宗旨変へのサラダ・バー
好き嫌ひは言つてをれない身のためとサラダいただく赤も緑も