幸せいっぱい腹いっぱい
〜和食篇〜

朝顔や食いはぐれたる飯の数  中原道夫
坪内稔典選著『一億人のための辞世の句 T』(蝸牛社)


和食 寿司 洋食 中華 雨風食堂 野菜 果物 お菓子 飲み物 食材 道具
勝手にコラボレーション
お代はりはほんの少しと言ひ添へて熟年辛し行尸走肉
残っても味噌汁はいいあたためてごはんにかけて昼を簡略
さてなんとしよう床下収納庫にはフリーズドライの味噌汁がある
うろこのあるサカナうろこのないサカナ焼かれるときも目をあけている
眼肉は通のあなたに任せるとして箸のばす鯛の白身へ
肉よりもサカナへ嗜好の移りつつある年代かスダチをしぼる
お茶碗にお箸にお皿おのいらぬ丼、調理して茶碗蒸し
なんにでもマヨネーズかける御時世にはふはふはふソースタコ焼き
タコ焼きに似てやはらかくだし汁もつく明石焼きちよつと上品
世代的には巨人大鵬卵焼きそのあたりだと思つて下さい
出しがすきおろし大根生姜すき片栗まとふ揚げ出し豆腐
猫舌のわれはひいふうはあ額より汗をかきをり鍋焼きうどん
のどもとを糸蒟蒻のすべりゆく食感が好きすき焼きが好き
すき焼きの味がたつぷりしみこんだ麩がまたよろし卵につける
すき焼きのなかより箸がとりあげるたびにゴージャス、榎茸とは
細切りの大根いれてよく味のしみしところをいざ溶き卵
甘辛く煮たるうどんを溶き卵につけてふたたび口にするする
すき焼きの残りし鍋に一夜ねて朝はご飯を落として食べる
立ち食ひのぶつかけ蕎麦のいかにもの山葵がチューブを出でたるところ
カニ食べにいく往路寄り復路寄り競ひて食べし出石皿そば
ざるそばに風鈴、立つて食ふならばぶつかけそばの簡略ぞよし
飽食の時代を生きてざるそばの蕎麦のみあるは満ちたらぬ思ひ
立ち食ひのぶつかけ蕎麦のいかにもの山葵がチューブを出でたるところ
鷺足で踊る法師にそつくりでその名いただく木の芽田楽
肴にはきのめの香りやきみそも芳ばしくして木の芽田楽
しやぶしやぶは一度のところやくたいもなき性格はさらにしやぶしやぶ
しやぶしやぶの由来はしやぶしやぶ他愛なく食べる姿もスエヒロ本店
あつくるし恋の奴にひげやつこのがれてあてにする冷や奴
なにもつけずにまず召し上がれ余計なとおもひて口にする寄せ豆腐
冷や奴に今宵なぐさめられてをり風に吹かれて豆腐屋ジョニー
ひとつ食べふたつ食べして危ふけれのんどつらぬく焼き鳥の串
外でこそ食ふべかりけれ焼き鳥の肉肉肉肉、妻の小言を聞かず
外に出ては外のたのしみ焼き鳥は妻のきらひなレバーをたのむ
串にさす丸いものにはめがなくて焼鳥屋ゆゑつくねをたのむ
ヤキトリを食べてレバーにツクネ食べウヅラを食べて戻るヤキトリ
ヤキトリを焼くは備中炭といふ紀州は備後屋長右衛門殿
こなものに通うちくわの天ぷらの食感よくてまた箸が出る
タラの芽の天ぷら苦しめでぬべき人もあらぬと歌ひし節
品下る感じに揚がる紅生姜の天ぷらうまし品下るとも
しその葉の天ぷらが好き揚げたての香りがよくてパリパリとして
あまりたる衣は衣それのみを揚げてさくさくお菓子感覚
箕面にはもみぢ天ぷら錦秋の候を土産にしたる揚げ菓子
晩酌を抜く日抜かぬ日おでんとぞ聞けば晩酌抜けるはずなし
串にさす丸いものならめがなくておでんとくれば練り物団子
蒟蒻はむかし父より教はりぬをとこの玉の砂おろしとぞ
おでんにはしらたき白蒟蒻もあると後年知る黒蒟蒻派
ジャガイモに平てんたまごシューマイに厚揚げごぼ天いざかんとだき
一品ですべてことたる団欒のお好み焼きに今日も乾杯
ごはんにはお好み焼きぞおやつには烏賊焼き右党なら御座候
ネギ焼に広島焼にもんじややき一銭焼もみなドット・コム
枯れるにはまだはやすぎる串カツの脂ぎりたる串の先端
手のかかるふろふき大根さいはひに食べず嫌ひのきらひの部類
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晩酌のときにつまみし昆布豆御飯を注いでまたのびる箸
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水槽に蛸は泳げど青空にたこを見ることなき三が日
海苔フィルム外して巻いてゆくときのさみしきさみしきおにぎりの夜
東京のおでんもはるか西下して暖簾くぐれば呼ぶ関東炊き
カニよカニよ手とおぼしきも脚ゆゑに解しがたかる虫と書くらむ



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